とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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第47話

 しばらくし、ようやく病院に着くと親切なタクシーの運転手は金も受け取らずに走り去っていってしまった。そしてふらふらと本堂を支えにして歩く灰理と一緒に病院に入る。今日は大覇星祭だったためなのか、病院内には体操着の学生やら普段見ないような大人がたくさんいた。

さて、ここで問題である。本堂達は現在、返り血やら自分の血やら戦闘の跡やらでとても悲惨な状況になっている。そんな二人組が入ってくれば、どうなるであろうか?答えは簡単、

 

「.....ギャァーーー?!」

 

阿鼻叫喚の図の出来上がりである。まぁ中には顔を引きつらすだけの人間もいたのだが殆どの人間が叫び声やら鳴き声やらを上げて本堂達から離れた。そんな騒ぎになれば無論病院側は慌てて駆けつける。そうして本堂は寄ってきた医者に灰理を託し、自分に伸ばされる手を弾いて待合室のソファに座り、灰理の手当が終わるのをずっと病院で待つこととしたのだ。

途中、第七位だと気がついた無謀な観光者が本堂にサインを求めようとしたがそれは周りの人間によって止められていた。そんなことを眺めながらソファに身を預けているとと自然に瞼が重くなってくる、絶対回避(イヴェレイション)が発動しないということは今寝るべきなのだろう。そう判断した本堂はそのまま眠気に身を委ねた。

 

 

 

 

「もしもし、もしもし?」

 

そう眠っている本堂にある医者は手を当てて起こしていた。だがいくら揺すっても起きないため少しため息をついた後、医者は看護師に指示して空きのベッドに本堂を寝かせた。しっかりと布団をかぶせたのを確認すると医者はもう片方のベットにいる患者から話しかけられた。

 

「あの‥‥‥‥」

 

か細く、今にも消えてしまいそうな声で患者の灰理優木は医者に話しかけた。その顔は綺麗になっており少し前は血だらけだったとは思えないほどである。

そしてその背中には、"何も"ついていない。

 

「‥‥‥‥ごめんね、傷がかなり深くてその翼があると君の手術が不可能だったんだ」

 

「いえ、その件については助けてくださってありがとうございます、とお礼を述べるほどです。少し、"相談"に乗って欲しいのです」

 

灰理の"相談"という言葉に医者は少し神妙そうな顔になり近くに置いてあった椅子を引き灰理のベッドの横に置き、座った。

 

「君らしくもないね、今回は怒られなかったんだろう?」

 

「はい、そうなんです。叱られなかったんです、いつも何があっても叱ってくれていたはずなのに」

 

いつもあったはずの叱咤の消失、それが灰理の悩みであった。だが人は普通、叱咤がなくなったことは喜ばしいことのはずなのであるが...

 

「今日なんて、本堂さんにとって一番大事な人を守りきれなかったのに‥‥‥‥いつもの本堂さんならきっと拳骨一発じゃ済まさなかった。それが怖くて、怖くてたまらないんです」

 

そう言って灰理は横のベッドですやすやと寝息を立てている本堂を見た。恐らくは、灰理はこの後に自分がなにかとんでもない目に遭うのではないか、それとも自分などもう叱る価値すらなくなってしまったのではないか、そんな思案が灰理の頭の中を駆け巡り、灰理を苦しめていたのだ。

それを知った医者は少し考える素振りを見せ、口を開いた。らしくない、と

 

「本当にらしくないね、深呼吸をしてみようか」

 

そう促すし、灰理が言われたままに深呼吸をする。そうしている間にも医者は話を続けた。

 

「確かに、ある程度の心配は普通の生活には必要もしれない」

 

「けどね、それはあくまでも"普通の生活"にだ。彼との生活にそんな心は不要だ」

 

「‥‥‥‥何故?」

 

「彼は、子供なんだ。ずっと自分に都合のいい情報しか与えられてこなかった雛鳥なんだ。故に、彼は人の心を深く理解することはできない、例え行動が読めてもなぜそういうふうにしようとするのかを理解できない」

 

「だからこそ、彼は自分の心を一切包み隠さず自身の行動に自信を持ち行動する人物を好む。それは彼自身もだ、もし今回君が叱られなかった、それは彼にとって自信をもって選んだ行動なんだ。疑いなんて持ってあげるな」

 

そうすれば、きっと彼は同じように君を信じるだろう。そう付け足して医者は立ち、その部屋を後にした。

灰理はしばし、考えていた。これからどうするか、医者の言葉を頭に入れながら考えて、それを放棄した。

 

「...そう、ですよね。らしくないです、自信もたなきゃ」

 

どうせ、色んな事を常識的に考えても非常識を常識とする本堂には追いつけない。ならばせめて、受けいられるようになろう。灰理はそう決めた。ただいつも通り、明るく前向きに考えようではないか。

 

「(ぅおー!まずは翼の復活からです!)」

 

小声で腕を高くし叫んだ灰理はベッドから降り、眠っている本堂のベッドに近づいた。そうして眠っている本堂を前にして、敬礼のポーズをとり高らかに小声で叫んだ。

 

 

「(貴方に仕える者、灰理優木はこの身をかけましても貴方の翼となり盾となりましょう!!そしていつかはご褒美をくださいなんて)アダダダッ?!なんでこういうところ反応するんれすか~?!」

 

最後に欲望を出したところ本堂の絶対回避(イヴェレイション)が発動したのか右手で灰理はつねられた。




こっそりルート分岐
1.灰理が空中からの一撃を守れるかどうか(家に寄るかどうか)
2.包夢の死体にじかに触れるかどうか(実はこっそりイタチの最後っ屁がありました)
この二つでしたー、尚つけていたはずの精神干渉妨害装置はビルに入った時に全てoffにされています。毎日監視されていたようなものですし買うものに細工だって出るのです。

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