恋ぞ積もりて 淵となりぬる   作:鯛の御頭

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アレ、一月は(;・∀・)?って感じで、季節が過ぎていきます。
そして短いですが、2年生の春休み編ともいえるこの章はサクッとこれで終わりです。南海騒擾編。漢字が読めぬ……。先生のあとがきでみて、初めて読み方知りました。

そしてしれっと連載4年目になりました。感想にお返事できないままですが、これからもどうぞご愛顧ください。

今月は司波達也暗殺事件の2巻が出るので、楽しみです(*゚∀゚)予約ばっちりです。
ただし残念ながら、繁忙期始まりました。4月末まで更新遅くなります。



春休み編
南海騒擾編


 

三月十五日 金曜日

 

卒業式は無事終わり、今年度の行事は残すところ終業式だけとなった。

その二十三日の終業式の後、その日の飛行機で達也と深雪は沖縄に飛び立ち、二十四日に彼岸の法要に出席することになっている。

大亜連合の沖縄侵攻事件から五年になることから、夏に大規模な慰霊祭が行われることになっているため、その打ち合わせで達也と深雪は四葉家として出席することになったのだ。

 

同時期に北山家が久米島沖に建設していた人工島の竣工パーティがあるのだが、二人はそちらにも誘われたらしい。

日程的に余裕があればという話だが、達也は慰霊式への出席以外にも軍から任務を言い渡されたようで、出席できるかどうかは未定とのことだ。ちなみに、五十里先輩や千代田先輩、中条先輩たち3年生は卒業旅行で沖縄に出かけるそうで、五十里家が島の防衛手段の一翼を担う魔法に技術協力していることから竣工パーティにも招待されているらしい。

私も雫から招待されたが、神楽の舞台が控えているので、残念ながら辞退した。今回の私は東京と京都の両方で神楽の公演があるため、春休みは存在しない。

雫も声はかけてみたものの私が忙しいことが分かっていたようなので、あまり気にしていないようだった。

 

「それで、デートについては聞いてもいいのかしら」

 

卒業式の日には、京都から次兄が東京にやってきており、昼間に東京の関係者と神楽の打ち合わせをしていた。

私たちは卒業式の片づけをしても普段より早い帰宅であり、兄も打合せが順調だったので、ホワイトデーのお返しに深雪とデートをしてきたらしい。

 

「いくらお姉さまでも恥ずかしいのですが」

「深雪のことですもの。話したいのでしょう」

 

深雪は唇を尖らせつつも頬が緩んでおり、満更ではないようだ。

 

「ミュージカルに連れて行っていただきました」

「今回の神楽は歌が入るからね。面白かった?」

 

九重神楽には、雅楽だけのものもあれば、詠唱を行うものもある。魔法を行使する楽師や演者の数が増えればそれだけ難易度が増加する。

それとは別に、神楽の舞台は演じる場でもある。表現の幅を広げるため、次兄はミュージカル、歌舞伎、オペラ、歌劇、狂言、バレエなど様々な舞台芸術に足を運んでいる。今は舞台鑑賞が趣味といってもいいだろう。

 

「はい。今まで古典の題材のものしか観たことがなかったので、とても新鮮で楽しかったです。それに夕飯もご馳走になってしまって、少し悠お兄様には申し訳ないです」

「デートらしいデートを挟まずに婚約ってなったから、少しでも恋人らしいことがしたいのではないかしら?」

 

兄も深雪も楽しんでいるなら私が口を挟むことはない。

 

「そのネックレスはバレンタインのお返し?」

「いえ。チョコレートのお返しには、紅茶と花束をいただきました。これは、その……誕生日には一緒にいられないからと、早めの誕生日プレゼントです」

 

深雪の胸元には、華奢な作りの銀のネックレスが光っている。

シンプルなデザインで鎖骨のラインがきれいに見えるし、普段から制服の下につけていても違和感のないデザインだ。

 

「よく似合っているわ」

「ありがとうございます。それで、お姉さまはお兄様からはなにを?」

 

