Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜 作:パンダ三十六か条
1日目〜4日目 成り上がり計画
突然だが、転生という現象を知っているか?
転生とは、仏教の思想。生物が死ぬと生まれ変わって新たな生物となる、という考え方である。
俺の名前はニャー郎。前世の名前は山田一郎。
どうやら、俺は転生したらしい。
昨日、俺はモンハンをやっていた。久々に出会った友達とモンハンの話をしたら何だかやりたくなってしまい、物置の中からゲーム機を探し出して遊んでいたのだ。
すると、いつのまにか夜になっていたので、小腹がすいた俺はコンビニで肉まんを買いに行くことにした。
この時、明日は早いから諦めて寝れば良かったのに、と後悔している。そうすれば、今頃普通に出掛けてた筈なのだ。
コンビニに行くと何故だか騒がしかった。中から悲鳴やら怒号やらが聞こえてくるので、何事かと思って入ってみると、そこにいたのは包丁を持った男と最近入った可愛い店員さん。
どうやらコンビニ強盗に襲われていたらしい。いきなり入ってきた俺に驚いた強盗は俺に突進してきて、そのまま俺の事を刺して逃亡。
そうして俺は死んだ。運が悪いとしか言えない死だった。
目を覚ますと、目の前にあったのは猫の顔だった。
何故か身体が動かしづらくなっていて、唯一動く頭を傾けて周囲を見渡すと、周りには大きな猫がたくさんいた。
その猫達はどこか変だった。骨格が人間に近く、まるで赤ちゃんのように地面に寝転んでいた。
自分の身体を見ると、そこにあるのは周りの猫モドキと同じ手足。無駄にモフモフしていて、ちゃんと肉球もある。
俺が、モンハンに登場する猫人、アイルーに転生したという事に気がつくのに、時間はかからなかった。
本当なら、「アイエエエエ⁉︎ アイルー⁉︎ アイルーナンデェ⁉︎」とか叫びたかったが、動けないし喋れなかったのでそのまま寝転んでいるしかなかった。
そして、俺がアイルーに転生してから3日目になった。
「おーい皆、ガーグァを狩ってきたにゃー!」
「わーい! 肉にゃー!」
俺はこの生活に順応していた。
アイルーは群れ社会である。
オスが狩りをして、メスが子育てや採取をする。まるでネアンデルタール人のような生活である。
俺が住んでいる所はモンハン3rdの渓流、そこのエリア3に似ていた。
アイルー達の居住区に続く通路はモンスターが入れないように工夫がされている。そのおかげでアイルーは安全に生活できるようになっているのだ。
まず、ゲームでいうエリア9の方には太いツタが絡み合ってできた長い橋がある。
この橋は体重の軽いアイルーなら通れるのだが、大型モンスターや小型モンスターの群れが通ると千切れてしまうので、モンスターが入れないようになっている。
もし、ジャギィが単体で入って来た時も、橋を見張るアイルー達によって討伐されることになっている。1、2体ならばアイルー達もラクラク倒すことができるので、恐るるに足らないのだ。
次に、ゲームでいうエリア2の方は、かなり狭い通路になっている。
大人アイルーがギリギリ通れるぐらいのサイズの通路なので、ジャギィは入ってくることができない。
大きな岩の壁と壁の間に道があるため、大型モンスターに壊される心配もない。
まあ道を工夫しても空を飛んでくる魔物は防げないのだが、飛竜は俺らのような小物を狙わないし、ブナハブラは煙を嫌うので火を焚いていれば寄ってこないので心配する必要は無い。
ゲームの中にある地形も色々考えられている。アイルーになって初めてその事に気がついた。
そうして俺はモンスターに襲われることもなくスクスク育った。数日で普通に歩き回れるようになっていた。
「今回はジャギィに邪魔されなかったにゃ。たくさん持ってこれたにゃー!」
「早くわけるとするにゃ」
アイルーは基本的に弱者である。一人ではジャギィすら勝てない弱者である。そのため折角ガーグァを倒してもジャギィに奪われることもしょっちゅうだ。
だから、今回のように肉を殆ど持ってくるのはかなり少ないのである。こんなにたくさん肉を得られる事はかなり少ないらしい。
「ほら、ニャー郎も食べるにゃ」
そう言って肉を差し出してくる大人アイルー。ありがたく頂戴することにした。鳥なのに脂肪たっぷりで柔らかく、噛むほどにジューシーな風味が広がる。俺はゆっくり咀嚼した後、飲み込んだ。
『能力名【気配察知】のラーニング完了』
『能力名【絶縁体】のラーニング完了』
頭の中にアナウンスが聞こえる。どうやら今回は二つラーニングする事ができたらしい。
実は俺は、異世界に転生してから特殊な力を手に入れていた。
その名も【
俺がこの能力を自分が持っていることに気がついたのは昨日、大人アイルーの採取してきたキノコを食べた時だった。
『能力名【爆竹生成】のラーニング完了』
大人アイルーから貰った真っ赤なキノコを食べていたら俺の頭の中にアナウンスが聞こえてきたのだ。
突然の声に驚いて周りを見渡しても、ニャーニャーいってるアイルーしかいない。
最初は幻聴か何かかと思ったのだが、よく考えたらさっきのアナウンスがRe:Monsterの能力を手に入れた時のフレーズと同じだと気がついたのだ。
試しに、近くにいた蜘蛛を捕まえて口に運ぶ。
『能力名【蜘蛛の糸生成】のラーニング完了』
さっきと同じくアナウンスが聞こえた。この能力は見覚えがある。確か指先から粘着性のある糸を出す能力だ。
指先を見ながら念じてみると、そこから白い糸がピュッと飛び出してきた。
神様にあった覚えは無いけど転生特典はもらっていたらしい。新しく始まった人生、いや猫生で2回目の驚きだった。
【吸喰能力】
『Re:Monster』の主人公、ゴブ朗の持つ能力。金属だろうが毒物だろうが喰えるようになり、毒性の物は体内で無害にして吸収し、そして食っていた物が持っていた能力を得る力。
様々な力を持つモンスターがいるモンハンの世界において、俺の能力はかなり強力な力になるだろう。
【爆竹生成】
【蜘蛛の糸生成】
【急成長】
【気配察知】
【絶縁体】
現在俺が持つ力はこの5つ。
急成長はタケノコを食べたら得た能力で、毛や爪を瞬時に長くする事ができる力だ。
まだ、俺の能力は少ない。このままじゃあ俺はジャギィにすら勝つことはできない。
アイルーは生まれから5日目、狩りに連れて行かれる。だから、俺も明日からはモンスターと戦わなくてはならない。モンスターを狩って来ない奴は群れから追い出されてしまう。
はっきり言って、普通にジャギィやファンゴを倒して強くなっていくのは俺には無理だ。Re:Monsterの主人公には能力の他に武術の心得もあったが、俺にはそんなものは無い。俺は唯の一般市民なのだ。
強い能力が無ければ敵を倒せないし、強い能力を手に入れるには強い敵を倒さなくてはいけない。
「危険察知も手に入れたし、後は念のため
だけど、強い力を簡単に手に入れられれば、自分より格上相手の力を戦わずして手に入れられるなら話は別だよな?