転生者はとあるキャラの姉   作:白燕狭由那

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お久しぶりです。就活はまだ続いてますが、どうにか卒論は提出出来たので投稿します。
後半はほぼノリで書き上げました。


第拾伍話 姉さんの仕業で胃がマッハでヤバい

ここでひとつ、アメストリス軍における階級を見直してみよう

 

軍の階級は完全ピラミッド制で、士官と下士官・兵に分けられている。

その頂点に立つのが大総統。現時点ではキング・ブラッドレイがその地位に在る。

次いで大将・中将・少将・准将の将官クラス。長期間の作戦を実施できる戦隊を指揮する存在である。アームストロング家は代々将軍を輩出してきた名門であり、オリヴィエもここに属する。

その下に大佐・中佐・少佐の佐官クラス。短期間の作戦を実施できる大隊を指揮する存在で、参謀の職務も務める。なお、国家錬金術師も少佐相当官の地位を持ち、軍に従事することもある。既に国家錬金術師の資格を持つロイも、士官学校を出て間もなく少佐の地位に在るのもこれが理由である。

さらに下には大尉・中尉・少尉の尉官クラス、准尉・曹長・軍曹・伍長の下士官クラスがいる。士官学校を首席で卒業した者は少尉、それ以外は主に准尉となる。後にロイの部下になるハイマンス・ブレダも首席で卒業した者である。

そしてヴァルトルートもクリステルと共に“普通なら”昇進で少尉になるはず、なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一体どういうことなんですか?」

 

あ、ありのままに起きたことを話すぜ!?上司に呼び出されて辞令的なものを受けたらいきなり少佐に位置付けられていた!!な、何を言ってんだか分からねぇと思う……っ!!頭がどうにかなっちまいそうだ……っ!!工作とか陰謀だとかそんなチャッチイもんじゃねぇ…っ!!もっと恐ろしい物の燐片を味わったぜ……っ!!的な状態にあります、ヴァルトルートです。

え?もっと真面目に説明しろって?無理でしょ、この内容じゃ。だってついさっきまで一介の准尉だったのに、特進二級を超えて少尉中尉大尉経験無しで少佐だよ?!一般的観点からすればおかしいでしょ!!ほら、クリステルだって驚いた顔しちゃっているし!!

 

「確かにね。普通なら功績によって昇進したり、殉職して特進して階級が上がるけれど、それでも二階級が限度だ。それに最近の情勢で駆り出されているとはいえセントラルの一般業務に就いている新人は滅多なことがない限り殉職するような事態は起きない。通常ならリー准尉……否、リー少尉のように一階級昇進するのが一般的だ」

 

上官の言葉にある意味嫌な予感がしてきた。自分の経歴を思い返してある人物が関わっていることを確信した。というか、あの人しかいないだろ!!

 

「ブリッグスのアームストロング准将が君を少佐に推挙してね。准将が直々に指導したということもあって佐官教育などの高等教育が身に着いているということと、日ごろの功績によって今回の昇進が決まったんだ」

 

……………

 

………

 

 

オリヴィエ姉さん何やらかしているんだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~いルート、生きてる~~?」

 

………クリステルが顔の前で掌をかざして振っているのが分かるけど、今の私に応える気力はない。確かにブリッグスにいた頃、なんか姉さんに教えてもらっていた内容が士官学校で予習していたものよりも難しかったという気はしていたけど、他人に容赦なしで向かわれる姉さんだから難しく解釈していたと思っていた。だが、軍属になって改めて教わっていた内容を思い返すと、あれは高等官僚候補のための内容だった。

 

そうとは知らず、言われるがままに学んでいた自分を殴りたい。

 

「………ご主人様、お気持ちは分かりますが、これからのことを考えましょう。早く現実にお戻り下さいまし」

 

キャスターに言われたのでどうにか現実に帰還する。

 

辞令が出た以上、多少のラグはあるが、東部に向かわなくてはならない。その前に、ここで済ますべきことをやらなければ。

 