深雪は兄との話題が恥ずかしかったのか、すぐに私と達也のことへと話を変えた。

 

「入浴剤とボディクリームよ。あと今度、深雪も一緒にいちごフェアに行きましょうって」

「まあ、本当ですか」

 

深雪は嬉しそうに両手を合わせて微笑んだ。

 

「お勉強を頑張っているご褒美と、私の潔斎明けにね」

「楽しみです」

 

今は精進潔斎の最中なので、基本的に菜食中心だ。乳製品も肉も魚も食べることができない。

潔斎は今まで何度もしているが、今まで食べられていたものが食べられないのはやはり物足りない。

運動量も多いため、きちんと食べていないと痩せてしまい舞台に立つ体力がなくなる。

たんぱく源は大豆、甘いものは和菓子や果実で補ってはいるが、無性にシュークリームだとかチョコレートのような糖分と脂質が欲しいと感じる時がある。

 

深雪の勉強は、寺社仏閣や九重神宮で祀っている神々についてのことだ。

正式なものは嫁いでからになるが、縁のないところから嫁ぐのだから少しでも知っておきたいと深雪が申し出たため、私が時間をみて話をしている。

九重は家系図をたどれば親戚の数は膨大であり、そちらの家のことまで知ろうと思えば時間はいくらあっても足りない。

まだ神話のさわりの部分だが、神々の名前は現代の漢字とは少し読み方が異なるものもあるので苦戦している。

達也が私の舞台が終わるのを待って、三人でホテルのスイーツバイキングに行くことを提案してくれた。

この時期はどこも苺をメインに取り扱っているので、今からどこに行くか楽しみだ。

 

「でも、この春は忙しくなりそうね」

 

深雪と達也は三月末まで沖縄、四月一日には新入生代表と入学式の打ち合わせ、三日には京都で九重神楽の観覧、七日には入学式だ。

私も深雪もスケジュールは埋まっている。

それにこの春は達也の周りが騒がしくなると兄は言っていた。

軍の絡みなのか、四葉家でのことか、それとも別のことかまでは教えてもらっていない。

嵐の前の束の間の幸せを、甘んじて受けつつも、為すべきことは刻々と迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三月二十五日 月曜日

 

前日の沖縄侵攻事件の慰霊祭は大きなトラブルもなく進み、今日は達也も深雪も予定は空いていた。

今回、達也が沖縄に訪れたのは、慰霊祭が主な目的だが、まだ仕事が残っている。

久米島沖合の人工島の破壊工作の阻止だ。

久米島は国防上、重要な位置にあり、単に北山家が出資したのは利益が見込めることもあってのことだが、政財界の縁が絡んだ国策の一環でもある。

既にオーストラリアの魔法師が沖縄に潜伏していると言う情報があり、昨日も日本側の捕獲部隊が撒かれたことは達也の耳に入っている。

しかし、まだ大亜連合の脱走兵の足取りは掴めていない。そちらの足取りは風間達が追っているので、達也の出番はまだ先だ。

 

達也、深雪、水波の三人は四葉家が用意した高級ホテルのスイートでゆったり朝食をとった後は、石垣島までクルーズと観光をすることになった。

当初の予定では飛行機を利用するはずだったが、四葉の名前に軍が護衛という名目の接待で高速船とついでに案内役を貸し出してくれた。

案内役の国防軍の兵士は達也が沖縄事変で顔なじみとなった者であり、用意した船の性能が良いため波はそれなりにあったが快適な船旅となった。

 

一通りの定番な観光名所を巡ると、日が傾き、沖縄本島へと戻る時間が近くなったが、一行を乗せた車は真珠専門の宝飾店の前で停まった。

予定には聞かされていなかった場所の訪問に深雪は内心首を傾げつつも、土産物らしい土産物店には立ち寄らなかったので、その関係だろうと口を挟むことはしなかった。

 

「司波達也ですが」

「お待ちしておりました」

 

