本堂はフリーの運び屋だ。
本堂の仕事はモノを運ぶこと。
たったそれだけ、それだけでも重要な仕事だ。物資がないと人は死んでしまうだろ?
それと同じで物を運ぶのはとても重要なのである。
予約は無し。その日一番最初に電話をかけたもののみ仕事をあずけることができる。
そのため深夜の携帯は鳴りっぱなしになる為一回受け取ったら電源は切る。
「あい、こちら運び屋」
気だるそうな声を出しながら本堂は鳴り響いていた電話を取る。
『ああ、よかった!早速だが指定する場所にまで来て欲しい。
そこで渡すからそれを「まあ待てよ」ん?なんだ?』
「お宅、俺の利用は初めてかい?説明しとくが昼は寝てるから仕事はできない。生物は無し。報酬は現金、前払い制だ。あとどこどこの仕事を受けるなとか仕事の指図はできない。ok?」
『・・・わかった。午前1:00に第10学区の××という廃ビルにまで来てくれ。運ぶ場所はそこで伝える。報酬も前払いだ』
「あいあい、それじゃよろしく。」
携帯の光が消えるのを確認すると本堂は黒いコートを身にまとい外へと歩き出した。
昼は寝ている、実はこれとてつもない苦労があった。
絶対回避は本人の体調も管理する。そのため生活の時間帯をゆっくりゆっくりと変えてようやく夜型の生活にできたのだ。別に本人は昼も仕事ができるが頼む側はほとんど夜。
そのため変えざる負えなかった。
「じゃ、これを第2学区まで持って行って回収する奴を待てばいいのか」
「ああ、よろしく頼んだよ」
暗くなにか出るのではないかと思うようなビルの中、
本堂は怪しい覆面をした男から黒く、中身が全く見えないプラスチックケースをコートの内ポッケとに入れて歩き出した。
本堂は特に表情も変えずに物を運んでいった。
「まったく、成功率100%のフリーの運び屋か、そんなのがいるから俺たちの仕事がなくなるんだ。いい気味だ」
本堂の姿が見えなくなると覆面をした男は忌々しそうに口を開いた。
そう、この男もまた運び屋であった。
だがしかし本堂がフリーとして活動し始めてだんだんと仕事がなくなってしまったのだ。
完全に、ということではないのだがそれだけでもこの男にとって本堂は目障りこの上ない人間であった。そのため今回溜めに溜めた金をつかい本堂を騙すことに成功したのだ。男は現在人生の中で一番ハイになっていると言っても過言ではない。
「ククク、中身については聞かずに行動するってのは怖いよなぁ。
指定場所に着いたらドカン!」
男は嗤っていた。
何も知らずただ道化師のように、
本堂の能力をただの転移だと思い込み、
それすらも超えたと自信を神のように考えていた。
「そろそろ死体は見つかったかな?いい気味だ。「そうだな、いい気味だ」ッ!?」
男の顔から笑みが消える。
それもそうだとっくに死んだとおもったに人間が背後で銃口を突きつけているのだから。
「お前・・・、どうやって!爆発するまでしっかりと信号は移動していたはず!」
「そりゃ爆発する瞬間に避けたに決まってんだろ、こちとらLEVEL5様だぜ?
そんじゃさよなら、」
響く発砲音、それと同時に飛び散る紅。男の体が地面についたあと、
本堂は男の死体に背を向け歩き出した。
「報酬は前払い、お前みたいのは何人と居たんだよ。やれ」
そうして男の死体はそれと同時に現れた黒服たちによって運ばれていった。
脳以外は無事なので素早く処置をすれば健康な臓器が必要としている人に届くであろう。そうしてできた金の一部は本堂へとまわされる、世の中はうまく回っているもんだと本堂は呟いた。