Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia   作:ローレンシウ

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第百八話 The deceased speaks

「……ってことなんだけど、何か役に立つ商品はないかな?」

 

『ふうむ……』

 

 ディーキンが一通りの説明を終えると、召喚に応じて現れたジンの商人・ヴォルカリオンは、口髭を弄りながら少し考えて返事をした。

 

『そうだな……、《死者との会話(スピーク・ウィズ・デッド)》のスクロールならば手持ちの商品の中にあるが。抵抗をしにくいよう特別に強力化したものなどはなかったな』

 

「やっぱり?」

 

 ディーキンは少しがっかりしたが、まあ当然だろうなとも思った。

 あるいはと思って尋ねてはみたものの、そんな特別な品物は普通特注して作ってもらうものであって、普段から店に置いてあるなんてことはまずないだろう。

 やはり、そうそう都合よくはいかないものだ。

 

 ヴォルカリオンはそんなディーキンの様子を見てわずかに笑みを浮かべると、話を続けた。

 

『……しかし、抵抗されにくいようにということであれば《限られた望み(リミテッド・ウィッシュ)》を用いればよかろう? スクロールが入用なら、何枚か在庫はあるぞ』

 

「ウーン、それしかないのかな……」

 

 ディーキンは、顔をしかめて考え込んだ。

 

 確かに、《限られた望み》はほとんどどんな効果でも作り出すことができる万能の呪文だ。

 メンヌヴィルの屍の抵抗力を削ぐためにあらかじめ《限られた望み》を用いてから《死者との会話》をかければ、成功の確率はかなり上がるだろう。

 さらに、《死者との会話》の呪文自体も《限られた望み》によって再現すれば、抵抗はより一層困難になる。

 

 ただし、強力な呪文であるがゆえに《限られた望み》のスクロールはかなり値が張る。

 もちろんその程度の金が現時点で出せないというわけではないが、この調子で支出を続けていたら遠からず資金が枯渇してしまいそうで今後のことが不安なのだ。

 いくらか収入も入ってきてはいるが、それでも明らかに赤字である。

 これからもことあるごとにさまざまなアイテムを用意しなくてはならなくなりそうだし、なるべく出費は押さえたかった。

 それにヴォルカリオンの店の在庫だって無限ではないわけで、金があっても品物がなければ買うことはできないのだ。

 いざという時に頼れる《限られた望み》のスクロールをやたらに使っては、後々困ったことになるかもしれない。

 

 やはり、バード一人であれもこれもというのは無理があるのだろう。

 サブライム・コードの訓練を始めたくらいでは、到底追いつきそうもなかった。

 ここにボスやリヌやナシーラがいてくれればと切に思うが、向こうの仲間たちにもそれぞれの仕事があるのだから、無闇に呼びつけるわけにはいかない。

 

 来訪者を招請するにしても、その度に費用がかかってしまうことは変わらない。

 ここはいっそ、強力なウィザードやクレリックのシミュレイクラムでも作っておくべきだろうか?

 破損すると修理が大変なので戦力として使うのは難しいが、無償で働いてくれる便利屋としては有用だろう。

 それこそナシーラやリヌに許可を得て髪の毛なりを貰い受ければ、作るのはこっちでもできるわけだし……。

 

(ンー……)

 

 まあ、それは検討しておく価値はありそうだが、今すぐにできることでもない。

 今はまず、メンヌヴィルの屍から話を聞き出すことを考えるのが先だ。

 

 そんな風に考え込んでいると、ヴォルカリオンがまた声をかけてきた。

 正確には、声ではなくテレパシーなのだが。

 

『どうした、なにか悩む事でもあるのか?』

 

 ディーキンはそこで、自分の悩みを正直に打ち明けてみた。

 ヴォルカリオンは話を聞き終わると、鷹揚に頷く。

 

『なるほど、確かにお前は最近、消耗品をよく買い足してくれているな。こちらとしては商売繁盛でありがたいことだが、この調子ではいずれそちらの金が続かなくなる、か……』

 

 彼は少し考えると、懐から小さな箱を取り出した。

 

『……では、そんなお前にこの商品を勧めよう。つい先日入荷した一点しかない希少品だが、お前は常連だからな』

 

 そう言って箱を開き、中のものをディーキンに見せる。

 

