本当はもっと長かったのですが、分割したので今回はちょっと短めです。
分割した後半部分は早いうちにアップしたいと思います。
「まずは乾杯といきましょう」
「それでは、サイド3と我らサイド8の未来に」
「サイド8とサイド3の未来に」
何だろう、無駄にダンディズムを感じる。
いや、シーゲルさんは良いのだが、我が父デギン・ソド・ザビはダンディズムから遠い中年男なので違和感しか覚えない。
「しかし、よろしかったのですか? ダイクン首相との夕食会があったのでは?」
「ダイクン首相はお忙しいらしく、夕食会は取り止めたいとラル殿から要請があったのです」
「ジンバ・ラルからですか?」
シーゲルさんは父の問いに口では答えず、肯定するようにワイングラスを少し掲げて見せた。
はっきりとした回答を出さないのは、シーゲルさんが今回の騒動の裏側を知っているからだ。
実は、ダイクン首相との夕食会が中止となり、急遽ザビ家での夕食会に参加となったのは僕が手引きしたからだったりする。
こうでもしなければシーゲルさんに会えなかったので、仕方なく忍者に一仕事してもらいジンバ・ラルの思考を誘導してもらった。
思考誘導といっても特別な事はしておらず、ダイクン首相の秘書を隠れ蓑としている忍者がジンバ・ラルに対して苦言を呈したのだ。
サイド8などという弱小組織の、何処の馬の骨とも知れないザビ家に雇われていた家庭教師風情のせいでダイクン首相の貴重な時間が無くなっている。
そして、時間が無いために明日の演説の原稿が完成していない、これはザビ家が元家庭教師を利用してダイクン首相を貶めようとしているのでは無いか、と。
ジオン・ズム・ダイクン至上主義、ジオン共和国一のダイクンの腰巾着、そんなジンバ・ラルは秘書の苦言を受け、100%善意でシーゲルさんに夕食会の中止を要請したのだった。
この要請を受けたシーゲルさんは当初の予定通り、ダイクン首相との夕食会をキャンセルしてザビ家の夕食会に訪れたと言う訳だ。
「ジンバ・ラル、相変わらずいけ好かない奴だ!」
「所詮はダイクンの腰巾着だ、放っておけ」
各自が乾杯のグラスを置き、一息付いたタイミングで突然ドズル兄さんが吠えた。
その容姿に似合わず、ドズル兄さんは空気が読めるのでタイミングを読んだのかもしれない。
・・・政局の空気は読めないが、軍事的な空気は読む出来た軍人(候補)がドズル兄さんなのだ。
ザビ家全員(一部除く)が夕食会に参加しているので、ここで改めて僕の家族を紹介しよう。
まず、父のデギン・ソド・ザビ。サイド3、ジオン共和国の首相であるジオン・ズム・ダイクンの側近中の側近で、ジオン共和国のNo2だ。
ただ、ダイクン首相が具体的な国家戦略、政策を行わない為に実務的な面ではジオン共和国の実質的なNo1と捉えている勢力もある。
ちなみにアニメ版だと宇宙世紀0017生まれだが、この世界では宇宙世紀0007生まれの54歳だ。
つまり、この世界はオリジン版に近いガンダム世界という事だ。
次に長男のギレン・ザビ。ダイクン党の青年副局長、ジオン共和国議会の一年生議員を務めている27歳です。
アニメ版だと35歳で18年後に勃発する一年戦争にて亡くなっているので、ギレン兄さんもオリジン版に準拠した設定となっています。
ジオン共和国議会に当選時は、父デキンも当然ながら議会議員でもあるので、親子で議席を得ている事もザビ家に対する批判に繋がっています。
このような批判に対しジオン共和国のトップであり、所属政党であるダイクン党のトップでもあるダイクン首相が無関心、むしろ容認しているようにも見えるので公に批判するのはジンバ・ラルくらいです。メディアの皆さんも、ジオン共和国の行政を実質的に取り仕切っているザビ家に睨まれたくない、ザビ家から得ている利益を失いたく無いという思惑もあるのでザビ家有利な報道しかしません。
ちなみにザビ家が与えている利益は金ではありません。純粋な資産総額で言えばラル家やサハリン家など、ザビ家に匹敵するかザビ家以上の資産を持っている名家もあります。
この中でザビ家がジオン共和国で権勢を振るっていられるのは、ダイクンの信頼を得ているNo2、実質的に行政を取り仕切っている以外に父デキンの人脈が大きい。
父はダイクンに出会う前までサイド3最高学府の学部長を務めていた為、今のジオン共和国を支える知識階級との人脈が広い。
また、知識人としての人脈はジオン共和国の外にも広がっており、地球連邦政府高官にも多数の知古を持つ。
つまり、UC0059のジオン共和国成立に端を発した地球連邦政府の経済制裁下にあるジオン共和国において、他サイドや地球連邦政府との交渉窓口を持つ最大の大物が父デキンなのだ。
