転生者はとあるキャラの姉   作:白燕狭由那

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タイトル訳:女王と戦友(ドイツ語)。
戦友と聞いてカメラードという単語が出てきたら立派な女神守護者です。

タイトルのネーミングのなさにorz

気合い入れすぎた結果こうなりました。
あのお方の登場です。


第陸話 Königin und Kamerad

 

その日、士官学校は少し慌ただしかった。

他の生徒に聞いたところによると、軍の将軍が視察に訪れるらしい。HRでも教官が、くれぐれも士官学校生として粗相のないよう振る舞え、と言っていた。

確かに国のこれからを担う者達が、雲の上の存在である将軍殿の前で無礼をしては教官どころか学校の威厳にも関わるだろう。

 

(まぁ普段通り、マルチタスクで乗り切りますか)

 

 

そんな中、ヴァルトルートは通常運行であった。

この時、彼女のサーヴァントはというと。

 

(うっわー、タマモ的に嫌な予感しますよコレ。後でご主人様には忠告しなくては)

 

本能的に危険を感じ、自らの主に忠告することにした。

 

 

 

士官学校の中を、職員に案内されている人物がいた。

プラチナブロンドの長い髪を靡かせ、深い青の瞳に鮮烈な輝きを宿したこの()()こそ、北のブリッグス要塞を統べる存在、オリヴィエ・ミラ・アームストロングである。

彼女としては正直この視察には乗り気ではなかった。

この視察に行くことにしたのは上の指示であり、士官生の士気を上げるものであり、彼女の意思など何処にもない。

 

だから彼女は事務的に校内を視察した。生徒が教室で授業を受けている光景、校庭で走り込みをしている光景、狙撃の訓練をしている光景―――それらはあまりにありきたりで、つまらなかった。

 

ある程度視察して、護衛も外して見て回ることした。

授業終わりなのだろう、生徒達が自由気ままに雑談を交わしている。

 

甘い。甘すぎる―――

 

北の大国ドラクマを相手に戦ってきた彼女から見たら、士官学校の生徒達はまだ覚悟が足りていない。コレでは、戦場に立ってもすぐには役に立たないだろう。

 

 

オリヴィエは十年程前まで頼りなかった弟を思い出す。

男ながら小心者で、常に父親や自分の影に隠れていた弟はある日を境に変わっていった。

 

普通なら根をあげるだろう鍛練にも自ら進んで行った。

軍に入りいかなる事態にも従事した。

 

更には、家を出て市井で暮らしはじめた。

これには彼女も驚き、弟を止めようとした。だが弟の意志は固く、実力行使しようとしても止められてしまった。

 

弟を訪ねて、何がそこまで弟を変えたのかを聞いてみた。

 

十年前に出会った少女に言われた言葉、そして次に会う時の為に変わろうとしたのだと。

 

その答に馬鹿馬鹿しく思ったが、その少女に貰ったというオニキスを見詰めるその眼は、あまりにまっすぐだった。

 

 

ふと、我に返って歩きはじめる。そろそろ戻った方が良いだろう――そう思った時、思わず脚が止まった。

 

視線の先に在ったのは一人の女子士官生だった。

 

黒髪の両サイドを肩の辺りまで伸ばし、前髪を一房だけ降ろして後は上げて、後ろ髪を襟足の辺りまでシャギーカットした様は一見男子だが、若干丸みを帯びた体つきは年頃の―ここでは関係ないが―女子のものだ。

 

それだけなら気にも留めないが、オリヴィエが思わず見入った理由はその士官生が纏う気配だった。

 

歴戦を駆け巡ったオリヴィエは相手が纏う気配が分かる。現に、大総統キング・ブラッドレイに拝謁した時は本人は柔らかい表情をしていたが、気配は強者のそれだった。

 

対して、この士官生はどうだ。普通の士官生なら覚悟も信念も定まっておらず、戦に出しても弱腰になるだろうものを、彼女はその翠色の瞳に確たる信念を宿し、何かの武術をやっているのだろう、その動きも無駄が無い。その才能もまだ発展途上だが、研いていけば一流のものになるだろう。

 

