魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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事故

「しっかし狭いなぁ……」

「これだけ機材を載せてるんだ……仕方ないだろう」

 

現在大翔たちはバスに揺られながら九校戦開催地を目指していた。

 

だが大翔たちが乗るエンジニア用のバスは機材が載せられているため狭いったらない。まあ後ろで五十里先輩の隣に座る達也の言う通り仕方ないのだがそれでも文句の一つくらい言いたくなる。

 

「まぁまぁ大翔くん。あ、お菓子食べますか?」

「頂きます」

 

そう大翔の隣に座るあずさは言うと袋をだす。

 

「何がいいですか?カシューナッツとピーナッツとアーモンドとクルミとひまわりの種と……」

「…………じゃ、じゃあアーモンドでお願いします……」

 

はい、とあずさからアーモンドの袋を渡されポリポリ食べる……何故豆系のお菓子ばかり?いや……美味しいんだけど……

 

何て考えつつあずさを見るとカリカリひまわりの種をかじっていた……ふむ……似合うな……思わず抱き締めたくなってしまう愛らしさがあるもののそれをやったら自分の行き先は九校戦開催地ではなく問答無用で警察署になってしまうのでしない……

 

「それにしても選手団のバスってでかいよなぁ……」

「そうだな……それにしてもバスの一角が何故か怨念を発しているように見えるんだが……」

「確かあの辺りにいるのは千代田先輩じゃなかったっけ?」

 

大翔と達也の会話を聞いて五十里先輩は苦笑いした。

 

「これは後でフォローかなぁ……」

「大変ですねぇ。彼女がいるってのも」

 

と五十里先輩の呟きに大翔が言うと先輩は笑う。

 

「そんなことないよ。こっちも楽しんでるからね」

 

さらっと惚気られて大翔の方が照れ臭くなった。

 

「ふふ、中条さんから聞いてた通りの感じだね」

「むぐぅ!」

 

と、五十里の言葉にあずさは喉にナッツを詰まらせた。大翔は慌ててあずさの背中を叩きつつ、

 

「あーちゃん先輩から……ですか?」

 

と大翔はあずさを見る……あずさは顔が真っ赤になっていた。

 

「うん。話したときにかなり高い確率で君のことが話題に……」

「も、もうダメです!」

 

とあずさは慌てて五十里の口を塞いだ。あまりの速さに大翔は吃驚眼になった……自己加速式使っていないよね?と疑いたくなってしまった。

 

「そう言うことか……大翔も角に置けないな」

「はぁ?」

 

大翔は達也の言葉に疑問符を飛ばす……まぁ良い。取り合えずあずさにどういうことだか聞けば……

 

『――っ!』

 

と、思った次の瞬間バスに急ブレーキが掛かる。無論その際に生じる力で一応固定してあったものの機材が崩れた……

 

「なんだ!」

 

大翔は慌てて窓を見る……するとそこには同じく急ブレーキを掛ける前を走っていたバスとそこに向かって何故かガードレールの上を飛び越えてスリップしながら突っ込んでいく車が見えた……

 

「ちぃ!」

 

大翔は咄嗟にクロヒョウに手を伸ばしたが止めた。何故なら既にバスに突っ込んでいく車には恐らく前のバスに乗っていた選手たちの魔法が多数かけられていた……これではキャストジャミングと同じ状態でここまで力が乱立した状態ではシロヒョウを使っていない状態ではまず効果は望めない……と言うか大翔以外だってそうとう事象干渉力が高くないと無理だ。だが次の瞬間……

 

「な……」

 

すべての魔法式が吹き飛んだ……まるで大砲で吹っ飛ばしたかのように消し飛ばしたのだ。そして突っ込んでいった車は火が消え(これは深雪の減速魔法だろう)更に恐らく十文字会頭のファランクスが展開し車はグシャグシャになりつつもバスに突っ込むことなく止まった……つまり突然の事故は怪我人がゼロと言う結果になったのだが……

 

「達也お前……」

 

他の面子はバスの方を見ていて気づかなかったが大翔は偶然見ていた。達也がサイオンの塊を作り出しそれを砲弾のようにうちだしたのを……間違いなく今のは術式解体(グラムデモッション)……現代魔法において最高難易度の無系統魔法でありその正体はサイオンをそのまま打ち出し相手の魔法式を吹き飛ばすと言う至極単純なものだが対魔法式において他の追随を許さない。

 

何故ならサイオンのままと言うことで障害物は意味をなさないしあらゆる魔法での障害もそれごと吹き飛ばす……弱点と言えば射程距離くらいなもので対抗策が存在しない。だがその反面一流魔法師が一日かけても絞り出せぬほどのサイオン量を一気に消費するため使い手が少ないのだ。

