アニメにカフェに私、かなりFate充してましたですし!
すごく、いいにおいがする。
例えるなら、日中太陽に当てて干していた布団に寝っ転がっているような。いつまでも、こうしていられたら。それはすごく気持ちいいな、なんて思ったりして。
「ん……」
薄く眼を開くと、ぼやけている視界。そこに映る人影を見て、自分を覗き込んでいた人物がいることに気が付いた。重い瞼で何度かパチパチと瞬きをすると、視界いっぱいに広がる褐色の肌に白髪の男、アーチャーの姿が。
「あ、れ?」
こんなふかふかのベットがあるところに、どうして彼がいるのだろう。というか、何故自分のことを覗き込んでいるのだろうか。あまり深く考えられず、ぼっーとしていると彼はすぐに自分から離れて行ってしまう。
「凜、目を覚ましたぞ」
机の前に座って何やら作業をしていた凛は、アーチャーに呼ばれたことで士郎の元へすたすたと歩いてくる。そこでようやく、ここは凛の家なのだということが分かってきた。
「どう? 気分は。少しは顔色良くなった気もするけど」
士郎の額に手を当ててうーんと唸る。怪我のせいで発熱していたのは、体力の回復と共に少し収まっているようだった。自分よりも少し体温の低い彼女の手が心地いい。目を細めて士郎はふにゃりと笑ってみせる。
「うん……ちょっとぼーっとするくらい」
「アーチャーと戦って魔力を消費した後に、あれだけ血を流したのよ? そのくらいでよく済んだわね」
案外タフなんだ、と言われほんの少しだけ嬉しくなってしまう。ほんのりと笑みを浮かべた士郎を見て、凛は目を丸くしている。
「何よ、気持ち悪い。まだ、具合悪いなら寝てなさい」
「いや、遠坂に認められた気持ちになって、ちょっと嬉しくなっただけだ」
少し頭がくらくらするが、先程の戦闘を思えばしょうがないことかもしれない。凛と校内を追いかけっこした後に、紫色をしたサーヴァントと対峙したのだ。そういえばあの時に自分の負った傷は、殆どもう痛まない。右腕を持ち上げて不思議そうにする士郎に、凛が声を掛けた。
「さっきの傷は、手持ちの宝石で何とかしたわ。あのね、あんなに血が出てて、もしかしたら腕がなくなってたかもしれないのよ? もっと、こう、気をつけなさいよ。女の子でしょ?!」
がしりと、怪我をしていなかった方の左腕を握られる。厳しい声でまくしたてるように言った凛を、士郎はきょとんとした目で見つめていた。自分に言われている言葉が、自分に当てはまると思えていないような。凛が士郎の反応に怪訝そうな目を向けると、机の上からよっこいしょという声が聞こえてきた。
「もー、凛さんのえっちー。学校でだけじゃなくて、家に帰ってまで私のこと隅々まで見るちゃうなんて、酷いですぅ~」
ゆるーい声を上げたのはもちろんみんなが予想した、迷惑ステッキルビーだ。へにょへにょと浮きながら二人の元に飛んでくる。
「えぇ、隅々見たわ。見ましたとも! でもね、アンタが一体どうやって動いているのか、全く分からなかったわよ、くっそー!」
学校で見ることが出来る優等生の遠坂凛というものは、目の前には存在せず。彼女の素の姿がありありと見せられている状態だ。本人ももう隠す気は無いらしく、べしべしとルビーを床に叩きつけている。
今回の凛との戦闘はルビーの失踪が原因のため、士郎は凛の行動を止めようとはしない。しかし、学校でのサーヴァントの奇襲の前の凛の言いかけた言葉を思い出す。
「それで、遠坂。休戦って、さっき学校で言ってたの、あれは何なんだ?」
「あ、そうそう。この馬鹿ステッキのせいで忘れるとこだったわ」
士郎の咄嗟の機転で破壊をまぬがれたステッキは、いそいそと凛から離れ士郎の元に近づいていく。
「で、あなたにしたい話っていうのはね、さっき私たちを襲ったサーヴァントがいるでしょう。あのサーヴァントが張った結界が学校にあるの。それを起動されると、学校中の人間が魔力を根こそぎ奪い取られる、ちょっとまずいことになるのよ」
魔力、ひいては人間の生命力。それを無条件に根こそぎ奪われるといわれれば、何が起きるかなんて容易く想像がついた。
マジカル☆エミィとなった自分が、魔力を使い果たした時に襲われる倦怠感。それよりも強い衰弱状態に、学校中の聖杯戦争と無関係の人間がなる。
それを考えるだけで、言いようもない怒りが込み上げてくるのを感じていた。
「まぁ、目星がついてないわけじゃないんだけど、学校にいるもうひとりのマスターを探し出すまで、私と停戦しない?」
