とある天然の絶対回避《イヴェレイション》   作:駄文書き

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第11話

 にやり、と本堂は笑った。

退屈でしかなかったこの状況が変わったためである。

本堂の放った弾丸が貫いたのは茶髪の少女、

格好や怪我の状況を見て今回のターゲット(10032号)であることが把握することに時間はかからなかった。

 

少女は苦痛に顔を歪ませ膝から崩れ落ちる、上条当麻は何が起こったのか把握することはできていない。そして第3位は戦闘不能。

限りなく本堂にとって嬉しい状態である。

本堂は少しばかり笑いを漏らしたあと崩れ落ちた少女へと歩みを進める。

そして少しした後上条当麻が事態を把握したのか本堂の前へと立ちふさがった。

 

「邪魔だ」

 

「……お前、何でこんなことしてんだよ」

 

「は?」

 

上条当麻の言葉に本堂は理解できていない様子で聞き返す。

 

「お前の動き、ちょっと前に御坂から聞いたLEVEL5の一人だろ」

 

「………なんだ知ってんのか」

 

上条当麻は少し前、御坂美琴に話を聞いていた。

この計画にもう一人LEVEL5が関わっていることを。

だがそれはあくまでも機材などの運搬しかしていないということにより上条当麻は勿論御坂美琴も関わってくるとは思っていなかった。

そんな事情は本堂は知らなくてますますなぜ自分に喧嘩を売ってきたことを疑問に思う。

 

「なんでそんな力があんのにこんな計画に力貸してんだよ!!」

 

そんな上条当麻の激昂を含めた嘆きに本堂は耳を掻きながら答えた。

 

「別に?誰と協力したって俺の自由だろ」

 

そこで上条当麻は理解する、本堂が罪悪感どころか計画になんの考えを持っていないことに。だからこそ止めると再び右手を構え本堂を見つめる。

それを見た本堂はまたつまらなそうにハンドガンに弾を込め始めた。

上条当麻は先ほどの当たらなさから隙を伺っているために殴りかかっては来ない。あっという間にたまごめは終わり上条当麻の顔面に照準を合わせる。

上条当麻は動けない、諦めない、だがそれでも絶対にどうにかならないという時があるのである、それを告げるように本堂は引き金を---

 

ピリリリリ、と簡素な音が響いた。それに本堂は動きを止める。

それを見逃す上条当麻ではなかった。

 

「ッ!?てめっ!」

 

パッ、と本堂の手から拳銃を上条当麻は奪い取る。

ダメージではないことには反応ができない絶対回避(イヴェレイション)の短所がここに来て本堂を驚かせる。だが本堂が危機に陥ったというわけではない。

すぐさま上条当麻に入れる蹴りの体勢をとる、

そこで驚いたのが上条当麻、まさか体術を仕掛けてくるとは思いもしなかったようで咄嗟に銃を握っている左手をかばい右腕でガードをする。

ここで上条当麻の右腕が限界に達し動かすことができなり衝撃を受けたあとに腕がだらしなく垂れ下がる。

疲労困憊で片方の腕が使えない青年、まだまだ動くことが苦ではない青年。

戦えばどちらが勝つかなんて能力のあるないを抜きにして決まっている。

故に本堂は慌てることなく先程からポケットで鳴り響いている端末を取り出し通話ボタンを入れる。

 

「こちら運び屋」

 

『やぁ』

 

その声に「またか...」とげんなりした表情をしながら本堂は会話を続ける。

 

「どうした?こっちはもうすぐ終わりそうだ」

 

『いや、依頼のことで言い忘れていたことがあってね』

 

「?」

 

『クローンは"生きたまま"連れてきて欲しいんだよ』

 

「んだとッ!?」

 

その言葉に本堂は端末に顔を向け声を荒げる。

 

「いい加減にしろ?こっちの依頼を受ける条件忘れたわけじゃねぇよな?」

 

そう、本堂の条件の一つ、生きたままの生物は運ばないという条件はいつだってどんな者にだって守らせてきた条件の一つである、誇りを持っているわけではないが譲れないことの一つであった。

しかし、本堂は次の一言に誰を相手にしているのかを再認識する。

 

『そこを頼むよ"本堂"君』

 

「ッ!………チッ!!」

 

その瞬間浮かぶのは一人の女性、その顔は笑顔で満ちている、しかし段々と下の方から火で炙るように黒く焦げていく様子が見え頬のあたりに冷や汗が出てくる。

選択肢などなかった、本堂はすぐさま返答をする。

 

「分かった、生きてりゃいいんだな?」

 

 

 

 その光景を上条当麻は理解できずにただただ眺めることしかできなかった。

端末をしまった本堂に再び戦闘が始まるのかと思った上条当麻に本堂は苦々しく言い放つ、

 

「……そいつの生存は保証されたからとっとと寄越せ」

 

「ッ!……信じられるかよ!」

 

「信じなくてもいい、ただ依頼人が言うには計画は見直し、クローンどもはそれまでの生存が約束されてんだ、お前らが望むハッピーエンドだろうが!」

 

叫ぶ本堂に上条当麻は一瞬たじろいだ後、思考を急回転させる。

だが生存が約束された、その考えが浮かんだあと緊張の糸が切れたように思考が止まり上条当麻はその場に崩れ落ちた。

 

それを見届けたあと、本堂は少女に一応の止血を施す。幸運にも臓器にあたっていないようでしっかりと処置を施せば助かる程度であった。そして本堂はその処置ができる人間を知っていた。そのために本堂は先ほどの通話の時にこんなことを訪ねていた。「今じゃなくていいか」と、すぐさま本堂はもう一つの方の端末の電源を入れて急患の電話をかけたのであった。


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