 

無論大翔は術式解体(グラムデモッション)を使えない。他者より比較的サイオン量には恵まれた方だがそれでも術式解体(グラムデモッション)を使うには雀の涙程度にしかならない。そんなのに達也は顔色ひとつ変わってない……こいつどんだけサイオン量に恵まれたんだ……

 

「大翔……事故現場を映像に残しておこう」

 

達也はいったので大翔は黙って従う。暗に今のは見なかったことにしてくれ……と言っているのだろう。まあそれくらいは気付く……まぁ、術式解体(グラムデモッション)が使えるってだけでも面倒が起きるしな……ここは黙っておくのが優しさだ。

 

「じゃあ俺と達也は事故の映像と一応前の安否を見てきます」

「あ、じゃあ私たちで機材の検査をしておきます」

 

あずさに言ってから大翔たちは車を降りた……渋滞になっているが仕方ないだろう。

 

「気づいたか大翔」

「突っ込んできた車だろ?」

 

大翔が答えると達也は頷く。

 

「明らかに可笑しかったしなぁ……スリップくらいでガードレール越えるかって話だよ……」

「あぁ……恐らく魔法をかけた自爆テロと言うところだろう」

「しかしまぁ……狙いは間違いなく九校戦の選抜メンバー……」

「ああ、恐らく俺たちを九校戦に出したくない連中がいるんだろうな……」

「また事件かよ……これ以上面倒なことが起きなきゃ良いけどな」

「そうだな」

 

そんなやり取りをしながら二人は安全確認や事故現場の写真撮影を警察が来るまでにしておいた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

「ち、失敗したか……」

「このままでは一高の優勢だぞ」

 

ある場所では複数の男たちが話し合っていた……

 

「今回は高い技量を誇る魔法師に十師族までいる……このままでは一高の優勝は固い……」

「だが一高に勝たれれば今季の納金に穴が出るぞ」

「そうなれば私たちは消される……」

「消される……だけですめば良いが……」

 

沈黙が部屋を包む……すると一人が口を開いた。

 

「安心しろ、今回はプロに頼む」

「プロ?」

「ああ……そろそろ来るはずだが……」

 

そう呟いた次の瞬間……

 

「呼んだかい?」

『っ!』

 

突然の声にその場に集まっていた男たちは驚愕して椅子から落ちそうになった。

 

「お、お前が……」

「ふぇふぇふぇ……はぃ、この度は我ら【劇団】とのご契約……誠にありがとうございます。この度演出をさせていただきます……まあ【謎の老婆】とでも呼んでくだされ」

 

皺くちゃの顔の自称【謎の老婆】はにたりと笑う。

 

「そ、そうか……では頼むぞ……だが可能なのか?」

「可能ですわい……一件堅牢に見える九校戦でございますがその実案外穴だらけ……隙の突きようは腐るほどありまする」

 

ふぇふぇふぇ……と芝居掛かった笑いを【謎の老婆】はする……その不気味さに男達の背中には冷たいものが走った……

 

「それでまず何をするきだ?」

「単純でございますよ、選手を潰す……標的は彼女でありましょう」

「渡辺……摩利だったか?」

 

写真を見せられ男は答えると【謎の老婆】は頷く。

 

「情報では彼女は波乗り以外にもミラージュ・バットにも出るとのこと……であれば彼女一人潰せばそれだけで一高は不利でございます」

「だがどうするきだ?まさかお前が魔法でも放ってくれるのか?」

「そんなまさか。今回の契約内容は作戦の立案およびそれのアシスト……実行者はそちらから出していただきます。とは言え勿論どうするのかはここで説明いたします」

 

そう言って【謎の老婆】は何かを出した。

 

「これを使いCADに細工なされよ」

「これは……?」

 

男は目を開いた……

 

 

陰謀の芽が膨らんでいた……




今回は移動だけでしたね……次回から開催地でのお話です。

そしてまたまた登場【劇団】……一章に登場した奴とは勿論別人です。そしてこいつらは契約重視なので作戦の立案といわれれば手を汚すことはしません。勿論そう言った依頼ならそれに則りますがね。

そしてあーちゃんのおやつは分かる人には分かるネタ……ネタばらししますと《魔法科高校の劣等生 lostzero)って言うアプリゲームのネタです。

因みにそれではキャラクター人気投票が行われました。私?勿論あーちゃんにず全て投票しました……でも一位は雫でした。私の眼からも涙と言う滴が落ちました←(全く上手くない)

やっぱり雫ファンは強かった……因みに私はそのゲーム内では大翔って名前でやってます。もしやっている方がいてその名前を見つけたら私かもしれません。

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