誰かからの頼みを断る術を衛宮士郎は持たない。まして、誰かが犠牲になる未来の可能性があるのなら絶対に。
「あぁ、よろしく頼む。遠坂」
だから、士郎のその選択は必然だった。凛は自分よりも優れた力を持っていて、彼女と協力すればきっと最悪の事態を避けられる。
笑顔とともに士郎から伸ばされた手を、はにかみながら凛は握り返した。
「衛宮さんが私を裏切るまでは、あなたのことを助けてあげる。まぁ、短い間だと思うけれどね」
ふいっと顔を背ける凛の頬は薄く赤に染まっている。
「俺から遠坂を裏切ったりはしないさ。なら、ずっと一緒だ」
それから二人は、少しだけ互いの話をした。アーチャーの淹れたという紅茶とともに、少し遅めのアフタヌーンティーを。
穂群原学園の同級生としての互いは知っていたとしても、魔術師としての側面は何も知らない。凛が士郎のことを魔術師だと知らないように、士郎もまたそうだった。
士郎本来の魔術のこと、ルビーの正体が本当に分からないこと、士郎の魔術の師である衛宮切嗣のこと。士郎の魔術師らしからぬところや、切嗣の行動に怒りを見せた凛だった。それでも、何故だかこの少女ならそうであってもいいのかもしれないと。
ティーポットの中の紅茶がなくなったところで、少女たちのお茶会はお開きとなった。
「じゃあ、アーチャー。衞宮さんを家まで送ってあげてね。私は色々やることあるから」
ひらひらと手を振って凛は部屋を後にする。部屋の主の立ち去った場所に残されたのは、彼女の従者と士郎のみ。
アーチャーは何か言いたげに、凛が出て行ったドアを見つめている。出来ることなら、彼女を連れ戻してこの役割を断りたいと。なんとなく、なんとなくだが、彼が自分の側に居たくないと思っているのが伝わってきてしまって。
「……」
きゅっと口を結び、膝の上で手をきつく握りしめる。理由もなく彼に拒絶されるのは当たり前のような、そうではないような。何とも複雑な気持ちで表情を変えていた。
「……はぁ」
いつの間にか彼女に視線を向けていたアーチャーがため息をつく。何か言いたそうな表情は変わらずだが、椅子に腰かけている彼女へ手を差し伸べた。
「立てるか?」
突然差し出された男の手を凝視してしまう。
「え、あ、はい」
カラカラの喉から出たのは、何故か敬語で。自分の前に立つ彼を見上げる。士郎の反応に、アーチャーは大きく肩をすくめて見せる。
「何をそこまで緊張している。私のマスターである凛が君と停戦すると決めた。私はそれに従うだけだ」
ほら、と言われてアーチャーに右手を引かれ、勢いに任せてよろよろと立ちあがる。30㎝ほどの身長差。見下ろし、見下ろされるこの形にも少しだけ慣れてしまっている。アーチャーは窓の外の空を見ながら、突き放すような口調はそのままに士郎に言う。
「もう外は暗い。セイバーも心配しているはずだ。さっさと行くぞ」
彼に手を引かれたまま。
何事もないようにずんずんと進んでいくアーチャーに、士郎は慌てて抗議の声を上げた。
「あ、の! て、手がその、い、いつまで握ってんだ、馬鹿!」
声を荒げた士郎を、めんどくさいものを見るような目で一瞥する。もう一度、深くため息をつかれた。何とも酷い反応をされている気もするが、仕方ないだろう。誰かと二人っきりで手を繋ぐイベントなど、自分からしてみれば全くもって必要ないものだ。気恥ずかしいったらありゃしない。
ぱっと、掴まれていた手を離される。彼が自分の言い分を聞いてくれたことに驚くが、それ以上にほっとした。そもそも、凛はああいったが一人でも十分帰れるはずだ。うん、だから自分の見送りは断って、などと物思いに一瞬でも耽ったのがまずかったのかもしれない。
ふわりとした浮遊感。それが、何か理解するのに一秒とかからない。
「な、な、なにしてんだよ。アンタ、馬鹿、本当に馬鹿だろ!!」
俗に言うお姫様抱っこ、というものをされながら遠坂邸の階段を降りていく。ぶんぶんと手と足を振り回して抵抗してみるが、英霊の彼にとってみれば腕の中で子猫が暴れているようなものだろう。
「ぎゃあぎゃあとうるさい。そこまでフラフラな君を歩かせて家まで見送って行けば、何時間かかるか分かりはしない。こちらも、夕食の準備や家の掃除がまだ残っている。君一人のために、多くの時間を割くことは出来ない」
玄関の扉を開けて、外に出る。日が落ちて間もないというのに、すでに空は群青に染まり夜が、魔術師の時が近づいてきていた。
「とりあえず、落ちても責任は取らんから、しっかり掴まっていろ」