「キャスター、ホムンクルスの調整急いでやるよ」

 

様々な工程を前倒ししてホムンクルスの調整を終わらせた。そうして出来上がった女性型ホムンクルス。アインツベルンの術式を用いたので、髪は雪のような白銀、目はルビーの如き紅。整った顔立ちは人形みたいだ。

 

「へぇ、こうして見ると人形みたいだねぇ」

「ホムンクルスは一から調整するから大体こんな感じになるんだ」

「へー……そうだルート、名前とかどうするの?最初の子だから、特別なものにしようよ」

「子って………確かにそうね。じゃあ……

 

フェリスティ、フェリスにしよう」

 

“幸福”の名前を冠したホムンクルスがここに誕生した。

七つの大罪を冠した似て異なる人造人間(ホムンクルス)と対になる存在は、この世界でどう行動していくのだろう。その行く先は、真理ですら分からない。

 

 

 

 

フェリスを完成させて数日後、ヴァルトルートとクリステルは東部に着任していた。到着してすぐに受けた佐官対応にヴァルトルートは閉口したが、何とかそれを乗り越えて対策会議に参加した。穏健派の代表との交渉、過激派を制圧するためのプランを話し合い、初日を終えた。

翌日からは他の軍人達と共に穏健派の拠点を訪ね、軍に対する不満とその対応策を話し合った。会談を行っている中、何処から聞き付けたのか過激派の一部が銃撃を仕掛けてきた。

直接の被害はなかったものの、緊張感漂う状況を打開するため迎撃することになった。付いて来た部下達の腕は良いのだが、半日程睨み合いが続いた。

 

「全く、こんなことしてても時間の無駄だろうに……。こっちもあんまり犠牲出したくないしなぁ…」

 

何を思ったのか、ヴァルトルートは身動きがしやすいよう軍服から黒ずくめの軽装になると、サーベルを片手に単身敵陣に切り込んで行った。

 

「ルートがいない……?こういう時は一言くらい言ってから…ってまさか!」

 

ヴァルトルートの姿が見えなくなったことに気付いたクリステルは彼女の行動パターンを予測すると、圏境(偽)を発動して敵陣に向かった。

ヴァルトルートはエイヴィヒカイトによるブーストで銃弾を避け、敵が構えているライフルを斬鉄剣よろしく細切れにして無効化していく。追い付いたクリステルもヴァルトルートを狙っていた狙撃者に拳を撃ち込んで行き無力化する。

 

「あ、クリス良い所に!」

「良い所にじゃないわよ!何でそれ(エイヴィヒカイト)使っているのよ!」

「いや、手っ取り早く敵を抑えるにはブーストしたほうが良いかなと思ってね!直接攻撃はしてはいないし、手加減はしてあるけど!」

「当ったり前よ!!」

 

そんな言葉を交わしつつも戦闘を続け、大方倒し終えた所でクリステルはヴァルトルートを引きずって帰った。

勿論、しっかり姿は消してだ。

 

その後、過激派メンバーが次々と拘束されて護送されて行ったが、どの面々も顔色が悪かった。

 

『突進してくる影に撃とうとしたら銃がバラバラに切り刻まれていた』

『遠くから狙撃しようとしたら鳩尾に一撃食らった。周りに誰もいなかったのに』

 

そんな証言があったらしいが、実際に見た者が少ないのでスルーされることになった。真実を知るのは、とある少佐と少尉だけである。

 

なお、穏健派との交渉は幾つかの妥協案で合意を取り付けた。とりあえず問題を片づけることが出来たことと、親友のやらかしたことがバレなくてほっと胸を撫で下ろしたクリステルだった。




ここに出てくる穏健派と過激派というのはイシュヴァール人ではなくアメストリス人の軍に不満を持つ方々のことです。
穏健派……争いはできるだけ避けたい。交渉で良い方に行きたい。
過激派……力でもって軍に敵対。原作での青の団みたいな。

という関係です。

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