とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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『我が身の全ては亡き友のために(Intimus115)』編
第17話


 九月一日、本堂はいつものように、昨日よりほんの少し遅く起きる。すっきりとした目覚めですぐに自身の部屋の膝ほど高さのテーブルに置いてあった南京錠の鍵を取る。扉に向かう途中に少し向きを変え閉め切ってあるカーテンを開ける。どうやら今日もまたいい日であるようで黒は見えなかった。

 

「………ん?(やけに静かだ)」

 

この時間帯ともなれば本堂を起こそうと扉をうるさく叩いているのだがやけに静かな朝に不信を抱きながら扉を開けた。開けてみても本堂に突撃してくるようなこともなく少し前の日常であった静かなマンションの一室が広がっていた。少しつまらなさそうに灰理を本堂が探すといつも勝手に朝食が置いてあったテーブルに一枚の書置きが置いてあった。本堂は左手でそれを手にし目を通す。

 

〔本堂さんへ、

言い忘れておりましたが霧ケ丘との約束では流石にこういった日には来いということでしたので出かけてきます。もしどこかへ出かけるようでしたら続ける形でここに書いていただけるとありがたいです。P.S制服をどうやって着るんだとかいう突っ込みは無しで!〕

 

「………書くか馬鹿鳥」

 

何がしゃくにさわったのか紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ捨てたあと、そろそろ昼食といってもいい朝食を作り始め、完食したあと一人で片付けていた。

別段、本堂は寂しさを感じているわけではなく少し変わっていた日常がまた変わって少しイラついているのみである。本来、本堂は変化を嫌う。それはそれに順応しなくてはならない面倒くささがあり絶対回避(イヴェレイション)を持つ本堂にとっては余計にそれを感じる。こうなればこちらは勝手に動かさせてもらおうとタブレットの電源を入れた、その瞬間音を上げる。

 

「ッ!?」

 

あまりのタイミングの良さ、そりに本堂はとある人物を頭に浮かべながらため息をついたあと、取るしかないかと呟いて会話ボタンを押し耳に当ていつもの定型文を話す、

 

「...こちら運び屋」

 

『やぁ、幾日かぶりだね』

 

「やっぱあんたか、やっぱりどっかに監視でもおいてんだろ」

 

『そんな事はないよ、それより依頼の件なんだが』

 

「...悪いがキャンセルしていいか?」

 

これ以上関わると面倒くさくなると本堂はおそらく断られるであろう言葉を発する。数秒間をおいたあと、統括理事長からの返信に本堂は顔を歪ませ聞き返すした。

 

『何、君にメリットがあるお話さ』

 

「メリットだと?………まさかまた」

 

『安心したまえ、本堂研究員は関係ないよ』

 

それなら別にいいと、本堂は早く電話を切ろうと話を早急に終わらせようとするが本堂は次の言葉を聞き目を見開いた。

 

『新しい力...欲しくないかい?』

 

「新しい...力だと?どういうことだ」

 

『この依頼を受けてくれたら君に新しい力を知るきっかけを与えよう、前払いの報酬はそうだな...君が今使っている獲物()の新型だ。新しい情報は報酬としてではなく依頼達成のお礼というのはどうだい?』

 

「どうもこうも、受けなきゃまた引き合いに出してくんだろ?で、依頼(内容)はなんなんだよ」

 

こいつに勝つことはできない、長く話し合ってきた本堂は話し合いや騙し合いでは勝てないことを理解していた。逆らったら人質を使って脅されるだけなのでここは本堂は自身のためにも従っておくとする。ちなみに本堂は新しい力、というのにそこまで好奇心と言うか欲はわいていなかった。別段、相手を攻撃するには本堂が使っている衝槍弾頭(ショックランサー)で事足りていて防御なんてもってのほか、絶対回避(イヴェレイション)がある。確かに、衝槍弾頭(ショックランサー)でしとめにくい相手もいるが新しい力なんて得体の知れぬものよりはましである。

 

『何簡単さ、あるものの手伝いをして欲しい、ある女性のね』

 

本堂はそのあとの言葉を聞いたとき、また顔を歪めた。

そしてタブレットを切り今日何度目かもわからぬため息を履き、着替えを始めた。

頭の中で依頼書を作りながら

 

対象、シェリー=クロムウェル

運ぶ場所 外

報酬 新型衝槍弾頭(ショックランサー)

備考 雇い主に逆らえない。仕事を始めるであろう時間帯に合流し脱出を手伝う

 

「(学園都市に侵入って...何もんだよ、てかまた生きた人間だし。統括理事長の野郎何を考えてやがる)」

 

そういう考えにいたり数秒ほど考えたあと、本堂は気楽にな顔になり

 

「どうでもいいか」

 

ただ運ぶだけだと時計を確認して外に出た。

 

 

 

九月一日、学園都市では始業式であったりしてこの日も学生は多い。そのため見た目ダル気味学生の本堂はよく紛れる。地下街は更に人が混雑しもはや誰が本堂だかわからなくなるほどである。ちなみに言うが本堂は現在特殊マスクを新型衝槍弾頭(しょっくらんさー)を受け取る時に任務に役立つと渡された。

そのため、恐らくこの地下街が封鎖されるのだろうと本堂は考えていた。それを受け取るときに今回一緒に行動する者の写真も手に入れており金髪褐色の女性ということも頭の中に入れている。丁度本堂がそれらしき人物を遠くに見かけたとき、頭の中に声が響いた。

 

『皆様、風紀委員(ジャッヂメント)ですただいまから1200秒後、この地下街は封鎖されます、速やかに、落ち着いて避難してください、繰り返します...』

 

その響きのあとに人々は一時戸惑ったあと、一斉に出口の方へと向かいだしたのを確認して本堂は軽くつぶやいた

 

「任務...開始だな」

 

 


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