黒き殺意の凶弾   作:粉プリン

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ボス攻略前

ゲームが始まってから一ヶ月が経過した。その間に実に二千人近くが死んでいるという噂だった。だが、一瞬後には仲間が死んでいてもおかしくない戦場にいた身としては今の世界は少し物足りなさを感じていた。とりあえず人が何人死のうが自分には関係ない。俺にはこの世界から出て茅場に会うという目標が出来た。それまでは死んでやる気はない。もちろんその後も死ぬ気はないが。

 

「オーイ、レン坊」

 

歩いていると向こうからフードを被った女が走ってきた。

 

「……なんだ、アルゴ?」

 

そいつは鼠のアルゴと呼ばれるSAO内でも珍しい情報屋だった。どうやらベータテスト時代から入るらしく自分の情報を掴もうと近づいてきたところを逆に捕まえ、他人に情報を売らないようにした。

 

「ツレナイねぇ、最近レベリングばっかりで合わなかったから寂しかったんだゾ?」

 

「……冗談もほどほどにしておけ、何が掴んだのか?」

 

「今日の昼からボス攻略会議があるみたいだからレン坊にも伝えておこうと思ったんだヨ」

 

人のことをレン坊と呼んだりするアルゴだが仕事の時は割と真面目に働いているらしく情報の精度は高かった。しかし今回の情報はあまり役に立たないだろう。

 

「……攻略会議には出ない」

 

「それじゃあ、ボスが倒せないゾ?」

 

前に戦いを求めてこの世界に来たと言っていたからかアルゴがそんなことを聞いてきた。

 

「……問題ない、今日の夜にはボスを倒しに行く」

 

「へぇー……………エッ?ほ、本気で言ってるのカ?!」

 

「……お前と違って冗談は言わない」

 

「一人じゃ無謀だゾ!それにボス部屋の場所もわからないだろウ!」

 

「……既にこの階のマッピングは終わらせてある、それにボスにも何回か手合わせをしてパターンは掴んである。問題はないだろう」

 

傭兵だった頃のレクリエーションの経験を活かし、NPCから手に入れた情報を元にボス部屋を見つけたのが一週間前、パターンを掴み準備を終わらせたのが昨日の昼。今日の夜にはアルゴが来てなかろうとボス攻略をしようとしていたのだ。

 

「な、ならオイラも付いて行ク!」

 

と帰ろうとするとアルゴがそう提案してきた。

 

「……一人で十分だ、それに危ないだろう」

 

「連れて行かないならこのことをキー坊に伝えるヨ?」

 

キー坊と言うのが誰だかは分からないがおそらくトップの連中なのだろう。そうなれば自分がこの先ボスに挑める機会が減るかもしれない。それだけはゴメンだ。

 

「………………はぁ、夜の12時に転移門前だ。遅れたら置いていく」

 

「!よし、絶対だゾ!」

 

そう言って慌ただしくアルゴは戻っていった。

 

「……騒がしいやつだ」

 

 


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