いくら自給自足が可能でも、ジオン共和国外の娯楽、ニュースは手に入らない。もし、手に入ればスクープとなるのだが、経済制裁下にあるジオン共和国は陸の孤島として外部の情報が手に入らない為、スクープが欲しいメディアの皆さんは父デキンに尻尾を振りたがるのだ。
・・・元連邦政府議員であったダイクン首相も連邦政府に対して人脈があるのだが、あの人は連邦政府を悪として断罪する事に夢中なので、議員時代の交友関係をすべて断絶してしまっている。
このような事情もあって宇宙世紀0061年現在、ザビ家の権勢は不動の物となっている。
次に次男のサスロ兄さん。アニメ版には登場していないので良くわからないが、ギレン兄さんの二つ下の25歳なので、オリジン版の設定に準拠していると思われる。
ジオン共和国議会議員の被選挙権を今年得たのだが、サスロ兄さんには出馬する意思は無いようだ。
現在はダイクン党の広報部で係長をしており、将来はダイクン党での部長職が約束されていると噂されている仕事が出来る男だ。
元革命闘士だった影響か、党職員として父や兄を支えると言うよりもダイクンを優先する行動をする為、比較的ラル家など反ザビ家勢力と仲が良い。
正直、最初はザビ家の独裁体制に尽力したイメージがあるのでギャップに驚いたのだが、弟として接してみると独善的で他人の些細なミスも許さない性格をしているので、理想に燃える青年を卒業していないだけのようだ。
将来的に欲に染まれば、僕の知っているサスロ・ザビになると確信させる物を持っている。
三男のドズル・ザビ。戦いは数だよ兄貴! のセリフが有名な軍人だが、この世界ではまだ20歳の士官学校の学生だ。アニメ版では享年28歳だったらしいので、ドズル兄さんもオリジン版に準拠しているようだ。
本来なら寮生活をしているのだが、ザビ家で重大なイベントがある度に実家に呼び出されている。
士官学校での成績は優秀で、主席卒業は間違い無いと教官からお墨付きを貰っており、性格的に参謀職は難しいが優秀な前線指揮官になると評判だ。
次に長女のキシリア・ザビ。僕の双子の姉にして、6歳のリアル幼女だ。
物心ついて自分が僕の姉である事を自覚して以来、姉としての行動を取りたがるアグレッシブな性格をしている。
主な被害者は僕と香燐だが、稀に末弟であるガルマやダイクン首相の長男キャスバルや長女のアルテイシアにも被害が及んでいる。
まあ、ガルマもキャスバルも四歳児なのでキシリア姉さんとの間に色々と上下関係が出来ているようだが、アルテイシアはまだ一歳の乳幼児なのでまだ被害者意識は無いのだが。
それと大事な事だが、キシリア姉さんはアニメ版の設定に準拠している。
つまり、オリジンでは宇宙世紀0068年のダイクン首相死亡時に保安隊隊長として活動しているが、この世界では13歳なので馬にまたがり暴徒と化した群衆を解散させるなどの活躍は無いだろう。
現在はザビ家の紅一点として、末弟ガルマの世話を担っている。
ザビ家にもベビーシッターはいるのだが、ダイクン首相の愛人にしてキャスバルとアルテイシアの実母アストライアに師事して子育てを学び、ガルマとザビ家に遊びに来るキャスバルを相手に学んだ子育てを実践するのがキシリア姉さんの最近の日課だ。
子育てと同時に、アストライアさんから女の子教育を受けているので、将来は普通の女子に育つと思う。
ザビ家の家風というか、男家族の中で育ってしまっただけ弊害がアニメ版やオリジン版のキシリア姉さんで、この世界ではガンダムさんに登場するようなキシリア姉さんのように成長して欲しい。
最後に五男のガルマ・ザビ。まだ四歳なので取り立てて語る事は無いのだが、面識のあるキャスバルにライバル心を持っていたようだが、キシリアの姉としてのお世話攻撃を受けてからは妙な仲間意識を持つようになったようだ。
アニメ版では一年戦争時に20歳だったと記憶しているので、ガルマはアニメ版設定通りと言う訳では無いらしい。
以上がザビ家の構成になり、ザビ家に母と呼ばれる存在はいない。
また、ドズル兄さんと僕の年齢が離れているのは、単純に僕とキシリア姉さん、ガルマの三人が後妻の子供だからだ。
「しかし、ギレン兄! このまま黙って見ているのは!」
「よさないか、ドズル。お客人の前だ」
「しかし、親父」
「ドズル」
「…わかったよ」
色々と言い足りないようだが、流石のドズル兄さんも家長である父さんには逆らえないようだ。
渋々と立ち上がりかけていた腰を下ろし、食事を再開するドズル兄さん。
「詰まらぬ話題で申し訳ない」
「とんでもない、私は独り身なので家族の会話は新鮮で面白いですよ」
「先生は結婚なさらないのですか?」
「仕事が忙しくてね。もう暫くしたら第二次スペースコロニー建造も終わって入植が始まるから、当分は仕事が恋人かな」
