【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.ⅩⅤ

鏡華が響の元へ辿り着いた時にそれは解放されていた

ネフシュタンの鎧をを解放(パージ)し、歌を歌っているネフシュタン少女―――否、クリス

その素顔が―――露わになっていた

 

「歌わせたな。あたしは―――歌が大っ嫌いなんだっ」

 

「歌が嫌い……?」

 

鸚鵡返しに聞き返す響

一方、鏡華はどこか引っ掛かっていた疑問に答えが見つかった

 

(あの顔……それにクリス……? まさか……“雪音クリス”か!?)

 

何故、クリスと云う名前ですぐに思い出せなかったのだろうか

雪音クリス―――

シンフォギア奏者候補の一人であった少女だ

それがネフシュタン少女の正体

 

そして―――クリスは歌う

その歌に二課のモニターに識別コードが表れる

―――イチイバルと

包んでいた光が消えると、クリスが新たな鎧を纏って現れた

紅と黒の二色

今度はバイザーをしていない

はっきり云ってネフシュタンとは相反する基調だ

クリスは歌と共に手首のアーマーをボウガンのように変えると、

 

  ―発ッ!

 

深紫の矢を形成―――刹那に放つ

鏡華と響は縦横無尽に襲いくる矢をどうにか躱す

躱されるとクリスは、ボウガンを―――そもそも、軽量で形も細く作られている単純構造のボウガンなのに“そんな形”になるのは至極おかしいのだが、できることならばスルーしてもらいたい。後でもっと凄い疑問が出てくるので―――武装変換(コンバート)し鉄塊にした

鉄塊は円筒形をしており、何やら先端には円に沿って穴がいくつも空いていた

 

―――え?

 

ボウガンがコンバートした形を見て、鏡華は眼を丸くする

クリスは構わず、“安全装置”を解除する

その鉄の塊は一般的にこう云われないだろうか

“ガトリングガン”―――と

 

「はい? ちょ、ちょっとクリスさん? それ、明らかに現代兵器だよね? 何で神様の弓(イチイバル)から現代兵器(ガトリングガン)が出てくるんですかっ?」

 

そんな当然の疑問が鏡華の口から漏れる

一応ここは戦場であり、鏡華とクリスは敵同士なのだから的外れな気がするが

それにクリスはふん、と鼻を鳴らすと、

 

「あたしの知ったことか。神様だってガトリングガン使いたいんだろっ」

 

「嘘つけぇぇぇぇぇぇぇーーーーーっっ!!!」 「嘘だぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

思わず鏡華と響がツッコミをクリスに炸裂

そのお返しとばかりにクリスは歌を再会し、鉄筒は回転を開始

 

  ――BILLION MAIDEN――

 

森の中に壮絶な爆音が鳴り響き始めた

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

銃とは申請が通り許可さえ下りれば、誰でも携帯できる

現に猟師などはアニメでありそうなハンドガンではないが、ライフルと呼ばれる猟銃を使用している

が、基本は日本人、と云うか日本では許可されていない

精々アメリカやカナダ、そこら辺りだろう

だが、これは流石に違法ではないのだろうか?

そう、遠見鏡華と立花響に爆撃に近い銃撃を浴びせているクリスを見ながらヴァンはそう考える

いや、シンフォギアは存在自体秘匿されているので例外かもしれないが

 

ヴァンはおもむろにケータイを取り出すと登録されている相手へ掛ける

ツーコールで出てくれた

―――なんだ、問題でも起きたか

声の主はエドワード

 

「エド、既存(エグゼスト)のガトリングガンって人が扱えるものか? 片手に二門、計四門の三連ガトリング砲なんだが……」

 

そう訊ねると

エドワードは息を呑んでから、高らかに笑った

―――ハハハ。何を言い出すかと思えば。ヴァン、ガトリングガンは人間が扱うようにできてるんじゃないぞ。無論人間が扱えるものはあるが、お前が聞いたガトリングガンは無理だよ。何だったっけ? 片手に二門の三連ガトリングガン? それを両手の四門六連ガトリング? ハハハ、そんなもの制御できるとしたらそりゃお前みたいな奏者かバケモンだよ

 

ケータイの奥で爆笑されていた

だよな、と思うヴァン

ぜひお前に眼の前の光景を見せてやりたいよエド

更には太腿から腰周りを覆うアーマーから―――ここでも云わせてもらうが、あんな軽鎧のどこにあれだけの数が入っているのだろうか。技術的にありえない―――ずらっと、小型のミサイルポッドを一列五発の二段、計十発を展開し、

 

  ――CUT IN CUT OUT――

 

一斉に射出

追尾型だったらしく、躱した鏡華と響の元へ進路を変更

逃げられず響の後ろで手をかざした鏡華に突貫し、

 

  ―轟ッ!

