遊戯王GX イレギュラー・シンクロン   作:埜中 歌音

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車輌の巨人は頭蓋の墓碑を打ち砕く

十代&翔 LP3700 手札0:3

H-C エクスカリバー Def2000(ORU0)

E・HEROワイルドジャギーマン Atk2600

E・HEROフレイムウィングマン Def1200

セットモンスター1

レインボー・ヴェール(装備魔法)

セットカード3

成功&玲LP4250 手札1:3

ワイトキング Atk7000

ワイトキング Atk7000

ワイトキング Atk7000

ワイト夫人 Def2200

セットカード1

ライトロードの神域

 

 

「──────墓地の光属性モンスターと闇属性モンスターを、1体ずつ除外する」

 

数ある遊戯王のカードの中でも、この召喚条件をもつモンスターは数えるほどしかいない。

そして、そのいずれもが、一度はリミットレギュレーションに関わったことのある強力なカードだ。

 

「光と闇の魂を生贄に──」

 

パワーバランスを崩壊させるほどの、混沌の力──その力は亜空間に干渉し、相手モンスターを異次元の彼方まで吹き飛ばす。

時間と空間を超える、混沌の騎士。

 

「現れろ、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》!!」

 

黒とも白ともとれない不気味な影が、成功のフィールドに満ちる。

ぐねぐねと蠢く不気味な影。その影が、内側から2つに割れた。

《カオス・ソルジャー》が右手の剣を一振りし、混沌の影を両断したのだ。

 

 

 

───────────────────

 

 

「《開闢(カイビャク)》……!?」

 

「そう。あまりの強力さから、わずか(⚫︎)(⚫︎)で生産停止になったカード……成功クンの切り札はアレよ。除外、それと連続攻撃。ダメ押しの一手、逆転の突破口……どんなときにでも(⚫︎)が飛び出してきて、正功クンを勝たせていくの」

 

「一年生側のフィールドの壁モンスターは4体……空城先輩、泉谷先輩組は3体の《ワイトキング》も含めて5回の攻撃がある」

 

「三沢クンの言うとおりね……その中の一撃でもダメージが通れば、赤いボウヤ達の負け……しのぎきれるかしら?」

 

「……フ、」

 

「……亮?」

 

「……ああ、いい目をしていると思ってな……」

 

「そうね、十代はまだ諦めてない。彼のフィールドには……」

 

「……いや、明日香。(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)じゃあない」

 

 

───────────────────

 

 

立ちはだかる驚異。明らかに、格の違う存在。

十代は観戦席の一団と違って、《開闢の使者》の効果は知らない。データとして表示される攻撃力3000という数値だけが、彼が知る唯一の相手の情報だ。デュエルディスクのボタンを押せば効果の確認もできるが、普段から十代はその行為を嫌っていた。

それが、今は。

十代はカードの効果の確認も、それどころか目の前の《開闢の使者》を倒すということすら忘れていた。ただ、目の前の強者を眺めていた。

恐怖(おそれ)──? 否。

否、否であるが、しかし。

十代の背筋に、寒いものが走ったのは事実だ。

 

(……こいつは……やべぇ……)

 

本能が知らせる。心のどこかで危険信号が響く。焦りが脳を支配して、思考に空白が生じる。

 

「──『時空突破・開闢(かいびゃく)双破斬(そうはざん)』!」

 

十代の意識が再びデュエルに向いた、その時には。

《ワイルドジャギーマン》と《フレイムウィングマン》が、《開闢の使者》によって斬り伏せられていた。

 

(やべぇ、俺たちのフィールドにはモンスターがあと2体……《ワイトキング》3体の攻撃を受けきれねえ!)

 

遅まきながらも十代は、自分の置かれた窮地を自覚する。ここを防がなければ負けてしまう、その一手が、

 

「《ワイトキング》で《エクスカリバー》を攻撃!」

 

その一手が、

 

(伏せカードは……何伏せたっけ……)

 

「続いて《ワイトキング》で伏せモンスターを攻撃!!」

 

(ここを、防がねえと……)

 

十代の目の前で、翔の伏せたカードが《ワイトキング》の指に切り裂かれる。

 

「3体目の《ワイトキング》でプレイヤーにダイレクト──」

 

 

 

 

「《ジャイロイド》は1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない!」

 

 

 

 

