とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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勉強せずにメモ帳に進め方書いているとふと本堂の顔を書きたくなる。そんなスキルがないくせに。


第21話

 何かを感じ取った本堂は身を震わした、それは別段恐怖とかそういった感情ではなくて腹のそこからこみ上げてくるような何かだと理解するのに数秒ほどかかった。本堂は精神系統の能力者ではないがまた何処かで誰かが馬鹿をやったのだと肌で感じとった。それを見たシェリーは何事か出すねる。

 

「どうした?誰かに呪われでもした?」

 

「なら相手は警備員(アンチスキル)どもかねぇ、俺のせいで発砲すらできないんだから教師は辛いねぇ」

 

警備員(アンチスキル)、それは殆どを学生達で構成される風紀委員(ジャッジメント)とは違い、その殆どを教師達で構成される組織。給料なぞ微々たるものなのに彼らは学園都市で起こる戦場に運ばれる、装備こそ最新鋭(実はそれよりも少し落としているのだが)であるが使うものは普段教科書をとっている者だ、いくら訓練していてもやはりプロには敵わないし今回のように人質(?)をとられている時なんて動けなくなる。そんな組織、だからこそそこに集まるのは正義感というものではなく生徒を大切に思う心を持った者達である。そんな彼らは現在エリス(土人形の名らしい)によって蹂躙されている。持っていた重火器も使えずただエリスに押しつぶされていくさまは一般人が見たら吐く光景かもしれない。押しつぶされるといっても流石は学園都市、その技術によってつくられた防具によって生きてはいる。

この間、本堂は口頭で伝えられた情報を頭の中で整理する。

 

見せられた写真の中には見覚えのある人物が一人いた、確か一方通行(アクセラレーター)を単身撃破した男である。名前は上条当麻というらしい、そこはどうでもよくて上条を殺すだけで学園都市ともうひとつの勢力に亀裂ができる、それを狙っているらしい。もうひとつの勢力とはなんだろうかとふと頭をよぎったが気にしないこととする。さて、その人物が見つかるまではおとなしくしていようといたらしいが本堂という標的を見つけたことによってそれを解いてしまったらしく上条を入れる簡単に殺せる標的たちは見つかっていない。

さて、どうしたものかと本堂は頭を唸らせていたのだが...

 

「ッ!?」

 

「んぁ?」

 

突如エリスが悲鳴を上げるかの如く金属と金属をすりあわせながら崩れた。シェリーは右目を分解させ捜索に回していたようで状況をつかめていない。土煙が舞う、そんな中、土煙の中、うっすらとこちらに向かってくる人影が見えたことに本堂とシェリーは息を詰まらせる。だが次第に顕になった姿に二人は顔を歪ませて笑った。

 

「み~つけた!」

 

「ただの馬鹿だな、あいつ」

 

煙から現れたのは青年であった。体格もほどよくその姿は学生とすぐにわかるほどシンプルなもの。特徴といえばまるで尖っているようないがぐり頭、そしてプロを相手にするというのに無手だということ。二人はこの男を知っていた、この男こそ標的の一人であった上条当麻、その男であったためだ、そうして崩れたエリスを示すかの如くこちらに歩いてきていた。

 

 

 

 

「さあ、どういうことか説明してもらえませんかね灰理さん?」

 

「.........言いませんよ」

 

本堂が口を歪ませた頃、灰理はツインテールの少女の前で反省のような形、正座をしていた。その腕には手錠がついていて屋上から落ちないために設置してある手すりと仲良くつながっていた。逃げようとした瞬間、腕だけがそこに残る形となり頭から落ちかけた灰理はいつの間にか繋がれていたのであった。先ほどまで元気に羽ばたかせていた翼も今はしゅんとたたまっている。ちなみにこのツインテールの少女は風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子と名乗っていて一瞬、灰理は偽名を疑いかけたのは秘密である。白井は明らかにこちらが優位と見てかなり顔に余裕を見せながら灰理の前で仁王立ちをしている。

 

「あなたは黙秘なんて苦手でしょう、先ほども聞かれてすぐに答えてしまいましたし」

 

「うぅ」

 

白井の言うとおり、灰理は隠し事が苦手である。すぐに顔に出てしまうし条件反射で声を出してしまうなんてざらにある。小学生の頃より活発的になったはいいが活発的になりすぎて自身の心にとどめておく方法を忘れてしまったらしい。

 

「本堂拓斗、Level5の第七位、確かに写真こそ裏で出回っているらしいですがそんなのを知っているあなたは何者なんでしょうねぇ?」

 

「さ、さぁ...?」

 

「とぼけたって無駄ですの、答えは貴方が彼と親しい間柄にいるからですよね?」

 

「そ、そんな親しいなんて言ったら本堂さんに殺されちゃ...」

 

「ほぅ?少なくとも頻繁に会っているようですね」

 

先ほどからこんな感じにどんどん情報を引き出されてしまっている。白井はどうやら完全に灰理の事を怪しい人物だと確認したようで最初の頃より口調が強まっているのがわかった。

誘導尋問ですよこれは!、と灰理は抗議したがあっさり流される。

 

「では次の質問です、何故第七位は地下街にいたのですか?そして何故テロリストと戦っていたのですか?しかも捕まっている、第七位の能力(チカラ)ならこんな事無い筈なのですが」

 

「つ、捕まっているんですか!?」

 

「?ええそうですが(演技ではなさそう、巻き込まれた一般人にしてはおかしいですし変な関係なのかしら?)」

 

「早く助けに行かないと...というわけでこの手錠をとってください!」

 

「(先ほどまで俯いていたと言うのにこの元気、もしや...)貴方、第七位はどんな人物と考えていますか?」

 

「憧れの人物なんです!恩があるんです!だから本堂さんの為ならなんだってできるんです!たとえ貴方が邪魔をしようとも!だから怪我をしたくなければこの手錠をはずしてください!

 

そう灰理は地下街のほうに体を向け後ろに立っている白井に叫んだ。それに一瞬ひるんだ白井であったが白井にとっての本堂とは敵、あの時自身がしたものを完膚なきまでに倒した憎き者でもある、そんな本堂に憧れ人物がいたのは意外であったがまずそういった裏のごたごたより一人の風紀委員(ジャッジメント)として灰理を解放するのは無理であった。

駄目です、そんな一言を灰理に当てた瞬間、白井は恐ろしい光景を見た。翼が少し縮んだかと思うと灰理の右腕が鋭利な刃物のように変質したのである、その光景に少しえづきかかけた白井はすぐに冷静を取り戻して再び灰理がいた場所に顔を向けたが既に彼女の姿はなく、きれいに切りとられた手すりが一本、落ちていた。


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