【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.ⅩⅦ

「―――と、まあそんなわけで君にはこの件に関して黙っていてもらわなくちゃいけない。一応俺が見張ってるのが一番なのかもしれないけど、規則でね。気付かれないように誰かが監視してるから言動には気を付けて。いいかな? 小日向」

 

時刻はもうそろそろ日付が変更される

そんな時刻に鏡華は未来と二人きりで二課の使われてない部屋にいた

すでに鏡華の背中は完治している

ただ―――咳き込むだけ

 

「……はい……」

 

「……しっかし、まさか“あんなこと”言った直後にバレちまうとはなぁ。世の中は相も変わらず不公平だ」

 

「……あの、響はいつからあんなことをしていたんですか……」

 

普段であれば、鏡華の言葉に苦笑ぐらい浮かべるのだが、未来は鏡華の言葉を無視してそう訊ねた

鏡華は苦笑を消すと、ため息を吐きながら、

 

「立花が予約したCD買いに行って遅くなっただろ? そん時からだよ」

 

「……………。そう、ですか……」

 

そんな前からだったなんて

考えがまとまらない―――まとまってくれない

まとめようと束ねれば、余計に考えが散らかってしまう

どうして?

どうして私に嘘を吐いたの?

約束したじゃない

隠し事なんてしないって

そればっかりがまとまってしまう

 

「絆が築かれるのは数年。絆が砕けるのは一瞬―――やれやれ」

 

まるで自分に言い聞かせるかのように鏡華は呟くと、ポケットから缶を取り出してプルタブを開けた

例によって缶ビールだ

 

「……鏡華先生。未成年ですよね」

 

「うん」

 

「よく捕まりませんね」

 

「まあね。―――って、あれ?」

 

もう一煽りしようとした鏡華は途中で首を傾げた

缶をテーブルに置くと指折り数えてうーん、とまた首を傾げる

 

「なあ、小日向。今日って―月―日だよね」

 

「え? ……はい」

 

ややあって未来に訊ね、答えを聞いた鏡華はうわちゃー、と変な声を上げた

 

「そうだ。そうだった。俺―――今日が誕生日じゃんっ」

 

「……はい?」

 

「すっかり忘れてたよ。うわー……、今日から俺二十代じゃん」

 

成人じゃん、と鏡華は頭を抱えて呟く

いきなりのことに未来も「は、はあ……」しか答えられない

 

「えっと……一先ずおめでとうございます」

 

「うん……ありがとう。そういや、そろそろ帰さないとね。悪いけど、送ってはやれないから、部屋の外にいる黒服のお兄さんに付いて行って」

 

「あ、はい……」

 

「それからー――事ここに置いて、『立花を許してやれ』なんて、俺は言わない―――つーか、もう言えない。俺は“嘘を吐いていた側”だからな。だけど、これだけは覚えておいてくれ。嘘を吐かれた側が心を痛めるのと同様―――嘘を吐く側だって心を痛めるんだ」

 

「……………」

 

未来は鏡華の言葉に何も応えず

頭を下げて部屋を出て行った

ドアが閉まると、鏡華はぬるい缶ビールを煽った

今日はいつもより、苦い気がした

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

「Although it is the request from from here to be sure, it is said that work is too careless.」

(たしかにこちらからの依頼ではあるけれど、仕事が杜撰(ずさん)すぎると言ってるの)

 

山奥の切り離された屋敷

その一室―――さらにその奥にあるイスに彼女は、フィーネが座っていた

そこは後から無理矢理屋敷に取り付けたような“研究所”のようだ

相も変わらず、すの美しい裸体を晒し、古風の電話でどこかと通話している

 

「If a leg sticks, it will not have no room to maneuver here.By no means, it is if it is also called your expectation...」

(足がつけばこちらの動きが取れなくなるわ。まさか、それもあなた達の思惑と云うのなら……)

 