 そこには、美しい指輪が収められていた。

 リング部分はミスラルでできており、そこに小さな宝石が3つ嵌っている。

 宝石はいずれもブラックオニキスだったが、魔力の輝きが宿って内側から赤く光っており、やや暗い色合いのルビーのようにも見えた。

 

「ええと……、これは、どういうものなの?」

 

 ディーキンは首を傾げた。

 デザインは有名な《3つの願いの指輪(リング・オヴ・スリー・ウィッシズ)》に少し似ているようだが、明らかに別物である。

 

『この品の来歴や因縁に関して詳しく説明すれば、長い物語となるだろう。しかし、それはお前には関係のないことだから、必要な部分だけをかいつまんで話すとしよう』

 

 ヴォルカリオンはそう前置きをすると、やや勿体ぶった様子で説明を始めた。

 

 要約すると、彼には長きに渡る因縁のある不快な商売敵がいたらしい。

 それは彼と同じジンニーの一族で、地の元素界に住んでいるダオと呼ばれる種族の鼻持ちならない商人なのだという。

 ギルゾンという名のその男とヴォルカリオンとは、先日ついに対決して雌雄を決したのである。

 

『……むろん、私が勝って奴を捕えたのだがな。商人と呼ぶのもおこがましいあの不愉快な奴隷使いは、ついに解放の代償として自ら奉仕する立場となることに同意し、その結果がこの指輪というわけだ』

 

「オオ……。ってことは、それは御伽噺に出てくるみたいなやつだね!」

 

 ディーキンはきらきらした目で、小箱の中の指輪を見つめた。

 

『さよう。この指輪に結び付けられておるギルゾンの力は、1日につき3回まで、持ち主の《限られた望み》を叶えてくれることだろう』

 

 こういった品こそが、お前たち定命の存在が概して我々ジンニーに妙な先入観を持っておる元凶なのだろうがな……と、ヴォルカリオンは苦笑気味に付け加えた。

 

『……まあ、それは今は置いておくとしよう。さて、この品はお前の食指を動かしたかな?』

 

「もちろん。それがあれば便利だね。……でも、きっとすごーく高いでしょ?」

 

 ウィザードやクレリックが仲間にいない環境では、このようなアイテムの恩恵は特に大きいことだろう。

 問題があるとすれば、それは値段がいかほどかということだ。

 1日あたりの回数制限があるとはいえ、《限られた望み》を無限に使用し続けられるアイテムともなれば、まず1回使いきりのスクロールの数十倍は下るまい。

 金貨にして二十万枚、あるいは三十万枚くらいだろうか?

 そのくらいならば、少し無理をしてでも買いの品だとは思うのだが……。

 

 そんなディーキンの悩みを知ってか知らずか、ヴォルカリオンは目を細めて小さく首を振った。

 

『お前にとってはそう高くもないと保証しよう。確かに、この指輪は定命の存在にとっては計り知れない値打ちがある。だが、ジンである私にとっては無用のものだからな』

 

 ジンニーの中には、さまざまな物語で語られるように他人の願いを叶える力を持つ者たちがいる。

 しかし、その力は自分自身のためには使えない。

 より正確には、同じジンニーのためには使えないという決まりがあるのだ。

 つまりヴォルカリオンにとっては、この指輪は勝利の記念品だという以外には換金することでしか役に立たないアイテムなのである。

 

『さらに、私はギルゾンに対して奉仕の期限を千一の夜が過ぎ去るまでと言ってある。したがって、この指輪は永久に使えるわけではないのだ。そのあたりも考慮して、そうだな……』

 

 少し考えてヴォルカリオンが提示した額は、確かにこのクラスの商品としては破格の安さだった。

 加えて、もしも千一夜が過ぎる前にこの指輪が無用になったのなら、その時点で返却してくれれば残った日数に応じた額を払い戻そうとまで言ってくれた。

 

「……本当に、そんなに安くていいの?」

 

『うむ、お前の困惑はわかる。この指輪なら、今言った額の3倍で買い取る客を見つけることも難しくはなかろう』

 

 ヴォルカリオンはきょとんとしているディーキンに対して頷きながら、言葉を続けた。

 

『……しかし、私は金にさえなれば誰に何を売ってもよいという低俗な商人ではない。客が品物を選ぶように、私は客を選ぶ。そしてお前は、私が選んだ上客の一人なのだ』

 

「ディーキンが? ……アア、その……、エヘヘ」

 

 照れたように頭をかきながら笑うディーキン。

 相手は商人なのだからお世辞混じりだろうとは思っているものの、褒められるとやはり嬉しいのである。

 

