転生者はとあるキャラの姉   作:白燕狭由那

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閲覧とお気に入り登録ありがとうございます!約一週間で多くの方に見ていただけたことに驚いています。
オリ主は幼年ですが人生一回全うしているので台詞は漢字混じりです。その他のロリショタは大体ひらがななので読み難かったらごめんなさい。



序章
第壱話 トラウマと開放


私がこの世界に転生して早五年がたった。

 

私の今生での名はヴァルトルート・ヒューズ。分かる人は分かるだろうが、かのヒューズ中佐の姓である。名前の方はDies iraeの戦乙女のセカンドネームで。で、私はそのマース・ヒューズの双子の姉となったわけである。

 

私の家はセントラル郊外でもそこそこの家庭で、収入も安定しているようだ。

 

前世で母親が夜泣きで苦労したと聞いていたので(私も身を持って知っている)子供がいきなり二人増えて苦労するだろうと思い、夜泣きとかあまりしないようにしていたのだが、何処か悪いのではと逆に心配されたので三時間置きに泣くようにした。

 

赤ん坊の状態はなかなか不便である。どうにか立って歩けるようになるのに一年はかかった。数歩歩いただけでバランス崩したけど。

三歳ぐらいになって自分のことは大体出来るようになっていた。

 

まず現状把握だ。

 

 

現在は1889年、すなわち原作が始まる24年前。

 

イシュヴァールの問題は当然の如く膠着状態。

 

お父様の手により賢者の石が地脈に埋められている。

 

一応、まだキング・ブラッドレイは大総統に就任していない。

 

 

これがアメストリスの状態。

 

自分の場合は……

 

 

魔術回路はまだ開いていない。

 

 

これに尽きる。

魔術回路が開かなければ魔術も使えない。

確か開き方は術者によって違って、中には自傷行為によって開くのもあるらしい。大人ならまだしも、幼児がそんなことしたらマズイしなぁ………。

考えてたら頭が痛くなってきた。少し横になろう…。

自分の部屋にあるベッドに横になると、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめて眼を閉じた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を、見ている――――――

 

 

 

様々な物事がモノクロで浮かんでは、たちまち消えて行く。

 

 

 

その中で鮮烈に映っている物があった。

 

それは、前世でトラウマであった物。

 

弟/マースが、ホムンクルスに、殺サレル……

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤぁぁぁぁアアアアあああああッッ!!」

 

「おねえちゃん?!どうしたのっ!!?」

 

 

叫び声とと共に目を覚ました。同時に、勢いよくドアが開かれて部屋に小さな影が飛び込んできた。両親は出掛けているから、該当するのは一人しかいない。

 

「……、マース…」

 

夢にも出て来た、自分の弟(マース)

その表情は幼くとも不安げなものであった。

 

「だいじょうぶ?こわいゆめ、みたの?」

 

問われた内容は、マースが想像するのとは若干違うかもしれないが、自分にとっては正しく悪夢だ。

 

「うん…。でも大丈夫よ」

「そう……」

 

心配させまいと言ったが、マースの表情は未だ固いままで。

と、不意にマースがベッドの上に乗り、起き上がっていた私の身体を抱きしめた。

 

「マース?」

「……おれ、ちゃんといいこにするから」

「へ?」

「おれ、おねえちゃんのことまもれるようになるから、だから…こわがらないで」

 

そういうと、マースは肩に顎を乗せて抱きしめる手の力を強くした。

何故そんなことを言うのかと考えて――

 

(もしかして、自分の行動が私を困らせてると思ったのか?)

 

前世でも経験したが、男の子は女の子と違って思考回路が違うらしい。それは我が弟も例外ではなく、よく突飛なことを仕出かしていた。

対して私はというと、精神が肉体に引き寄せられて要るとはいえ、中身は人生を一度全うした存在なので物事の限度という物を理解していた。

その結果、“しっかりした姉と腕白な弟”という構図が出来ていた。

私としては、前世で経験出来なかった姉という立場を喜んで受け入れていたのだが、弟はそうは思わなかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、マースは私の肩口に頭を乗せて眠ってしまっていた。

 

マースを横たえてベッドから降りると、自分の身体に変化があったような気がしたので確認してみる。

思った通り、魔術回路が開かれていて、スイッチも出来ていた。

魔術回路の本数は一般的な魔術師より多め、彼のブラウニーより三本多い30本。

スイッチのイメージは私の場合、“撃鉄を起こす”イメージだった。まさかあのトラウマがきっかけになるとは。

 

 

試しに知識にある初歩的魔術を行使してみようと、手にしたのは以前何気なく拾った硝子の破片。風雨に晒されて、角も取れて丸くなった危なくない物。浜辺に時々落ちている、ビーチグラスのような物だ。

 

「―――Anfang(セット)

 

それに魔力を通す。集中して構成されている材質を解明、変化させる。

強化を終えると手の中にあった硝子は水晶に変わっていた。

 

(やっぱり、鍛練が必要ね)

 

幸い、知識はあるから魔術の行使は重ねれば上達するだろう。

強化した水晶は元の場所に戻した。

ベッドにもたれ掛かり、横たわるマースの寝顔を見つめた。

 

 

 

 

 

 

―――誰かが言った。“兄貴は妹を守るもの”だと。

冬の妖精と称された少女は、血の繋がらぬ弟を守る為に命を賭した。

私もこの子を守る為ならば、どんな手も尽くそう。

 

 

 

例えこの手が血に濡れ、この身が人で無くなったとしても。

 

 

 

SIDE:Maes Hughs

 

おれのおねえちゃん、ヴァルトルート・ヒューズっていう。

 

おれの、ふたごのおねえちゃん。

 

おねえちゃんはいつもおれのそばにいてくれる。いえでおるすばんしているときも、おれがこわいゆめをみてうなされてるときも、おねえちゃんはてをつないでなだめてくれた。

 

 

でも、おねえちゃんはなかない。ころんでもいたそうなかおをするけど、なこうとしなかった。とうさんたちは「がまんづよいこだ」っていってたけど、おれにはおねえちゃんはむりしてるようにみえた。

おれがだいじょうぶ?ってきくと、いつもだいじょうぶっていう。だれもみてないところでつらそうなかおして。

 

 

 

あるとき、いつものようにおるすばんしていたらおへやからおねえちゃんのこえがきこえた。おおきなこえで、なにかにこわがるようなこえで。

いそいでおへやにいったら、おねえちゃんはベッドのうえでちいさくなっていた。

だいじょうぶ?ってきいてみたらやっぱりいつものようにだいじょうぶっていって。

おれはおねえちゃんをだきしめた。おねえちゃんはおどろいてたみたいだけど、そのままだきしめた。

 

 

おねえちゃん、おれがまもってあげるから、だいじょうぶだよ。

 

 

 

だから………もう、むりしないで……

 




この回での内容は、
現状把握→過去のトラウマによる魔術回路開放→決意
といったところです。
正直ヒューズさんの死ぬ回はトラウマ過ぎて見るのも恐ろし過ぎて……皮肉にもそれがきっかけとなりました。確か彼のブラウニーのイメージも撃鉄でしたっけ?
オリ主サイドの最後の文章は型月系のwikiから姉弟繋がりで参考にしました。また、永劫破壊についても位階が上がるごとに普通の人間から逸脱した存在になるので(流出に至った者は覇道神、求道神になってしまう為)そう表記しました。
ショタヒューズことマース君の独白も結構考えました。男は女を守る者という考えを持っているマースは無理している(本人はそのつもりはない)姉のことを守りたいと思っています。
長くなりましたがありがとうございました。

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