男の進む軌跡   作:泡泡

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 ご都合主義であるのは仕方の無いこと。


旅立つ二人

 

 「あたし、ヨシュアと一緒に旅に出るわ!!」

 

 それはエステルとヨシュアが準遊撃士になったその日のことであった。その場に連絡のないカシウスの姿は無かったが、家族三人で夕食を囲んでいるときにエステルから提案があった。

 

 ややもすると、それは唐突な提案だったかもしれないがエステルとヨシュアは準遊撃士になってからすぐに決めていたことだった。

 

 でも、レナを置いていくのには少しの懸念があった。でも二人にはどうしても行かなければならない理由ができた。それは・・・。

 

 「どうしたの、急に・・・?」

 

 「あのね、お父さんの事なんだけれど・・・」

 

 「ん?あの人がどうかした?」

 

 それまで沈黙を守ってきたヨシュアが、口ごもるエステルに代わって理由を話しだした。

 

 「先程、準遊撃士になった直後ですが、お父さんが乗った飛空艇が消息を絶ったと言うのを聞いたんです」

 

 「そー・・・だったの?」

 

 「っ・・・」

 

 エステルはテーブルの下でギュッと服をきつく握り締めどうにかして見つけたいと思っていた。

 

 「あ、あの。それで、ですね・・・手ががりを見つけようと各地を回ろうかと思いまして・・・・・・」

 

 ストンと自分の椅子に座り、不安を隠せない様子のレナにヨシュアがしどろもどろになりつつ、話をしていた。レナが黙ったのはショックを受けたからだと思い込んでいた二人だったが、このあとカシウスの妻としての感情を露わにした。

 

 「うん、いってらっしゃい!!お土産は何もいらないわ」

 

 「「はい?」」

 

 「ん?どうかした、鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をしちゃって・・・」

 

 顔を床の方に向けていたので、どんなふうにして言えばいいのか二人であれこれとシュミレーションをしていたが、全ては無駄になったようだ。

 

 「そ・れ・に、エステルはもう一つ譲れない目的があるんでしょ?」

 

 「へっ?」

 

 エステルのもう一つの目的は、ヨシュアにも告げたことのない昔のあのことだった。

 

 「う、うん・・・・・・」

 

 「エステル?今、ヨシュアに黙ってていたたまれない気持ちになっちゃってた?大丈夫よ、明日行くときに時計塔でお話しちゃいなさいな?」

 

 ヨシュアが自分に内緒の出来事があって、それがエステルの心の中で大事な部分を占めていることに少なからずショックを受けていた。それに対して『思い出のあの場所で打ち明けちゃいなよ』的なノリの母親の後押しを受けてエステルは乗り越えることができた。

 

 「って、明日?」

 

 「早いほうがいいでしょ?それとも何?私の娘は思い立ったが吉日に決めていたんじゃないの?ほれほれ、行った行った・・・・・・!」

 

 「うん」

 

 「分かりました・・・」

 

 レナの元気な様子に何も心配する必要はないと感じた二人はそれぞれの部屋に行って寝る支度をするのであった。

 

  ――レナの本当の気持ちに気づくことなく・・・――

 

 「ねぇ・・・・・・あれから私もツテを頼って探しているし、あの人も遊撃士の仕事の帰りとか探しているのに見つからないのよ。あの人は何者だったの?」

 

 一人になった自室で自問自答しているが、どうやっても答えは見つからなかった。達観したような眼差しもどこか別格な様子を醸し出していた。

 

 「まぁ、エステルの事だもの。私とあなたの子ですから、猪突猛進で突っ走るしかないんでしょうけれども・・・・・・。どうか、見守ってください」

 

 夜遅くまでレナは眠れなかった。それは旅に出る二人の子供たちの安全を祈ってのことだったかもしれないし、また違うことだったのかもしれない。けれどその中にカシウスの事は入っていなかった。

 

 「あの人はどこに行っちゃったんでしょうか?大陸で数人しかいないランクの持ち主ですから、心配はしていませんよ。けれど、戻ったら覚えておきなさいよ?」

 

 同時刻、カシウスの身に寒気が走ったのは無理のない事かもしれない。

 

 

 ――次の日――

 

 ブライト家から見送りをするレナ。その姿が見えなくなるまで振り返りつつ歩を進める二人だった。そしてエステルはヨシュアに話するために時計塔へと登っていった。

 

 「ふぅ~、やっぱり気持ちいい風が吹いているわ。ねぇ、ヨシュアもこっちに来てよ?」 

 

 「あ、あぁ・・・・・・」

 

 緊張した面持ちでエステルの横に並び、同じ方向を向く。

 

 「少し昔話をしてもいい?」

 

 「・・・うん」

 

 「ありがと・・・・・・。この街も百日戦役で燃えたのは聞いている?」

 

 「触り程度には聞いているよ。でもどうしてこの街は残っているんだい?」

 

 当たり前とも言える質問を投げかけてきた。

 

 「初めて聞くと思うけれど、この街には奇跡が一度起きているんだ・・・」

 

 「奇跡?」

 

 「うん・・・」

 

 エステルは深呼吸を一つすると、ヨシュアの方を向いて切り出す。まるでこの話が神聖で話すのも咎められるかのような・・・。

 

 「百日戦役の時、この街は一度燃えた。そして時計塔も崩れその下敷きになったのがお母さん・・・・・・」

 

 「えっ、ちょっと待ってよ。お母さんには後遺症らしき傷なんてどこにもなかったじゃないか?」

 

 「うん、それが奇跡・・・。時計塔が崩れたときどこからともなく、一人の男性が現れた。そしてお母さんを含めて街の人全員を一瞬で治したんだ・・・。聞いたことのないアーツを使って・・・。そしてそのまま消えた」

 

 「・・・・・・」

 

 「信じられない?でも、これがあの時生じた事なんだ。そしてあたしの目的はその人を探し出して、『ありがとう』って言う事」

 

 「そうなんだ・・・。じゃあその人も見つけないとね?」

 

 「うん!」

 

 こうして準遊撃士になりたての二人は、過酷ながらも楽しい旅を開始するのであった。

 

 

 

 ――龍ヲ探シテ・・・――

 

 ――レグナートガソノ鍵ダ・・・――

 

 ――ソレガ盟主ノオ目的・・・――

 

 ――使エルモノハ全テ活用セヨ――

 

 

  





 盟主・・・秘密です。少しでも伏線を張っときたいですから・・・。それと主人公の名前出したいなぁ。次、出す予定です。

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