彼が駆け出そうとするが、嫌々と駄々をこねる子供の様に必死に士郎が首をふる。
「あ、ちょ、本当にやだ。私重いから……」
抑え込むように彼女の口からでた言葉。
思いもよらない言葉だった。衛宮士郎でも、そんなことを気にするものなのか。とは、アーチャーが最初に感じたことだった。しかし、自分の与えられた任務を遂行するには彼女の言い分はごくごく小さなものだ。
「君は、英霊である私の腕力を舐めているのか。君や凛であれば片手で足りる。まぁ確かに凛の方が若干かる……ぐっ」
頭頂部に鈍い痛みを感じ、言葉に詰まる。
「ひ、人が気にしてること、ズバズバとっ……」
犯人はもちろん自分が抱えている少女である。女子で人をグーで殴るやつがあるか、と小一時間ほど説教をしてやりたい気分だ。対する士郎は、頬を真っ赤に染めてアーチャーの胸元をぺしぺしと叩いていた。最初の一撃はかなりの力が入っていたが、二発目からは威力が激減しているようだ。
「む、君はそんなこと気にするような人間には……いや、すまない。私が悪かった」
頬を羞恥で赤く染め、琥珀色の瞳は涙がにじむ。
僅かにうるんでいる士郎の瞳を見て、アーチャーは発言を撤回した。
「アンタいい人かと思ったけどキライだ」
消え入りそうな声でそう言ったかと思うと、彼女はアーチャーの腕の中で縮こまってしまう。これは、色々とまずい。この体勢のまま、何かに気が付いた凛に見られたら、と考えるだけで怖い。
「……悪かった。そうだな、女性に対する配慮が欠けていた」
相手が衛宮士郎だということで、色々と失念していた。
「お詫びと言っては何だが、まぁ、いいものを見せてやろう」
「え?」
縮こまっていた体を緩く解いていると、首にぐるぐると巻きつけられた。それがふわふわとしたマフラーだと気が付くまで数秒。そして、アーチャーが自分を抱えたまま夜の空を駈けているのだと気が付くまでまた数秒。
「あ……」
どんどんと地上の明かりが遠くなる。それと同時に、頬に当たる風が一層冷たくなっていく。彼が自分にマフラーを渡したのは、体を気遣ってくれたということなのだろうか。さすがに、空の上で暴れて落下しても困るため、大人しくアーチャーの腕の中に収まる。抱き抱えられ密着したことで、彼の体温を感じる。サーヴァントだ、何だと言ってもここにいる時点で彼は生きているのだ、と。セイバーに感じた想いと同じものを心に感じる。腕の中で大人しくなった士郎を見て、アーチャーは口を開いた。
「ふん、君でもさすがにここで地面に落ちればどうなるのかくらいは分かるようだな」
相変わらず人を馬鹿にしたような言い分に、文句をと思った瞬間それが目に映った。
「綺麗……!」
どこかの大きな建物の屋上。いや、ここは冬木のセンタービルだろう。夜の街でも爛々と輝く、人工的なネオン。眼前いっぱいに広がる夜景に、それ以上の言葉を失っていた。冬木の夜景は、日本でもベスト3に入るほど名高いものだと誰かが言っていた。しかし、実際にこの街に住んでいるとわざわざそれを見ようとすることなんてあまりない訳で。その上、こんな普通人の立ち入らないような場所で見ることなんて、今後二回目は訪れないかもしれない。
こういう、特別なもので女子を釣ろうとするだなんて、全く男の考えることは単純だ。それでも、彼からもらったこの景色は、きっと忘れられないのだろうなと、それ以上に単純な自分自身に少し笑ってしまった。
ささやかなアーチャーからのお詫びを堪能し、士郎は衛宮邸の前に送り届けられていた。明かりのついている家の中をみて、セイバーだけではなく大河も来ていることが分かる。夕食の支度をせかされるだろうな、と少しだけ憂鬱になりながら家の中へと足を進めた。
「衞宮士郎」
「なに、アーチャー?」
呼び止められ、くるりと士郎が振り返る。長い明るい色をした髪が、夜の闇の中で弾けるように輝いていた。幼い顔立ちとはいえ、彼女はまぎれもなく成熟している一人の女性で。
あぁ、どれほど願ったって、アレとはもはや別物だ、と。アーチャーは憎々しげに心の中で嘆息した。
「いや、大したことでは無い。ではな」
踵を返し立ち去ろうとしたアーチャーの背中に、慌てたような声が掛けられた。
「あのさ、ありがとう」
ぴたり、とアーチャーの足は止まった。
「ありがとう、その。助けてくれて」
学校で敵のサーヴァントと対峙し、彼の矢で自分は助けられた。また、誰かに助けられた。
アーチャーは背を向けたまま、何も言おうとはしない。
――助けた、誰が、彼女を助けたという?
