水面に踊る君と地で歌う僕   作:Allenfort

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本日、レーベレヒトマース着任! やったぜ!

そして明日から学校!ガッデム!


第8話 激戦の序曲

トラック泊地。建設中の泊地であり、戦闘が起こると言うことで作業員は既に退避している。ここにある施設はドッグと補給、整備のための工廠。装備の開発は不可能。他の生活に必要なものは揃っている。

 

ここの一室に司令部を構えた3人と、大本営から派遣されてきた大淀は機材を設置し、作戦を展開することにした。

 

「提督、敵の潜水艦がこの泊地を封鎖すべく侵攻を開始しています。水雷戦隊を出撃させ、これを迎え撃ちましょう。」

 

机に広げられた地図を囲んだ黒坂、久坂、宮原、大淀は作戦立案を始める。このトラック泊地のある島は三日月型をしており、船は入り江に入ることになる。その入り口を潜水艦隊で封鎖する気のようだ。

 

「よし。手筈通りに水雷戦隊を編成する。黒坂、久坂、そっちの艦娘は?」

 

「佐世保からは吹雪と曙に行かせる。控えに陽炎と皐月が待機。対潜装備があり合わせの物しかないけどな。」

 

吹雪と曙が搭載しているのは九四式爆雷投射機。若干旧式化しているが、威力は十分。そして、九三式水中聴音機。所謂パッシブソナーだが、それほど性能は良くない。無いのとでは大違いなのだが。

 

「大湊からは神通と白露だ。装備は爆雷は黒坂と同じだが、ソナーは三式積んでる。」

 

三式水中探信機。所謂アクティブソナーである。

 

「俺のところは雷電かな。爆雷もソナーも三式だ。」

 

「よし。この編成でいこう。作戦指揮は俺がやる。」

 

「おう、水雷屋の宮原に任せれば万事解決だな。」

 

黒坂はそう言いつつも航空隊に出撃できるように用意させている。空襲に備えてだ。滑走路の建設が終わっていたのは幸運だった。

 

「装備を確認次第、艦隊を出撃させる。以後、この艦隊を第1戦術攻撃隊と呼称。目標はトラック泊地より北東に位置する敵通商破壊艦隊本隊の殲滅。西回りのコースを取る。黒坂、彩雲を飛ばせてくれ。空母機動艦隊を探す。」

 

「わかった。」

 

ーーーーー

 

神通が旗艦となり、艦隊は単縦陣を組んで進んでいく。間も無く湾を出て外洋へ出る。そこから北東へ向かうように指示を受けた。神通は駆逐艦とともにソナーを使って索敵している。

 

「ソナーに感!湾の出口に潜水艦発見!」

 

白露が真っ先に見つけた。普段から1番になることに拘っており、今回もいつも通りに1番を取った。(宮原曰く、ただの負けず嫌い)

 

「単横陣に移行。対潜攻撃を開始します。」

 

神通が指示を出すと、艦隊は単横陣に移行し始める。が……

 

「痛っ!」

 

「ちょっと! あんたはそっちでしょ!」

 

曙と雷が衝突し、よろけた。そこへ、潜水カ級éliteが先制雷撃を行う。

 

「魚雷接近!」

 

吹雪の声を聞いた雷と曙は文句を言うのは後にして回避行動を取り、魚雷を回避する。

 

「危ないじゃない!」

 

「なによ!合図しないで割り込んできたのはそっちでしょ!」

 

「いい加減にしてください! 敵襲です!」

 

口喧嘩を始めた雷と曙へ神通が叱咤する。敵はまだ目の前にいるのだ。

 

吹雪はポーチから爆雷を取り出し、ソナーを頼りに潜水艦のいる場所へ爆雷を投げた。水柱を立てて着水した爆雷はカ級の真上に直撃し、爆発。旧式とはいえ威力は十分だ。カ級は堪らず沈んだ。

 

「いっけぇー!」

 

曙も爆雷を投げるが、直撃には至らなかった。続く雷も至近弾。

 

「これでも喰らうの"です"!」

 

電の爆雷はカ級éliteを捉え、見事に直撃し、一際大きな水柱を立てる。それは泊地にいた黒坂たちにも見えるほどだったという。のちに判明したことだが、笹倉が試作した強化型爆雷のプロトタイプを間違って持ってきていたらしい。

 

「「「「「何あれ!?」」」」」

 

神通、白露、吹雪、曙、雷は開いた口が塞がらなかった。結局、損傷していたもう一隻のカ級は白露がとどめを刺し、敵艦隊は全滅した。

 

『よーしよくやった。あと、喧嘩は控えろ。隙に付け込まれるぞ。特に雷と曙は潜水艦にやられた過去があるんだろ? 油断するな。』

 

