魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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九校戦開幕

九島閣下のイタズラも無事成功した懇親会も終わった日の夜。

 

「ハックション!」

「なんだ達也、風邪か?」

「もしかしたら司波君の噂をしている女の子がいるのかもよ?」

 

と、くしゃみをした達也を見て大翔と五十里先輩は笑う。確かにその頃、深雪を含めた女子たちが懇親会でみた男子達の噂をしていて達也に話になったのだがそれは別の話だ。

 

さて現在この三人は、明日からの九校戦に向けて器材の調整を行うため、技術者スタッフが乗ってきた車にいた。とは言え明日から動くのは五十里先輩だけで達也と大翔はまだ期間はある。しかしあまりギリギリになってやるよりは早め早めにやる方がいいのは言わずもがな……である。しかし、

 

「でも司波君と草繋くんはもう上がった方がいいんじゃないかな?あまり根を詰めすぎると良いことはないからね」

「……そうですね」

 

と達也は立ち上がる。確かに五十里先輩の言い分にも一理ある。早め早めも良いがそればかりやって倒れても仕方ない。だが五十里先輩……あんたちょいと男にしては色気ある笑みを浮かべすぎじゃあ御座いやせんかね?そんなんだから同姓の友人が居ないって嘆くはめになるんですよ……。

 

「ほら、大翔も行くぞ」

「あいあい」

 

大翔は達也に促されながら立ち上がると、五十里先輩に一礼して二人は外に出る。

 

もう日はとっくに暮れてるので気温も大分下がり涼しくなった……過ごしやすい。

 

「いやぁ~お化けの一匹二匹は出そうな雰囲気だなぁ」

「……まぁそうだな……大翔は苦手なのか?」

 

達也の問いに大翔は肩を竦める。

 

「ま、会ってみたいとは言わん。会わんですめばそれでいい。まぁ死んでるのに会ってみたい人間ができたらそう思うかもしれんけどな」

「…………そうか」

 

大翔は達也の返答に、話題の選択ミスったかなぁ……と思った。

 

達也はあまり感情を見せるタイプではないが無感情という訳じゃない。枯れてる……というか……無駄な感情の起伏がない……的な?

 

そんな感じである気がする。なので良く観察すれば達也にも感情がある。今の達也は少し封印しておきたい記憶を思い出させてしまったような表情を僅かに浮かべた(あくまで大翔の勝手な解釈だが……)のだ。

 

「そ、そう言えば、深雪はお化けとか平気なのか?」

「ん?ああ、あいつもあまり得意ではないな。ホラー映画を見たときは俺にくっついてるよ」

(思うにそれは、ホラー映画を言い分けにして達也に甘えてるだけなんじゃね?)

 

という大翔の推論は半分当たっているのだが、余計なことは言わない。氷漬けは勘弁だからだ。

 

「中条先輩はどうなんだ?」

「あの人は絶対駄目だろ……」

 

曰く付きのトイレとか絶対に行かなそうだ。と言うかそういう話だけでも青い顔して震えだしそうだ……って、

 

「なぜそこで、あーちゃん先輩出すんだ?」

「特に意図はない。良く話してるからどうなのかと思っただけだ」

 

シレっと達也は答える。大翔は何か引っ掛かったものの黙っておく。無駄に突っ込むと薮蛇の予感がした……達也だって半分はそう思って言ったのだから強ち間違ってもいない……もう半分は勿論冷やかしもあるが。すると、

 

「………………」

「どうした達也」

「お化けはいないが鼠は出たみたいだ」

「なに?ネズミなんてどこにも……」

 

何て大翔が言っている間に達也は走り出す。

 

「お、おい達也!」

 

大翔もそれを追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、幹比古が怪しい覆面を着けた男たちを木の影から覗いていた……彼が居合わせたのは偶然だ。

 

偶々日課の精霊魔法の訓練を行っていたら、危険な気配を精霊が察知し急いでここに来たのだ。

 

そこにいたのは私たちは危険ですよと言わんばかりの服装をした三人組……幹比古は迷わず札を取り出すとそれを媒体に魔法の構築を行う。だが、

 

「誰だ!」

「っ!」

 