 

  ―爆ッ!

 

直後、更なる爆発が森の中を蹂躙した

安全圏からずっと見続けていたヴァンは一言

―――荒事(ライオット)だ……

そう、呟くのだった

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

久方ぶりの歌を紡ぎ、感情に任せやたらめったら滅茶苦茶に連撃をかましたクリス

当然ながら過呼吸に陥っていたので身体全体で荒く息を吐く

辺りは爆煙で見えない

だが、あれだけの攻撃を躱しきれるはずがない

そう思った時、煙が晴れた

煙の奥にあったのは、

 

「ッ―――盾?」

 

行く手を阻む蒼い筋の入った銀の盾

だが、それは違う

決して盾ではない

それは―――

 

「―――剣だっ」

 

弾かれたようにクリスは見上げる

そこに“立っていた”のはあの時絶唱を唱った少女

蒼い鎧を鎧を纏う蒼髪の少女

完全に煙が晴れると、彼女が巨大な剣の柄に乗っていることが分かった

 

「ッ……(いつ)つ……」

 

「たた……。翼、さん……?」

 

「気が付いたか。鏡華、立花」

 

顔をしかめながら上を見上げる

そこには入院患者であったはずの翼

 

「ふん、死にかけでお寝んねと聞いていたが、足手纏いを庇いに現れたか?」

 

「もう何も失うものかと―――任せきるものかと決めたんだ」

 

「はっ、ほざけよっ」

 

ガトリングガンが火を吹く

飛び降りた翼は歌いながら最低限の動きで避けていくと着地と同時に天羽々斬を袈裟に振るう

翼はクリスを飛び越える。と、その後ろから鏡華が突貫してきた

 

「ッ――――――!」

 

「せぇっ!」

 

カリバーンを横に薙ぐ

ぎりぎりで避けるクリスに休ませることなく背後から刃が襲いくる

舌打ちしながら跳躍し、ガトリングガンとミサイルポッドを放つ

しかし、鏡華と翼はそれに当たらない

飛び上がった鏡華がロンを振りかざし、石突きを炸裂

落下したクリスは着地するも背後から背中合わせに翼が刃を首に向けていた

 

(こいつ、前より動きが……)

 

すぐに落下音が聞こえた

同時にキン! と甲高い音も

鏡華が背中から地面に落ち、その上からヴァンがエクスカリバーを突き刺そうとしている

 

「翼さんっ、遠見先生っ、その子達は!」

 

「分かっている!」

 

「翼に同じく。―――つーか、どきやがれっ!」

 

ヴァンの腹部に蹴りをかまし、吹き飛ばしながら自分は起き上がりつつ後ろに下がる

翼も背中合わせから振り向き青眼に天羽々斬を構えながら鏡華の横に立つ

 

「刃を交える敵じゃないと信じたい」

 

「まあね。それに―――イチイバルのこととかこれまでどうしてたのかも訊きたいし」

 

「……ああ」

 

ヴァンも咳き込みながらもクリスの横に立つ

 

「大丈夫かよヴァン」

 

問題ない(ノープロブレム)。それよりもクリス、無理はするな。イチイバルは久し振りだろう」

 

「あたしは心配いらねーよっ。絶対勝つ―――ッ!?」

 

最後まで言葉を紡げなかったクリス

何故なら―――突如、飛行型のノイズが出現し、クリスの持つガトリングガンを貫いたのだ

驚き叫ぼうとしたヴァンの腹部にもノイズが貫こうと襲撃する

剣の腹で防いだが、吹き飛ばされる

そして最後の一体がクリスを貫こうとして、

 

「クリス―――!!」

 

「クリスちゃん―――!!」

 

響がそれを体当たりと云う荒技で防いだ

だが、流石に回転していたノイズにその一撃は無謀だったのか

ダメージが大きすぎてクリスに向かって倒れた

 

「立花ッ!」

 

「お、お前、何やってだよっ!?」

 

「ごめん。クリスちゃんに当たりそうだったから、つい……」

 

「ッ―――バカにして、余計なお節介だっ」

 

力なく笑う響にクリスは怒鳴る

やる気が削がれた、と鏡華とヴァンは互いを見て剣を納めた

その時だった

 

 

「(命じたことも出来ないなんてあなたはどこまで私を失望させるのかしら)」

 

 

そう、頭に直接響くような声に全員がはっとする

まるで念話(テレパシー)みたいだ

鏡華はこの念話を知っており、辺りを見渡す

そして―――見つけた

離れた場所に黒服を纏い、サングラスと帽子を被った奇妙な杖を持った女性が

 

「フィーネ!」

 

ぞくり、と背中を電流が伝った気がした

今、クリスは何と言った?

