魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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乱闘

草繋 大翔と司波 達也……この二人の二科生の剣道部と剣術部の喧嘩の乱入……端から見れば特異に見える光景だった。

まず剣術部の面々は全員一科生である。魔法を併用するから剣術なのだから魔法の実力が高い一科生しかいないのは当たり前だ。そして一科生と二科生の喧嘩……まあまず魔法に限定すれば喧嘩にならないだろう。

それだけ一科生と二科生の間には隔絶した差がある。

そして純粋な戦闘能力の差を考えれば魔法を併用するとはいえ剣を修める部だ。低い筈はない。

ここまで考えれば大翔と達也は絶望的だろう。

だが現実は……

 

「この!」

「……」

 

あるものは達也に避けられる……

 

達也の極限にまで洗練された動き……その動きはまさに磨き抜かれた宝石だ。

無駄は一切なく……余分な力は完全になく……そして一流の芸術家が作り出したように美しい……

あらゆる方向からの攻撃は全て達也に届くことはなく見抜かれ見透かされ躱されて同士討ちになっていく。まさに武術の体現者だ……

 

「邪魔だ!」

「ぶっ!」

 

あるものは大翔に殴り飛ばされる。

 

達也とは対照的すぎる動き……洗練と言う言葉とは水星と海王星位離れた場所に存在する動き……磨かれてなんかいない原石のような雰囲気……見ての通り高い身体能力に任せた喧嘩殺法だ。

眼に入ったやつを殴って蹴って投げ飛ばす……一見鍛えてるようには見えないが動きを見る限り相当鍛えてることがわかる。

 

同じ二科生で同じクラスで背もさほど差はない。だが戦いかたが違いすぎる。

例えるならば陰と陽……静かだが実践的で鮮やかで昇華された動き……派手で大雑把で昇華処か退化みたいな動き……だが共通点としては誰もが眼を奪われた。

達也の人間離れした美しい動きに、大翔の不器用で人間臭いが親近感抱かせる動きに……

 

「喰らえ!」

「ぐっ!」

 

大翔は顔を殴られたが……

 

「いてぇじゃねえか!!!」

 

逆に頭突きををいれて意識を刈り取った。

 

「くそ!」

 

剣術部が遂にキレたのかCAD起動させ起動式を……

 

「あぶね!」

 

変換される前に大翔がクロヒョウを抜いてサイオン弾を使って撃ち抜く……

 

「ぬぉ!」

 

サイオンの操作は前に紹介した16種のどれにも当てはまらない無系統魔法に属されこれであれば例外のひとつであり大翔でも比較的使える。

 

「くそ!」

「なら!」

「っ!」

 

今度は後ろにいた二人だ……流石に反応が間に合わず今度は喰らうかと身構えたところに突然の揺れを感じる……

 

『が……』

 

剣術部が倒れる……序でに大翔も平衡感覚狂ってぶっ倒れた……

 

「あ、すまん」

「すまんじゃねえだろ……」

「は、大翔くーん!!!」

 

達也は大翔に謝るが大翔はグルグル回る世界の中であずさの声を聞きながら達也を睨み付けた……

その為達也も大翔も気づかなかった……

 

「ふむ、あの新入生の片割れは面白いな」

 

眼鏡をかけた男が達也を注視していることに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……そう言うことか」

 

摩利が同姓からモテそうな(実際モテる)キレのある表情を浮かべる。

 

「桐原は大丈夫なのか?」

「鎖骨が折れただけです」

 

今の時代、鎖骨骨折位なら魔法であっという間に治せる。

 

さて、現在大翔と達也は摩利と真由美とあともう一人ある人物に今回の一件の事情説明をしていた。

とは言え説明することと言えば突然口論になって突然戦いはじめて高周波ブレード使いだしたので止めたら集団で襲い掛かられただけなのだが……

 

「本人は反省してますしこれ以上処罰は必要ないと判断します」

 