「ありがとうなの、ヴォルカリオンさん。じゃあ、その指輪をもらえる? お金は、ええと――」

 

 ディーキンは自分の荷物袋の中身をひっくり返して、現金や宝石、貴金属のインゴット、それに換金してもよさそうな品物などを引っ張り出した。

 それらを一通り検討した上で、いくつかの品の換金と支払いを済ませると、詳しい使用方法の説明と共に指輪を受け取る。

 

 礼を言って取引の終了を伝えると、ヴォルカリオンは挨拶をして消えようとした。

 が、ふと思い出したように懐から一巻きのスクロールを取り出す。

 

『そうそう、忘れるところであった。お前の仲間から預かりものがある、以前に頼まれたものだそうだが』

 

「オオ、ナシーラが用意してくれたんだね!」

 

 ディーキンが嬉しそうに頭を下げてそれを受け取ると、ヴォルカリオンは今度こそ別れの挨拶を済ませて、自らの故郷である風の次元界へと還っていった……。

 

 

 

 そうして交渉が進められている間、惚れ薬の効力に侵されているタバサはただぼうっとその様子を、より正確にはディーキンの様子を見つめ続けていた。

 ディーキンはヴォルカリオンとのやりとりに集中していて、彼女の方にはまったく注意を向けていない。

 

「…………」

 

 タバサはわずかに嫉妬めいた感情を覚えたが、さすがにそれが理不尽なものであることは理解していた。

 そして、そんな気持ちが湧き起こってくるのはどういった状態の時なのかも、博学な彼女は多くの本で読んで知っていた。

 

 これまでに一度も、そんな感情を持ったことはなかった。

 だから、最初はわからなかったのだ。

 いや、今にして思えば、これまでにも幾度か同じような気持ちを覚えていたのかもしれない。

 これほど激しくはなかったから、気付かなかったというだけで。

 

(……恋、を、しているとき……)

 

 しかし、タバサはその気付きを、自分の中のそんな感情を、なんとかして否定しようとした。

 無理に視線をディーキンから外すと、微かに潤んだ目を伏せて軽く頭を振り、心の中で自らに言い聞かせる。

 

(私はきっと、勘違いをしているのだ)

 

 互いにあまりにもかけ離れた異種族だから恋愛などありえない、相手が受け入れてくれるわけもなければうまくいくわけもない、というごく常識的な判断もある。

 明らかに禁忌である、といったような倫理観もある。

 

 しかしそれ以上に、タバサにとってディーキンはまず何よりも、多大な恩義を受けた相手なのだ。

 

 以前には、彼こそが遠い昔に憧れていた自分の勇者なのではないかと思ったこともあった。

 今では、間違いなくそうだったのだと確信するまでになっている。

 

 自分は生涯をかけてでも母を悪夢から救い出し、父の仇を討つのだと誓っていた。

 彼はその母を救ってくれたのだから、いくらかなりとも恩義に報いるために生涯を通して従者として仕えようと既に決めている。

 もっとも、ディーキン自身は自分に対して友人や仲間であってくれること以外に何も望んでいないのは明らかだから、彼の前で跪いてそう誓いを立てるようなことはしていなかった。

 従者というものは、仕える主を困らせるべきではないのだ。

 ただ、シャルロット・エレーヌ・オルレアンは、父から譲り受けた杖にかけて、そうすることを自らに誓ったのである。

 

 もし仮に、万が一、ディーキンの方からタバサに求愛するようなことがあったとすれば……。

 その時には、タバサはなんの抵抗もなくそれに答えられるだろう。

 個人的な感情などを一切抜きにしてただ恩義の大きさだけで考えても、自分自身を与えることでいくらかでも彼に報いることができるのであれば、彼女にはそれを断るべき理由は何もない。

 もちろん他に想いを寄せる異性でもいたなら彼女も苦悩するだろうが、今のところタバサにはそのような相手はいないし、欲しいと思ったこともなかった。

 

 しかし、実際にはそのようなことはありえない。

 人間である自分などが言い寄ったりしたら、彼を困らせてしまうことになるに決まっているのだ。

 

(これ以上、あの人に迷惑をかけようというの?)

