とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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第15話

 朝、大掛かりな依頼が終わった本堂は今日からまた夜型の生活にと変えるためギリギリまで寝ている。ギリギリといっても寝ているので意識は覚醒はしていなく周りにとらわれることもなく寝ていることができるこの時間は本堂が好きな時間の一つである。ふと、その時本堂は違和感を感じたらしく顔を歪めた。何かがうつ伏せになっていた本堂から布団を引っペがそうとしているらしい。だが本堂はうつ伏せのまま布団を掴み断固として布団を渡そうとせず聞こえてくる声も耳栓をしながら寝てる本堂にはまったくもって意味をなさない。

次第に飽きたのだろうか、布団を引っ張る力が弱まり本堂は再び安眠へと戻る。そこで何かを感じ取ったのだろうか、本堂は目を見開きその先にいたのは

 

「     !」

 

「………え?」

 

何かを叫んでいる少女の笑顔であった。

彼女の名は灰理優木、肉体変質(オートレイション)大能力者(Level4)であるらしく灰理の背中には綺麗に折りたたまれた翼が見える。どうやら灰理は親切心からか、本堂を起こそうとしていたらしい。それでも起きなかったのをいいことにして布団に潜り込んだらしい。灰理は本堂に憧れを抱いている、その憧れは会って一日の本堂でも分かるほどに歪んでいるといっても良い。もし灰理が活発な少女でなかったら確実に病んでいると言われても仕方なかっただろう。そんな事情を一瞬のうちに寝起きの頭で考えたあと、本堂はとりあえず顔面に拳でもでも入れようとしたが察したらしく一瞬で布団から飛び跳ねて回避する。ため息をつきながら本堂も布団からのそのそと出て耳栓を外す。

 

「...はぁ、何がしたいんだてめぇは」

 

「本堂さんの健康的な生活の支えとなれればと思いまして!」

 

耳栓を外してたばかりの本堂の耳に灰理の元気な声が響く。部屋の扉に鍵でもかけておけばよかったと本堂は後悔する。ささ、と灰理は本堂の右手を引っ張りながら洗面台へと案内をする。

 

「俺は子供か、だいたいお前に世話されることなんてねぇよお前はあくまで仕事仲間だ」

 

「それは失礼いたしました!けど朝食とか作っちゃったのでどうか食べてください」

 

と、顔を洗い口をゆすいできた本堂はリビングルームにもとより置いてあった一人で使うには大きすぎるテーブルの上に並ぶ数々の朝食メニューを見て更にため息をつく。とその時湧いた疑問を抑えるすべなんて知らぬ本堂はすぐに灰理に問う、

 

「お前、学生寮とか学校生活はどうしたんだよ...」

 

「なんかokでました!学校も一定の成績さえ収めれば登校義務がなくなる特別クラスに配属されました!」

 

「それでいいのか霧ヶ丘」

 

灰理が通う高校の名前は霧ヶ丘女学院(きりがおかじょがくいん)、第十八学区に位置し学園都市の中でも有数の名門校であると本堂は記憶している。集められているのは再現するのが難しい能力、つまりは希少な能力を集めているため多少変人が多いとも言われている。ちなみに本堂が戸籍上通っているとされているのは長点上機学園(ながてんじょうきがくえん)という能力主義の学校である。

学校の特徴は能力主義、それはつまりLevel5である本堂が頂点に君臨できると言っても過言ではない。ちなみに本堂もまた登校義務のない特別クラスに属している。

何故か?学校には規定以上の金を気持ちとして送り学校にLevel5が在籍しているということを喋ってもいいと許可して更に裏で誰かが働いた結果である。

 

「さあさあどうですか私の料理は!?」

 

「...悪くはない」

 

不貞腐れながら食べる本堂を見て灰理はまたもや喜びを隠しきれていないらしく口元を上げてニヒヒと笑っている。食べ終わり口元を自分で(灰理を押さえつけながら)拭き終わった本堂はタブレットの電源を入れる。食器は科学の街らしく全自動皿洗い機を使用。

タブレットの電源を入れて30分程たった後だろうか、タブレットが相変わらず変わらぬ音を上げて本堂を急かす。すぐさま反応して本堂は会話を開始する。

 