達也の言葉に大翔も頷く。

桐原は保健室に連れていくと先程とはうってかわり項垂れていた。大翔と達也の二人も何となく自分達の預かり知らぬ事情があるのだろうとは思ったがそこは知ったことじゃないし校則を破っていい理由ではない。

だが同時に相手も反省してるし相手の女子だって喧嘩を買ったのだ。ここは喧嘩両成敗と言う形で十分だろう。

 

「しかし剣術部相手に二人で大立回りとは九重先生の弟子である達也くんなら分かるが大翔くんも中々出来るようだな。一回私とやってみないか?」

「いや勘弁してください」

 

かっこいい顔で誘われたが勘弁してもらいたい限りだ。真由美から聞いたが(昨夜の長電話で……)摩利は何処かの剣術の門下生で目録の腕だとか……まだ死ぬには未練がありすぎる。

だと言うのに目の前にいる真由美はニヤニヤしている。自分の弟の危機は彼女にとって飯ウマなのだろうか……

 

「まあそれは今度にして……」

 

是非これからもご遠慮願いたい。

 

「風紀委員会はこの件を懲罰委員会持ち込む気はない。それでどうだ?十文字」

「寛大な処置に感謝する」

 

十文字と呼ばれた男は口を開く。たったその一言に重みがあった。

 

十文字 克人……十の名冠する十師族の後継者……

制服の上からでも分かる隆起した筋肉……180㎝少しと思われる体だがそれ以上の圧迫感を与える。

例えるならば……巌のような人……と言うとこだろう。

 

「本来なら殺傷度Bランクの魔法を使ったのだ。もっと厳罰な処置を言い渡されても文句は言えないだろうが反省もしているようだし今回は眼をつむろう」

「それでは失礼します」

「では……」

 

大翔と達也は頭を下げて退出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはやおっかねぇな」

 

大翔が言うと達也は苦笑いした。この友人の口調は本当に怖かったのかが微妙だ。

 

「あ、おーい!」

 

校門に出るとエリカ等のクラスメイトと深雪が待っていた。

 

「待っててくれたのか?」

「そりゃね~」

「悪かったな皆」

「気にすんなよ」

「はい。大丈夫ですよ」

「あ、そう言えば……」

 

深雪がなにかを思い出したようだ。

 

「先程中条先輩が居ましたよ?」

『中条?』

 

エリカとレオと美月が首をかしげた。

 

「生徒会書記の方です」

「ほら、入学式で紹介されなかった人がいただろ?」

『あー』

 

達也の言葉にクラスメイトが頷く中大翔は遠い目をした。紹介されなかった理由を作った張本人でもあるからだ……

 

「それでどうしたんだ?」

「大翔さんを待っていたみたいなんですけど私たちを見たら帰りました」

「別に一緒でよかったんじゃないか?」

「遠慮されたのだと思います」

レオ(これ)怖かったんじゃない?」

「どう言うことだよ!」

「まあまあ二人とも」

 

レオとエリカの喧嘩を美月が止める。

 

「取り合えず皆でカフェにでもいかないか?千円くらいなら奢るぞ」

「ゴチになりまーす」

「大翔は自分でだ」

「なぜ!?」

「今回のおごりは待たせたためだ。お前は待たせてないからな」

「助けてやったじゃん!」

「あれはお前の鬱憤晴らしかねていたのだろう?なら差し引き0だ」

「差別だー!横暴だー!」

「冗談だよ。お前の分も序でにおごるさ」

 

完全に達也はしてやったりと言う顔だ。こいつもこいつでドSだとか思いながら大翔は皆とカフェに向かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~二人ともスッゴク強くってビックリしたよね~」

 

エリカがケーキを食べながら言う。

 

「ふふ、二人ともすごいですね」

「でもよくあんな大人数と戦えたよな。魔法使ってきたんだろ?」

「そうそう。なのにいきなり相手の魔法が解除されたんだよね」

 

