風紀委員会……とは学校の刑事的な問題解決を目的とした委員会で学校内でのCADの携帯が許可され(普通ならば所定の場所にCADは放課後まで預けなければならない)学園内では逮捕権も持つ……と、生徒手帳にかかれている。
さて、昼休みももう終わるため生徒会室から恭しく大翔、達也、深雪は退出し、大翔は生徒手帳で確認していた。
「成程、学校限定の警察みたいなものか」
「それも一応入学式の時に説明された筈ですが?」
「………」
深雪に指摘された……
「お前入学式で寝ていたのか?」
達也に聞かれたが寝ていた処かサボってしまったのだが……すると、
「草繋くーん!」
「ん?」
トテテテテテと小さな歩幅で駆けてきたのは……
「中条先輩……じゃなかった、あーちゃん先輩」
「前者の呼び方であってますよ!?」
いや、あーちゃん先輩だろう。
「先に行ってるぞ」
達也が気を効かせて?深雪連れて先にいく。フム、これなら気兼ね無く喋れる。
「まさかあの時のデバイス好きがまさか生徒会役員だったとは驚きですよあーちゃん先輩」
「あの、あーちゃんって呼ばないでいただけると……」
「だけどあーちゃん先輩。怒られませんでしたか?」
「あの、ですから……」
「それであーちゃん先輩。何か御用ですか?」
「……はい、私もあの時に会った二科生の男の子が風紀委員会にスカウトされていたのには驚きましたよ」
あずさは諦め顔になった。
「まああの後会長と言うよりは風紀委員長の渡辺先輩に怒られましたけど……」
「すいませんでした……俺のせいで」
「ううん。私も
あずさは笑う。それから、
「それで風紀委員会に入るんですか?」
「いや、まだ悩んでると言うか俺のような二科生では到底着いていけないと言うか……」
「でも相手の起動式をサイオンで撃ち壊したんですよね?凄いです!クロヒョウは扱いづらいことでも有名なのにそれを使って精密射撃を行うなんて」
「運が良かったんですよ」
「でも運も実力ですよね?」
「む……」
参った……見た目も幼げでどこか頼りない印象を受けるこの少女だがやはり先輩だった。意外とフォローがうまい。
「それで本題はなんですか?」
「ああ、草繋くんとはこれからも是非CADの事を語りたいなぁと思ってまして」
「ああ、それならナンバー交換しましょうか?」
「是非お願いします!」
大翔とあずさは携帯のナンバーを交換する。
「いやぁ~まさか女の子のナンバーが保存されるとは……」
「?草繋くんモテそうですし沢山あるのでは?」
「いや、中学まで一人交換すると次々交換希望者が出てくるんで女子とは交換しないことにしてたんです」
お陰で中学時代に交換した男子が大翔のナンバーを万単位で売りさばき大翔にボコボコにされたあとナンバーの変更をするはめになったのは秘密だ。
「なので俺のナンバー聞かれても知らないふりしてください」
「大丈夫です。私は口が固いですから」
それは物凄く不安だった……
「そう言えば今回のCAD特集見ました?」
「ええ、やはり初期頃のあの重量感と言うか敢えて洗礼されてない感じが堪らなくて」
「分かります!古き良きと言いますかダイヤモンドの原石と言うかあの使えない感じが良いんですよね!!!!!!」
「そうなんですよ!見てみたいんですけど今じゃ国宝状態ですしねぇ……」
「そうですねぇ……見てみたいですねぇ……」
二人はため息をついた。デバイスオタク同士が揃うと初々しい男女の会話などある筈がなかった。
「でもあーちゃん先輩って人と話すときもっとオドオドしてると思ってました」
「あ、確かに特に男の子相手だとこんな風には喋れません。でも……」
「でも?」
「デバイス好きに悪い人は居ませんから!」
これはまたあずさの将来が心配になりそうな事をはっきり言われた……
「それに草繋くん優しい顔してるし何か初めて見たような気がしないんです。デジャヴですかね」
「………」
大翔は眉を寄せた。よく女みたいな顔とは言われるが優しい顔とは初めてだ。
それに会うのは入学式が初めてだ。多分アノ人と自分は顔が結構似てるのでそれでデジャヴを感じてるのだろう。
「デジャヴでしょうね。あ、そろそろ時間なんで失礼します。今度は授業をサボったら洒落になりません」
「はい、では今度は放課後に」
「逃げたいんですけど……」
「多分捕まると思います」
ですよねぇ……と大翔は肩を落としてからあずさと別れた。
さて、午後の授業は実習なのだが(と言うか二科生には教員が着かないので基本的に授業はすべてパソコンを使った通信教育みたいな奴かこのような実習しかない)今日はあくまでレクリエーション的な授業で内容は設置されたCADを使って台車を往復させると言うもの……勿論触れたらダメだ。
だがこれが中々曲者で大翔みたいにサイオン量は多くても基本的に処理能力が低かったり(高い方が魔法の起動が早い)力加減、(これが下手くそだと台車が動かなかったり逆に動かしすぎて失敗する)他にも大翔に限ってはとある事情で体質的に制約の下でしか魔法の発動が出来ないため自然とこう言うのは成績が悪くなる。
(ま、このCADが上手いこと制約の条件にあってるから大丈夫だけどね)
大翔CADの台に手を置く。
同時にサイオンがCADに注入され余剰な部分が大翔の体から漏れ出し体が光る……この余剰な部分が少ない方が制御が上手くいってる証だが大翔のは少し多めだ。
そしてCADに記録されてる魔法式が起動し台車が動き出す。
因みに魔法の力には種類があり、
〔加速・加重〕
〔移動・振動〕
〔収束・発散〕
〔吸収・放出〕
となっている。
更にその反対の力(例えば加速だったら減速の力の事だ)の合計16種となる。まあさらに系統外と呼ばれる魔法等もあるし今言った奴を複合してオリジナルの魔法を作られてたりと魔法は複雑なのだがそれは別に置いておこう。
さて、この台車を動かすには上の奴でいえば〔加速〕か〔移動〕なるのだが大翔は力を台車に向けて〔放出〕する……その結果台車は押されて動く……これは本来のやり方じゃないしもし教師がいたら怒られるやり方だ。だが運良くこのCADには〔放出〕の魔法式が入っていたしこうじゃないと大翔は魔法が発動しないので仕方ない。
「…………」
それでも分かっていたが一応本来のやり方を試す……再度サイオンをCADに注入し……そして、
「っ!」
バチィ!っと頭に激痛が走り同時にCADからも火花が散った。
「大丈夫か大翔!」
レオが驚いてこっちに来た。
「あ、ああ……」
「何だぁ?二科生だと機械も不良品を渡すのか?」
「んな訳ないだろ」
大翔は笑う。そんなわけはない。どんなCADを使おうが同じ結果だ。
これは代償なのだ。だがこうなったことに後悔はないし別に面倒は感じていない……
「大翔」
そこに一通り終えた達也が来た。
「それでお前はどうするんだ?」
達也の口ぶりから考えるに恐らく風紀委員の事だろう。もう少し主語を入れてほしいものだ。
「正直面倒だ……けどさぁ」
「まあ……そうだろうな」
何を言っても今更退かせてくれるとも思えない……それが二人の感想だった。
「どうしたものか……」
「人間諦めが肝心って言うしなぁ……おとなしく諦めるか?」
「お前の口からそんな言葉を聞くとはな。お前が一番ゴネると思っていたぞ」
達也が苦笑いした……
「文句も言うけど諦めも俺は速いんだ」
「見習いたいものだ」
そんな事を言って大翔と達也は半笑いと共に肩を竦めた……