生まれは血霧の里のかぐや一族 !   作:かろんたバンズ

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第一話 とても優しい僕

皆さんおはようございます。僕の名前は照麿(てるまろ)、まだまだ若輩者の7歳です。よろしくおねがいします。

今日も元気に里から依頼された抹殺任務をこなして逞しく生きています。

 

初任務ですけどね。

 

初めての任務は小さな村を拠点にしていた山賊の討伐ですね。総勢20人程度はいましたがチャクラも扱えない忍者でもない大人程度なら相手にすらなりませんでした。

 

瞬殺です。

 

今は任務の報告をする為に水影の屋敷に向かっている途中です。

整備されてない道中は汚いですね。気持ち悪いですね。整えたいです。

 

それにしてもお腹が空きました。早く任務の報酬を貰って食糧の調達をしようと思います。

僕の住んでいる集落では金を稼げる人間は自分で食事を用意するのが決まり事ですからね。

 

僕が生まれたかぐや一族は里の中でも最強の謳い文句で知られる超武闘派な一族ですからね。野良動物を自分で狩って生活するのです。

 

いかなる攻撃も寄せ付けぬ強靭な肉体を持ちながらしなやかさをも併せ持つ常人を遥かに凌ぐ究極の肉体を持って生まれます。その肉体から放たれる攻撃は何者をも穿つ最強の矛になります。

 

いくらまだ7歳という幼さとはいえ誰にも負ける気がしません。

 

前世での運動音痴な僕なんてどこにもいませんよ、もう。

 

え? 前世ですか? そうなんです。僕には誰にも話していない秘密があるのですがそれは前世の記憶があるのです。

そしてその記憶によって気付いたことがあるのです!

 

それは!

 

ここが週間少年ジャンプに連載しているNARUTOという漫画の世界だったのです。

 

まあ、主人公が住んでいる木の葉隠れの里なのでこの霧隠れの里からは海を隔てた遠い場所にある上に国交がないので主人公達に会いに行くことが出来ないのが悲しいです。

しかし、僕はこの里の、かぐや一族として生まれたことには感謝しています。この最強の肉体を持って生まれたことは正に神の導きですね。

 

 

おっと漸く着きましたね。

いつ見てもこの屋敷だけは豪華で整っています。かぐや一族の集落もこれくらい綺麗になりませんかね。一族の連中は無頓着な人ばかりで困ります。いくらなんでも縄文時代かと言いたくなるような家では駄目でしょうと。

任務で貰った給金でこの屋敷と同じくらい綺麗な僕だけの家を建てることにしましょう。

 

水影邸な入り執務室に向かいます。

水影の執務室にはチビな水影と側近のでかい刀を背負った気色悪い顔色の大男が1人と弱そうな中忍が1人います。

 

「任務終わりましたよ水影」

「ほう、これほど早く済ませたのですか。まだお若いのに優秀ですねぇ」

 

でかい刀を背負った気色悪い顔色の忍びが僕を褒め称えてくれています。なかなか好印象な男です。気色悪い顔色なんて失礼でしたね。謝ります。

が、今はそれどころではありません。

左手を差し出します。早く報酬を貰わなければなりません。

早く食事を摂りたいのです。

 

「おやおや、愛想のない方だ。やはり他のかぐや一族同様に愛想がなく酷いものです。とても仲良く出来ませんねぇ」

 

…………

 

この大男は僕を他のかぐや一族と同じ様に会話が成立しない人だと思っているようですね。少し心外です。やはり気色の悪い男です。

僕は今お腹が空いていて機嫌が悪いのです。

 

差し出していた左手の掌から骨を突き出します。

そう、これが僕の血継限界。体の骨を自在に強化し操る能力です。この能力で掌の骨を武器にしているのです。

 

僕をあの頭のおかしい連中と同じように扱うことは許容できませんからね。血に飢えた獣同然な彼らと違って僕は知的ですから。本来なら直ぐに命を奪ってしまいたい屈辱ですが僕は優しいですからそこまではしません。

 

小言がうるさい大男に飛び掛ります。今すぐその喉仏を掻き切って喧しい雑音を出せなくしてあげます。

 

そうして飛び掛かった僕の間合いに入ったそのときです。

 

「なかなかのスピードですねぇ」

 

何事もなかったかの様に大刀を体の前に持ってきたこの大男は僕の攻撃を防いでしまいました。

こんなに大きな大刀を軽々と操るのはまあまあ凄いですね。

まあ武器を使わなければいけないなんて才能のない者の証なんですけどね。

 

「はぁ、全く。なんでこう、こんなに血の気の多い奴ばっかりなんだよこの里は。今の会話のどこに襲いかかる要素があるんだか!」

 

次の攻撃を仕掛けようとしたその時に僕と大男の間に水の膜が現れてしまいました。僕はその膜ごと大男を血祭りに上げようと腕を振るいましたが防がれてしまいました。

これでは次の攻撃を仕掛けても彼の喉仏を掻っ切るための障害になってしまいます。仕方ないので矛を納めることにします。彼は命拾いをしましたね。

 

「早く今回の分の報酬を渡して部屋から出ていって貰え」

 

それにしても、今の膜はこのチビな水影の仕業なようですね。僕の攻撃を防ぐとは、チビのクセになかなか名手です。

弱そうな中忍が慌てて封筒を手渡してきます。それを乱暴に受け取り中身を確認しましたが、

 

「……これだけ?」

 

これでは綺麗な家を建てるだけのお金には足りないじゃないですか。

 

「そうだそれだけだ。今回の任務はDランクの簡単な任務だからな。それに依頼者は貧乏な村民だ、彼らが出せる金は限られてる」

「そうですよかぐや一族のボウヤ。あまり我が儘は言うべきではありませんねぇ」

 

僕が我が儘…………?

やはりこの男には少しお香を据えた方が良いのではないだろうか。

 

「もっと報酬が欲しかったら隊長任務を任せられる中忍以上になるか暗部所属になれ。

まあもっとも、かぐや一族の忍から隊長を任せられた忍は今まで1人もいないけどな」

「かぐや一族の方々は少々血の気が多いですからねぇ、丁度今のあなたのように直ぐに仲間割れを起こすような行動をしてしまいます」

 

僕が他のかぐや一族と似ている?

 

「………僕を頭のおかしい彼らと同じにするな」

「少し昔のことなんですが任務中にかぐや一族の方に突然襲いかかられて驚きましたよ。丁度先ほどのあなたのように」

 

大男が僕に不敵に笑います。

 

「僕は他の一族の連中とは違う!」

 

溢れ出す不快感を今すぐに解消するためにこの大男に再び飛び掛りますが……

 

「がっ ?!」

 

気付いたときには腹を蹴られて弾き飛ばされてしまいました。ガードが間に合わず体内の骨を強化することも出来ません。

そのまま水影の執務室か体が飛びててしまいました。最後に見えた奴の顔は相変わらず気味の悪い笑顔を浮かべています。

 

「才能はかぐや一族の中でも有数なはずなんだがなあ」

「確かに身のこなしは優れたものを持っている様ですが頭の方の出来はやはり獣ですねぇ」

「かぐや一族は何故こうなのかねぇ」

 

僕が起き上がった時には執務室の扉が既に閉じていました。

仕方が無いので彼を血祭りに上げるのは後にしましょう。

扉の向こうであの2人がなにやら話こんでいますが今は食事が先です。本来なら今すぐあの魚みたいな色をした大男を抹殺したいのですが今はお腹が空いていて力が出ないのです。そうでなければこの僕があんなに簡単に反撃を許す訳がありません。




山なし谷なし

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