 

 タバサは自分自身を叱り、戒めようとした。

 

 騎士に対して従者が擬似的な恋愛感情を抱くのはよくあることだと、以前に読んだ本にも書かれていたではないか。

 自分の場合も、大方そんなことに過ぎないはずだ。

 あるいは、憧れの勇者に対する幼な恋とか、恋に恋をしているとか、そういったことで――。

 

「ねえタバサ、ちょっといいかな?」

 

「――っ!」

 

 目の前の明白な事実を否定して、無理に別の答えを探そうとする……。

 そんな虚しい試みは、結局は彼からの言葉がけひとつで頭から吹き飛んでしまった。

 

 言葉をかけられただけで、どきりと心臓が跳ねあがる。

 顔を上げて彼と目と目が合った途端に、あらゆるものが急激に色彩を失っていった。

 最後には、灰色の世界をバックに鮮やかに浮かび上がるディーキンの姿だけしか見えなくなる。

 

 タバサは、凍りついたように動けなかった。

 

「……どう、したの?」

 

 震える声を絞り出すようにして、ようやくのことでそう尋ねる。

 

「うん、さっきのヴォルカリオンさんとの話は聞いてたでしょ? ディーキンはこれから、この指輪を使ってあの人の死体にいろいろ話を聞いてみようと思ってるんだけど……」

 

 そう言いながら、さっそく自分の指に通してみた指輪と部屋の隅で布を被っているメンヌヴィルの死体とを、交互に示した。

 

「ディーキンにも自分なりの考えはあるけど、なにか意見がないかなあと思って。ねえ、タバサはどんなことを聞いたらいいと思う?」

 

 タバサは促されるままにそれらを見つめながら、蕩けたようになっている頭でぼんやりと考えてみた。

 

 指輪……。

 きれいな指輪……なのだと、思う。

 今はただ彼の姿だけが鮮やかで、まるで色褪せて見えるから、よくわからないけれど。

 

 死体……。

 そう、キュルケたちと戦ったという男の死体だ。

 

 それに話を聞くというのは……、そうか、昼間に傭兵の屍に話をさせたのと同じような呪文を使うつもりなのか。

 その質問の内容を一緒に考えてほしいとこの人が言うのならば、自分は、頑張って力にならなければ。

 

 だけど、そのこととあの指輪との間に、どんな関係が……。

 

「……あ」

 

 そこまで考えたところで、タバサは自分が先程のヴォルカリオンとディーキンとの会話の内容をろくに覚えてもいないことに気が付き、愕然とした。

 

(そんな、はずは……)

 

 彼女は、自分がどんなに熱心に本を読んでいようとも同時に周囲の出来事にも油断なく注意を払うことができるのを知っていた。

 それは生来の素質と、過酷な任務を生き延びるための訓練とによるものだ。

 その自分がこんなにも不注意になるだなんて、いや、ただひとつのことしか考えられなくなるだなんて、とても信じられなかった。

 

 いつの間にか弱くなっている自分が、変わっていく自分自身が恐ろしくて、タバサは我知らず身を震わせた。

 

「……アー。もしかして、おじさんはタバサには話を送ってなかったのかな?」

 

 ディーキンは、タバサが黙り込んだまま困惑しているような様子を見て、ヴォルカリオンのテレパシーが彼女には送られていなかったものと解釈した。

 

 もちろん、実際にはそんなことはない。

 ヴォルカリオンはタバサにもちゃんとテレパシーで話の内容を送っていたのだが、彼女の側がディーキンの声以外をまともに聞いていなかっただけのことである。

 

「……そうかもしれない。ごめんなさい……」

 

 タバサはそう言って、顔を伏せた。

 

 もちろん彼女自身はディーキンの解釈が誤っていることを知っていたが、自分が警戒も何もしておらずまるで上の空だったことを正直に伝えたくはなかったのだ。

 そんなことは決してないとは知っているけれど、万が一彼に失望したような目で見られでもしたら、きっと胸が張り裂けてしまう。

 

「イヤ、聞いてなかったんじゃしょうがないの。じゃあ、最初から説明するね」

 

 ディーキンの説明に、タバサは今度こそ一言一句聞き逃すまいと熱心に耳を傾けた……。

 

 

 やろうとしていることの説明と話し合いを終え、解答の流れに応じていくつかの質問のパターンを事前にまとめておいてから、ディーキンはいよいよ作業に取り掛かった。

 もちろん抵抗を抜けなければそこで終了だったわけだが、《限られた望み》の恩恵もあって《死者との会話》は首尾よく成功した。

 

