魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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つかの間の平和

大翔の見回りは次の日から激務へと変わった……何故なら行く先々で事件事件事件……薬を飲んで子供になってしまった高校生探偵もビックリの事件遭遇率である。

しかも相当嫌われたらしく……

 

「風紀委員会だ!喧嘩をやめろ!」

「え?」

「大翔君!」

「っ!」

 

魔法の喧嘩を止めに入れば誤爆と見せかけて大翔に向かって放ってくるのだ。一緒に回っているあずさがその都度顔を青くするが持ち前の反射神経で躱す。

とは言え躱してから見てみれば既に喧嘩してたやつらは仲良く逃走してるのだから余り意味がない。いっそのこと当たって訴えた方がいいんじゃないかと真剣に思う。体は頑丈なのだ。

 

「またかよ……」

「これじゃあキリがないですね……」

 

大翔とあずさは大きなため息を吐く毎日が続いた……

 

 

 

まあそんなことが一週間も続いたが取り合えず大きな怪我もなく過ごし気付けば勧誘期間も終わって平和な日々に戻った。

 

「お疲れ達也」

「お前もな」

 

達也も同じような目に会っていたらしく首を回す。

 

「でも今日は非番だろ?」

「まあな」

「お疲れみたいだね二人とも」

 

エリカがニュッと顔を出す。

 

「毎日誤爆に見せかけられて結構本気の魔法を撃たれまくられればな」

「我ながら良く生き残ったもんだ……」

 

大翔と達也は肩を竦める。

 

「何でも二人は反魔法団体からの刺客らしいわよ」

「誰だそんなことをいってるのは……」

「あたし」

『おい!』

 

二人はエリカに突っ込んだ。

 

「でも明日からCADの携帯禁止期間が復活しますから大丈夫だと思いますよ?」

「それなら良いんだけどな……」

 

後々思えば……所謂フラグって言うやつだったのだろう……少なくとも平和何て水に濡れた紙より脆い地盤の上に立つ牙城だったのだからな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りから更に次の日……

 

「そういえば達也くん」

 

ここ最近は生徒会室で昼食をとる。メンバーは大翔、深雪、達也一年生と真由美、摩利、そして上級生の数のバランスが悪いとかでクラスメイトと食事しようとしてたところを真由美と摩利にドナドナ(誘拐)されたあずさである。

まあそれを言ったら男が二人しかいないだろと突っ込みたかったが真由美に言っても暖簾に腕押しだ。

更に現在ダイニングサーバーは大翔とあずさしか使用していない。

摩利は弁当だしそれを見た深雪が達也と共に弁当を作り……そしてそれを見た真由美が何をとち狂ったのか弁当作ってきたのだ……見た目は安全そうだ。だが良く見ればわかるが齧る度に苦い顔をする。失敗したみたいだ。

まあ大翔も料理は苦手で一度ポイズンクッキングを作って3日寝込んだ事があるので余り言えない。

 

「何でしょうか委員長」

 

達也が弁当から顔をあげる。

 

「二年の壬生を言葉責めにしたと言うのは本当かい?」

『っ!』

 

達也は箸を落とし深雪が氷像のように固まり大翔は驚いて喉に詰まらせあずさが慌てて水を渡す。

 

「年頃の淑女が言葉責め何てはしたない」

「はっはっは!私を淑女扱いするのは君くらいだ」

「自分の彼女を女扱いしないとは委員長の彼氏は紳士でないのですか?」

 

そう、摩利は彼氏持ちだ。しかも年上で真由美に聞いた限りは相当イケメンらしい。

さて、達也の返しに摩利は慌てて、

 

「そ、そんなことはない!シュウは……」

 

そこまで言って止まった。急ブレーキみたいに一気に止まった。

顔は赤いし何かソワソワ……

 

『プクク!』

 

そんな様子がおかしくて大翔が笑う。摩利の隣に座っていた真由美も同じタイミングで笑った。

 

「……」

 

ジロっと摩利は真由美と大翔を睨む。

だが二人の関係を知ってるあずさは内心こう言う時にタイミングが合いすぎるためこう言うところでバレてしまうんじゃないかとヒヤヒヤしている。

 

「……で?言葉責めしたと言うのは本当かい?」

 

奥義・【無かったことにする】を摩利は使った。達也もこれ以上押し問答しても意味がないと判断したのか苦笑いしつつ、

 

