テスト明け
「ん?皆どうしたんだ?」
ブランジュとの一戦も過去になってきたテスト明けの日……達也は教務室から出てくると何時ものメンバーと言って良くなりつつある皆が待っていた。
「どうしたって言うかお前こそ何で呼び出し食らったんだよ」
後ろで縛った長髪を揺らしながら大翔は尋ねる。
「今回の実技で手を抜いたんじゃないかって聞かれたんだ」
『えぇ!』
大翔を含めた皆は驚く。
「おいおい。幾らなんでもそりゃねぇだろ」
「ま、この野獣と一緒の意見って言うのは癪だけど同じ意見ね」
「あ?」
バチバチと火花を散らすレオとエリカをスルーしつつ美月は話を進める。
「でも先生の疑いも少しわかる気がします」
「そうですよね。だって達也さん理論では二科生処か一科生もぶっちぎってのトップですもんね!」
興奮気味で話すのは入学そうそう一科生との喧嘩になったあと深雪を通じて親しくなった一科生の光井 ほのかと、
「実技と理論は別と言っても限度がある」
同じく一科生の北山 雫である。
「さすがお兄様ですね」
兄の名誉は私の誇りであると言わんばかりに兄に向けるよりも恋人に向けるような視線を向ける深雪を見て達也は苦笑いする。
「だが理論は大翔だって四位だろう?しかも三位とは1、2点しか違わないときいたが?」
「いや~、最初の論文形式のやつが何か書いても書いても納得いかなくて時間掛けた挙げ句に最後の方まで解けなかったんだよなぁ」
問いは【CADの長所と短所及び必要性】だったのだが大翔は貰った回答用紙の入りきらないほどの答えを書いた挙げ句に問題を残りを殆ど書けない内に終わってしまった。
だがそれでも高得点を叩き出しているのだからそういう意味では書いた内容はとてつもなく良かったのだが高校生らしくない専門用語をバンバン使ってるので採点した先生が頭を痛くしたのは余談である。
「でも実技では深雪がトップだったよな」
「はい」
大翔の問いに深雪は嫌み何て一㎎もない笑みを浮かべて答えた。
無論言うまでもないが実技では達也と大翔はビリっけつとまでは言わないが後ろからの方が圧倒的に早く名前がわかる順位だ。
「まさに文武両道って奴だよねぇ~」
エリカが言うと深雪は照れ臭そうに笑う……すると達也がふと何か気づいたような表情をした。
「そろそろ移動しよう」
そう、この面子はよく目立つのだ。
深雪は言わずもがなでエリカもさばさばした性格の美女で美月も普段は影が薄くなりがちだが小柄な体格とはうって変わってその豊満なボディと何となく守ってあげたくなるお淑やかな性格で男子から高い人気を誇る。更に雫は少々愛想がないが可愛い系の美少女だしほのかも少し思い込みが激しいがそれくらいなら特に気にならない程度でしかない美少女……
男子であれば高身長で肩幅もあるレオ(大翔と達也も成長しているがまだこいつには勝てない)は普段エリカに野獣等とケチョンケチョンに貶されているが堀の深いゲルマン系の整った顔だ。お陰で少し気になるクラスの男子の地位を獲得している。
そして大翔だが彼は少したれ目でパッチリした眼に綺麗な黒髪を後ろで縛って174㎝と若干成長した背丈に引き締まった体で一科生二科生問わずにモテるし実は既に何回かコクられているのだ。まあ全て恭しくお断りを申し上げているのだが……
そんな中での達也だが……見られない面ではない。身長も無事に延びて176㎝と大翔を抜いてるし体も鍛えている。寧ろ上中下でやったら好みによるが上にいけるかもしれない。だがそれでも周りに居るのがずば抜けた容姿の持ち主ばかりで上中下どころか特上ばかりである。
まあそれでも風紀委員の活躍により達也も十分目立っているが本人にその気はないと言うのが本当はあるのだがそれは別の話である。
そして何時ものメンバーで何時ものカフェテリアでお茶をする。
「そう言えば深雪遅れてきたけど何かあったの?深雪なら一番最初に来ると思ったんだけど……」
「少し会長に呼ばれてたのよエリカ。ってまるでお兄様のためなら何もかもほっぽりだして来るような言い方はしないでちょうだい」
深雪としてはそんな無責任なことをして達也に怒られたくないと言うのが真実だが周りからは兄の危機なら「シュワッチ!」と言う掛け声と共に宇宙の果てからでも飛んできそうな妹なのでエリカみたいに思うのは仕方ないだろう。
「そう言えばもうすぐ九校戦だったな」
大翔の言葉に深雪と達也以外が思い出した表情だ。
九校戦(正式名称【全国魔法科高校親善魔法競技大会】)と全国で九校ある魔法科高校が一同に介して行われる大会である。
例年富士演習場南東エリアで行われそれぞれの学校がプライドと名誉をかけて行われる祭典。
競技は全部で男女それぞれのが四つと男女で完全に分けられている競技の二つで合わせて六つ。選手は一年生のみの新人戦とそれ以外の本戦に出場し掛け持ちは2つまで可能だ。
だが学校の名誉がかかっているため人選が非常に厳しくなっている。どれくらいかと言うと選手や裏方である技術者に選ばれてしかも結果を残せばその後の魔法師としての人生は安泰になると言われるくらいだ。
優秀な魔法師はそれくらい貴重だと言うことだろう。
「まあ実技では学年トップの深雪を放っときはしないか」
「そんなことはないですよ大翔さん」
深雪が謙遜する。下手すれば嫌みにも見えるかもしれない行動だが深雪がやると嫌み処か絵になりそうな笑みだ。
まあ深雪の才能は嫉妬しても意味がないほど隔絶した才能であることは既に周知の事実。無論大翔も力を隠しているわけだから実力差と言う点においては未だ分からないが深雪もまだまだ本気は出してないしそれを差し引いても深雪と戦いたいかと聞かれれば絶対にNOである。
「そう言えば九校戦に選ばれるのって何人だっけ?」
「確か新人戦の選手が男女で十名ずつ……本戦の選手が男女で四十名ずつ……裏方の技術者スタッフ八人と作戦スタッフ四人の総勢六十二人だな」
エリカの問いに達也が答えた。
「ま、俺達二科生は応援するのが精々だろうな」
「確かにな。俺たちに選手だのスタッフなんて言うのは関係ない話だ」
そう大翔と達也は言う……だが後に知った。少し考えればこれは所謂フラグを建ててしまったと言うやつだったのだと……