転生者はとあるキャラの姉   作:白燕狭由那

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一か月と少し振りの投稿です。
少しずつ書き溜めていました。

キングクリムゾンしまくると思います。


軍属・原作前
第拾肆話 軍に入って諸々


それから一年と半年が経ち、1905年、士官学校を卒業した私は軍の業務に勤しんでいた。

首席ではなかったので軍に入った時の階級は准尉である。

なお、マースとクリステルは私と同じく准尉、マスタング氏は国家錬金術師ってことで少佐。ヒースクリフ氏は卒業してから消息が絶えてしまっている。おそらく、イシュヴァールの地に戻ったのだろう。

東部の内乱は未だ収まる気配はない。このままの流れで行けば、私達は必ず敵対する。それだけは何としても避けたいのが本音だ。

それまでに何かしらの対策を考える必要があることを頭の隅に留めておいて、思考している間にまとめた報告書を上司の元に持って行こうと席を立った。

 

 

私の上司となった人物はエリートではないが、地道に実績を重ねてきたタイプで、内乱が起こった頃にも前線に立っていたそうな。

長年軍にいるせいか色んな所とコネクションができているらしく、中にはアームストロング家とも交流があるという。だからか、私が配属されてきた時にオリヴィエ姉さんの話が出て来たのは。しかも、アレックス氏が私にプロポーズしたことも一部で噂になっていたらしく、その話を知っている将校達からからかわれた。解せぬ。

言っておくがあの後アレックス氏は感情的になりすぎて発言したことを謝罪し、友人として交流してほしいと頼まれた。友人なら問題はないだろう。

それから、アレックス氏から昔のように“アル”と呼んでほしいと言われたのでプライベートでそのようにすることにした。

 

 

話は戻るが、報告書を提出したら今日の業務は終了だ。帰宅したらやることがたくさんある。主に魔術関連で。

え、魔術は秘匿すべきモノだろって?ご心配なく、今住んでいる所は住人は私しかいないので。

というのも、正式に軍に入った際に一人暮らしを始めたのだ。両親も、大人になったし士官学校でちゃんと教わっているから大丈夫だろうと了承してくれた。マースは何故か不服そうだったが、非番の時には姉弟で過ごすという約束で納得してくれた。

今私が住んでいるのはセントラルの二階建ての一軒家。軍に入ってしばらくしてから購入したものである。事前に通勤のし安さや近辺の情勢も調査して判断した。やっぱり女性の一人暮らしは気にした方が良いよね。まぁ、家に入った後キャスターと一緒に結界張ったりしたけどね。さらに、家の下に地下空間を作って魔術工房を作り上げた。これなら誰かが訪ねてきたとしても、表立って見られることはない。

人形作製のスキルを試すために幾つか作ってキャスターに試して貰おうかと思う。今まで家族の元にいたから霊体化せざるを得なかったが、これからは住み込みの家政婦と通せば問題ないだろう。

 

 

 

 

 

それから一年が経とうとする中、ヴァルトルートは軍務が終わったら真っ直ぐ帰宅して魔術の研讃をする生活を送っていた。無論、週に一回は両親に電話したり、マースと待ち合わせて食事をしていた。

また、違う部署に配属されていたクリステルがそこの上司と馬が合わず、ヴァルトルートがいる部署に廻されてきた。例の如くヴァルトルートの近辺情報を聞いていた上司の手によるモノなのは明らかである。

元々相性も士官学校の頃から良かったので、任務の時は必ずコンビを組んだ。圏境を用いた隠密に特化したクリステルと、剣術でターゲットを落とす(使用するのは刃を潰したサーベル)ヴァルトルートのコンビは一部では知られた存在になっていた。

 

 

「はぁ~、今日も疲れたぁッ」

「それ、昨日も言っていなかったか?確かに此処最近外に出ることが多いけれど」

 

ヴァルトルートの自宅にて、クリステルは腰掛けた椅子の背もたれに寄り掛かり、ヴァルトルートはもう一脚の椅子に座って愛用のマグカップで紅茶を飲んでいる。

ヴァルトルートの言う通り、最近セントラルでも治安が余り良くなく、ヴァルトルート達が駆り出されることも多くなっていた。

 

「コレも、国を利用しようとしてる奴らの仕業かなぁ」

「どうだろうね、彼等はきっかけを作っているにしか過ぎない。人の心の闇に付け込んで、行動を起こさせる。自分達は手を汚さず結果を最終的に得られるというサイクルだよ。軍部の上層部と一緒だよ」

「うー……この世界入ってから結構経つけど、やっぱりキツイな…。ルートは辛くないの?」

「辛いことに変わりはないけれど、あのオリヴィエ姉さんに鍛えられた分、こんなんでへこたれてちゃだめでしょう」

「うっわ、アタシには耐えられないわ。っていうかあのアームストロング准将の名前だす辺り、まだ影響残ってんのね」

「影響が残っているというより、今でも会ったりするからね。その度に模擬戦吹っかけられるけど」

 

