とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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第45話

 目が覚める、するといつの間にかだだっ広い空間に本堂は倒れていた。と、ここで思い出すのはここはあの時包夢の焼死死体が置かれていた空間ではないかと。それで急いで辺りを見回すとほそこには奴がいて、奴に銃口を突きつけられている灰理の姿があった。

 

「ッ!アホ鳥!」

 

「すみません……逃げてください」

 

そういえば、救急車に乗せた包夢があそこで死んでいたのだから同じく灰理も捕らえられていてもおかしくなかった。恐らくはカエル顔の医者のふりをして本堂の電話をのっといていたのだろう。そして、今現在灰理の翼はほぼなくなっていて表面上はピンピンしているように見えるがあれ以上の変質は厳しいだろう。つまりはガス欠状態に等しいのだ。

 

「………そいつで脅しているつもりか?」

 

「いや、選択肢を与えようかと思ってね」

 

「選択肢だぁ?」

 

「うん、今度こそ人質として灰理優木を助けたくはないかい?」

 

何が言いたいぐらいは本堂にはすぐに分かった、前の包夢のように、灰理をかくまう形にして生きてみろ、そう言いたいのだろうか。その問いに本堂は笑った、今更何を言い出すかと思えばそんなことかと。

 

「それで、ずっと騙し続けていたのはどこのどいつだよ………」

 

「……入れ替わりは、こちらも最近気づいたことだ。頷いてくれればしっかり守ってあげよう」

 

「駄目です、逃げて………」

 

どうするか、と本堂は考えた。どうせ目的のない人生になるのだったらそんなささやかな目的もあっても良いのではないか。だが、それは同時に自分の枷となる。それに灰理さえも奴が用意した人物ではなかったか?それなら裏切り者の可能性だって高いじゃないか。元より殺す予定だったんだ、態々ここで守る必要などないではないか。

 

「(煩い虫だったんだ、逆に清々するじゃないか)」

 

『自分、今回よりあなたとコンビを組むこととなりました、灰理優木と申します、以後よろしくお願いします本堂さん』

 

「(恩も何もないんだ、生かす意味なんてない)」

 

『この灰理優木!必ずや本堂さんのお役に立ちましょう!』

 

「(あんなの全部演技だったんだろう?でなきゃ態々あいつがこいつをよこす理由が………待てよ?)」

 

考え事をしていた本堂はふと、ある仮定を思いついた。ずっと引っかかっていたあの言葉を思い出して、仮定を一つ立てた。

もしかしたら、あの時襲われたのは、灰理ではなく包夢だったのではないか?それに気がついた灰理はすばやく自分の身を盾にしたのではないか?元々、翼を使って飛んでいる灰理は風の変化に敏感だ。故に灰理はその攻撃に気づいていてもおかしくなかった。だから、あの時奴はああいったのだろう。

 

『ん?いやどういたしましてだ。所で...知りたくないか、彼女を"殺した"人間を』

 

そういえば奴は包夢を呼ぶ時は大体彼女、として話していた。奴はてっきり攻撃を受けたのは包夢だと思い込んでいたのではないか?包夢が殺されたとなれば、あの時の本堂はきっと何も準備せずにそこに突入していただろう。

そして、次に気になるのは奴があの時発した"ん?"という疑問の声。あの時の本堂は「さっきは有益な情報ありがとよ!」と発した、のに対して奴は疑問を持った。まるで何の事か分からないといった風に、もしあれが演技ではなく素であったのなら、"灰理が死にかけていることを教えた人物と奴は別の人物だということになる"これはどういうことだろうか。これだけではない、考えると色々と浮かび上がる疑問が出てくる。

・何故奴は本堂に絶対能力進化(レベルシフト)を関わらせた?

・何故奴は態々灰理と組ませた?

・何故奴は新しい能力(チカラ)などといった巫山戯た文句で任務をさせた?

・何故奴は態々女神の過保護(ゴッデスプロテクション)を思い出させた?

 

いくつも思い浮かぶ謎の点に本堂は頭をひねらして考える、だがその点はほとんど奴にとってはうまくいかなくなるような点でありはっきり言って奴がわざわざそんなヘマをするとも思えない。

 

「(まさか……)おい」

 

「何だい?」

 

「結局、新しい能力(チカラ)ってのはなんだったんだ?」

 

「………何のことかな?」

 

今、仮定が現実になりかけている。とすると灰理は奴が用意した人間ではない可能性が非常に高くなってきた。だから、本堂は灰理を信じてみることにした。そうして、もう一つ考えた仮定もまた検証してみることにしたのだ。

まだ、道は崩れていない。そう念じながら本堂は背中あたりに手を伸ばした。

 

「今更、何をしても無駄だよ。君の体は僕が生かしているようなものだからね」

 

「そういう嘘はいい、今俺の体は相変わらず無傷だ」

 

「………何を言い出すんだい?とうとう頭でもおかしくなったかな」

 

「おかしいと思ったんだよ、あの書類によれば科学と魔術の力は体に大きな拒絶反応をもたらす、なのにてめぇはピンピンしている。科学と魔術、どちらも極めた高みだとかなんとか言っていたがよぉ………誤魔化してんだろ」

 

「な、なにを」

 

「ついでに言えばロケットランチャーがなくなったら誰でも普通気づくっつの、俺は猿じゃねぇんだから」

 

そうして本堂は空に何かの手応えを感じるとニヤリと笑って奴に構えるポーズをした。するとどうだろうか、何もなかったはずの空間にはいつの間にかロケットランチャーが現れていた。

 

「ま、待てそんなものを放ったらこの娘も」

 

「安心しろよ、てめぇは蹴らんと気がすまねぇから」

 

そう言って本堂は奴に背を向けて、ロケットランチャーを放った

 


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