とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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自分なり解釈、窓のないビルの転移係と案内人は違う。


第31話

よくよく考えてみれば本堂は一日に一回しか依頼を受けつけない。あまりにも早く終わったりした時ぐらいしか2回目は受けたりしないのだが今回は受けてしまった、まぁいい。

とにかく今することとはあのふざけた女の顔を絶望に染めることであった。

そんな本堂は灰理によって空を飛んでいる時、あるものが目に入り灰理に促す。

 

「アホ鳥、右に少しずらせ。すぐに」

 

「えっ?あはいはいィィィィィィ?!」

 

その言葉に灰理が体をずらした直後、横を雷撃の槍が飛んでいった。威力はそこまでなくせいぜい一瞬気を失う程度であるだろう。と本堂は冷静に分析した。

そして構っている暇はない、と行きたいところなのだがこのまま付いてこられても面倒である。いきなり攻撃を仕掛けてきたのだ、"本堂の今日"を知っている可能性も高いと判断して本堂は考えを決めた。

 

「アホ鳥、離せ」

 

「へ!?」

 

「お前はこのままさっきの座標に向かえ、収拾ついたら連絡入れる。いいな?」

 

その後の無言に諦めたのか灰理は御免なさいと一言入れて本堂を掴んでいた手を離し飛行機からミサイルを投下するように本堂は地へと落ちていく。本堂は別段自殺をしようとしているわけではない。ただ高層ビルよりも高い位置から飛んでいた所から落ちても大丈夫だという確かな自信がある。故に落ちるときも顔に歪みはない。ただ流れに身を任せ落ちていくのだ。そうして少し風を感じたあと、本堂は見事地面に着地していた。

 

 

 

こういう時では力の向きなどを一旦断ち切って移動する転移が便利なのである。そして着地したあと本堂はゴーグルとマスクを外す、そういえばなぜこの状況の本堂を見て本堂本人だとわかったのだろうか。

 

「わざわざ降りてくるなんて...」

 

「上空から一方的にスナイプされたかったか?今結構頭にきてんだ、そのムカつく顔面に蹴り入れねぇと気がすまねぇんだ」

 

「それは無理ね、あたしあんたの対処法分かったから」

 

「そりゃよかったな第三位」

 

そう言葉を交わしたあと両者はぶつかりあった、いや正確に言えばどちらも体は触れ合っていないのだが。第三位御坂美琴が先制攻撃として出した雷撃の槍は近いものに飛んでいくという特性によって吸い込まれるように本堂に飛んでいく、どうやら普段本堂が軽く避ける電気とは多少毛色が違うようである。

 

「まぁどうでもいい」

 

転移して電気が反応しない距離に移動すればいいだけの話である。それがたまたま御坂の背後少し上であったのでそのままかかと落としを入れようとするが体がその動きを拒否した。

 

「・・・・・・・・・あ?」

 

得意げで動きもしない御坂にいくら体術を入れようとしても体がその動きを拒否する。おかしい、そう思って目を凝らしてみれば御坂の周りには少しだけ電気が漂っていて理由を把握する。

 

「体に触れると痛みが走るように電磁バリア張りやがったか。持ってる電気用品まとめておじゃんになってんじゃぁねぇのか?」

 

「そんなヘマなんてしないわよ」

 

「(応用力の高いやつだからこそ出来るってか?まぁあの程度だったら第四位でも可能か)」

 

めんどくさいやつらだと息をきる。こうなっては攻撃を加えることは不可能になってしまう。癖で頭に手を伸ばしかけた時、気がつく。

己が大切にしていた筈の十字架のペンダントが首から消えていたのだ。少し焦った本堂は服と服のあいだに挟むようにしてあった十字架を見つけて安心する。紐がいつの間にか切れていたらしい、とりあえずはとポケットに入れようとしたその瞬間いくつもの雷撃が本堂に迫る、基本的に回避不可能になるまではただの避けが発動するので体が勝手に回避の体制になる。その時握力にも作用して十字架はポロっと手から落ちた。

老朽化していたのか、アスファルトに落ちた十字架は割れた。それを見た本堂は無言で御坂のもとへと迫って飛び回し蹴りの体制を取った、本来ならこの場合気がつく「筈」であった、電磁バリアがある「筈」の御坂に対してその体制が取れたことに、御坂が反射的に出した雷撃の槍は空中に居る本堂へと迫る。ここで転移が発動する「筈」であった。

 

そんないくつもの「筈」を打ち破り、

 

雷撃は本堂の体をすり抜け、

 

足は綺麗に御坂の背中に入った。

 

『お守り!露店でいいのがあってね!何でも神様に連れて行かれないことをお祈りした十字架なんだって』

 

その瞬間思い出した彼女の言葉とその場面には少し、ノイズが走っているような気がした。

 

 

 

 

「・・・・・・想定外だ、あと数時間は大丈夫だったはずなんだが」

 

「いいのではないでしょうか、その程度なら」

 

「そうは言ってもだな、少しの違いでせっかく10年以上も考えてきた計画が破綻してしまうかもしれない」

 

「そもそも初めから難しい計画だったでしょう...?科学と魔術を兼ね備えた手駒をつくるなんて」

 

その言葉は二人の男性と女性によって続いていく会話の一部であった。




7月30日誤字報告などの訂正をしました。
誤字報告感謝です。

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