無線機から宮原の声が聞こえてくる。雷と曙は痛いところを突かれたといった表情を浮かべた。

 

『とりあえず仲直りして進撃しろ。以上。』

 

通信はそこで切れた。雷と曙はバツが悪そうにしている。どちらも顔を背けたまま、口を聞くことはなかった。

 

 

その頃司令部

 

 

「……ありゃなんだ?」

 

双眼鏡で見ていた宮原が呟く。派手に水柱が上がっていた。

 

「そう言えば、笹倉さんが三式出来たらくれって言ってたが、何に使ったのかな……」

 

そんな時、司令部にツナギに赤いベストを着て、でっかいスパナをかついだ笹倉がやって来た。カチコミでもしに来たのだろうか?

 

「提督、持ってきた三式爆雷知らない?」

 

「え? あったの?」

 

「ああ。炸薬を色々変えてみたりした改良型なんだけど……もしかして誰か持っていった? 2つ無いんだ。」

 

宮原がロボットのような動きで笹倉の方を向いた。

 

「その顔だと、持っていったようだね。」

 

「はい……ちゃんと大爆発してましたよ〜……」

 

宮原が言う。

 

「ちゃんと爆発したならいいんだ。後で感想聞いて改良しようかな……」

 

笹倉はそう呟きながら退室した。

 

「……黒坂、あの人って本当に整備士?」

 

「自称、な。俺は整備士以外の何かだと思ってる。」

 

久坂は話についていけず、フリーズしていた。話を理解していた黒坂、宮原、大淀は笹倉を恐ろしいと思い、背筋に冷や汗をかいていた。

 

ーーーーー

 

艦隊は全員がソナーに反応がないか、潜望鏡が見えないか神経を尖らせている。神通は零式水偵を飛ばし、周辺を索敵している。

 

「……ソナーには何もないよ。」

 

吹雪は言う。ソナーには反応がなく、辺りは静かだ。間もなく、敵本隊との予想会敵ポイントである。

 

「こっちも反応……6時の方向に反応なのです!」

 

電が叫ぶ。その後方から3つの雷跡が迫っていた。潜水艦による魚雷攻撃だ。一つは神通、後の2つは曙を狙っていた。

 

「回避運動を取ってください!」

 

「え……?」

 

神通は魚雷を回避する。が、曙はソナーに集中していたため、反応が一瞬遅れた。2本の魚雷はそれぞれ曙が履いている靴のような推進装置を狙っていた。

 

艦娘の艤装からは装着者を保護する防護シールドのようなものが張られており(原理は機密とされている。深海棲艦の技術を使っているのではと噂されている。)装着者へのダメージはある程度防いでくれるが、艤装まではカバーしきれていない。よって、推進装置と背中に背負っている装備への攻撃が致命打となりうる。

 

特に、背中の装備から防護シールドが出ているので、そこの損傷は装着者の命に関わることになる。

 

推進装置は推進装置で浮力を発生させているので、これをやられると沈む危険が出てくる。つまり、両方やられて仕舞えば浮力を失うこととなる。

 

曙はまさに危機に直面していた。そんな時だ。何かが曙を突き飛ばしたのは。

 

思い切り吹き飛ばされた曙は魚雷に当たらずに済んだ。だが、突き飛ばした張本人の雷が左の推進装置に魚雷を食らい、中破した。

 

「雷さん!」

 

「敵艦発見!」

 

神通が雷を支え、その間に敵艦を見つけた白露が攻撃を開始した。

 

「なんでかばったのよ!」

 

「煩いわね……誰も見捨てないわよ!」

 

雷はいつか読んだことがあった。駆逐艦雷の艦長、工藤俊作の話、漂流していた敵兵を救った話を。いつしか、雷はそれに憧れていた。だから助けたい。駆逐艦雷の名に恥じないように。

 

「っ……! この!」

 

曙は半ばヤケクソになりながら対潜攻撃を始めた。ソナーを頼りに、狙って爆雷を投げつける。水柱を立てて着水した爆雷の信管が水中で炸裂するが、撃沈には至らなかった。

 

「お願い! 当たってください!」

 

吹雪の投げた爆雷が潜水カ級捉え、爆発。見事撃沈した。その隣に見えた潜望鏡を神通は見逃さず、爆雷による攻撃を加えてカ級éliteを一撃で仕留めてみせた。

 

白露が既にカ級éliteを一隻仕留めており、残っているのは潜水ソ級。新型であり、大本営も情報を掴んでいないタイプの深海棲艦だ。

 

「食らうのです!」

 

電の爆雷は惜しくも至近弾。致命打には至らなかったが、ソ級の位置をあぶり出した。曙はそれを狙い、九四式爆雷を投げつける。

 

