【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.Ⅸ

基本的に鏡華は呼び出しがない限り、自宅で待機している

時々風鳴家の屋敷で相手をしたり、してもらったりしているが、いつもはこの家だ

家には未だに眠り続けている奏がいるから

そう云えば、ここ最近奏からの反応が返ってこないな、と鏡華は思う

息による会話、通称吐息言語も、月の出ている間の繋がりもまったくない

脈も呼吸も正常なので心配はしていないが

―――いや、もう正常以外に“なるわけない”のだが

 

と、そんなことを考えてると、荒い息遣いが聞こえてきた

長短の吐息言語だ

鏡華は吐息を言葉に変換していく

 

―――ただいま

 

「おかえり。一体どこに行ってたの? つーか、その精神体でどこか行けたの?」

 

そう、問題はそこだ

鏡華となら月が昇っている時限定でどんな場所でも話せる幽霊もどきになれる

だが、それ以外の人間には聞こえるはずも見えるはずもない

精々吐息言語が精一杯のはずだ

しかし奏は翼に会いに行ってきた、と言った

夢の中で久し振りに大暴れしたらしい

 

「へぇ……、それはまた面白い奇跡だね。つーか奏って何でもありだね」

 

―――そっか?

 

「うん、立花を二度も救って、吐息言語も見つけて、俺以外の人間の夢の中に潜り込む。……ある意味旦那と張り合えるんじゃないか?」

 

―――や、それは無理。ダンナはあれだなからな、超人類だから無理。あれ、ノイズに使えないのが本当に悔やまれねえか?

 

「……確かにね。《震脚》だけで足止めに盾、しかもその盾にしたコンクリを《崩拳》や《浸透勁》で砕き飛ばせば、一つの弾丸ができあがる。まさにシンフォギアを纏わずに唯一“邪魔が”できる人だよ」

 

奏の言葉に鏡華は頷く

だが、いくら人類を超えるような戦闘力を誇る弦十郎でもノイズに対してできることは“邪魔”だけなのだ

決して“対抗”ができるわけではない

できるのは聖遺物を持つ一握りの適合者―――奏者のみ

現時点で鏡華が知っている奏者は六人

 

まず自分自身である遠見鏡華

使用聖遺物は―――聖鞘・アヴァロン

 

二人目は正規の適合者である風鳴翼

使用聖遺物は―――絶刀・天羽々斬

 

三人目は奇跡により偶然奏者となった立花響

使用聖遺物は―――撃槍・ガングニール

 

四人目は以前より鏡華を標的として狙ってくる夜宙ヴァン

使用聖遺物は―――星剣・エクスカリバー(仮)

 

五人目はヴァンがクリスと呼んだ謎の少女

使用聖遺物は―――ネフシュタンの鎧

 

六人目は眠り姫と化し、唯一“二つのシンフォギアを使える”天羽奏

使用“可能”聖遺物は―――ガングニールとアヴァロン

 

これだけだ

これ以外は日本政府には確認されていないし、海外でも報告はない

そもそも、聖遺物をシンフォギアとして覚醒することができるのは《櫻井理論》を提唱した櫻井了子ただ一人

ならば、鏡華とネフシュタンを除き、翼と奏は良いとして、ヴァンのエクスカリバーは一体誰がシンフォギアとして覚醒させたのだろうか

一人だけならば挙げられるが、それでも謎は深まるばかり

 

―――~~♪

ケータイが鳴り響く

 

「はい、遠見です」

 

『鏡華、今どこにいる』

 

発信者は弦十郎だ

 

「今は家だけど……どうしたの? 少し焦ってるみたいだけど」

 

『広木防衛大臣のこと覚えているか?』

 

「ええと……昔、時々研究所で暇してた俺と遊んでくれたおじさんだっけ? 覚えてるけど……」

 

『その広木防衛大臣が先ほど何者かに襲撃され―――殺害された』

 

「え……」

 

わずかに思考が停止する

あの広木防衛大臣が―――死んだ?

そんな、そんな……

 

「一体どこのどいつがあの人を……! そう云えば櫻井教授が会いに行くって言ってなかった!?」

 

『了子君なら大丈夫だ。今機密指令と共に帰って来た』

 

『鏡華ったら心配してくれたのォ? ありがとォ。お礼にキスでも―――』

 

「くだらないことは却下で。―――旦那、そっちへ行けばいいんだよね?」

 

『ああ。至急二課へ来てくれ』

 

頷いた鏡華は「すぐ行く」と告げ通話を切る

奏が問うと、簡潔に述べる

 

「奏。俺はこれから二課へ行ってくる。もし目覚めても部屋からは出ないで。一応《遥か彼方の理想郷》を展開しておくから」

 

―――ああ。気を付けろよ鏡華

 

「うん。―――じゃあ、行ってきます」

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

「ひどいな……」

 

襲撃現場でヴァンは一人呟く

眼の前には銃弾の雨を降らされ、穴だらけになったモノが広がっていた

車両、そして人が

その身に穴を空けられ、液体を流しきっている

ヴァンの後ろでは二人の男性が立っている

どちらも一目では誰か分からない恰好をしていた

 

「Hey,Van.It will withdraw soon.We are dangerous if it does not come out.」

(ヴァン。そろそろ撤退するぞ。でなければ俺達が危ない)

 

「Jean who understands.but, I think whether this is the way which we aim at if.It cannot but see.」

(分かっているジャン。だが……これが俺達が目指している道かと思うと、な。見ないわけにはいかないんだ)

 

「Van...」

(ヴァン……)

 

友人の言葉を気にしつつも、ヴァンはもう一度骸や残骸を見遣る

直接手を下していなくても、これを命じたのは自分の雇い主だ

こんなことをして本当に平和が訪れるのだろうか

否―――来るはずがない

むしろ自分達が増やしている

あの女はそれを分かっててクリスを、そして自分を利用している

恐らく、時期が来たら捨てるつもりだろう

協力関係にあるジャン達も含めて

 

「好きばっかできると思うなよあの裸族(クソおんな)……」

 

吐き捨てたヴァンは黙祷を捧げるとジャン達の下に駆け寄り、二人の腰に手を回す

 

「It flies to the junction to which I will return.Jean and Edward a face can be hidden firmly.」

(帰ろう、合流地点まで飛ぶ。ジャン、エドワード、しっかり顔を隠せ)

 

「All right.」

(大丈夫だ)

 

「He leaves.」

(任せる)

 

そしてヴァンは大人二人を抱え、空に跳び姿を眩ませた

二課の職員が駆けつけたのは、それよりすぐ後だった


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