男の進む軌跡   作:泡泡

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 原作知らない読者の方たちにも分かるように書くって、自分のスキルアップに繋がるので大変でありながら楽しいです。

 書き始め21:13~書き終わり22:34


マノリア村

 マノリア村・・・。田舎でありながらも風情がある村。そして海を見渡せる場所には大きな風車が回り、日曜学校が開かれもする・・・時間がゆっくりと流れているかのような村にその青年はたどり着いた。白い花が咲き乱れているのは木蓮の一首のようだ。

 

 「・・・良い匂い・・・・・・。ここか?」

 

 どうやらこの青年(主人公)は、美味しそうな匂いに惹かれてこの村にやってきたようだ。青年は知らなかったが、彼が助けた母親を持つ少女もここを目指していた。

 

 ――白の木蓮亭――

 

 「・・・いらっしゃい、おや見慣れない方だね。旅人かい?」

 

 「・・・まぁ、そんなものだ。良い匂いがしたので来たのだけれど、料理を頼めるだろうか・・・?」

 

 「お安い御用だ。ちょっと待っててな。すぐ作るから・・・・・・」

 

 「・・・・・・」

 

 青年は、キョロキョロと辺りを見渡してみる・・・。この建物は木造の作りをしていて、とても落ち着く雰囲気を醸し出していた。

 

 

 「今時期は、スモークハムのサンドイッチと魚介類のパエリアの二品があるのだけれども、どっちがいいかな?それとも二品とも食べるかい?」

 

 「どちらも美味しそうだ。二品お願いするよ」

 

 「嬉しいねぇ・・・お兄さん気に入ったよ」

 

 白の木蓮亭とは宿場兼食事処と言った所だろうか。男性は妻との合作でよく売れていると独り言を呟きながら手際良く料理を作っていた。室内には数人のお客さんがおり、村人なのだろうか・・・会話を楽しみながら美味しいとほおばっていた。

 

 「・・・・・・」

 

 「へい、お待ちー!スモークハムのサンドイッチとパエリアさ」

 

 「ありがとう・・・。いただきます」

 

 両手を胸の前で合わせ、食事に感謝して食べる。

 

 ――うん、美味いっ!――

 

 横ではヘヘヘッと笑うご主人がいて・・・少し煩わしくも嬉しかった。そして厨房に入っていった。みるとそこに若い男女がこの建物に入ってくるのが横目に見えた。

 

 「ようこそ、“白の木蓮亭”へ。見かけない顔だけど、マノリアには観光で来たのかい?」

 

 「ううん、ルーアン市に向かう途中なの」

 

 「クローネ峠を越えてきたんです」

 

 「クローネ峠を越えてきた??は~、あんな場所を通る人が今時いるとは思わなかったな。ひょっとして山歩きが趣味とか?」

 

 木蓮亭の主人は心底驚いた様子だ。どうやらこの若い男女はあまり通る人がいないところを、通ってマノリア村へ来たようだ。

 

 「うーん・・・そう言う訳じゃないんだけど。ところで歩きっぱなしですっごく疲れているのね」

 

 「なにかお勧めはあります?」

 

 「そうだな・・・。今ならお弁当がお勧めだけど」

 

 「お弁当?」

 

 「町外れにある風車の前が景色のいい展望台になっていてね。昼食時は、うちで弁当を買ってそこで食べるお客さんが多いんだ」

 

 「あ、それナイス。聞いているだけで美味しそうな感じがするわ」

 

 「それじゃあそうしようか、どんな種類の弁当があるんですか?」

 

 乗り気な女の子に同意して男の子が弁当の種類を聞いていた。

 

 「(俺もそうすれば良かったかな?それにしてもあの女の子・・・)」

 

 青年はすでに二品を食べているのに、食い意地が張っているのか?弁当の話を聞いて食欲が増しているようだった。そして自分の両目で見ている先には、オレンジ色の服を着ている少女が写っていた。どこかで見覚えのあるその少女が気になって仕方ないようだ。

 

 女の子はスモークハムのサンドイッチ、男の子は魚介類のパエリアを頼んでいた。

 

 「(そっか、ここで食べることもできるけど弁当というサービスもしていたんだ。景色を楽しむのはまた今度にしよう。ここは美味しかったな・・・。レグにも教えておこうか・・・。あ、でもレグは人化(じんか)出来ないのか。一緒に食べることはできないけれど包んでいこうかな?)」

 

 思考しているうちに二人は外へ出る準備をしていた。そして横には二品を作った主人がいた。手にはとても良い匂いのする飲み物を持ってきていた。

 

 「これはうちで食事してくれた人にサービスしているハーブティーだ。良かったら飲んでくれないだろうか?」

 

 「あぁ、貰うよ・・・。うん、美味しい・・・・・・」

 

