とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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今回はめちゃくちゃセリフ多いよ!手抜き?そんな気はしなくでもない。
ちなみに"奴"の文章での表記は 奴 です。名前が思いつかないのです。


第43話

 本堂は、怖いもの知らずだった。痛みなんてものは成長のために発生する成長痛ぐらいしか味わったことがなく自分に傷がつくなんて想像もできなかった。故に、この状況はとてもではないが信じられない。

だがこの眼にうつるのはリアルな、自分の穴のあいた腹部をまじまじと見てそれを認識せざる負えなくなる。そして、そこから一定の間隔で聞こえてくるのは自分の生命の鼓動が聞こえてくる、このままでは失血多量で死ぬということは散々殺してきた自分にはよくわかることであった。

 

「(もってあと……)」

 

「数分だな、か?」

 

「(読みやがったのか?!...いや思考が単純になっているのか)」

 

その穴のあいた腹部を左手で抑えながら本堂は苦々しく顔を歪めた。痛みで失神しないのは決して本堂の精神の強さなどではなく、あまりの痛さに頭が脳内麻薬(エンドルフィン)が生成されて痛みを感じないようになっているのだ。だがあくまでそれは苦し紛れでありじわじわと本堂の体が蝕まれていることには変わりがなかった。そんな本堂を見て奴は口を動かした。

 

 

「やはり、そう簡単には頷いてくれないか」

 

「あた...りめぇだ」

 

「では次は"決定的な力の差"で屈服させるとしよう」

 

「(今度は何だ?!宇宙!?)」

 

奴が指を鳴らした瞬間、周りを取り囲んでいた人物は消え奴と本堂のみを中心とした宇宙空間が広がった。

無論、本物の宇宙ではないのだろうが、こんな芸当をできる時点で本堂は驚かろざるおえない。

 

「(視覚系能力者………?)」

 

「いや、そんなチンケなものではない」

 

本堂の頭を息を吸うように読み取った奴は不敵に笑った。そしてこう続ける

 

「これは、異能だ。科学でもない、魔術でもない、その高みを目指し、到達したものだけが得ることのできる神の力だよ」

 

「ゴフッ!っふぅ、神、だとぉ……?随分、科学者らしくねぇな」

 

「そうか?私としてはお前がその考えに至ってない方が驚きだよ」

 

「あぁ゛?!」

 

そして、ふぅとため息をつくとどこから取り出したのかいつの間にか手にはタバコがにぎられていて白い煙を上げている。高みの見物、という言葉がよく似合うのだろうその光景。

 

「しっかり、神と冠する能力(チカラ)を所持しているじゃないか。女神の過保護(ゴッデスプロテクション)、だったか?」

 

その単語に、本堂はまたしても衝撃を覚えた。どれだけ知っているんだこいつは、と。そもそも、正式名称なのかと疑いかけたものだったのだが。

 

「その能力(チカラ)ははっきり言って忌々しいものだったけがな、おかげで時間をくった。ついでに昔からの仲間も殺す羽目になってしまったよ」

 

「はぁ...?」

 

口で言ってもわからないだろうか、奴はそう言い指を鳴らした。

すると、またしても風景が変わり今度はどこかの研究所だろうか、二人はその映像を見る形で宙に浮いている。本堂は体勢を起こし、膝をついてその映像を見た。

 

「ここは、全てが始まった研究所さ。君が読んだ書類にも書いてあった『魔術と科学の共同実験』が行われた、ね」

 

「だから魔術ってなんだよ」

 

その言葉に奴は意外そうな顔をして本堂の顔を見つめた。

 

「驚きだね、まだつかめていないのかい。まぁいい、進めよう」

 

「………?」

 

「全ては、とある偶然から始まったんだ。人口生命体の誤作動によって成分の違いなどがありながらも人型として生まれた、そいつには世界の全てがほしがる能力(チカラ)の可能性があった。故に、そいつだけは別個体として研究を進めることとした」

 

だけどね、奴はどこか悲しそうな顔をして続ける。

 

「魔術派の中に研究をよく思わない集団がいたんだ。その個体が送られた日にその集団が襲撃、個体は私と彼女の目にしかつかずに命を落とすこととなった。データも全て破壊されその個体のつくり方は永遠に消えた、と思うだろう?」

 

「だが私と彼女は諦めなかったんだよ、何年も何年もかけて、漸くその個体を作り出せた」

 

しかし、幸運は続かないものなんだ。そう漏らすと奴はまた話を続ける。本堂は段々と、奴が何を話したいのかを理解し始め、口を挟んだ。

 

「その個体は、余りにも人間過ぎたんだ。この世界にはとある条件を満たしてとある時間に生まれたものには祝福があったんだよ」

 

「それが、女神の過保護(ゴッデスプロテクション)だとでもいい、その個体は俺だとでも言う気か?」

 

「その通り、その効力はよく知っているだろう?あれがしっかりと効力を出し始めたのは丁度君が2歳の時だ」

 

絶望したよ、そう呟きその男はギリギリと歯を鳴らして拳を握った。

 

「彼女に調べさせたらこのままだと君は二十歳になる前に消えてしまう可能性があったからね、なんとかそれを消せないか考えたんだ。それに焦っていて僕は違和感を感じ取れなかった」

 

「あの時、丁度君が2歳になった時には彼女はもう殺されていたんだよ」

 

 

 

 

 


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