とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

27 / 52
~番外編という名の落書き~
「お掃除お掃除ランランラ...あれ?テーブルに本が」

『健康鳥肉料理百全』

「ッ!?!?」

電子書籍派の本堂による嫌がらせであった。


第24話

 

「...なんだと?」

 

本堂は普段なら気にもしないような一言に気を取られた。それは電話で伝えられていた任務が終わったあとのおまけだと統括理事長が言った"新しい力"というのが少し引っかかっていたためだ。本堂自身力を意図的に使う、ということはできない。on,offもできない欠陥能力といってもいいほど使い勝手に問題がある時だってある。

 

なぜ力を封じているか、などという言葉はそんな本堂に重く残った。次に出てくるのは疑問、なぜそんなことがこの禁書目録(ターゲット)に分かるのか。本堂は殺すのはこの疑問を解いてからでも遅くないと考え質問を投げかけた。

 

「今お前なんつった」

 

「貴方科学の人間だよね?」

 

そんな本堂の言葉を気にせず禁書目録(インデックス)は言葉を続けた。どうやら本堂が何の反応をしなくとも聞く考えだったようだ。だが本堂はそんなことを一々気にして、空気を読んで、相手に会話の主導権を渡す男ではなくあくまで自分が主体として会話する。

 

「俺が聞いている、お前なんつった」

 

「だよね?」

 

こんなのが2.3回続き御坂も何が始まったのだと少しほうけ気味になってつっ立っている。そこでこのままでは埒があかないと思った本堂が珍しく折れた、ため息をついた後、立ち話も疲れるので近くにあった喫茶店で話し合おうということになった。この時本堂の頭の中では 任務<話す という風に重要度がなっており統括理事長の依頼とは言え今回は本堂研究員の命がかかっていないことに気が緩んでいたようである。例えそうだしても殺そうとしている相手を喫茶店に入れるなどは普通はおかしいのだがそこは気づいていないらしい。ここら辺がLevel5は皆人格破綻者と言われる所以(ゆえん)である。ちなみに御坂はそのままボーッとしていて二人を見失っていた。

 

 

 

シスター、という者は神に仕える女の人のことを指す言葉であり神に仕える身として一生独り身で欲望にとらわれてはいけないなどの誓約?があると考えていた本堂であったがその考えは目の前で打ち砕かれていた。

 

「ハグ!むすもす!おいしー♪」

 

「(ケーキが一瞬で消えていく!?)」

 

目の前で何十というケーキを平らげていく禁書目録(インデックス)は言うとするならば迷える子羊ではなく食欲に支配された迷える子豚といったところだろうか。

目を輝かせて甘そうなショートケーキや少しビターなチョコレートケーキ、まろやかそうなチーズケーキ達が食べ放題の一人の3000円の(ドリンク一杯無料)を正しく食べ放題のごとく体に入れていく。ふと横を見ると涙目になっているダンディーそうな喫茶店の店長とそれでを必死でなだめている女性店員が見えて思わずご愁傷様と思う。

 

食物で情報を引き出そうとした本堂はあまりの食いっぷり言葉を発せないでいる。

ちなみに本堂はカフェオレと称したコーヒー牛乳をちびちびと飲んでいた。2.30切れ程食べてようやく満足したようで追加注文のオレンジジュースを飲んでふぅと笑顔で本堂にお礼の言葉を言った、どうやらある程度の礼儀はあるらしい。

 

「さて、本題に入るが"力を封じて"ってどういう意味だ?」

 

「文字通りだよ(この人...魔術のこと知っているのかな?)」

 

「力ってのは俺の絶対回避(イヴェレイション)のことでいいんだよなぁ?」

 

「ふーんそうやって呼んでいるんだ、こっちは女神の過保護(ゴッデスプロテクション)って呼んでるよ」

 

「はぁ?なんだそりゃ」

 

「昔、女神に愛された子供がいたんだよ。女神は男の子を大事にしすぎるがあまり最後には天界に連れて行っちゃったっていう昔ばなし。男の子はその間どんな病気も怪我もしなかったの」

 

「...まさかそんなおとぎ話を俺の能力(チカラ)の正体だと思ったのか?」

 

「昔ばなしだけどおとぎばなしじゃない、それで本来なら貴方はとっくに天界に連れて行かれているはず」

 

「...書類に妄想癖有りとでも書いといて欲しかったな。だいたいそんな非科学的なこと天然物(俺みたいな奴)でもなけりゃおかしいだろうが何が天界だ、馬鹿じゃねえのかお前は」

 

「20XX年4月23日」

 

阿呆らしいという仕草をしてとっとと依頼を済ませるかと椅子から立ち上がろうとした本堂は禁書目録(インデックス)が発した日時に覚えがあった。

---●●拓斗の誕生日である。

 

「最後に女神の過保護(ゴッデスプロテクション)の持ち主の消失が確認された日の次の日、やっぱり心覚えがあるみたいだね」

 

「...その女神の過保護(ゴッデスプロテクション)てのは何名も確認されてんのか?」

 

「うん、少なくとも2名は(まぁ研究書みたいなものだったけど)」

 

正直言って本堂は魔術を知らない、己に天然の異能があっても原石としてみなすので科学以外の能力を認識しない。実際先程も魔術の塊であるエリス(ゴーレム)をみているがそれも科学的な目で見ていた。だからこそ、本堂は禁書目録(インデックス)の言葉なんて信じない気でいた、だがいたのだ、同じような能力の持ち主が過去に数名いたことに。その事実を考えると本堂もいずれ消えてしまうのだろうか?天界に、なんてのは想像で実は能力の副作用によって消えたのではないか、そう考えると急に恐ろしくなった。能力によって守られてきたはずがその能力が実は蝕んでいたなんて考えたら本堂は鳥肌が立った気がした。だからこそ本堂は一つだけ、頭の中にあった過去の記憶から一つだけ、気になったものがあった。

 

『...なにこれ?』

 

『お守り!露店でいいのがあってね!何でも神様に連れて行かれないことをお祈りした十字架なんだって』

 

『それ多分ギリシア神話だろ?けど科学の人間がお守りか...ま、まぁとりあえずもらっておく』

 

『恥ずかしがっちゃてー、包夢さん寂しいぞってふぉあ!?』

 

『とりあえず黙ってて』

 

それを思い出した本堂はいつも首にかけておいた十字架を見た、あれから何年も経ちいとも何回も変えてきた品物で最近なんて条件反射で付けているから気にも止めていないものだったがそれを見て先ほど思い出した記憶の中の言葉が何回も鳴り響く、

 

"神様に連れて行かれないことをお祈りした十字架なんだって"

 

まさかと思った、こんなお守りに意味があるはずがない。だが...もしもだこの首飾りを外して生活していたら自分は今頃ここにいなかったのだろうか?そんなことを考えた本堂は十字架を少しためらったあと禁書目録(インデックス)に見せた。

 

「こいつを見てなにか思うことはあるか?!」

 

ムッ?と表情を変えて禁書目録(インデックス)は声を出さずに十字架を見る。1分程経った後、禁書目録(インデックス)は口を開いた。

 

「特にないね、ただのお守り」

 

その言葉にほっと息を撫で下ろしたあと本堂はいつもの顔に戻り声をかけた。

どうやら"封じる"の部分についてはすっかり忘れているようである。

 

「さぁ、会話は終わりだ。とっとと追いかけっこはじめんぞ」

 

そう言い終わる瞬間、本堂達は爆風によって吹き飛ばされた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。