シーゲルさんの言う第二次スペースコロニー建造は三か月後に完了し、即入植が始まる予定だ。
今回建造するスペースコロニーも前回と同じ規模の大型コロニーになり、住居型を12基、農業型を4基、工業型を4基の計20基を建造する。
これでサイド8は住居型が15基、農業型と工業型が5基ずつの計25基のスペースコロニー群となる。
入居者は計1億人を予定しており、サイド8の人口は1億3000万人とそれなりの規模のスペースコロニー群となる予定である。
ちなみに食糧生産は小規模ではあるが住居型コロニー内部、全スペースコロニー外部に設けられた食糧生産プラントで生産しているので、自給自足可能な体制を整えている。
それとあえて言及していないが、当然スペースコロニーも入力者も僕が召喚する。
入植者については入植希望の問い合わせがあるそうだが、今は召喚したオリキャラのみを入植者にする予定だ。
理由は簡単で、まだまだ人種や民族、文化、宗教の違いによる問題に対応するだけの余裕がないからだ。
同じスペースノイドと言っても、旧世紀以前からある問題を解決した訳では無い。
召喚する入植者は多人種、多民族となるが、全員僕の召喚した人間というバックボーンがあるので、実態としては単一民族国家となっているのがサイド8なのだ。
「忙しいんですか、昔みたいに勉強を教えてほしかったのですが」
「これ、リヒト。あまり我儘を言うでない」
「かまいませんよ、デキン殿。リヒト君は私の生徒ですからね、何時もの様に勉強しましょうか」
「ありがとうございます!」
よし、これでシーゲルさんとサイド8の話が出来る。
「リヒトは本当にクライン殿を慕っているのだな」
「はい、サスロ兄さん! クライン先生は色々な事を教えてくれるので大好きです!」
「色々な事を、ね。あまり過激な事は教えないでくださいよ」
今まで沈黙を守ってきたサスロ兄さんの突然の質問に、某バーローな探偵に匹敵する子供らしい演技で答えた。
サスロ兄さんはオリジンで若き紫ババぁを殴った印象が強い為、前世は平和な日本人家庭に生まれ、体罰が禁じられた時代で普通に育ってきた僕にとっては正直苦手な大人だ。
この世界でも、後妻の子供で歳が離れている為かキシリア姉さんと僕に対してよそよそしい態度だし。
ただ、ガルマに対しては普通に接しているので、その態度が余計にサスロ兄さんを嫌いになる原因になっているし、キシリア姉さんは僕以上にサスロ兄さんを嫌っている。
…世界が変わっても、ザビ家には兄弟間のイザコザが付き物のようだ。
「リヒトも将来はザビ家を背負って立つ男になるのだ、政治に経済、軍事と大いに学べば良いではないか」
サスロ兄さんとの関係は良い物では無いが、ドズル兄さんとは普通の兄弟として接してくれるのでザビ家の仲では良い関係を築けている。
ギレン兄さんは基本的に無関心なので、良い関係とか悪い関係以前にまったく交流が無い。
「…学んだ事が無駄にならなければ良いがな」
「クライン先生に学んだ事を活かして、将来はザビ家の繁栄に貢献したいと思います」
サイド8の裏ボス的なポジションなので、何処までザビ家に貢献出来るかは不明だが。。。
それでも家族ではあるので、なんとか一年戦争後も生き残らせたい。
その為にも一年戦争に勝ちたいし、コロニー落としを始めとしたサイド2への毒ガス攻撃などの非人道的な大量虐殺は止めたい。
原作の一年戦争よりも良い結果、ジオン又はスペースノイドにとってはだが、にする為にもサイド8という原作には存在しない勢力を用意している。
開戦までにどれだけの戦力を整えられるのか、もしくは交渉で独立を達成し戦争を回避するのか。
計画が動き出したばかりなので未来は見えないが、それでも頼りになる仲間達とより良い未来、そして地球圏の先、太陽系よりも先に進出する人類の未来を実現させたい物だ。
その為にも、この後に予定しているサイド8の幹部連中との会談で計画の進捗状況の確認をしたいと思う。
ザビ家の紹介だけで終わった6話でした。
本来ならサイド8の人達の紹介、研究の進捗報告があったのですが分割により7話になりました。
忘年会、仕事帰りにガルパン劇場版鑑賞、忘年会、スターウォーズ、仕事帰りに再びガルパン劇場版、忘年会とイベントが続いたので更新が遅くなりました。
…ガンオンではゲロビで毎日頑張っていますが、数年ぶりにリアルでゲロビを発射してしまう所でしたよ。
そういえばカイロ・レンさんは簡単にマスク脱いでましたけど、仮面キャラとして良いんですかね?
まあ、一般的(?)な仮面キャラと違って正体隠してる訳じゃなくてベイダーリスペクトでマスクかぶってるだけ見たいだから良いのかな。。。
しかし、中の人は出る映画を間違えてるよね。何処のハリーポッターかと。。。