三人が店内に入り、名前を告げると、見るからに上役が出てきて奥の席へと案内した。

店内には店員だけで貸し切りの状態だ。

慣れない空間に挙動不審にならないように努める水波と、困惑しつつも持ち前の上品なお嬢様の仮面を見事につけながら内心同じように戸惑う深雪に、達也は予告すべきだったかと思いつつも用意が整うのを待った。

 

「こちらでございます」

 

店員は机の上に、いくつかの桐箱を並べ、順に蓋を開けていった。

名刺ほどの大きさの桐箱はどれも中に柔らかい布が敷かれ、中に収められた球体の宝石は照明の光を浴びて繊細な光を反射していた。

 

「帯留めですか」

「ああ」

 

桐箱の中身はどれもデザインの異なる真珠の帯留めであった。

真珠の色も白だけではなく、黒真珠やピンク、クリーム色など取り揃えられているだけではなく、台座も真珠に合わせて漆塗りや金属など細かい部分まで意匠が凝らされている。

フォーマルなものから、少し遊び心のあるような動物が真珠を抱えたモチーフまで、真珠という共通点を除けば実に多様だ。

 

「どれもお姉さまによくお似合いだと思います」

 

どの真珠もエクボや照りは一目で高級品だとわかる。

姉へのお土産かと深雪が問うと、達也は首を振った。

 

「いや。これは深雪にと思っていたところだ」

「私にですか」

「ああ。九重家(あちら)では必要になることが多いだろうから、せっかくの機会だ。贈らせてくれ」

 

深雪自身、和装が好きであるため小物も勿論揃えてあるが、実はその中に達也からの贈り物はあまりない。

それも必要に応じて深雪が選んだものもあれば、四葉家の当主候補として揃えられたものもあるため、九重家には持っていくつもりはなかった。

 

「お兄様……」

 

悠との婚約を達也から直接的に祝福されたことはない。

言葉はなくても達也は深雪の婚約に理解を示していることは深雪もわかっていた。

兄から何より大切にされている嬉しさを感じつつも、兄が自分から手を放して姉との幸せを歩み始めるには、自分がまず兄から独り立ちしなければならないと分かっていた。

同時に、悠に対して心臓が高鳴ることを自覚してからは、深雪自身が幸福である道を選んだことに背中を押してほしかった気持ちがないわけではない。

幾億の言葉で飾るよりも、達也の言葉にできない葛藤と祝福がこの贈り物には込められていることを深雪は理解していた。

 

「ありがとうございます」

 

深雪の瞳はきらめく黒真珠よりも美しく、薄く水を湛えて星の揺蕩う夜の海のように輝いていた。

 

 

 

 

深雪がいくつか手に取ってみながら帯留めを選ぶと、達也は店員にラッピングを頼む。

あまり嵩張るものではないため、宅配ではなくそのまま持ち帰ることとなった。

 

「すみません。他の商品を見せていただいてもよろしいですか」

「もちろんでございます。試着もできますので、どうぞ申し付けください」

 

店側が用意したのは、それなりに値の張るものだったが、達也は迷うことなく購入を決めた。

四葉の御曹司が来店するということで店側もそれなりの準備はしていたが、選んだ商品を見れば上客というのは言わなくてもわかる。

 

「深雪。気になるものがあれば、教えてくれ」

「わかりました」

 

すぐさまもう一人店員がやってきて、お多福顔で深雪と水波を案内していった。

席で対応していた店員は帯留めを集め、再度奥に引っ込む。

 

「こちらがご注文の品でございます」

 

二人がショーケースを楽しく眺めているのを達也は感じていると、再度、店員が達也の前に桐の箱を差し出した。

厚さはそれほどなく、達也の手のひらよりやや大きい長方形。

中央より少し上には小さな貝の象形文字の焼き印が押され、ささくれ一つなく磨き上げられている。

 

達也は店員から箱を受け取り、蓋をあける。

中に入っていたのは真珠貝色の光沢を放つ桜の簪だった。

桜の花弁は薄く可憐に立体的に花開きながら、花芯にはエクボひとつない最高級の本真珠が使われており、真珠の周囲を金でできた五つの葯と花糸が支えている。

三つの純白の桜の裏には黒蝶真珠でできた葉が美しさを添え、金の枝が躍動的に伸びている。

それらのモチーフがのせられた扇形の土台は、幾重にも黒漆が重ねられ、黒真珠とは異なる艶やかな光沢を放っている。

 