颯爽と響く、翔の声。

《ワイトキング》から二人を守るように立ち塞がる、飛行機のモンスターの姿があった。

残る刺客は《ワイトキング》1体のみ。《ジャイロイド》1度ながら屍の王(ワイト・キング)の攻撃を受け切り、十代と翔のライフを守る最後の壁として構えている。

 

「──くっ、いけると思ったんだけどなあ!《ワイトキング》で《ジャイロイド》に攻撃するよ!」

 

成功の目は《ジャイロイド》を射抜き、その視線を追うように《ワイトキング》が拳を振り上げる。

 

「リバースカード、オープン!」

 

翔は引き下がらず、さらに伏せてあったカードの発動ボタンに手をかけた。

 

「《スーパーチャージ》! 自分フィールドのモンスターが《ロイド》1体だけの場合、相手の攻撃宣言時にカードを2枚引く!」

 

《ジャイロイド》は破壊される。だがその犠牲によって、翔は自分のターンと2枚の可能性を勝ち取っていた。

その眼光はまっすぐに、《開闢の使者》の向こうの成功と玲を捉えている。

 

「っくぅ〜……このターンで決められると思ったんだけどなぁ……」

 

対照的に、悔しそうな成功はターンの終了を宣言した。

 

「ターンエンド、だよ。十代くんの噂ばかり聞いてたけど……君もなかなかやるね、翔くん」

 

翔と成功の視線がぶつかり合う。

 

「さすが、亮くんの弟だ。侮れない」

 

『亮くんの弟』、成功が何気なく吐いたその言葉に、翔の肩が少し震えた──ように、十代は感じた。

 

「僕は…………」

 

声の勢いに影が落ちる。弱々しく震え、絞り出すように放たれた言葉は、成功には届かずにかき消える。

 

「ぼ、ぼくは…………」

 

「翔」

 

震える肩に、十代の手が乗った。

 

「アニキ……」

 

「ありがとな、翔。……お前のおかげで助かったぜ! カイビャク? あの強そうな奴が出てきた時、俺『負ける!』って思っちまったけどさー……いや、お前とのタッグじゃなかったら負けてた。俺は翔と《ジャイロイド》に救われたんだ!」

 

翔の瞳が失った輝きを、今回は十代が宿していた。十代は肩に置いた手を滑らせて翔の背中を押し、「次はお前のターンだぜ」と告げる。

 

「う、うん! アニキ!」

 

光を取り戻した翔が、デッキの一番上に手をかけた。

 

「僕のターン!」

 

 

 

十代&翔 LP3300 手札0:5

セットカード2

成功&玲LP4250 手札0:3

ワイトキング Atk7000

ワイトキング Atk7000

ワイトキング Atk7000

ワイト夫人 Def2200

カオス・ソルジャー-開闢の使者-

セットカード1

ライトロードの神域

 

 

 

───────────────────

 

「し、凌いだァー! 丸藤ナイス!マジナイス! しかしまさかあの盤面《ジャイロイド》で凌げると思ってなかったー……」

 

「なんとか、躱せたな……本当に、『なんとか』だが……」

 

「ゆ、遊奈も大地も心配しすぎだよ……じじ十代と翔なら、ししし心配ないって……」

 

「そ、そう言う遊海くんだって声が震えているぞ!」

 

「はーぁ、たった1ターン命拾いしただけで騒ぎすぎなのよ、一年連中は……重要なのは次のターン。ただの延命になるか、それとも……」

 

「あらお姉様? まるで『それとも』を期待してるみたいな声色ですこと」

 

「なワケないでしょブッ殺すわよ雪乃」

 

 

───────────────────

 

「僕のターン、ドロー!」

 

眼前に構える高い壁。攻撃力7000のモンスターが3体と、《開闢の使者》。そんな盤面を見据えて翔は、逆転に向けてカードを切る。

 

「《強欲な壺》でカードを2枚ドロー……僕は手札を1枚捨てて、墓地の《ジェット・シンクロン》の効果を発動! このカードをフィールドに特殊召喚する! さらに手札の《ミキサーロイド》を通常召喚!」

 

手足の生えたジェットエンジンが、ミキサー車の中に消えた。

 

「《ミキサーロイド》はフィールドの機械族モンスターを生贄に、デッキから風属性以外の《ロイド》モンスターを特殊召喚できる! 来い、《エクスプレスロイド》!」

 

ミキサー車の中から飛び出したのは、新幹線を思わせる流線型の《ロイド》だった。

 

