転生者はとあるキャラの姉   作:白燕狭由那

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リアルで忙しかったので申し訳ございませんでした。
カッと文章が舞い降りたので一気に書きました。
一応、出来てるとこまで載せます。



註)原作から乖離要素ありです。


第拾話 戦場に、舞い降りる

常夏ならぬ常冬のブリッグス。

普段なら冷たい空気に包まれた静かな世界に、硝煙と血の臭いが混ざる。

ブリッグスはドラクマに対する防衛拠点であり、幾度となくこうした小競り合いが続けられてきた。

そして知らぬ内にこの国を裏側で操るモノ達の陰謀に巻き込まれていた。

 

正史では存在しないイレギュラーがもたらすのは希望か、絶望か。

 

 

 

凍てつく空気の中、ブリッグス側から二人組が戦場となっている地へ駆けていた。一人は後にブリッグスの北壁と称されるオリヴィエ・ミラ・アームストロング。もう一人はこの世界においてのイレギュラーであるヴァルトルート・ヒューズ。

この二人の装備は主に腰に携えたサーベル。ヴァルトルートは予備としてサバイバルナイフとハンドガンも装備しているが、それ以外に戦闘で使われる武器は持っていない。

コレを見た者は、命知らずと嘲笑うかもしれない。

だが、この二人に限ってはそんなことは有り得ない。

 

片や名門アームストロング家の人間としての誇りを持ち、その絶対的なカリスマと実力で突き進んできたオリヴィエ。

片や魔人の力を手に転生し、愛する弟を守る為に研いてきたヴァルトルート。

 

二人の在り方は異なるが、何処か似ていた。

それは何処かの世界にいた、苛烈な騎士とその部下のようだった。

 

 

味方が敷いている陣地に辿り着いた二人はその場を取り仕切っている部隊長の元に向かった。オリヴィエが部隊長に話を聞く間、ヴァルトルートは離れた所で見張りに着いた。辺りを見ながら、解析の魔術を行使する。

 

(此処から北の方角に部隊が三つ展開している。数は多いけど、地の理はこっちにあるから多分問題なさそうだ。コレだと、蒐集する魂の質は普通のレベルかな)

 

解析した結果を見て思ったことに、思考回路が普通じゃなくなっているなと苦笑した。魔術に関わるということは、普通から離れて行くこと。それは分かっていたはずなのに。

 

『ご主人様、よろしいでしょうか?』

 

キャスターから念話が来たので意識を切り換える。

 

『キャスター、どうだった?』

『ご主人様の思っていた通りですよ。何度も小競り合いがあった所為で怨念やらなにやらが染み付いてますよ。しかも地下にもトンネルのようなモノが“現在進行形”で掘られています』

『やっぱりねー、そりゃ建国から随分経っているからそうもなるか……って、現在進行形?』

 

ちょっと待て。今現在で掘削されているだと?確かブリッグスで“アレ”が出て来たのはエドワード達が来てからじゃなかったか?

 

『……キャスター、それ何かの間違いとかじゃないわよね?ドラクマの兵が掘削機使って掘ってたとか』

『私も気になりましたけど、反応があったので確認したら明らかに人間でないモノが道具も使わず素手で穴を掘り進めていましたから』

 

キャスターから返ってきた答えに私は頭を抱えたくなった。

どうしてこうなる?

現実逃避してもことは進まない。原作はあくまでも原作でしかなく、この私達が生きている世界は“もしも(if)”も存在もし得るのだから。

それに、今此処でアレを討てばホムンクルスの野望を少しでも止めることが出来るのだから。

これからのことを決めた私は、思い立ったら即行動の元に動き出した。

 

近くにいた歩兵に少しこの場を離れると言伝を頼んで、陣地から出て行った。キャスターに地下へ行く道を確保するよう指示しながら強化魔術を行使して脚力を強化する。

駆けて行く途中、ドラクマの伏兵に遭遇したが、血を流さない為に活動で雷を落としながら駆け抜けた。生死は確認しなかったが、淡い光の粒子がサーベルに吸収されていた。

キャスターの元に辿り着くと、キャスターは人ひとりが通れる穴を地面にこしらえて待っていた。来たのが私だと認識してから周囲に結界を張った。

 

「行けるかしら?」

「大丈夫です。私も精一杯お手伝い致します」

 

その問答で十分だった。お互いに顔を見合わせて、私達は穴から地下へ降りて行った。

 

 

 

 

 

 

穴から入り込む光の他に明かりはないので空洞の中は暗い。明かりの代わりにと魔力を込めた宝石を発光させることで視野を確保した。降りて来た所に目印として一つ宝石を置いてから、掘削する音がする方向―――怠惰(スロウス)のホムンクルスの元へ向かった。

