「……遅れなかったな」
「当たり前だろウ?」
「なら、さっさと行くぞ。お前が誰かにばらしてないとも限らない」
「そうなことしてないヨ!」
騒いでいるアルゴを置いてレンは歩き出した。
「そう言えば、あんまり詳しく聞いたことなかったけれど、レン坊の武器はなんなんだイ?」
ボス部屋に向かって歩いているとアルゴが話しかけてきた。
「……口外しないと誓えるか?」
「これでも情報屋だからネ、そのへんは大丈夫ダ」
「……銃だ」
「エッ?」
「…………だから、銃だ」
「初めて聞いたよ、見てもいいカ?」
「……これだよ」
「へぇー、て重イ?!」
アルゴがジャッカルを受け取ったがその重さに耐え切れず地面に落とした。その時地面に小さなクレーターが出来たが気のせいだろう。
「よくこんな重たいものを持てルネ、やっぱりその身体だからなのかナ?」
レンの身長は195cm程もあり某ジョースターの家系の子とほとんど同じような身長だ。それプラス全身が筋肉質で厳つい顔をしていれば、パワータイプと自分から名乗っているようなものだ。
「……身長は関係ないだろう、そろそろ着くぞ」
アルゴと喋っていたおかげで気づいた時にはボス部屋の前まで来ていた。
「……本当にやるのカイ?無謀だヨ」
「……何度も言わせるな、無理なやここに来ていない」
そう言って扉を開けた。
中に入ると部屋の端から順に炎が点っていく、部屋の奥まで炎が灯るとボスの姿が見えた。
「……あれがボスか」
「インファング・ザ・コボルト・ロード、盾と斧を使ってくるボスでHPゲージが残り一本になると曲刀に持ち変えるヨ」
「……アルゴはそこにいろ」
「なんでさ、オイラも少しは戦えるヨ」
「……こんな所で貴重な戦力を失うのは馬鹿らしい。俺だけでもまだ倒せる範囲内だ」
駈け出すと壁の穴から取り巻きが出てきた。
「……まずは一発」
取り巻きの頭に向かって撃ちこむとエフェクトを散らしながら頭が吹き飛び、少し遅れて体全体がガラスの割れるような音で消えた。
「スゴイ…………」
「……まだ取り巻きだ、ボスじゃない」
「イヤイヤ、ボスの取り巻きを一発で仕留めてるレン坊も大概チートだゾ?」
「……言っていろ、来たぞ」
取り巻きが殺されて危機を感じたのかコボルトロードがこちらに飛び上がって来た。ジャンプ攻撃を避けるついでに盾に何発か当てて壊しておく。そうしてからコボルトロードと対峙する。お互いに相手を警戒していてどちらも動きがない。と、不意にコボルトロードが斧で斬りかかって来た。それを躱し頭に数発。流石に取り巻きの様に頭が吹き飛ぶことはなかったが、それでも相当のダメージがあったようだ。叫び声と共に背中から新しい武器を取り出しソードスキルを発動させた。
「……?!レン坊!アイツの持ってる武器、曲刀じゃない!刀だ、避けテ!」
「……避ける必要はない」
そう言ってレンは迫り来る刀の中程を撃ち抜いた。振られる速度とありえない硬度の弾とのぶつかり合いで簡単に刀は折れてしまった。
「……もう武器はないな、ここからはただの虐殺だ」
「……終わったぞ」
巨大なエフェクトをまき散らしながら死んだコボルトロードを見送るとアルゴはこちらにやって来た。
「まさか本当に一人でボス攻略するだなんて………未だに信じられないヨ」
「……まぁ相性の問題だろ?俺はこれから上層に行く。だからここでお別れだ」
「オイラも着いて行くヨ」
「……情報屋としてこの事を伝えなくていいのか?」
「オイラはレン坊と一緒にいたいんだヨ?」
「……冗談もほどほどにしておけ、それじゃあな」
そう言ってレンは歩き出した。
「…………………………レンのバカ」
ヒロイン候補その一、アルゴでした