「こちら運び屋」

 

『ああ、ようやくつながったか最近何をしていたのかは知らないが運び屋が繋がらなくなって結構話題「いいからさっさと話せ」...はいはい、第十八学区の地下街にある店、ゲームシタクナルのカエルの人形が景品のクレーンゲームの前まで来てくれ』

 

「十八か、分かった」

 

本堂はタブレットの電源を切りポケットにと仕舞う、夏場にスーツやコートは自殺行為なので日焼け対策として長袖を通し縛られてソファに放置されていた灰理を叩き起し本堂は現場へと向かった。

 

 

 

「相変わらず地下街多いですよね学園都市って」

 

「知るか」

 

世間は夏休み後半だからだろうか、課題を終えたのかはたまたやけになって遊びつくそうとしていのかそれとも元々課題などなく夏休みを遊び呆けているのか、地下街には人が大勢いた。その人ごみの中でも翼をはやしている灰理は目立ちあまり目立ちたくない仕事をしている本堂はまたもや頭を悩ました。

 

「能力解除しろよお前」

 

「能力なんて使ってませんよ、これはあくまでも結果です」

 

声を苛立たせている言葉を気にしていないのか灰理は視線を気にすることなく意外と歩くのが早い本堂に遅れまいと涼しい顔をしながら足を素早く動かしている。これも大覇星祭(だいはせいさい)までの辛抱だと本堂は気にしないこととした。

 

「ではこいつを頼んだぞ」

 

「ok」

 

大音量が響き渡り死角が多いとされるゲームセンターはこういった物の受け渡しに便利な場所でありそれを取り締まるために店側も様々ことをしているがどうやらプロにはどうってことないことだったらしく自然に物の受け渡しが行われた。今回は文書データが入っているチップらしいが本堂には関係のないことであるためそこら辺は右から左へと受け流され持って行く場所だけ真面目に聞いていた。

昼時が近くなったためか更に混雑してきた地下街を抜けてふと時計を見ると予定の時間にギリギリになっていることに気がつく。ここから何も妨害がなければ間に合うため特にその時は焦らなかったのだが...

 

「だ、第七位の本堂拓斗くんですよね?」

 

「あ?」

 

「今度の大覇星祭(だいはせいさい)の選手宣誓に出て欲しいのですが...」

 

突如として現れた学生によって道を阻まれることとなった。

無視して歩を進めようとするがしつこくついてくる恐れを知らぬ学生に朝からイラついていた本堂がつい「やればいいんだろ!やれば!」と半ばヤケ気味に言ってしまいようやくいなくなったかと時計を見ればこのままでは間に合わない時刻をさしていた。

どうやら無意識のうちに歩のスピードが落ちていたらしい。本堂は初めての事態につい口をこぼす。

 

「不味い」

 

「どうしました本堂さん?」

 

本堂が歩くスピートをゆるめていたせいか瞳の奥に余裕が見えている灰理が口をこぼした本堂に素早く反応した。

 

「時間がこのままじゃ間に合わん、何かいい手は...」

 

「それならば!!」

 

本堂の言葉に更に顔の輝きを増した灰理が背中の羽をバサバサと動かしながら本堂の肩を掴んだ。本堂は一寸固まったあと灰理が今からしようとしていることを理解して顔を青ざめる。

 

「ま、まて落ち着け」

 

「大丈夫です!私の翼は人二人ぐらい簡単に運べます!」

 

「違うそうじゃない!いくらお前の翼がすごくても慣れていることと慣れていないことが...だからやめろ!」

 

本堂の叫びも虚しくガッチリと背中から掴まれた本堂は自慢の異能を発することもなく空の旅へと連れて行かれる。いくらどんなものからも身を守る最強の異能があるとは言え精神的には守ってくれない、本堂が絶叫を上げながら空を飛んでいく姿は見事に撮影されてネットにアップされることとなるのだがそれはまた別のお話で言う事といえばストレスによって疲れた本堂が癒しの空間へと飛ばされかけたのも別のおはなし。




なんか今までとは別のような作風になってしまった感がある。だが悪くないも気もする、あっ決して本堂は改心させませんのでご安心の程を。
ちなみに本堂は作者の中では完璧な自己中野郎です

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