炸裂。直撃。しかし、沈んではいないようだ。沈んだなら一際大きな泡を出すはずなのだ。

 

「マズイ!魚雷来るよ!」

 

白露の警告。またしても曙だ。なんであたしばかりと舌打ちしながら、今度は回避する。回避したところには奇遇にも片舷に注水し、なんとか浮力を保っている雷がいた。

 

「これ、使って!」

 

ダメージコントロールに手一杯の雷は曙にポーチごと三式爆雷を渡す。

 

「いいの?」

 

「しっかり当ててよね! これがラストチャンスなんだから!」

 

ソ級は潜行を開始していた。深海に逃げ込まれたら厄介だ。だから、これが最後のチャンス。全て曙の一撃にかかっていた。

 

いつか、教官が言っていた。当たらないときは敵の顔を自分が一番ムカつくと思う奴の顔だと思ってみろ、と。それをやったら本当に命中率が上がった。なら、ソ級は……あの新任提督? 否。あの目の細いセンター分けのクソッタレ……物集だ。

 

「沈めこのクソ提督!」

 

後に無線でこれを聞いていた宮原が黒坂に伝えたところ、自分のことかと思って小一時間部屋で落ち込んだんだとか……

 

一呼吸おいたくらいに爆発。それも強力なのが。またしても笹倉試製強化型三式爆雷が混じっていたようだ。派手な水柱とともに、ソ級の装甲板の一部が吹き飛んで来た。今度こそやったのだ。

 

「ソナーの反応消失! 敵艦隊の全滅を確認!」

 

すると、宮原から通信が入った。

 

『よくやった。帰投し、補給および入渠しろ。ちゃーんと帰ってくるんだぞ。』

 

『了解しました。』

 

ーーーーー

 

その頃、泊地より西の海上を1機の彩雲と護衛の零戦21型が飛行していた。メテオラ隊の所属機で、制空迷彩が入っている。

 

『警戒! 情報に敵機! 回避せよ!』

 

雲の中に煌めく戦闘機。この空域に味方はいない。ならば……敵だ。

 

通常の海上迷彩ではなく、銀色のにペイントされたF8Fベアキャット。それの機首には黒豹のノーズアートが施されている。

 

ベアキャットは零戦の真上から覆いかぶさるように奇襲を仕掛け、ループに入れようと上昇し、速度が落ちたところを狙い撃つ。4門のAN-M3 20mm機銃が火を噴き、左翼からエンジン後部、右翼へ穴を開けると、回避していった。

 

『被弾した! 操縦不能! 脱出する!』

 

零戦はエンジンから出火し、黒煙を吹く。パイロットはキャノピィをこじ開けると、機体から飛び降りた。しかし、再び火を吹いた20mmに当たり、パイロットは一撃で此の世を去る。

 

『ゴート!』

 

もう一機の零戦パイロットはその一部始終を見ていた。彩雲のパイロットはその機体を見て、悲鳴のような叫び声を上げた。

 

『あれは……"ティーチャ"だ!』

 

ティーチャ、黒豹のノーズアートの入った機体に乗る深海棲艦側のエースパイロット。空で出会ったが最後、誰も生きては帰れないとまで言われていた。

 

ティーチャは彩雲の背後に回り込み、雲海の中で追いかけ回す。

 

『背後に付かれた! 助けてくれ!』

 

彩雲はフルスロットルで回避機動を取るが、ティーチャは離れることなくピッタリと付いてくる。パイロットも後部座席の機銃手も汗をびっしょりと流し、息を荒くしていた。ここで死ぬ、その恐怖に囚われながらも、必死に逃げた。

 

『ティーチャを撃墜する!』

 

零戦は水平飛行に移ったティーチャの背後に回りこみ、撃つ。

 

しかし、ティーチャはそれをわかっていたかのように、撃つ瞬間に機首を引き起こして急減速、コブラ機動を行い、零戦を追い越させる。すると、エンジンを全開にし、プロペラで発生させた風を昇降舵に当て、無理矢理機首を下げる。

 

『なっ……』

 

何が起こったのか、理解するより前に撃たれた。ティーチャの放った20mmは零戦を撃墜し、続けて前方の彩雲にも命中。彩雲はワイヤーが被弾によって切れ、機体後部の制御を失った。

 

ティーチャは1度急上昇して距離をとると、今度は急降下しながらの機銃掃射。彩雲はコックピットを撃ち抜かれ、パイロットと機銃手が死亡、また、左翼付け根の燃料タンクから出火。しばらく飛行したのちに爆発四散した。

 




笹倉の(魔)改装工廠。笹倉さんは原作でもエンジンを(無断で)魔改造していたり、ターボチャージャー自作したりと、整備士とは思えないことしている。明石、夕張と組んだらと思うと……

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