「If it is God, a colander person is unable to interfere in all.Don't you itself understand most?」

(神ならざる者が全てに干渉するなど不可能。お前自身が一番分かっているのではないか)

 

そこまで聞いたところで

うんざりしながら聞いていたところで

バン! とぶち壊さん勢いで大扉が開かれた

視線を向けるとそこには―――クリスが立っていた

後ろには守るようにヴァンが警戒心剥き出しで立っている

 

「あたし達が用済みってなんだよ! もういらないってことかよ! あんたもあたし達を物のように扱うのかよ! 答えろよっ、フィーネッ!!」

 

かしゃん、と

未だ声の聞こえる受話器を置くと、フィーネは立ち上がる

 

「どうして誰も―――私の思い通りに動いてくれないのかしらァ」

 

そう、呟き

 

  ―煌ッ!

 

振り返ると同時に杖を、ソロモンの杖を“クリスとヴァンに向けて”撃ち放った

薄緑の閃光は床に着弾すると形を成し、ノイズとなった

 

「ッ―――!?」

 

「ッ、てめぇっ!」

 

いきなり召喚されたノイズにクリスは息を呑みながら一歩下がる

それを庇うようにして前に出たヴァンは即座に防護服を纏う

こつこつ、と音を立てフィーネは研究所から屋敷へ“入る”

 

「流石に潮時かしら。そうねェ、あなたのやり方じゃァ精々一つの火種を二つ三つに増やすことぐらいしかできないわねェ」

 

「あんたが言ったんじゃないかっ。どれもこれもあんたが―――」

 

「私が与えたシンフォギアを纏いながらも、毛ほどの役にも立たないなんて―――そろそろ幕を引きましょうか」

 

そう言うと、フィーネの手から銀の粒子が零れだす

零れ出た粒子は彼女の裸身を覆うと、一つの形を成した

ネフシュタンの鎧

それもクリスの時のように銀ではなく―――金

より刺々しく、禍々しく

 

「私も、この鎧も不滅―――未来は無限に続いていくのよ。カ・ディンギルも完成しているも同然。もうあなた達の力に固執する理由はないわァ」

 

「カ、ディンギル……?」

 

呟くクリスに「あなた達は知りすぎてしまったわ」と杖を操作する

瞬間、ノイズが一斉に槍となり二人を襲う

 

「ちっ……!」

 

未だ呆然とするクリスを脇に抱え、全力で回避するヴァン

 

「逃げろクリスッ!」

 

「ッ、でも……!」

 

「お前はフィーネを()れないだろっ!」

 

「ッ―――!」

 

大広間から出ると、開け放った入り口にクリスを放る

受身も取れないまま転がり、止まると顔を上げる

その時には―――

 

「ヴァン―――!」

 

その入り口さえも閉めようとしていた

 

「行け―――クリスッ」

 

その言葉を最後に

重々しい音を立ててドアは完全にしまった

クリスは胸のイチイバルをきつく握り締めると、歌を紡ぎ防護服を纏い空に飛ぶ

 

「ちくしょう……ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

重たいドアを閉めると、ヴァンは息を吐き振り返る

すで何十体ものノイズが溢れ、中心にフィーネがいる

 

「ふふ、自分の身を呈して好きな女を守ろうとするなんて……テレビの見すぎじゃないかしら」

 

「テレビなんてここ数年の間見たことなんかない」

 

エクスカリバーを強く握り締め、ヴァンは構える

 

「それに、この結果は俺にとって僥倖に値する」

 

クリスは行程がどうであれ、フィーネを信頼していた

そんな彼女の前ではフィーネに手を下すのはヴァンでも躊躇われた

だから一人きりは僥倖

残る今のやり残しは―――ただ一つ

 

「フィーネ。てめぇは、てめぇだけは許さない。ちょっとその綺麗な面(フェイス)―――汚させろ」

 

眼の前のクソ女を殴るだけ―――!


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