オリヴィエはヴァルトルート達が卒業してから准将に昇進し、活動の拠点を本格的に北部に置いているが、時々セントラルに来てアレックスやヴァルトルートと会っている。

オリヴィエはまだヴァルトルートがその身に宿しているナニカは見抜けていないが、自分に匹敵する腕を持つ彼女に会う時は必ずと言って良いくらい鍛練に誘って来るのだ。ヴァルトルートはそれに付き合って疑いから外れようとしているのだが、オリヴィエの鍛練に付いて行けているのはアレックスを除けばヴァルトルートだけなので別の意味で人外認定されかけている。

 

「……うん、そっか」

 

 

クリステルは深く突っ込まないことにした。

その後、キャスターが作った夕食を取って一息付いていた。

 

 

「ルート、今日は何するの?」

「キャスターの人形(身体)を作った技術を参考にしてホムンクルスを鋳造しているから、その調整をね」

「ホムンクルスって……ルートが前に言ってた、暗躍してるやつみたいな?」

「いや、あいつらみたく身体の一部が欠損しても瞬時に再生はしないから。魔術の中の錬金術で鋳造するから、魔術回路を人間にするようなものだし」

「えーと…?うん、とりあえずそいつらとは違うってことだよね?」

「そういうこと」

 

魔術に関することはクリステルにも大まかに説明しているが、彼女には難しいようである。ヴァルトルートはクリステルの推測を肯定しておくことにした。

 

「それで?ホムンクルス?を作ってどうするのさ?」

「最初の一体だから、基本はメイドにしてキャスターの手伝いをさせるよ。そのデータを元に量産型のホムンクルスを鋳造していこうと思っている」

「……一体何をしようとしてるのさ」

人造人間側(あちらさん)にちょっかいかけようと思ってね。計画の邪魔して煽って行けば、隙の一つや二つできるだろうし」

 

ヴァルトルート・ヒューズ。人造人間相手には徹底的に殺る主義である。クリステルはこれ以上追及しないことにした。

と、その時電話が鳴り、家事を行っていたキャスターが出た。

 

「ご主人様、上官の方からお電話です。急ぎの用みたいですよ」

「急ぎの?」

 

何事かと思い、ヴァルトルートは保留されていた受話器を手に取った。

 

 

「はい、ヒューズです」

『ヒューズ准尉、そこにリー准尉もいるか?』

「?はい、いますが」

『ならすぐに一緒に来てくれ。大事な話があるんだ』

「…分かりました。すぐに向かいます」

 

電話を切ったヴァルトルートはクリステルに言った。

 

「クリステル、支部に行くわよ」

 

 

 

 

 

「突然呼び出してすまない。勤務を終えて寛いでたろうに」

「いえ、大丈夫です」

「それで、大事な話とは何でしょう?」

 

上官の前に立ったクリステルとヴァルトルートは用件を尋ねる。

 

「うむ、話というのは君達のことだ」

「ア…私達、ですか?」

「君達も、東部の情勢については聞いているだろう」

「………、はい」

 

 

上官が言う通り、東部の情勢は芳しくない。イシュヴァール人による抵抗に加え、軍に不満を持つ者達の暴動も起こっている。

ヴァルトルート自身も、運命の時が近付いているのを理解していた。

 

「東部では対応する人員が不足していて、中央からも増援を送ることになったんだ」

「それに、私達が選ばれたと?」

「ああ。君達はもう軍に入って一年経つし、個々でも能力が高いからな。正直、君達を送りたくはなかったのだが……」

 

彼女達は一部とはいえ知られすぎてしまっている。そんな逸材を使わずにはいられない、というのが彼以外の将校の意図なのだろう。

 

「分かりました。いずれにせよ、決定事項みたいなモノでしょうし」

「フ、君は話が早いな……、そこでだ。今回の出向に伴い、君達の階級が上がることになった」

 

上官は二人を見据える。自然と、ヴァルトルートとクリステルの姿勢が正される。

 

「まず、クリステル・リー。准尉から少尉に昇進」

 

クリステルは敬礼の姿勢をとった。

次に上官はヴァルトルートを見たが、何故か苦笑を浮かべていた。

 

「次にヴァルトルート・ヒューズ…。

准尉から少佐に昇進だ」

 

 

 

 

「………はぃ?」

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなる。

 




マスタング
(国家錬金術師なので)少佐。

マース
准尉(推定)→大尉(イシュヴァール戦)

クリステル
准尉→少尉

ヴァルトルート
准尉→少佐


……普通はこんなに階級はあがらないよね?


追伸。
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