「そんな事実はありません」

「だが壬生が顔を赤くしたりしていたと言うのを聞いたのだが?」

「それは……っ!」

 

突然部屋の温度が急降下する……更にお茶に氷がはり昼食が凍る……序でに大翔は凍えそうになった。誰の影響下なんて大翔と達也はすぐわかった。自分達に挟まれるように座る美少女……

 

「深雪、落ち着け。ちゃんと説明する」

 

達也が深雪を宥める。すると温度が戻っていく。と言うか軽く霜焼けになった……

 

「壬生って誰だ?」

 

取り合えず空気を変えようと話題を大翔は作る。

それにしてもCAD無しに加え感情の高ぶりだけで深雪の魔法が軽く暴走しかけていた。高い才能がなければ不可能な現象だ。

 

「一応先輩だ。お前も見ていただろう?剣術部の桐原先輩と戦った人だ」

「あ~」

 

あの美人さんかと大翔は納得する。

 

「昨日あの人に誘われたんだ。剣道部に入部しないかとな」

「成程、確かに君は高い武術の素養があるようだしな。大翔君には?」

「来たと思います?」

「思わないな」

 

大翔の戦い方は喧嘩だ。荒々しく身体能力任せ……なら武術の素養がある達也の方を誘うだろう。

 

「そこで聞いたのですが……」

 

達也が口を開く。

 

「風紀委員は自分の点数稼ぎのために二科生を不当に捕まえてると聞いたのですが?」

「それはない。風紀委員は別に逮捕数で評価は変わらない。壬生の勘違いだろう」

 

摩利が否定するが真由美が、

 

「でも高い権限があるのも事実よ?多分情報操作してる人間が居るのでしょうね」

「心当たりが?」

 

達也が聞くと真由美は慌てて首を横に振る。

 

「う、噂よ?そう言うのが校内にいるって……」

「そう言うことを聞いてるんじゃありません……その後ろにいる者、例えば反魔法国際政治団体・ブランシュとか?」

『っ!』

 

真由美と摩利の表情が強ばる。

 

「何でその名を……情報規制が敷かれてるのに……」

「例えどんな規制を敷いてもそのうちバレます。全てを隠すのは不可能ですよ」

 

達也が真由美の言葉に答える。

 

「反魔法国際政治団体・ブランシュねぇ……」

 

大翔とあずさは初めて聞く名前だった。

とは言え反魔法国際政治団体と言えば魔法師を人間とは別の何かと思って排斥しようとしている過激団体が多い。

少なくとも平和な団体と言う事は無さそう(情報規制されているし)だった。

 

「それだと言うのに未だに国は存在を否定して隠蔽している。汚いやり口です」

 

そう達也は切り捨てた。

 

「そうね……そうやって国は面倒なことを隠して正面からの対峙を避けているわ」

「ですがそれは生徒会長が気にすることではありません」

「え?」

「ここは国立の学校で貴女はここの生徒会長です。国の方針に従うのは仕方ないことです」

 

そう言って達也は慰めた……まあ達也としては事実言ったまでなのだろう。

だが、

 

「な、慰めてくれるの?」

 

真由美はお気に召したらしく頬を染め俯く……有り体に言って照れてると言うかときめいてる。

自分の姉が友人にときめいてるシーン等見たって何も面白くないので大翔は氷が薄く張った食事に視線を落とす。

 

「で、でも会長を追い込んだのも司波くんですよね?」

 

あずさが言うと摩利が楽しそうに、

 

「自分で追い込んで自分で誉めるか……中々のジゴロだな!真由美も籠絡されてるし」

「ちょ!なに言ってるのよ摩利!」

 

我に反撃の刻来たりと摩利が真由美をさっき笑った仕返しとばかりにからかい出す。

一瞬大翔を真由美は見て助けを求めたが、

 

(頑張れ!)

 

口パクで応援だけして食事に戻……って、

 

「ジゴロ……ですか?お兄様は……」

「さっむ!」

 

先程の気温低下とは比べ物にならない程の急下降……犯人はさっきと同じ深雪だ。だが隣にいる大翔は冷気を強く感じる羽目になるため……

 

「ね、眠くなってきた……」

「は、大翔寝るな!死ぬぞ!そして深雪も落ち着け!」

 

達也が慌ててフォローにかかるのを大翔は遠くなっていく意識の中で感じた……

まさか春麗かな日の昼休みの室内で遭難及び凍死仕掛ける羽目になるとは……大翔は想像もしてなかった(当たり前だ)……


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