 「そうかい、そりゃあ良かった。兄さん気に入ってくれたようだし、また来て下さい」

 

 食べた後の余韻を堪能してから料金を払い座っていると、外からも何だか懐かしい(・・・・)気配を感じた。

 

 「おや?久しぶりに懐かしい気配がする?」

 

 「ヨシュア、早く早く・・・・・・」

 

 「ちょっとエステル。前を見て歩かないと・・・・・・」

 

 先程、弁当を買って外へ出ようとしていた二人の片方は浮かれているのか、外にいる少女にぶつかりそうになっていた。

 

 「あうっ・・・・・・」

 

 「きゃっ・・・・・・」

 

 エステルと呼ばれた女の子は、ヨシュアと呼ばれた男の子が抱えて転ばずに済んだ。ではもう一人の女の子の方は・・・・・・。

 

 「大丈夫・・・?」

 

 今まで木蓮亭でハーブティーを飲んでいた青年が、少女の後ろに回り込んで抱きかかえていた。

 

 「はい・・・。大丈夫です」

 

 「そう・・・・・・」

 

 そして青年は軽く手で叩き、服に付いたホコリを取ってから立たせた。少女は青年にお礼を伝えて二人の方を向いた。

 

 

 「ご、ごめんね。私が前を向いていなかったから・・・・・・」

 

 「は、はい。大丈夫です。この人が助けてくださいましたし・・・・・・」

 

 エステルはヨシュアから離れて、学校の制服を着ている女の子に謝る。それに対してその女の子も、青年が助けたことによってケガが無かったことをエステルに伝えた。

 

 「あのー私、子供を探しているんですが・・・・・・」

 

 「どんな子?」

 

 「帽子をかぶった10歳ぐらいの男の子なんですが、どこかで見かけませんでしたか?」

 

 「帽子をかぶった男の子・・・ヨシュア見かけなかった?」

 

 「いや、見てないな」

 

 「そうですか・・・どこに行ったのかしら?ではこれで失礼します」

 

 そう言うと村の外れの方向に向かって歩いて行った。

 

 「「・・・・・・・・・」」

 

 「ヨシュア?ねぇ、ヨシュアってば!!」

 

 「えっ、何?」

 

 「はっは~ん♡」

 

 「何か激しく誤解していない?」

 

 ヨシュアが制服を着た少女に見とれていたと思ったエステルは、何か誤解している?のだろうか。とりあえずケガをしなかった両人から離れていこうとした青年だった。

 

 「あのー・・・・・・」

 

 「何か?」

 

 それは叶わなかったようだ。ヨシュアと呼ばれた黒髪の少年が声をかけてきたからだ。

 

 「あなた、先程まで木蓮亭の中に居られた人ですよね?どうして一瞬の内に・・・しかも倒れそうになっていた子の後ろに来ることが出来たんですか?」

 

 それは尤もな疑問だろう。この二人が外に出るために扉を開けていたとしても、風を感じさせることもなく三人に気づかせることもない内に、転ばないように助けていたのだから・・・。

 

 「・・・世の中には未だ知られていない移動方法があるってもんだよ」

 

 咄嗟に考えて出した結論は、けむにまく事だった。超短距離転移などどのように説明すればよいのだろうか・・・分からなかった。

 

 「・・・・・・」

 

 「少年、考えているのか?」

 

 「ええ」

 

 ヨシュアは納得していない様子、しかしヨシュアが納得できるまでここを動かないぞ的な雰囲気はお腹の空いた少女(エステル)によって崩されることとなった。

 

 「ねーえ、ヨシュア・・・。お腹空いたってば・・・・・・」

 

 「あっ、うん。分かった・・・・・・。あ、あれ?」

 

 町外れにある風車の方に歩いてたエステルに返事をしようと一瞬、青年から目を離しそしてもう一度青年の方を向いたときにはその人の姿はどこにもいなかった。

 

 その答えは、上空にハイジャンプして薄くかかった雲の陰に隠れていたからだ。

 

 「全く・・・カシウスが保護したという子供はこんなにも謎の多い子に成長したのか。それとエステルって言ったか?あの時泣いて母親を助けて!って言ってた子がエステルだとは・・・。それに俺が助けた女の子はもしや・・・・・・」

 

 




 舞台は国の中心に位置する巨大な湖・ヴァレリア湖を囲む様な形で、グランセル・ロレント・ボース・ルーアン・ツァイスと五つの地方に分かれている。各地方には五大都市と呼ばれる地方名と同名の中心都市がある

 マノリア村とは。
 開港都市ルーアンが中心都市となる。場所はヴァレリア湖の西に位置。


 新たな登場人物

 制服の少女【クローゼ・リンツ】
(詳しくは今後の物語の中心的存在となってゆきますので、その都度載せたいと思います)


  

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