【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.Ⅳ

―――どうして、こうなったのだろうか

心の内でそう呟く鏡華

その身にはアヴァロンの騎士甲冑を纏っている

―――どうして、こうなったんだろう

もう一度呟く

 

自分達は放課後に翼に拘束され、再び二課へ来ていた

そこで響にシンフォギアの説明と協力の要請

彼女の身体に摘出不可能なガングニールの破片が体組織と融合していることを説明した

それが終了してからすぐ後にノイズが発生した

無論全員が向かい、殲滅は成功したのだが―――

 

―――私と一緒に戦ってください!

 

そう言った響に、

 

―――そうね。あなたと私―――戦いましょうか

 

翼はそう言って天羽々斬を向けたのだ

当然鏡華は響の前に立ち、翼に立ち塞がる

 

「どうしてその子を庇うの鏡華」

 

「こっちの台詞だよ。どうして立花と戦うんだ翼」

 

翼の後ろではノイズを殲滅した《蒼ノ一閃》の一撃によって発生した炎が舞い上がっている

まるで翼の心を表しているかのように

 

「風鳴翼はその子を受け入れることができない。奏のガングニールを使うその子と共に戦うなど―――風鳴翼が許せるはずがない」

 

「翼さん……」

 

「構えなさい立花響。あなたが身に纏うシンフォギア(それ)は何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニール。常在戦場の意思たる胸の覚悟を体現し、アームドギアにし、構えてごらんなさい―――!」

 

「いやいやいや! 昨日たまたま発動した立花がアームドギアなんて出せるわけないよね!? そこんところ理解した上で言ってやがりますか!?」

 

口調はふざけていてもその顔は真剣そのもの

そして片手を空に差し出す

 

「ガングニールは奏のものだ! 奏のものを勝手に使うのも許せないのに―――胸の覚悟もないまま遊び半分のまま戦場に立つその子が、奏の何になり―――何を受け継いでいるというの!?」

 

「……ああ、もうっ! 俺達がいなくなって少しは変わったと思ってたけど、全然これっぽっちも変わってないじゃん! むしろ石頭になってるよね!? ―――上等! 頭冷やさせるためにその一騎打ち、俺が受けたっ!」

 

  ――希望成る騎士国(ブリテン)の赤き竜――

 

鞘を取り出し、何も納められていない鞘から剣を抜く動作をする

すると、剣が光より生まれる

絢爛豪華な装飾が付いたどちらかと云えば儀式に使うような剣

それは騎士王が王になった証と呼べる選定の剣―――銘をカリバーン

鞘を消し、鏡華は両手で構える

 

「ったく……俺は別に翼と戦いたいわけじゃないんだけど―――元の関係に戻りたいだけなんだけど」

 

夜空に浮かぶ月を仰ぎながら鏡華は小さく呟く

と、

 

―――“翼が真面目すぎるのは昔からだろ? な、鏡華”

 

声が頭の中で響く

鏡華は驚くことなく胸の内でくすりと笑う

 

「まったく……その通りだよ、“奏”」

 

そして

両者共に腰を落とすと

 

  ―疾ッ!

 

同時に駆け、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

「ちっくしょうぅぅがあああぁぁぁぁっ!!」

 

  ―閃ッ!

 

  ―戟ッ!

 

  ―裂ッ!

 

  ―轟ッ!

 

衝撃が閃光の如く、弾けた

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

翼と鏡華の戦いを当然司令室にいた面々はモニターを介して見ていた

素人から見れば、さながら互角に戦っているように見える

だが、武術を嗜んでいる者が見れば、鏡華が押されていると見える

当たり前だが、翼は幼少時より鍛錬に勤しんでいたのに対し、鏡華が本格的に武術に取り組んだのは二年前から

いくら完全聖遺物と云う強大な力を有していても結局は使用者が強くなくては宝の持ち腐れなのだ

 

「なっ……何をやっているんだあいつらは!?」

 

「んーッ、青春真っ盛りって感じねェ」

 

驚く弦十郎をよそに、了子はどこか楽しそうに顔を綻ばせ呟く

そんな了子にため息を吐きながら弦十郎は席を立ち、個人高速エレベーターに向かう

 

「司令、どちらへ?」

 

「誰かが、あの馬鹿者共を止めなきゃいかんだろうよ……!」

 

そう言って地上へ上がっていく

あっという間に見えなくなると、了子はまた呟く

 

「こっちも青春してるなァ……。でも、確かに気になる子よねェ? 放っておけないタイプかも」

 

その顔に喜色や好奇心、妖艶、そして獲物を見つけたような表情が浮かんでいたのは

その場の誰一人、知ることはなかった

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

「ッ……!」

 

「うひゃぁっ!」

 

後ろで情けない声が聞こえるが、振り返ってられない

押されることはすでに分かっていた

長年鍛錬してきた翼と違い、こちらは二年―――しかもその内、半年ぐらいはずっと治療に専念していたのだ

加えて、鏡華は翼のように剣一本に絞っていない

 

騎士王が岩より抜いた選定の剣―――カリバーン

 

騎士王が持ち甥を貫いた名槍―――ロン

 

聖母が描かれた誰かを守るための聖盾―――プライウェン

 

この三つを状況によって切り替えている鏡華はそれぞれの鍛錬をしなければならない

故に鏡華は、あれだけ言っておいて

実はピンチに陥っていた

 

―――なっさけねぇなぁ。それでも男かよ

 

(うるさいっ! 俺だって好きで防戦一方じゃないやい!)