「さらに《エクスプレスロイド》の召喚、反転召喚、特殊召喚に成功したとき、墓地から《エクスプレスロイド》以外の《ロイド》を2体、手札に加える! 僕が選ぶのは《ドリルロイド》と《サブマリンロイド》! いくぞ、僕は……」

 

手札を選ぶその指先に、迷いがよぎる。

その迷いを振り払うように、翔は(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)をディスクに差し込んだ。

 

「僕は魔法カード、《パワー・ボンド》を発動します! 場の《ミキサーロイド》、《エクスプレスロイド》、手札の《ドリルロイド》《サブマリンロイド》《キューキューロイド》を融合……5体の《ロイド》、合体しろ!」

 

それは、『乗り物(ビークロイド)』と呼ぶにはあまりにも攻撃的で。

 

「《極戦機王ヴァルバロイド》!」

 

紅の巨大な鉄の城が、翔のフィールドに聳え立つ。

 

「攻撃力……8000か!」

 

成功の苦しそうな声のとおり、《パワー・ボンド》で倍化したその攻撃力は8000だ。

 

「……部分的に指定のあるモンスター5体を要求する融合召喚……攻守4000でも、まだ足りない……(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)、おそらく何か別の効果が」

 

「うん、気をつけよう。しかし、こうも軽々と《ワイトキング》を超えられると困るなあ……」

 

「エンドフェイズに《パワー・ボンド》のデメリット効果で4000ダメージを受ければ、彼らのLP(ライフポイント)は尽きる。でも」

 

「そんなことは翔くん()が一番わかってるはずだ。きっと対策はあるだろうさ」

 

成功と玲の眼が鋭さを増す。《開闢の使者》と《ワイトキング》の眼光の先にあるのも、ターンプレイヤーの翔と《ヴァルバロイド》の姿だった。

その視線を一身に受け、翔は、

 

「速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動し、僕は除外されている《エクスプレスロイド》、《トラックロイド》、《ステルスロイド》を墓地に戻して……墓地の《ミキサーロイド》の効果を発動! ライフを半分払い、このカードを含む機械族モンスターを好きなだけ除外して発動できる──」

 

《ミキサーロイド》のドラムに吸い込まれる、墓地の《ロイド》たち。

 

「──除外するのは《ミキサーロイド》、《ジャイロイド》、《レスキューロイド》、《キューキューロイド》、《エクスプレスロイド》、《エクスプレスロイド》、《ドリルロイド》、《ステルスロイド》、《トラックロイド》、《スーパービークロイド -ステルス・ユニオン》、の10体! そして、除外したモンスターの数と同じレベルを持つ《ロイド》融合モンスターを、エクストラデッキから特殊召喚できる! 来い、《スーパービークロイド -モビルベース》!!」

 

《ヴァルバロイド》の隣に鋼鉄の巨人が並び立つ。デュエルフィールドの天井を突き破らんとするその立ち姿は、《ヴァルバロイド》よりもさらに大きいものだった。

 

「守備力5000……いや、攻撃力ゼロ!?」

 

低すぎる攻撃力に戸惑う成功。その隣では玲がじろりと《モビルベース》を睨みつけた。

翔は玲のフィールドに立つ《ワイトキング》を指差し、さらに声を張り上げた。

 

「攻撃力7000の《ワイトキング》を対象に《モビルベース》の効果発動! 対象より攻撃力の低い──つまり、攻撃力7000以下の《ロイド》を1体、デッキ、エクストラデッキから特殊召喚できる! 僕はこの効果で、《スーパービークロイド-ステルス・ユニオン》を特殊召喚する!」

 

《モビルベース》の四肢が展開し、そこから飛び出した4機の《ロイド》が空中で変形合体を遂げた。《モビルベース》や《ヴァルバロイド》には及ばないが、巨大な鋼鉄の巨人がさらに一機、翔のフィールドに加わる。

 

「すげェ! いいぞ翔!」

 

「あのモンスターは……相手のモンスターを装備カードにするカード」

 

十代は次々と召喚される機械の巨人に目を輝かせ、玲が奥歯を噛み締めた。翔は《ワイトキング》に向いた指を下げずに、《ステルス・ユニオン》の効果発動を宣言した。

 

「《ワイトキング》を対象に《ステルス・ユニオン》の効果を発動! 《ワイトキング》を吸収しろ、《ステルス・ユニオン》!」

 

