あれからしばらくして、俺は今55層にある血盟騎士団のホームにやってきていた。今朝早くアルゴからアスナ経由でヒースクリフからの呼び出しがあったらしい。アスナとヒースクリフは知らないが、おそらくこの前シリカにプネウマの花を渡した時にいた女がアスナで、血盟騎士団の団長とやらがヒースクリフなのだろう。ヒースクリフについてはアルゴから少し話を聞いたが、ユニークスキルの持ち主だとか、HPゲージが黄色になったことが無いといった話を聞いたがどれもあり得なさそうな話であった。銃を使う自分ですらHPが赤くなったことがあるというのに。それに関しては当たりをつけているが。
「……ここか」
目の前には要塞とでも言うべき大きさの城があった。これだけの物を購入出来たところから血盟騎士団の強さが伺えた。入り口の門兵に話を聞くと案内がもうすぐ来るらしかった。
「おぉ、アンタが団長の言ってた客人か!名前はゴドフリーだ。早速案内するぞ!」
待っているとゴドフリーと名載った暑苦しい男が案内してくれた。
「ここが団長の部屋だ、粗相のないようにな!」
「……分かった」
部屋の中に入ると質素な感じのインテリアだった。中央のソファーに座っているのがヒースクリフなのだろう。
「やぁ、よく来てくれたね。そこに座るといい」
「……要件は何だ?」
「実はアスナ君から話を聞いてね。黒の剣士に引けを取らないソロプレイヤーがいると聞いてね。是非話してみたくここに呼んだのだよ」
「……他に強いソロプレイヤーならいるだろう」
「アスナ君曰く、SAOでは珍しい銃を使うと聞いたが?」
「……あぁ、そうだ」
「君のようなユニークスキルを使う者は少ない。私としては少しでも戦力を確保しておきたいのでな」
「……つまり俺に血盟騎士団に入れと?」
「そういうことだ」
「……断らせてもらう」
「理由を聞かせてもらえるかな?」
ヒースクリフが軽く笑いながら語りかけてくるが、
「……正体を偽っている奴の元にはつかない主義でな、茅場晶彦」
次には軽く驚いた顔をしていた。
「………………いつ気づいたのかね?」
「……仕事の関係、依頼人の顔や声は覚えるようにしている。初めてここに来た時のチュートリアルの声とあんたの声が似ていたからな」
「それだけかい?」
「……銃を使う俺ですらここまで来るとHPゲージが赤まで減ることもある。ユニークスキルの持ち主だからといって半分も減らないのはおかしいと思っただけだ」
「…………正解だ、よく観察している。現実では何をしていたのかね?」
「……前は傭兵をしていた。もうすることはないがな」
「なるほど、研究者である私では戦闘のプロは誤魔化せないようだ。」
そう言ってヒースクリフは立ち上がった。
「私を茅場晶彦と身破ったのは君が初めてだ。君には私に挑戦する権利を与えよう。それに勝てば全てのプレイヤーをこのゲームから解放しよう」
「……一つ条件がある」
「何かね?」
「……俺が勝ったらゲームからの解放じゃない、俺の願いをひとつ聞いてもらう」
「…………このゲームから出たいとは思わないのかね?」
「……戦える場所があるなら俺は別に仮想空間だろうが何だろうが関係ない。死んだら終わりなのは前と一緒だ。」
「……フフッ、ハハハハハハハハッ!すまない、君はどうやら私が考えてる以上の人間のようだ。分かった、その条件に変更しよう。異存はないかね?」
「……あぁ、それでいい」
「ではちょうど三日後にキリト君、黒の剣士とデュエルするのだがそのタイミングで君の挑戦も行おう。それまでに準備をしておきたまえ。何かあったら私に聞いてくれたまえ」
そう言ってヒースクリフはメニュ画面を操作した。
『Prayer:ヒースクリフからフレンド申請が申請されました。受諾しますか?』
『Yes / No』
「……分かった、三日後だな」
ヒースクリフとフレンド登録をすると自分の借りている宿に戻った。