第十四話 攻略開始
俺は先ほどの戦いで弾き飛ばした剣の前に立っている。
てっきり黒騎士を倒した時に共に消えてしまったものだと思っていたが、大通りの出入り口付近に突き刺さったままになって居た。
両手で柄を握り引き抜こうとするが、どれだけ体重を掛けても動く気配は無い。
何かに使えるかと思ったが引き抜けないなら諦めるしか無いな。
改めてこんな物を片手で振り回している彼等の規格外さを思い知りながら粉砕された装備達を直していく。
その際に全損したナイフを見ながら補充しに戻るかどうか悩む。
不死街に到達した際に何気無く購入した物だったが、存外に使い途が多く便利な代物だったのだ。
装備の修復が完了するまで悩んだが、何時またあの竜が帰って来るのかわからない以上、先に不死教区の攻略を済ませたかったので先に進む事にする。
鎧を着込みながら散らばった剣達を拾い、階段を上って行くと、正面には猪の様な物とボウガン兵が二体高台に居てこちらに照準を合わせている。
左には盾と槍を構えた亡者が高台への道を塞いで居た。
高台に向かうため盾の上から横薙ぎに大剣を振るい強引に道を開けさせる。
力ずくで退かされた所為で尻餅を着いた亡者へ大剣を振り下ろし息の根を止める。
高台へと進むが先ほどは猪の影に隠れて居て見えなかった亡者が教会の前にあるレバーを引き鉄格子を下ろし道を遮断する。
その光景を見て思わずため息をつく。
サービス精神旺盛で何よりですこと。
済んでしまった事をいつまでも悔やんで居ても仕方ない。
目の前の亡者達に集中することにしよう。
ボウガン兵の護衛の為かまた槍を構えた亡者が配置されていた。
彼等はガードが固く少々強引に行かないと倒しづらい。
大剣によって力尽くで盾を剥がしてもボウガンの矢が飛んでくるからモタモタして居られない。
火炎壺を取り出し、身を低くしながら槍を持った亡者の横を走り抜ける。
それを阻止しようと彼は槍を突き出して来るが、俺はそれに合わせて火炎壺を投げつける。
直撃を受けた彼は爆炎に焼かれ、もがきながら絶命した。
その様子を横目で確認した後、ボウガン兵達に向かって走っていく。
しかし矢が二本続けて発射され、盾を使うために足が止まってしまった。
彼等は剣を抜きこちらに向かってくる。
俺はそれに対し背中の大剣を抜き剣先を水平より少し下げる。
この構えは地の構えと呼ばれる防御の構えだ。
但し機敏には動けない為に攻撃に向かない。
今回は相手に合わせる為に間合いを大きく取る。
こちらの構えなどお構い無しに彼等は飛びこんでくる。
その剣先を注視しながらそれぞれの剣を弾いていく。
丸腰になった彼等は慌てながら弾かれた剣を拾いに行くがその背中をそれぞれ斬り捨てる。
大剣の血払いを済ませ奥に落ちていた頭蓋骨を拾う。
一見ただの頭蓋骨に見えるが下にいる猪が横目でコレに視線を合わせている。
試しに下に投げてみると猪は頭蓋骨に目掛けて一直線に走り出した。
成る程、コレは誘蛾灯の様な物なのか。
どの程度の敵に効くのかは分からないがかなり使える物だな。
丁度足元に来ている猪の頭へ目掛け大剣を突き刺し一撃で仕留める。
周囲の敵を片付け終わり、鉄格子に閉ざされた教会へ行くために地下へ降りる階段を下って行く。
地下の通路で亡者が俺の姿を確認し奥の部屋に一目散に逃げて行く。
部屋に入る前にふと違和感を感じて後ろへ下がる。
どうにも逃げ方が態とらしく感じたのだ。
だから俺は念の為にボウガンを構え逃げて行った亡者を射殺する。
その後先ほどの頭蓋骨を部屋の中に投げ込む。
すると隠れて居た亡者たちがぞろぞろと現れる。
その数は五体。
どうやら俺の感は当たっていたようで、数にモノを言わせタコ殴りにする算段だったようだ。
大剣を横に構えながら走り、亡者達に向かって横薙ぎの一撃を叩きこむ。
走る勢いをそのままに、身体を回転させるように放たれた一撃は頭蓋骨を中心に集まっていた亡者を纏めて薙ぎ倒す。
強烈な一撃を受けピクリとも動かない亡者達を一瞥し先に進む。
ふと、足元に落ちている鍵が気になり拾って見る。
見たところ、簡易な牢の鍵だろうか。
鍵を仕舞い今の自分の成長に関して頭を働かせる。
今の待ち伏せを何と無くとは言え見切る事が出来たのは自分でも驚きであった。
ここまでの道中の経験が生きた結果なのだろうと思いたい。
とは言っても不死街を抜けただけなのだが、それだけ内容が濃かったのだろうか?