 

頭に響く呆れ声に怒鳴りながら《蒼ノ一閃》を《護れと謳え聖母の加護》で防ぐ

と、思ったら今度は天空から《千ノ落涙》―――数十本もの剣を降らしてくる翼

流石に守りきれないのでそれらを《貫き穿つ螺旋棘》で迎撃

そして―――

 

  ――天ノ逆鱗――

 

《蒼ノ一閃》の時よりも巨大な剣を投擲する翼

そればかりか柄に蹴りを叩き込み、速度を加速させる

 

「絶対加減してないよね翼さぁぁぁん!!」

 

シャウトしながらプライウェンを掲げる

流石のあの一撃を無傷で受け止めるのは聖遺物ができても鏡華には無理

ならば―――

 

(立花だけでも―――!)

 

守りきってみせる!

瞬間に来る衝撃に耐えるために鏡華は足に力を入れ踏ん張る

そして―――

 

 

「―――おらぁッ!!」

 

  ―破ッ!

 

  ―撃ッ!

 

  ―轟ッ!

 

 

衝撃はこなかった

眼の前には、鏡華に背を向け《天ノ逆鱗》に“素手で対抗している生身”の人間がいた

赤いワイシャツにスラックス。つまりは―――風鳴弦十郎に他ならなかった

 

「叔父様ッ!?」

 

「旦那ッ!?」

 

―――ダンナッ!?

 

二人と聞こえない声が重なる

どうして生身の人間が素手でシンフォギアに対抗できるのかまったく不明だが

しかし、これで終わってはいなかった!

 

「―――フンッ!!」

 

  ―轟ッ!

 

  ―破ッ!

 

  ―裂ッ!

 

  ―震ッ!

 

拳で受けた衝撃を受け流すかのように地面から“離していない”足で踏み抜くと、人間では壊すのがほぼ不可能なアスファルトをいとも簡単にひび割り、抉り、吹き飛ばす

その範囲、―――実に半径数十メートル!

さらには埋まっていた水道管を破裂させ、間欠泉の如く溢れ出る

翼と鏡華はその衝撃に吹っ飛び受身も取れぬまま地面に落ちる

 

「あだっ。~~っ」

 

落ちた時、ちょうど昨日切った場所だったので地味に痛く呻く鏡華

すでに防護服は解除され、元の私服または制服に戻っている

 

「あーあ、こんなにしちまって。何やってんだお前達は」

 

(責任転嫁!? それやったの旦那だよね!?)

 

―――やっぱすっげーなダンナは

 

呆れるような口調の弦十郎に鏡華はツッコミを入れておく

確かに戦闘をしていたのは自分達だが、ここまでやったのは弦十郎の《震脚》と呼ばれる中国拳法のせいだ

今ネタにした破裂しぶらさがっているような革靴で弦十郎は翼に歩み寄る

 

「らしくないな、翼。ロクに狙いもつけずにぶっ放したのか、それとも―――」

 

そこではたと気付く

 

「お前、泣いている―――」

 

「泣いてなんかいませんっっ!!」

 

拒絶するように

いや、まるで自分に言い聞かせるように叫ぶ翼

 

「涙なんて、流していません……! 風鳴翼はその身を剣と鍛えた戦士です。だから……!」

 

見ていられない

全員の感想だった

鏡華は立ち上がり、弦十郎はそれ以上何も言わず翼を抱き上げようとして、

響は必死に思いを告げる

 

「あのっ……私、自分が全然駄目駄目なのはわかっています。だから、これから一生懸命頑張って―――頑張って、“奏さんの代わりになってみせます”!」

 

それが度が過ぎた慰めの言葉と知らず

響は宣言した

流石の鏡華もぎょっとする

そして、その言葉を受けた翼は

 

「―――ッ!」

 

全ての想いが止まれなかった

怒り、悲しみ、何もかもを動員させ、最後の力《おもい》で左手を振るった

 

翼を連れて弦十郎が一足先に帰るのを見届けながら、鏡華は響に近寄る

響は未だはたかれた頬を押さえ呆然としていた

 

「……まあ、当然の結果なんだけどさ……」

 

響の横に並び立つ

 

「誰も誰かの代わりになんて、なれやしないんだよ。ましてや俺や翼にとって奏は絶対の存在。感情を捨てたって言ってるはずの翼が立花をはたくのは無理ない」

 

「……私は……どうしたら……翼さん、泣いてた……」

 

「うん、泣いてた」

 

どうしたらいいかなんて、正直鏡華が知りたかった

そして、同時に横に並ぶ子は羨ましいとも

結果的に負の感情だったが、それでも“今の”翼から感情を引き出したのだ

鏡華自身、あれから学院内で会っても、二課で会っても感情を出してもらっていない

 

「―――さ、もう帰ろうか。小日向が心配してるだろうし、近くまで送るよ」

 

「……ありがとうございます……」

 

だから、鏡華は響が羨ましかった

もしかしたら、彼女こそきっかけを作ってくれるでのはないか、と考えてしまうほどに―――


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