達也は曇りができないように、店員から渡された柔らかい布で、簪を手に取る。

大まかなデザイン含め達也が事前にオーダーしていたものだが、簪の注文自体は随分と前に考えていたことだった。

 

五年前の沖縄の地は達也にとっても、雅にとっても一つの分岐点だった。

達也にとっては、深雪と雅を危険に晒し、母のガーディアンであった桜井穂波が命を落とす原因となった忌まわしい沖縄事変の地であり、公の場で初めて戦略級魔法(マテリアルバースト)を使った場所である。

雅にとっては、四楓院の名を背負うことになった始まりの場所である。

特別強い思い入れという感情を達也は抱くことはないが、贈り物の一つとして相応しいと感じたことは確かだ。

 

「ありがとうございます」

 

達也は箱に簪を戻して、蓋をする。

 

「ご満足いただけたようで、幸いです。こちらも郵送ではなくお持ち帰りされますか」

「はい、そのようにしてください」 

 

店員は多少心配そうに達也の反応をうかがっていたが、上機嫌で箱をくるみに行った。

心配するまでもなく、一目で文句のつけようのない出来であったため、達也はそのまま会計に移った。

あとは雅のお眼鏡にかなうかどうかだが、そちらの方が落ち着かない気分だ。

なにせこれは大きな決断を示すものになる。

達也自身、大きな緊張をするような可愛い性質を持ち合わせているわけではないが、どうも雅のことになると精神的にいつも通りにはいかない。ただ悪い気はしない。

煩わされているのではなく、これが心が躍るような感情というのか、強いてつたない感情に名前を付けるならばやはり緊張と期待というだろう。

おそらく雅からの返事は達也の予想どおりと思いたいが、こればかりは達也自身が思い通りにならなかったことを経験しているので、絶対とは言えない。

 

「お待たせいたしました」

 

店員が達也の注文した品物を袋に入れ持ってきたところで、深雪と水波も戻ってきた。

 

「深雪、なにか欲しいものはあったかい?」

「今回はお兄様にいただいたもので十分です。それよりそちらはお姉さまにですね」

 

深雪は机の上に置かれた白い紙袋を見て微笑んだ。

 

「正解。次は一緒に来られるといいな」

「そうですね。新婚旅行先として検討されてはいかがですか?」

 

深雪の春を思わせる柔らかな笑みに、達也も自然と頬が緩むのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三月二十六日

 

今年の桜もあともう少しで満開を迎え、穏やかな春の日差しと風に淡い色の花を揺らしていた。ここ数日の暖かさと天気が続けば、あと数日もすれば満開になるだろう。

腕の中にいる小さくて可愛らしい生き物は、光を浴びて揺れる桜色の枝を不思議そうに見つめている。

 

「ご機嫌だね」

 

次兄が手にプラスチックでできた真っ赤なガラガラと音の鳴るをおもちゃを持って近づいてきた。

 

「そのようです」

 

ガラガラを振って見せてやるが、外の方に興味があるのか、一瞥するとまたじっと外を向いている。

まだあまりはっきりと物の輪郭は見えてはいない時期だが、外の方から鳥の声がするので、そちらの方が気になるらしい。

 

2月末に生まれたこの姪は、すくすくと育ち、生まれたころより少しふっくらとしてきた。

しばらく写真でしか姿を知らなかったが、実際に一緒に生活してみると慣れなくて大変なこともあるがたまらなく可愛いらしい。

生まれてから1月ほどなので、人見知りもなく大人しく抱っこさせてもらえるが、いくら実家とはいえ顔を合わせる機会が少ないのですぐに忘れられそうだ。

今は義姉が夜に寝られない分、昼寝をして休んでいるところなので代わりに面倒を見ている。

軽く揺らしながらあやしていると、ピコッとした電子音が近くで鳴る。

 