進んだ先にあった梯子を上りながら天辺を目指す。
その最中に昔の自分と今の自分を比べ余りの変わりように思わず笑いが込み上げる。
道中の亡者も難なく処理出来た事から実力もついて来ているのだろう。
梯子を全て上り終わりその先にあった霧を越える。
目の前に見える通路を道なりに進んで行くと階段がありそれを降りて行く。
階段の先には左右へ向かう道があるが見通しが悪く道も狭い。
待ち伏せを警戒し左右を確認すると左には槍を持った亡者が、右には見たことの無い鎧を着た騎士が立っていた。
鎧に関しては他の亡者兵士と余り変わらないように見えるが違うのはその手に持つ武器だ。
右手にはレイピアのような細身の剣が左手には肩にまでかかる大型の盾が握られていた。
先に進むにはここを突破する以外に道はなさそうだ。
大剣では壁に引っかかるので右手で腰の剣を引き抜く。
ソウルから火炎壺を取り出し左手に握り通路に躍り出る。
前後で挟まれた形となるが後ろ手で火炎壺を投げ槍を持った亡者を燃やす。
盾を構え目の前に迫る騎士を見据え行動を伺う。
そんな俺に対して彼は盾の隙間へ突きを放ち始めた。
その剣捌きは速く、そして鋭い。細身の剣だからこその戦い方だった。
しかしこうも盾や鎧の隙間を通すように突きを入れられちゃかなわねぇな
このままだとジリ貧になっちまう
だったら
俺は盾を構えるのを辞め棒立ちとなり相手を誘う。
それにつられ目の前の騎士がすかさず心臓を狙い鋭い突きを放ってくる。
その突きを急所を外すだけに留めて回避する。
胸を貫かれ、喉の奥から血が上ってくるがそんなのを御構い無しに騎士の手を左手で握る。
そうして彼の剣戟を力づくで止めた後、心臓を右手の剣で貫く。
刺さっている剣を引き抜きながら口の中に溜まっている血を吐き出す。
黒騎士見たいな真似は無謀だったか。
エスト瓶で傷を癒しながら先に進む。
左側に階段があり、降りて行くと教会の正面に出た。
ボウガンを取り出しレバーを引いた亡者兵士を射抜く。
レバーを引き鉄格子をあげる。
周囲には鍵とハルバードが落ちていた。
ハルバードは槍の先に斧を付けた物で離れた距離から刺突と斬撃を放てる優れものだ。
そのまま試し斬りと行きたかったが、エスト瓶の中身が心許なく断念する。
とりあえず一旦篝火まで戻ろう。
エスト瓶の中身もあと少しだしな。
俺は手に入れたハルバードを担ぎながらどういう使い方が有るか考えながら篝火まで戻って行った。
黒騎士とかの展開は湯水の様に湧いて来るのに肝心の攻略パートが難産なんだよなぁ。