不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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神話の時代に地雷原を一人で作り出す放浪者って冷静に考えると、とんでも無いですよね。




不死の英雄伝 47

第四十七話 戦いの素質

 

 

放浪者との鬼ごっこはかくれんぼへと移行したようだ。

 

奴の肌に突き刺さるような殺気は四散しており、その存在は完全に周囲に溶け込んでいる。

 

 

腰の剣を抜き、辺りを警戒しながら螺旋階段を上って行く。

 

 

この螺旋階段は交差するように、もう一段全く同じ物が配置されているため、上の様子を伺う事ができない。 だがそれは向こうも同じ、だから襲撃するならこの階段の出口だろう。

 

 

だが、襲撃は予想外の場所からだった。

 

 

放浪者はもう一つの螺旋階段、場所としては今俺が居る真上の場所から手摺を使い、俺に蹴りかかって来たのだ。

 

 

意識外からの不意を突いた一撃、それを側頭部に受けてしまい足がおぼつかなくなってしまった。

 

 

そのままこの男は俺の上に乗り、左手をユイに向け爆炎を放つ。

 

 

襲撃者を撃退しようと、抜剣していたユイはその爆炎を浴びてしまい、階段の上から吹き飛ばされてしまう。

 

 

邪魔者を排除した彼は、腰からナイフを取り出し、俺の鎧の隙間から心臓を目掛けてその刃を捻じ込んできた。

 

 

幸運な事に、先ほど手に入れた三枚の太陽メダルが御守りとなり、そのナイフの凶刃を受け止めてくれた。

 

 

仕留めた手応えが無かったからか、放浪者はそのまま体重を掛けながら刃を押し込み始めた。

 

 

 

だが、俺もやられっぱなしでは無い、左手で彼の手首を握り、右手の剣で彼の心臓を狙う。

 

 

残念ながらその一撃は防がれてしまったのだが、お互いにお互いを掴み合い、膠着状態となる。

 

 

ユイの援護を待ちたいのだが、彼が階段を駆け上るまでに俺が耐えられそうに無い。

 

 

いい加減、手に力が入らなくなってきたので頭突きをかまし、放浪者を仰け反らせ膝蹴りを腹に叩き込む。

 

 

なんとか彼と距離を離す事が出来たのだが、俺の後ろに見えるユイに気が付いたのか放浪者は退散していった。

 

 

俺達も、合流した後に彼を追い掛けながら道中の銀騎士を撃破して行く。

 

 

 

彼が最後に逃げ込んだ部屋の前には古城で出会ったジークマイヤーが腕を組みながら唸っていた。

 

 

なんでも、この先の銀騎士が倒せないらしくどうしたものかと頭を悩ませて居る所だという。

 

 

 

どうせ中に入れば放浪者が俺にけしかけるのだろう。

 

悩むジークマイヤーを他所に大剣にエンチャントを施し、扉を開けて一気に飛び込む。

 

 

俺を歓迎してくれたのは、古城で浴びせられた炎の柱。

 

 

勇んで飛び込んだため、それをまともに食らってしまうがなんとか耐える。

 

 

彼は炎の柱をだした体勢から立ち上がっては居ないため、扉の横で俺の隙を伺って居る銀騎士を、炎に隠れて斬り捨てる。

 

 

放浪者はもう一度、退散しようとしたのだが、その背中にユイが斬りかかる。

 

 

城の内部で好き放題された事が腹ただしいのか、単純に彼のような闇霊が許せないのか。

 

 

彼の剣は冴え渡っていて、放浪者と互角に戦っている。

 

 

しかし、剣戟の音に反応したのか、背後の銀騎士達が此方に向かってくる。

 

 

ハルバードを左手に握り、大剣と共に構え、斧槍と大剣の二刀流を以って銀騎士と対峙する。

 

 

左手の斧槍で間合いを制し、右手の大剣で斬り捨てる。

 

 

目の前の銀騎士達は盾を構えたり、後ろに引いたりと色々しているがハルバードの刃を使って、盾を捲り、足を払い、確実に仕留めて行く。

 

 

 

ユイの方を向くと、放浪者の持つ刺剣をパリィする瞬間だった。

 

 

ようやく、カタが着いたのかと思ったのだが、その考えは甘かった。

 

 

 

彼はパリィされると分かるや否や、刺剣を手放して体勢が崩れる事を回避し、ユイの足元に水面蹴りを放ち、彼を転倒させると同時に、俺に向けてナイフを投げてくる。

 

ユイは、パリィの体勢をとって居た為に無防備にその一撃を貰ってしまい、転倒と同時に放浪者の特大剣で両断されてしまう。

 

ナイフを避けた一瞬の出来事だった為に、援護が間に合わなかった。

 

 

だが、彼の犠牲を無駄にはしない。

 

 

腰の刀に手を掛け、一気に踏み込み間合いを詰める。

 

 

彼の剣線に張り合える、俺の今放てる最速の一閃。

 

 

だと言うのに、俺の全力の居合抜きは完全に彼に見切られてしまった。

 

放浪者は横薙ぎの銀閃をくぐり抜け、俺の首を右手でつかみ、締め上げながら、俺を持ち上げる。

 

 

-筋は悪くねぇんだがなァ-

 

-三つも動いちゃ、当たるもんも当たらねぇわな-

 

 

-三つ……だと…?-

 

掠れた声でつい彼に疑問を投げかけてしまう。

 

 

彼はその疑問を鼻で笑いながら更に俺の首を締め上げる。

 

 

-刀の柄を握って一つ-

 

-その状態から踏み込んで二つ-

 

-終いに踏み込んでから抜刀で三つ-

 

 

-こんだけ動いてりゃ、馬鹿でも避けられる-

 

-なんせ、避ける、潰す、防ぐ、のどれか一つを選べば良いだけだなんだからなー

 

-お前、才能ねぇよ-

 

ーまぁ小細工無しじゃ、テメェはこんなもんだって事だなー

 

ーあばよ-

 

 

そう言いながら、目の前の放浪者は、ヘラヘラとした笑いを浮かべながら左手の魔剣で俺にトドメを刺そうとし、その魔剣を振り上げた。

 

 




主人公が今まで彼と戦って来れたのは、放浪者が舐めていた事と主人公の戦い方が今までの不死には無い戦い方だった為です。


最近噛ませ犬っぽかったですからね彼。


それと、主人公と放浪者の間には絶望的な才能の差があります。


それと、放浪者は奇襲とかの搦め手は使いますが、戦い方その物は才能と努力によって培ったものですので結構まともです。


むしろ主人公の戦い方の方が…。

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