胸の中で底知れぬ感情が湧き上がってくるのを感じた。
嫌悪、厭忌、憎悪、怨嗟。それのどれとも近く、どれとも異なる。しかし、その想いは黒く、醜いものだということだけが分かっていた。
彼女の礼には何も返さずに。アーチャーは自らのマスターの元に戻るべく、体を粒子に変えていった。
何も言わずに消えてしまったアーチャーを、名残惜しそうに見ていた。彼の自分への反応を思い出せば、そんなに驚くことでもないだろう。ふと、自分の首に残るマフラーを思い出す。毛糸で編まれている赤いマフラー。嫌いな相手にも、こんなものを送ってくれるあの男は、存外お人好しな一面がありそうだ。
丁寧に首から外し、畳んで手に持つ。明日の学校で凛に渡せばいいだろう。家に入る前に郵便受けを確認するが、夕刊も入っていない。大河がそこまで気を回してくれたとは考えにくい。一体誰が、と一瞬不思議に思うが、玄関に近づきふわりと薫ってきた料理中であることが伺える匂いでこの家に来てくれた人物が分かる。
今日の夕飯は、肉じゃがを作ってくれたのかなんて嬉しく思いながら玄関の引き戸を開けた。ガラガラと音を立てたことで、その人物にも自分の帰宅が分かったようで。パタパタと廊下を駆けてくる音がする。そして、予想通り。ピンク色のエプロンをつけ、満面の笑みで自分に声を掛けてくれる存在。
「あ、おかえりなさい、先ぱ……」
「ただいま、さく……」
ら、と最後まで彼女の名を言う前に気が付いた。しかし、すでに時は遅い。しまった、またやってしまった、と。弁解をしようとする前に、紫の少女の驚愕に満ち溢れた悲鳴が迸った。
「ど、どなたですかーー?!」
緊急キャラ別予告!
師匠:これからのBe with you!で活躍する(はずの)キャラたちのセリフを集めたぞ!
桜
「先輩の彼女とかでは無くて、先輩の妹さんなんですか? その、彼女とかじゃなくて? 彼女とかじゃなくて!」
「あのですね、私、先輩のこと好きなんです」
大河
「うんうん、桜ちゃんとシェロちゃんが並ぶと、良妻感たっぷりって感じよね!」
「……し、ろ………」
キャスター
「さあ、あなたの返答を、今ここで聞かせてちょうだい」
「あはははは、歓迎するわ!」
ワカメ
「人違い? 馬鹿にしてんのかよ、お前はどこからどう見ても衛宮士郎だっつーの」
「命乞いしろよ、衛宮。そしたら、遠坂と一緒に助けてやってもいいぜ」
金ぴか&セイバー
「よい、実によいぞ。セイバーを正室、シロウを側室として迎えてやろうではないか!」
「英雄王、そこから動かないでください。今すぐにぶった斬りに行きますから」
ランサー
「悪りぃな、運がなかったと諦めてくれや」
「ったく……また、こんな役回りか。いつもいつも、俺の女運はひでぇもんだな……」
凛
「聖杯戦争にも息抜きは必要なの。いいから、四人で出掛けるわよ!」
「何それ……。最低よ、アンタッ!!」
アーチャー
「戦う意義の無い衛宮士郎は、ここで死ね」
「……なんだその目は気味が悪い」
???
「ルビーちゃんに不可能はありません」
「呼ばれて飛び出て……あら? 版権の問題でこれ以上は言えない? まぁいいです。私は誰か、と聞きましたね。仕方ありません、お教え致しましょう! 私は宇宙の平和と秩序を守る絶対的正義、超銀河系魔法少女、その名を……」
士郎
「いや、好きとかそういうのじゃなくて、憧れというか、その、えっと。かっこいいなって、そう思ったんだ」
「ごめんなさい。約束、破っちゃった」
師匠:えー、ここで使用されたセリフは、本編で使用されない場合もございますので、あらかじめご了承ください!
弟子1号:とりあえず、アニメ見ながら頑張って行くッス! 私もう出番ないけど
ルビー:イリヤさんはプリヤがありますから。いやー、それにしてもHFの金ぴかさんが楽しみですね! それではまた次回、お会いしましょう!!