 指輪の《限られた望み》によって再現した《死者との会話》で尋ねることができる質問の数は、最大で9つまでだ。

 ディーキンは慎重に言葉を選びながら、質問を投げかけていった。

 

 

 

「お前はどうやって“地獄の業火”の使い方を学んだのか?」

 ……

「デヴィルと契約を交わすことで」

 

 

「レコン・キスタの背後にはデヴィルがいるのか?」

 ……

「いる」

 

 

「それらのデヴィルは、ガリアと何らかのつながりがあるのか?」

 ……

「わからない」

 

 

「お前はこの街にどんな敵がいるかを事前に聞かされていたか?」

 ……

「学生メイジの一団とその使い魔と聞いていた。コルベールや連れの女がいることは知らなかった」

 

 

「お前の知る限りで、レコン・キスタの背後にいるデヴィルの狙いは何か?」

 ……

「ブリミルの御使いと称して旧来の王族を打倒し、成り替わって崇拝を集めようとしている」

 

 

「レコン・キスタの首魁であるクロムウェルはデヴィルなのか?」

 ……

「わからないが、おそらくデヴィルではない」

 

 

「デヴィルはどのような手段でこの世界に来ているのか?」

 ……

「わからない」

 

 

「お前が知る限りで、この世界に来ているもっとも強力なデヴィルは何か?」

 ……

「自分が契約したアークデヴィル」

 

 

「そのアークデヴィルの名前は?」

 ……

「ディスパテル」

 

 




リミテッド・ウィッシュ
Limited Wish /限られた望み
系統:共通呪文 ; 7レベル呪文
構成要素:音声、動作、経験(300XP)
距離:可変
持続時間:可変
 この強大な呪文を用いることによって、術者はほとんどどんな種類の効果でも作り出すことができる。
リミテッド・ウィッシュは、それが術者にとっての禁止系統でなければ6レベル以下のウィザード/ソーサラー呪文か、5レベル以下のあらゆる呪文を再現できる。
もしくは、術者にとっての禁止系統も含む5レベル以下のウィザード/ソーサラー呪文か、4レベル以下のあらゆる呪文を再現できる。
リミテッド・ウィッシュによって再現した呪文のセーヴ難易度は、元が何レベルの呪文であっても7レベル呪文のものになる。
300XPを超える経験点消費のある呪文や、1000gpを超える価格の物質構成要素を必要とする呪文を再現する場合には、術者はそれらのコストを支払わなければならない。
術者はまた、他の多くの呪文の有害な効果を取り除いて元の状態に戻すこともできる。
さらに、それらと同程度までの強力さであれば、それ以外のいかなる効果でも望むままに持たせることができる。
たとえば、誰かが行う次の攻撃を自動的に成功させるとか、誰かが行う次のセーヴィング・スローに-7のペナルティを課すなどである。

ダオ:
 地の元素界に住むジンニーの一種族。人間に似た姿だが筋肉質でずんぐりむっくりとした体格をしており、それでいて普通の人間だといっても通らないくらいに背が高い。彼らは往々にして流れるような絹のローブを身にまとい、宝石で身を飾っている。地の元素界は陸上というものがない一面が土や岩盤に覆い尽くされた地中のみの世界であり、彼らはそこに広大な洞窟網を構え、奴隷たちを酷使して、貴重な宝石を掘り出しては交易を行なっている。ダオは悪の性質を持つジンニーであり、他人はすべて自分自身と同じくらい信用できないと考えている。彼らは大地を操作する術と幻術の達人であり、ジンニー以外の存在のある程度までの望みを1日につき3回かなえてやる力も持っている。

リング・オヴ・ギルゾン(ギルゾンの指輪):
 本作品オリジナルのマジックアイテム。ギルゾンという名前のダオの力が結び付けられており、ジンニーでない者がこの指輪をはめて願い事を心に思い浮かべて念じれば、1日につき3回までリミテッド・ウィッシュを使用することができる。この指輪の力はギルゾンから引き出しているものなので、術者レベルやセーヴ難易度はダオの疑似呪文能力に準じる(術者レベル19、セーヴ難易度19)。ジンニーでない者がこの指輪を1000と1日の間所有すると、ギルゾンは奉仕の義務から解放されるため、指輪は力を失う。
 なお、マジックアイテムの価格算出式に従えばこの指輪の値段は非エピック級の範疇にどうにか収まる程度であり、ディーキンほど高レベルの冒険者にとってはそこまで強力な品物ではない。

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