「やっぱり一人だと限度があるわよね」
魔術の鍛練をしながらぼやく。
魔術に関する知識があり、その手法を知っているとはいえ、その実力は他人から見たらどうなのだろうか。
魔術を行使しているのはこの世界で恐らく自分だけ。他人に意見を聞こうにも出来るはずない。下手したらホムンクルスに目を付けられること間違いない。
「魔術を扱える人…キャスターとかいたらなぁ…」
魔術師のサーヴァントであるキャスターなら魔術の師としてはうってつけだろうが、サーヴァントを喚べるか分からないし、触媒すら持っていないのだから。
時計を見ると既に零時を廻っていた。本来七歳児が起きているような時間ではないが、かつては普通に夜更かししていたので苦ではなかった。それでも起きる時間が遅くなるとマズイので床に着くことにした。手に持っていた石――錬金術で錬成した宝石(魔力を込める作業をしていた)を机の上に置いて明かりを消す。ベッドの上に乗って毛布を被り、目を閉じる。徐々にやって来る眠気。それに身を任せ、ふわふわとした感覚を感じながら、眠りに落ちる。
―――英霊召喚に憧れ、その詠唱の一節を呟いて。
「――告げる」
――――――。
―れ
ほれ、起きぬか。
自分でも分かる威圧感と、誰かに呼ばれた気がして目を開けると、目の前に巨大な人影があった。
神々しい気配と所々に入った意匠の装束、特徴的な腰の九本の尻尾。
白面金毛九尾の狐とも称される、天照大御神。
何故自分が此処にいるのか、何故彼女(?)が私の前にいるのか、分からない。
「ほう?何故自分が此処にいるのか、という顔をしておるな。主が召喚の詠唱を行ったのだから妾が答えたのだぞ?」
お、おう………まさか寝る時に言ったアレがきっかけとは……。
だが自分は触媒を持っていなかったし、それに目の前にいる彼女は……
「妾が神霊だから呼べるはずない、というのだろう?母神によって転生されたのだ、その縁で答えてやった。だが、妾は行けぬのでな。アレを向かわせるぞ」
アレ……自分の一側面をアレ呼ばわりですか。個人的に好きだけど、キャス狐さんは。
「それと、これも渡しておくぞ」
光る何かが私に向かってゆっくり落ちてくる。手を伸ばしてそれを受け取った。
色様々な石―勾玉が連なったネックレス。それは前世で自分が集めて作っていた物で。それら一つひとつに膨大な魔力が篭められているのが分かる。
晩年、これを持って巡礼していたから影響は少なからずあったのだろうか。
「さて、そろそろ時間のようじゃ。現実の主も目覚める」
天照はそれまでの高飛車的な口調から一変。
「そちらの世界では苦労するであろうが、負けずに生きて行くが良い」
威厳がありながらも、優しい口調で送り出した。
目が覚めると見慣れた天井が目に入った。首を動かすと同じく見慣れた部屋で。
「夢、にしてはリアルだったね……あ」
何かを左手に握り締めていることに気づき、毛布の中から手を出してみると、あのネックレスだった。手の甲には三画の紋様。そして、
「おはようございます、ご主人様♪」
いつの間にか傍らにいたサーヴァント。露出度の高い和服風の装束を纏った狐耳の女性。
「キャスター、よね」
「はい、貴女様のサーヴァント、キャスターでございます」
「私のこととか、説明しておく?」
「
「じゃあ一応自己紹介しとくね。私はヴァルトルート・ヒューズ」
この国の真実や、私が目指していること等を説明して、契約を交わした。
遅くなりました!
報告していた予定を遥かにオーバーしてしまい、申し訳ございませんでした。
久々の執筆でネタを放出した結果、長くなってしまいました。
プロローグの答えも此処で出ました。で、呼ばれるキャス狐さん。ゲーム中では伊邪那伎と伊邪那美の子みたいな表現されてましたけど、実際どうなんでしょうか?古事記には伊邪那伎が禊した時に誕生したといいますが。まあ、前者の方が設定的に都合が良かったのでそうしましたが。
あと、天照の口調がよく分かりません。