しまったと思っても遅かった……相手に気付かれ銃を向けられる……あと一瞬幹比古が速かったら優位は反対だっただろうが既に後の祭り……そう思った瞬間、何と相手の銃器がバラバラにされたのだ。

 

「なんだと!」

 

相手が驚愕し固まった瞬間を幹比古は見逃さない。そのまま魔法を構築し終えると次の瞬間雷が落ちて三人組の男を倒す。

 

「く、そ……がっ!」

 

一人まだ意識が若干残ってた奴もいたが、そいつは空から降ってきた人影の踏みつけを食らって完全に気絶した……その正体に幹比古は驚愕する。

 

「達也……それに大翔も……」

「怪我はないか?」

 

達也は幹比古のもとに駆け寄る。

 

「一体なにもんだ、こいつらは……」

 

大翔も踏んづけた奴から降りながら、倒れてるやつらを見つつ幹比古のもとに駆け寄った。

 

「大丈夫だよ」

 

達也の問いに幹比古は答えながら二人を見る。こんな状況で達也はいつもと変わらないし、大翔も驚いてはいるが緊張といったのはあまり無いようだ。

 

二人ともこういった危険な状況が初めてではないのは一目で見て取れた。

噂だがこの二人は入学式早々の一件にも絡んでいることは聞いていた。

 

「しかしあれが精霊魔法か……初めてみたぞ」

 

そう大翔が言う。学校では色んな魔法を見る機会があるが、このような余り多様化されない魔法は見る機会が少ない。他にも一族秘伝の魔法なんかも余り見ない……まぁみたとしたってそう言うのはシロヒョウでも真似はできないので意味はそんなにないのだが……しかし幹比古は自虐的な笑みを浮かべる。

 

「でも結局、僕は二人に助けられなかったら命がなかった……もしかしたら僕は……」

「ifの話しなんかしてどうする。幹比古」

「え?」

 

そう口を開いたのは達也だった……そんな達也は冷ややかな眼を向けつつ幹比古に言う。

 

「そんな自分を卑下して何になる……お前はもしかして魔法の発動速度を悩んでるのか?」

「な、なぜそれを……」

「なら安心しろ……お前に問題はない。あるとすれば……魔法式のほうだ」

 

そう言った瞬間、幹比古が眼を見開き達也に吠えた。

 

「何をいってるんだ?君は……これは吉田家が長年かけて編み出した!」

「俺は魔法式を読めるんだ……無理して信じてもらう必要はない。だがこれだけはわかっておけ、お前は自分が言うような男じゃない」

 

幹比古はゴクリと唾を飲む……達也が事も無げにいっていることは嘘とは思えない……だが魔法式を読める?そんなことが……と言う気持ちも強かった……するとパンッおとなしく聞いていた大翔が手を叩いた。

 

「取り合えず警備員を呼びに行かないか?」

 

ぶっちゃけ大翔はこの空間に耐えられなかった。重苦しいしさっさとどうにかさせたい気持ちだったためかそう口にすると、

 

「なら俺が見張っておく」

「僕も一緒に行くよ」

 

そう言って幹比古と大翔は警備員を呼びに走り出した……それから、

 

「特尉……中々面白い同級だな」

「少佐……」

 

突然現れた人物に達也は指して驚きもせず顔を向けた。

 

「ちょうどよかった。こいつらの身柄をお願いできますか?」

「ああ、わかっている……」

 

そう言いながら少佐と呼ばれた男は大翔たちが行った方を見る。

 

「大翔……と言ったか?」

「ええ、それが何か?」

「いや……あの男昔何処かで……」

「子供の頃に?」

「いや、昔あの者に似た面影を持つ男に何処かで会った気がしたんだが……思い出せん……」

 

男がそう言うと、達也も大翔の方を見た。

 

(俺も何処かであいつに似た人を見ているはずなんだが……)

 

とある理由で瞬間記憶力に優れる達也であっても……流石に身近すぎる人物との繋がりに気づくのは……それはまだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スッゲェ人だかりだなぁ……」

 

襲撃から次の日……九校戦の初日はまず真由美がでるスピード・シューティング、更に摩利がでるバトル・ボードがあるためいつもの面子に幹比古も加えて観戦しに来たのだ。

 

