遂に三桁突入だーい。
第百話 決闘の果て
互いの剣が火花を散らし、両者の身体に生傷が増えてゆく。
不屈の騎士達の決闘は退くことはなく、正面からの打ち合いとなっていた。
状況を変えるため、アルトリウスが盾で不死の騎士を殴り飛ばす。
吹き飛ばされた不死の騎士は光波を放ち、アルトリウスに鑪を踏ませる。
アルトリウスは、その光波を爆風ごと剣圧で消しとばし、彼の次の攻撃に備える。
その隙に不死の騎士は懐へ飛び込み、打ち合いへと再び縺れ込む。
一進一退の攻防、だが不死の騎士は着実にアルトリウスに迫って行く。
一手一手慎重に即断しながら彼の攻撃を凌いでいる彼の神経は今、生涯で最も冴え渡っていた。
聖剣の一閃、刀身に魔力を込めながら振るうことで、接触した瞬間光波が炸裂するようになっている。
爆破の瞬間は任意で選ぶ事が出来るが、その爆風を至近距離で浴びる事となる為に此方もタダで済まない筈。
しかし、不死の騎士の剣は血糊で濡れながら鍛え上げられた剣、今更自分への影響などにたじろぎはしない。
爆風を利用した踏み込み、緊急回避、体勢崩し、状況に応じながら適切な一撃を見舞いながら、遂にアルトリウスの盾を破壊する。
彼のその一撃によって、アルトリウスの闘争心が更に燃え上がる。
両手で剣を握り、目の前の強敵を打倒するために剣を振るう。
振り下ろしから横薙ぎへ、横薙ぎから切り上げへ。
神速の兜割りの三連撃。
剣圧による飛ぶ斬撃。
斬撃の軌道を変える技や神速の剣術を見せ、彼は戦いの流れを奪い返す。
人間だからと甘くは見ない、彼はアルトリウスの生涯において最強とも呼べる男だ。
更に、聖剣の魔力で自分の身体が浄化されていっている、そうなれば彼と決着を付ける前に、時間切れで敗北する事になる。
彼が防戦一方になり始めた瞬間に回し蹴りを放ち、彼の脇腹を粉砕、蹴り飛ばした彼を串刺しにしようと跳び上がる。
これは”決闘”なのだ、そのような片手落ちは認められない。
不死の騎士はアルトリウスが自分を殺すために跳び上がったのを確認すや否や、彼の刃をギリギリまで引きつけてからから、地面に光波を叩きつけてそれを回避する。
だが、アルトリウスもそれは読んでいた。
散々見せ付けられた彼の戦い、肉を切らせ骨を断つ戦い方。
きっとそうするだろうと確信していたからこそアルトリウスは、敢えて彼を蹴り飛ばしたのだ。
爆風による移動術は次の爆発まで一定の溜めがある、だからこそ今が好機。
地面を引き裂くように、突き刺さったままの大剣を引きずりながら彼の身体を切断しに行く。
それはアルトリウスが踏み込む瞬間に起きた。
突如として彼の左目が鮮血に染まり、視界が塞がれる。
その所為で一瞬だけ不死の騎士を見失ってしまう。
アルトリウスの視界を奪ったのは一本の投げナイフ。
それは、不死の騎士が今までの旅路で幾度となく助けられたもの。
元々、彼は何かを投擲して相手の意表を突く事を得意としており、それによって窮地を脱する事もしばしばあったのだ。
視界を奪われた彼の一瞬の隙を突いて、不死の騎士がアルトリウスの懐に飛び込み、肩から腰に掛けてを一閃し、彼の間合いから離れる。
深淵の泥の許容量を超え始めたのか、遂に彼の身体が末端から崩れ始めた。
ークククッー
ー滑稽だぞ、邪神マヌスよー
ー断言しよう‼︎ー
ー貴様は負ける‼︎ー
ーお前が脆弱だと見下していた人間の手によってな‼︎ー
ー我々の勝ちだ‼︎ー
アルトリウスは崩れ落ちる身体を無視しながら高らかに勝ちを宣言し、俺へと向き直す。
ーさあ、決着を付けよう‼︎ー
ー我が最期の一閃、その目に焼き付けるが良い‼︎ー
ー貴公との決闘、実に心が踊る一戦であった‼︎ー
ーこれで悔いを無くして冥土へ行ける‼︎ー
ーそこで存分に語らせて貰おう、貴公の強さを‼︎ー
ーいざ、参る‼︎ー
言うが早いか、彼は一息に踏み込み神速の横薙ぎを放つ。
特別な一撃では無い、しかしその刃には彼の全てが込められていた。
俺は天の構えを取り、月明かりの大剣に魔力を込めて行く。
自分の中にあるありったけの力、それを刃へと収束し、最後の一撃に備える。
聖剣の輝きは深淵の底を照らし尽くすほどの強い光を放ち、辺りの闇を祓う。
聖剣の刃は、迫り来るアルトリウスをその剣ごと両断する。
彼の身体が浄化され、汚染された魂が解放されて行く。
ソウルの粒子となりながらも、深淵の呪縛から救われた彼は、満足気な笑みを浮かべ消滅して行った。
100話のトリを飾るのはアルトリウスでしたね(白目)
案外次あたりで裏汁終わるのかな?