《ステルス・ユニオン》の鹵獲(ろかく)用アームに捕らえられた《ワイトキング》が、《ステルス・ユニオン》の胸部のトラックに閉じ込められる。

 

「さらにフィールド魔法《メガロイド都市(シティ)》を発動して……いきますよ先輩たちっ、バトルフェイズ! 《ヴァルバロイド》で《ワイト夫人》を攻撃!」

 

《ヴァルバロイド》の主砲が大口径の熱戦を放つ。《ワイト夫人》はその光線を受けて塵になった。

 

「さらに《ヴァルバロイド》の効果発動! 相手モンスターを戦闘で破壊したとき、相手に1000のダメージを与える!」

 

「「なっ!?」」

 

成功と玲が、同じタイミングで驚いた。《ヴァルバロイド》のパックパックから射出されたミサイルは二人の足元に着弾し、仮想の爆風が二人を襲う。

 

成功&玲 LP4250→3250

 

───────────────────

 

「……今のおかしいよね、遊奈」

 

「笹島さん……うん、《ヴァルバロイド》の攻撃力は8000。《ワイトキング》の隣で棒立ちになってる《開闢》を攻撃すれば5000ダメージでそのまま勝ててたはずだ。三沢はどう思う?」

 

「伏せカード警戒か……何か考えがあると信じたいが……それに《メガロイド都市》には、ダメージ計算時のみモンスターの攻守を反転させる効果がある。その効果を使えば《モビルベース》の攻撃力は実質5000、しかし翔は《モビルベース》を守備表示で特殊召喚した……」

 

「翔……」

 

「丸藤……」

 

「何か……策があるのか……?」

 

───────────────────

 

 

「続いて僕は──」

 

《ヴァルバロイド》の攻撃の後。

翔は指を次の攻撃対象──ではなく、デュエルディスクのボタンにかけた。

 

「リバースカード、オープン! 永続(トラップ)《リビングデッドの呼び声》で墓地の《サブマリンロイド》を復活、攻撃表示!」

 

翔のフィールドの地面が不自然に歪み、潜水艦が上半分だけ浮上した。それは再びずぶずぶと地面に沈んでゆく。

 

「《サブマリンロイド》は相手に直接攻撃できるモンスター、《サブマリンロイド》でダイレクトアタック!」

 

「そういえば墓地に落ちてたねそんな伏兵……くっ!」

 

成功&玲 LP3250→2450

 

魚雷の爆発を受け、成功たちのライフポイントは2000を下回った。

 

「……だけど《モビルベース》は守備表示、攻撃力3400の《ステルス・ユニオン》じゃあ《カオス・ソルジャー》は倒せてもライフは削りきれない! 」

 

(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)。一つだけ、《リミッター解除》という可能性がある」

 

「そっかあ、機械族だったらそれも注意しないとね……」

 

成功と玲は言葉を交わしながら、しかし翔の動向から目を離していない。成功の口元には不敵な笑み、玲の瞳には冷たい余裕が宿っている。

それをこぼれ落ちた本心と見るか、欺くためのブラフと見るか。

覚悟を決めるように翔の腕が伸び、呼応するように《ヴァルバロイド》が砲身を上げた。

 

「攻撃を終えた《サブマリンロイド》は守備表示になる……そして《極戦機王ヴァルバロイド》は、一度のバトルフェイズに2回攻撃できる! いけ、《ヴァルバロイド》! 《カオス・ソルジャー》に攻撃!」

 

2発目の熱戦が《カオス・ソルジャー》を狙う。咄嗟に盾を構える混沌の戦士だったが、その攻撃力の差は歴然。

 

「これが通れば、俺たちの勝ちだ!」

 

十代の言葉通り、光線の余波は《カオス・ソルジャー》ごと成功たちのライフポイントを削り切って余りあるほどの威力だ。

その光が、成功と玲のフィールドを貫く。

《カオス・ソルジャー》を消し飛ばし、二人のデュエリストのライフポイントを、ゼロに──

 

 

「リバースカード、《パワー・ウォール》!」

 

 

《ヴァルバロイド》の熱戦は、半透明の障壁に弾かれた。

玲を守るように立ちはだかる成功の姿。差し出した右手のカードから、二人を守る光の壁が展開されていた。

 