オリヴィエが考え込んでいる間に、その女子士官生はいなくなっていた。我に返ったオリヴィエは辺りを見回すが、いるはずもない。

 

オリヴィエは足早に戻ると学校の責任者を呼び、在籍する女子士官生の名簿を持って来るよう命じた。

持って来られた名簿を一つひとつ確認していき、ある生徒の頁に目を留めた。その生徒の頁にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァルトルート・ヒューズ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは、ヴァルトルートです。

 

マスタング氏と遭遇してから結構経ちました。

 

学生生活はというと、同室のクリステル・リーに格闘の相手をしてもらったり、キャスターと一緒に魔術や戦闘の訓練をして、学業も疎かにせずと言ったところでしょう。

 

いや、ね、実はクリステルにキャスターのこととかバレたんだよね。

名前の通りシン国の人間の血を引いているクリステルは、入学して同室になった私と対面してから異常に気付いていたらしい。

 

なんでもクリステルの家系は八極拳を嗜んでいて、気を読むことができるらしく、私のエイヴィヒカイトによる霊的装甲やキャスターのいる気配とかを感じ取っていたのだと………って何処のアサシン先生だよ。いや、シン国の皇子様皇女様やその従者さんもいたか。

 

本人曰く、これ程まで強い気は感じ取ったことがないので、自分が過剰反応しているのでは?と思ったらしいが、日が経つに連れて普通の生徒や私とよくいるマースの気を読んで、私の異常さに気付いたそうだ。

 

それを告白されて流石に焦ったが、落ち着いて自分について説明した。転生者だってことは除いて。具体的には、小さい時に大人の弟が何者かに殺されるという可能性の夢を見て力に目覚めたのだ、と。

 

うん、間違ってはいない。現にあのトラウマで魔術回路も開いたし。

 

で、キャスターも合わせて紹介したら「……妲己?」と呟いたので「あんな贅沢狐と一緒にしないでくださいまし!!」とキャスターが怒ったので宥めるのに大変だった。というかこの世界にいたんだ。

 

それから、力に目覚めた時に知ったこの国の未来~という名の原作知識を教えて、私はクリステルに問い掛けた。

 

「君は私が言ったことを信じる?信じなければこれを只の夢語りとして片付けても構わない」

 

普通なら馬鹿馬鹿しいと思うだろう。夢語りとして片付ける場合に備えて記憶操作の魔術の準備もしていた。

だけど、クリステルは全てを受け入れてくれた。

 

「アタシには魔術とか、そんなのは分からない。でも、この国が大変なことになりそうで、アンタがそれをなんとかしたいって気持ちは分かる。だから、アタシはアンタの力になりたい!」

 

驚いた。信じてくれただけではなく、協力もしてくれるとは。キャスターもその言葉に偽りはないと言っていた。私はクリステルと、戦友(親友)として手を組んだ。

 

 

その日から、クリステルも一緒に訓練に参加するようになった。

アサシン先生こと李書文の圏境を再現させようとしてみたり、キャスターの奥の手を学んでみたりと、端から見れば白い目で見られそうだが、基本訓練やるのは夜で人払いの結界も張って行っているので人目を気にすることはない。

 

今日も授業が終わったら剣の鍛練でもしようかと思ったのだが、キャスターに止められた。

曰く、

 

「なーんかタマモ的に嫌な予感がするんですよね。ご主人様の為にも、視察に来るという人間の目を逸らす意味も込めて目立つ行為は控えてくださいまし」

 

とのこと。

まぁね、原作でもマスタング氏も言ってたけど、上層部はブラックの塊だからね。キャスターが警戒するのも最もだ。私が有している魔術とかエイヴィヒカイトを知られたら絶対に狙ってくるだろう。それこそ、マースを人質にして。

仕方がないが、今日は鍛練は休みにしよう。そう思いながら授業を受けた。

 

 

 

 

それからしばらくして、ヴァルトルートは頭を抱えることとなる。

 




長かった……

そしてどうしてこうなったアームストロング…

オリキャラ、クリステル・リー登場。シン国系列ってチート多くない?
原作キャラと合わせて紹介しようと思います。

アンケートやってるので、よかったら活動報告の方に解答お願いします。

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