そしてまず真由美……彼女の試合は圧倒的だった……圧倒的すぎて説明することが殆どない。あるとすればスピード・シューティングとはどんな競技なのか……くらいなもので、その内容は飛んでくる円盤を指定の範囲内で指定された時間内で壊していくのだ。その際に範囲外に円盤が出てしまったりすればミス……どれだけ早く、そして正確に魔法を発動させられるのかが鍵だ。

 

もちろん真由美は、お得意のマルチスコープを併用しての戦いで、一回もミスすることなく勝負を進め、見た者が十師族の凄さを改めて体感させられる結果となっている。

 

「さすがエルフィンスナイパーの異名を持つ会長さんですね」

 

と言う美月に大翔は思わず、

 

(エルフィンって言うよりデーモン(悪 魔)だけどな……)

 

と、思ったのは余談であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちもスッゴいなぁ……」

 

と言うわけで真由美の次は摩利の試合だ。いやぁ……姉の真由美もすごかったが、摩利は特に同姓からのファンが多く最前列の方では……。

 

『キャー!摩利さまー!」

 

ってな感じでファンクラブが陣取り、絶叫にも似た叫びが支配していた。

 

「まぁ渡辺先輩かっこいいしなぁ」

「そうかしら……」

 

大翔がそう言うとエリカがムスっと答える……相変わらずなぜか毛嫌いしており、大翔には訳がわからない……まぁあまり突っ込むのも野暮かと思ってる間に試合が始まった。

 

バトルボードとはボードの上に乗って水の上を走り順位を競うレースだ。常にボードに移動や加速魔法を調節しながら掛け、細かい調整が必要なので高い難易度が必要な競技である。

 

勿論、他の選手に魔法による攻撃は行えないが水面への干渉は可能……なので、

 

「あ!」

 

突然の巨大な波……成程、その波で他の選手を足止めしつつ、その波を使って自分の加速に使うのだろう……。

 

まぁ、中々良い作戦だ。勿論、自分で行ったそれで自滅してなければの話だが……。

 

「渡辺先輩が前に出たぞ!」

 

大翔がそういっている間に、逆に相手の波を味方につけた摩利は一気に前に出た……そして二位以下に圧倒的な差を着けてゴールした。

 

「凄かったな……」

 

大翔が達也に言うと達也が頷く。

 

「いくつかの魔法をマルチキャストしていた……並みの高校生の実力じゃないな……」

 

そう達也が言うと大翔も頷く……今彼女は自分とボードの位置を固定し、そのままそれごと移動の魔法を掛けていたのだ……複数の魔法を掛けていながらの相手の妨害すら軽く躱す操作能力。

 

達也は並みの高校生の実力じゃないと言ったが実際は理解している……大翔も分かっている……彼女もまた並みの高校生どころか、第一線で活躍する魔法師に匹敵する実力者なのだと。

 

(そりゃここのところの九校戦は第一高校が優勝するわけだ……)

 

と、大翔は思った。真由美に摩利に更に十文字……この三人だけでも化け物級……このままあとは新人戦も何事もなく進んで結果を残せば、今年も優勝を十分狙えるだろう。

 

無論……そんな大翔の思いも後に壊されるのだが……それはもう少しあとの話だ。




いやもう九校戦の内容は難しい論理とか色々出てきてるんでそのへんカットしました。そしたらかなりあっさりとした感じに……まぁ仕方ないか……

それにしたってお兄様マジ完璧すぎて大翔の影薄くならないようにするのがけっこう大変……個人的に達也は最強のお兄様ですからね……大翔が凄すぎて達也の影が薄くなるのもおかしいしかといってその逆も……って感じでやってます。いやはや……

更に少しずつ書いてる弊害?で前半と後半で微妙に変化が起きていると言うね……まぁ仕方ない。この作品はチビチビ書いていくのがちょうど良いと思ってます。

そして十九巻……実はまだ読んでないっす……嫌なんかすごい衝撃的な展開がとか友人から言われましたが勉強とかその他もろもろ忙しくって読んでません……そんなすごい展開があるのか……

と言うわけでまた次回!次回はもう少し早めに更新したいですね……ではでは……

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