「なぜ写真を?」

 

兄が携帯端末を私の方に向けて構えていたので、先ほどの音はおそらく端末の写真アプリの音だろう。

実家に戻って数日で私の端末のフォルダも既に姪の写真でいっぱいだが、確実に私も写っていた気がする。

 

「達也に送ってやろうかと。大丈夫、ちゃんと撮れているから」

「送らなくていいです。それより、深雪に連絡入れる方が先では?」

「残念、もう送ったよ。それに僕が抜かると思う?」

「思いません」

 

言うだけ野暮だったようだ。

 

「そんなに心配しなくても沖縄の問題は大したことないよ。大亜連合の脱走兵を摑まえる簡単なお仕事だ。ちょっと豪州からのお客さんもいるようだけど、君らの先輩もいて、大天狗の援護も手厚いなら失敗はまずない」

「そうですが、深雪もいるんですよ」

「それこそ杞憂だろう」

 

兄はいつも通りの穏やかな顔で肩をすくめた。

達也が深雪に脅威が迫ると分かっていて何もしないわけがない。護衛として水波ちゃんを連れてはいるが、深雪自身の魔法力も高いので、並大抵のことで彼女に傷をつけることはできない。それにこの兄が、深雪が傷つくとわかって沖縄に送り出すはずがない。

 

「今は目の前の神楽に集中する方が建設的だよ。そのうちそうも言っていられなくなる状況が来るんだけどね」

「荒れるのですよね」

「達也中心にね」

 

千里眼は全能でも万能でもない。過去、現在、さらに未来まで見通すと言われていても、その眼を持つ者によって過去の因果を探るのが得意な場合や天啓的に未来を透視する者を得意としている者など能力は画一的ではない。

兄は歴代の中でも現在の因果を掘り下げることによって行う未来視を比較的得意としているそうだが、確定的なことはあえて口にしない。

分からないのか、決まっていないのか、決まっているけれども口にはしないのか、家族と言えど何を思って口にしないのかはわからない。

私が不安になることも分かっていて、そうしているので理由あってのこととは理解しているが、気持ちの部分が追い付かない。

 

「雅と達也の関係が無理やり解かれるだなんてことはないからその点は安心していい。ただ、ちょっと身動きがとりにくくなる」

「いろいろ表沙汰になると言うことですか」

「そうだね。達也の場合は持っている名前が多いだろう」

 

私が知る中で、達也が持つ名前は三つ。

魔法科高校の生徒であり、四葉家次期当主候補の司波達也。

正体不明、フォア・リーブス・テクノロジー所属の謎の天才魔法工学技師、トーラス・シルバーの片割れ。

そして、朝鮮半島の軍港を消失させた日本の非公式戦略級魔法師、大黒竜也特尉。

一般的に知られている達也は一つ目だけ。

三つすべて知る者は限られるが、千里眼の異能には見通されていることであるし、四葉家と軍が高度に情報をブロックしていても情報セキュリティの穴をつく魔法が開発されていないとは言えない。

事実、【電子の魔女(エレクトロン・ソーリサス)】の二つ名を持つ響子さんのように、ハッキングに長けた魔法師は存在する。

 

「このことは四葉家には?」

「伝えていないよ。国ではなく、達也の問題だからね」

 

千里眼の異能はこの国の守護のために授けられるものだ。

目的外のものが見えることはあっても目を潰されることはないが、第一は国の守護だ。あとは日々の神事とお勤め。それ以外のことは、すべて雑事と言ってもよい。

兄がここまで話したのならば、私の口から達也に話しても問題ないとは思うが、忠告はあっても抽象的過ぎて何が起こるのかと調べることもできない。

 

「雅」

「はい」

「季節はあと二つだよ」

 

あと二つ。

もし、乗り越えることができなければ許された時間はそう多くない。

 






達也は沖縄の海でほのかが胸押し付けてセクシーアピールしててるときに、写真が届いてやんわりとほのかをどけつつ、写真はきっちり保存していると思うの。


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