「相手モンスターの攻撃でダメージを受ける時、そのダメージを0にして、受けるはずだったダメージ500につきデッキの上からカードを1枚墓地に送る!」

 

吹き上げられたように宙を舞い、成功の墓地に吸い込まれてゆく10枚のカード。その内容を確認して、成功は小さくため息をつく。

 

「十代くん、翔くん……とても、とても楽しいデュエルだった。だけどこの勝負は、僕たちの勝ちだ」

 

「何を言ってるんだよ成功! 俺たちはまだ負けてねえ!」

 

食ってかかる十代に、成功は墓地から2枚のカードを抜き取って見せる。

 

「さっきの《パワー・ウォール》で、《超電磁タートル》が墓地に落ちた。これで君たちのバトルフェイズを、いつでも終わらせることができる。……さらに、《ヴァルバロイド》にはモンスターを破壊したとき、1000ポイントのダメージを与える効果があるんだろう? 墓地の《ペロペロケルペロス》を除外すれば、《ヴァルバロイド》を破壊できる。それにエンドフェイズ、君たちは《パワー・ボンド》で4000ダメージを受ける……絶体絶命に見えるけど、ここから勝てるのかい? 翔くん」

 

成功に名を呼ばれ、翔はその顔を見返した。

 

「……楽しい、デュエルだったッス。成功先輩。それと、泉谷先輩」

 

笑顔。

翔の顔にある爽やかな笑顔が、成功に驚きを与えたようだ。成功は目を丸くしてから、笑顔を浮かべる。

 

「……だけど、最後まで負けるつもりはないッスよ。僕はバトルフェイズを終了……その前に、《ヴァルバロイド》の効果で二人に1000ダメージを与えるッス」

 

「……なら墓地の《ペロペロケルペロス》を除外して、《ヴァルバロイド》を破壊するよ」

 

成功&玲 LP2450→1450

 

紅蓮の戦車が朽ち果て、翔のバトルフェイズが終わった。

誰もが。

成功と玲の勝利を確信してか、声を出さずにデュエルの行方を見守っていた。

翔に残された唯一のプレイ、ターンを終了する声を待ちわびて、観客席は静寂に満たされていた。

その中で、

一際大きく輝く、

彼の声。

 

 

しかしそれは、ターン終了の言葉ではなく。

 

「メインフェイズ2、《融合》を発動! 《ロイド》で融合モンスターの《ステルス・ユニオン》と《サブマリンロイド》を融合し……2体目の《スーパービークロイド -モビルベース》を融合召喚! 」

 

鋼鉄の巨人が二機、同じポーズで並び立った。

 

「なぜ、同じモンスターの召喚を……? 壁の数が減るだけじゃない、《ステルス・ユニオン》が装備していた《ワイトキング》が墓地に落ちたことで、場の《ワイトキング》の攻撃力が8000に……」

 

「僕はレベル10の《モビルベース》2体で(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)(⚫︎)!」

 

成功の言葉を遮って、翔は高らかにエクシーズ召喚の宣言を行った。

渦巻く銀河に、2体の巨人が吸い込まれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築……エクシーズ召喚!」

 

フィールドに敷かれた軌道。

 

「ランク10、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」

 

その上を走る車両に積まれた砲塔が、

 

「《グスタフ・マックス》の効果発動!」

 

火を噴いた。

 

「オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、相手に2000ポイントのダメージを与える!!」

 

 

 

成功&玲 LP1450→0

 

Winner 十代&翔

 




お久しぶりです。埜中です。
……前回が2015年11月、ほぼ3年振りの投稿ですね。
たった7000字を書き上げる間に長すぎる時間をかけてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
環境の変化などで創作意欲が削がれ、《レベル・スティーラー》の禁止カード入りがトドメとなって、この小説をほとんど諦めていました。
別名義でリメイクしたりしてましたが、それも新マスタールールが施行されてストップし……三年間、放置し続けてしまいました。
それをふと思い出して、昔のノリで書き進めていると楽しくて楽しくて……人目にさらすつもりもなく書きたいように書いたものを、衝動に駆られて投稿してしまいました。
正直、次にいつ失踪するか、自分でもわかりません。この話だけでまた更新がストップしてしまうかもしれません。
それでも書けるだけ、自分のペースで更新し続けていこうと思っています。
では、最後になりましたが、こんな駄文を読んでくださった皆様に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。皆様にささやかな幸せがありますように。

2018年10月某日 埜中 歌音

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