時は少し遡る
上条当麻、己の拳で数多の組織を壊滅に追い込んできた怪物。それが魔術側からみた上条当麻の評価である、無論そこまでの有名人ではなく評価の目は禁書目録の方へと向けられていてるため上条当麻を狙う刺客よりも禁書目録を狙うものの方が多いのだ。そんなことを知らない上条当麻はその日、禁書目録の希望により地下街に来ていた。
隣には禁書目録が世話になったという転校生が一人、名は風斬氷華というらしい。見た目的に言えばおどおど系巨乳メガネ、おそらくこんな事をあいつらにでも言えばきっと「またカミヤンがフラグ立ておった!」と拳を握りしめてわけのわからぬことを抜かすだろうと考えながら歩いていた。
地下街名物の学食レストランの中でもシンプルを極めたところで昼食を済ませ、Level0には少しきついゲームセンター突入という危機をなんとか過ごした上条当麻はこれ以上何かが起こりませんようにと今まで(といっても一ヶ月程度だが)当たったことのないお祈りをした。
とその時、急に周りが騒ぎだした。我先へと周りにいた人々が走りだした、その異常な光景に上条当麻は何事かとうならせる。とりあえず便乗してみようと皆が走り出している方向へと体を向けた瞬間、体が一瞬浮くような感覚がした。言うとすれば縦揺れの地震しかしこの学園都市は地震にも力を入れているはずでこんな大きい地震なぞ起こるはずがない、それが地下ならなおさらであると考えを打ち消す。ふと周りを見ると先程までの楽しそうな顔とは打って違い真剣な顔つきになっている禁書目録を見つけた、自販機の横に何かを見つけたようでそこにしゃがみこんでいる。先ほどの揺れで倒れたら危ないと考えた上条当麻はすぐに駆け寄り声をかけた、
「禁書目録、なにしてんだ?危ないからとっとと地上に出ねーと」
「魔術の跡がある、これは探索用かな?ゴーレムを作るための術式をアレンジしたものだねこんなに細かく....」
禁書目録は上条の言葉に反応せずぶつぶつと言葉を並べていた・
そこで上条当麻は気づいた、今は日常の禁書目録ではなく非日常の禁書目録であることに、そして今現在周りで起きていることは非日常だということに。そして考えついたのはまた禁書目録を狙う刺客が現れたのだと言う事、今日の上条当麻はいつに無く頭が冴えていた。今回は他者からの情報はない、まだ魔術師が禁書目録を狙っていると決まったわけでもない。だが上条当麻は動く、僅かに可能性が有りそれが人に危険の及ぶものであるならば動く、それが上条当麻という人間であった。幸いにもすぐに白井達(何故か御坂と一緒)と遭遇し禁書目録と風斬氷華を連れて行ってもらおうと思ったが禁書目録がその状況を拒否、すぐにまた来るということで白井は御坂と禁書目録を一旦空間転移で外に出してもらった。その光景を見届けた上条当麻は風斬氷華にここに居るよう言いつけて先程から爆音が響く場所へと向かったのである。
状況は悲惨なものであった、死人こそいないように見えたがいたるところで呻き声が聞こえた、犯人は目の前で腕を振り上げているドラクエでいうのであればゴーレム、やはり魔術的なものであろうがそんなものは異能や現象全てを無効化するこの右腕にはなんの意味もない、走りながら拳を後ろへと下げ思いっきり上条当麻はゴーレムへ向けてその最強の右腕を突き出した。
鏡が割れるような音がして、ゴーレムは崩れる。その目の前にはこの科学の街にはそぐわない女の人が一人、そして隣には先ほどのゴーレムの腕のようなモノに捕まっている状態の男が一人、その二人は上条当麻を見てこう言い放った。
「み~つけた!」
「ただの馬鹿だな、あいつ」
そのうち一人は上条当麻が知っている人物で少し間抜けな声が出かけたのは秘密である。
「は~い下がって下がって危ないから下がれ~」
とある警備員の一人、男はやじうまが近づかないようにバリケードを貼っていた。外の話であればただ写真を撮ったりするだけであろうがこの街ではそうはいかない、能力が上がりたての自意識過剰の生徒や下手にスリリングを体験したいようなものがこういった事件に介入したがるのだ。それを止めるためにも警備員は武装をちら付けて威嚇しなければならなかった。男は出来るならばこんなことはしたくない、男もまた生徒を愛する教師の一人なのである。それでもやらないといけない現状に男がため息をついた時、一陣の風が吹いた。気づいたときには背後を何かが物凄い速度で通り過ぎて行った後であった。どうやら抜けられたようである、男は未だに状況を飲み込めないでいたがその時耳元で連絡の知らせが来ているのに気づきボタンを押す。
『緊急連絡・人質はLevel5の一人本堂拓斗、その能力は危害を絶対に負わない絶対回避、そして彼の仲間とみられる少女が一人バリケードを通過しようとする恐れありそこの防衛にあたっているものは...』
「・・・・・・・・・こちら西南、ただ今その少女と思われるものが通過していった」
この事件は今だ変化を続けていた。