フィーネだと―――!?

では奴が、奴こそが

“あの”フィーネか―――!

 

「見 ぃ つ け た―――!」

 

全員が―――あのヴァンでさえ―――戦慄する声を喉の奥から絞り出す

俺の声ってこんなだったか? と思うが、今はどうだってよかった

 

鏡華が一歩を踏み出す

地面は草であると云うのにその音がよく響いた

 

「おい、フィーネさん」

 

「……………」

 

「ちょっと―――“この時代から死ね”」

 

その声を皮切りに

ぱっと虚空より槍が具現する―――されていく

 

一本、二本、三本―――否!

十本、二十本、三十本―――否否!

百本、二百本、三百本―――!

 

数え切れない!

槍と槍の間さえも埋め尽くさんばかりに幅広の槍は、ロンは

鏡華の視認する全天にその姿を具現化する!

その切っ先の先は全て―――フィーネ

 

「鏡華!?」

 

「てめぇをこの時代で“殺しておけば”この時代の不安要素は野生のノイズだけだ。さあ―――」

 

―――逝けっ

合図を受けた槍の軍は指示通り何の構えもしていない、ただ柵に凭れているだけのフィーネに襲い掛かる

その数で避けられるはずがない

だが、

 

「あなた達にもう用はないわ」

 

まるで

まるで鏡華がいたことにすら気付いてないかのようにクリスとヴァンに告げ

白銀の粒子を纏いながら、フィーネは海の向こうへ消えていく

当然“全てのロンを避け切って”消え去る

 

「待てよおい! フィーネェェェェーーーーー!!」

 

「逃がすかよ―――絶対殺し尽くすっ」

 

あれだけあったロンを撃ち尽くした鏡華は新たにロンを具現化

クリスが追いかけているにも関わらず撃ち放とうとしている

だが、それは中止となった

 

  ―閃ッ!

 

「んが……ッ!?」

 

鏡華の背後から、ヴァンがエクスカリバーを一閃

背中を深く斬り裂いたのだ

具現化中だったロンは溶けるように空に消え鏡華は片膝を付く

 

「鏡華ッ!」

 

「おいてめぇ、何無闇矢鱈に槍をぶっ放してる。クリスに当たったらどうするもりだ、あん?」

 

その時は両断じゃ済まさんぞ、と

ヴァンにしては珍しく感情が露わになっている

斬られた痛みで鏡華も正気に戻る

その間にクリスはフィーネを追い、海を飛んでいた

ヴァンは肩を竦めると、鏡華の腹へ柄を叩き込み意識を飛ばす

気を失った鏡華の首根っこを掴み、翼に投げ捨てる

すでに響を抱えていた翼は耐えきれず地面にしゃがみ鏡華を支えた

 

「鏡華! しっかりして鏡華!!」

 

「心配はいらん、どうせ血は止まっているだろう。直に気が付く」

 

それより、と

ヴァンはエクスカリバーを消しながら背を向ける

 

「風鳴翼。遠見鏡華が大切ならばこれからそいつに近付く全ての人間を警戒しろ」

 

「何を―――」

 

「不老不死の人間がどれだけの“価値を持っていると思う?”」

 

「――――――ッ」

 

「フィーネ……さっきの女がある組織に遠見鏡華の情報を流していた。―――もう一度言っておく。もう二度と遠見鏡華を失いたくないなら“全てを敵に回してでも”遠見鏡華の味方であり続けろ」

 

できないなら貴様の想いはそこまでだと云うことだ

振り向かず告げると驚異的な跳躍を見せ、翼の前から消える

 

―――そんなこと

そんなこと分かっている

片手で抱き抱えている鏡華を覗き込む

 

「私はどんな時でも―――鏡華の味方だ」

 

鏡華は全てを世界を敵に回してでも自分達を護ると言った

ならばその逆も然り

自分は護られるだけの存在ではないのだから

新たな覚悟を持ち、乙女(せんし)は戦場へ舞い戻った―――


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