近づいて行くにつれて掘削する音が反響する。これを道具も使わずに行っているのだからホムンクルスパネェ。独立したらアインツベルン式のホムンクルス鋳造しよう。基本的にお手伝い兼ガードマンで。

 

「ご主人様、見えて来ました!あれです!」

 

キャスターの言葉に目を凝らすと、“ソレ”はいた。

不格好に腕が太く長く、それでいて巨大な身体。腕を打ち付けるだけで地が掘削されて行く。そして何よりソレから感じられる気配は明らかに人間ではない。私達の声も聞こえているはずなのに、その手を止めることなく掘削し続けている。

 

「キャスター、あれを止めること出来そう?」

「ものに寄りますけど、ギリギリまでやってみます」

「オッケー。私も頑張ってやるよ」

 

その掛け合いをきっかけに、ヴァルトルート達は飛び出した。

 

「氷天よ、砕け!!」

 

キャスターが呪符を投げ付け、スロウスを氷漬けにする。直撃した所から凍り付いて行きながらも、スロウスは手を止めようとはしない。それでも侵食が進む凍結に、動きは徐々に阻害されていく。

 

「ご主人様!」

「分かった!」

 

サーベルを抜き放ち、魔術回路とネックレスを活性化させて魔力を練る。戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)が憑依したサーベルはオリジナルの意匠の光を刀身に宿し、紫電を瞬かせて行く。

 

「ぜぁぁああああああッッ!!」

 

地を踏み抜き、スロウスの腕に刃を振り下ろす。

赤黒い液体を迸らせながら、スロウスの腕は本体から切り離される。そこからさらに凍結は進み、傷口も凍り付く。

だが、これで終わりとは思っていない。エイヴィヒカイト(永劫破壊)の恩恵である第六感と強化された脚力でジャンプして天井部に逃げると同時に、両腕を失ったスロウスが全身を氷漬けにされつつも凄まじいスピードでヴァルトルートがいた場所に頭突きをかました。頭突きされた場所はクレーターとなり、その衝撃を表していた。

 

外見(見掛け)より速過ぎだっての………!」

 

スロウスから距離を取りながら降り立ったヴァルトルートは体勢を整えながらごちる。

どうやらキャスターの呪術がまだ効いているようで、本来即座に修復されるはずの両腕も戻ってはいない。

だが、幾ら常人とは違うエイヴィヒカイトを有するヴァルトルートでも、初めて本格的に使っている以上、長くは戦えない。肉体的疲労も勾玉のネックレスで生成・循環される魔力で癒しているとはいえ、精神的にこれ以上戦うのもまずい。それに、オリヴィエ達の元に戻らなければ確実に怪しまれる。

適当な理由を考えながら、サーベルを持ち直した。

 

「キャスター、アレを使うよ」

「―――承知致しました」

 

右手で柄を握り、左手を添える。視線は、今も呪術に抗うホムンクルスに見据える。

 

 

「めん…ど……くせぇ………」

「私もあまり手間は掛けたくないのでね、手早に終わらせてもらうよ」

 

 

そう言うと、ヴァルトルートは口ずさむ。人から魔人へ変貌する為の言霊(詠唱)を。

 

 

 

その異常に気付いたのは、やはりオリヴィエだった。

陣地を担当していた部隊長と話し終えた彼女は、ヴァルトルートの姿がないことに気付いた。近くにいた歩兵が近寄って来て、少し離れると言伝を頼まれたと聞いた。

戦場に立つ覚悟があるとはいえ、まだ士官生の身。気を紛らわせるのに用を足しに行ったのかと思い、その場は落ち着いた。

だが、ある程度時間が経ってもヴァルトルートは戻って来ない。まさかドラクマの兵が潜んでいたのか?もしかしたらヴァルトルートはドラクマの兵に見つかったのか?そんな考えが脳裏を過ぎり、探しに行こうとした時異変に気付いた。

大総統に謁見した際に感じた時以上の、圧倒的な気配と力。

オリヴィエはなんとか胸元を握り締めて堪える。滅多にそんな姿を見せないオリヴィエに、兵達も心配して声をかけようとした時、さらなる異変が起こった。

 

「な、なんだ?!」

 

地面が震動する。地震と呼ばれるそれが、その場一帯に響き渡る。辺りは一瞬騒然とするが、

 

「馬鹿者、落ち着け!すぐに召集をかけろ!!」

 

オリヴィエの一喝で落ち着きを取り戻し、すぐさま行動に移る。

それらを見ながら、この状況でも戻って来ないヴァルトルートの身を案じていた。

 

 

 

 




次でヴァルトルート、あれやります。

因みにヴァルトルートの叫びは「デモンズソウル」の偽王を、光の粒子~は「ダークソウル」のソウルがプレイヤーに吸収されるのをイメージしました。

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