先程とはうってかわり身を乗り出してきた。

 

「しかも地面まで揺れた感覚がしたんだが……どういうトリックだ?達也」

「それは……」

 

達也が口を濁す。

 

「良いじゃありませんか。お兄様はキャストジャミングをお使いになられたのでしょう?」

『キャストジャミング!?』

 

達也と深雪以外の面々が椅子から落ちそうになった。

 

キャストジャミングとは魔法に関わっていれば知らぬものはいないだろう名前だ。

平たく言えば魔法を妨害する電波のようなもので(あくまで慣用句であり正確には違うので魔法学者の人間に聞かれたらぶち殺される)あらゆる魔法の発動を阻害することができる技術だ。

だがたしかそれを行うには……

 

「お前アンティナイト持ってるのか?」

 

そう。 アンティナイトと呼ばれる鉱物が必要なのだ。だがこれは一部の地域でしか産出されないオーパーツであり金額なんか目玉が飛び出そうな額を軽く叩き出す。

 

「まさか。高価すぎる上にあれは軍以外では手に入れるのは不可能だ」

 

そう言って達也は周りを見る。

 

「ここからはオフレコで頼みたいんだが……」

 

皆が顔を寄せ会う……

 

「あれはキャストジャミングの理論を用いたキャストジャミング擬きなんだ……」

『…………』

 

ポカーンとそれを聞いた面々は口を開ける。

 

「そんなの……あったっけ?」

「聞いたことねぇよ……」

 

エリカとレオは珍しく仲が良い。

 

「まず二つCADを使うんだが……一つは相手の使う魔法と同じ系統の魔法を起動しもう一個でそれとは反対の魔法を起動させる……更にその二つを無系統のサイオン波として放つんだ。そうするとある程度妨害ができる」

「新発見じゃねえか。公表したら儲かりそうだ」

「だがレオ。これには欠点がある。例えばこちらは魔法が完全に使えないのに相手は魔法が使いにくい程度だ。更にアンティナイトを使わないと言うのが問題だ」

「何で?」

「バカねレオ。アンティナイトが無しで魔法を妨害する技術なんて軍から見たら戦争に使いたくなるでしょ」

「エリカの言う通りだ。今はアンティナイトがないと使えないからある程度制限が出来てる。その制限がなくなったらどんな危険があるか分かったもんじゃない。キャストジャミング擬きの公表は対抗する方法が見つかるまではお預けだな」

 

よく考えてるな~と大翔はお茶を飲んだ。紅茶は結構……いや、滅茶苦茶好きなのだ。

 

(嗜好まで似てるからな~あの人とは……)

 

お陰で一緒に外食いくと真由美とは同じ料理を頼んでしまう。

 

「さぁて、今日は達也くんの奢りだし追加しよう」

「じゃ、じゃあ私は……」

「私も頼もうかしら」

 

女性陣がメニューを見る。

 

「いや~どれも美味しいからね」

「幸せな気分になりますよね」

「本当に」

「そしてその後恐怖の内臓脂肪か?」

『………………』

 

レオの呟きに女子たちの時が止まった……

 

「あんたは一言余計なのよ!」

「そ、そうですよ!」

 

エリカと深雪が怒り美月もコクコク頷く。

 

「わ、悪かったって」

レオも失言だったと認識してるらしく頭を下げる。

 

「でも三人とも全然太ってないですよね?何してるんですか?」

 

美月が聞く。

 

「鍛えてるからな」

「よく動くからな」

 

レオと達也が言う。

 

「大翔さんは?」

「え?あ、あー、うん。俺もそんな感じだ」

『?』

 

大翔の口の濁し方に皆は首をかしげる。だが大翔は本当の事を言えなかった……

 

(絶対に言えねえよな……体質的に全然太らないなんて……)

 

大翔はお茶を啜った……




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