【修正中】戦姫絶唱シンフォギア ~遥か彼方の理想郷~   作:風花

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D.C.ⅩⅢ

「はい、はい……分かりました。それじゃあこれから行きます!」

 

『お願いしますね。翼さんと鏡華君にもよろしく』

 

響はケータイをしまうとふぅと息を吐く

後ろには未来が数段上の階段に立っていた

 

「どうしたの響?」

 

「あ、うん。たった今用事ができたんだけど……未来もよかったら一緒に行かない?」

 

「え? うん、いいけど……どこ行くの?」

 

「えっと~……行けば分かるよっ」

 

少し隠し気味の言葉に首を傾げる未来

響は「とにかく行こっ、行こっ!」と未来の背中を押す

 

初めに寄ったのは病院の中の売店

そこで花を数輪買う

 

「誰かのお見舞い?」

 

「うん。未来も知ってる人だよ」

 

「…………?」

 

そこから緒川に教えてもらった病室まで行く

眼の前まで来ると響は深く呼吸をし、心を落ち着かせる

 

「響? 入らないの?」

 

「は、入る! ……失礼しま~す」

 

とか言いながらドアを開けず、ノックをする

ドアの奥から「……どうぞ」と聞こえた

その声に未来はえ、と耳を疑った

今の声を未来は知っている

と云うか、知らない人は滅多にいないだろう

 

「今度こそ、失礼しま~す」

 

左脇のパネルを操作し、ドアを開ける

開け放たれたドアから響と未来は

 

「「――――――」」

 

絶句した

響は翼を知っていたので翼“本人“には驚くはずがない

未来は翼とは知らずに入ったので病室の患者が翼だと云うことに驚き

そして部屋の“中”を見てまた驚いた

 

汚い。本当に汚かった

雑誌は積まれたり開かれた状態で床に捨てられていたり

何個も使った後のコップがテーブルに置かれていたり

服が様々なところに脱ぎ散らかされていた

下着だけは鏡華が片付けておいていたが

 

「……どうしたのよ。入らないの?」

 

翼だけが少し不機嫌そうに訊ねる

その様子からああ、これが普通なのか? と思ってしまう未来

だが、響だけは違った

 

「な、何があったんですか!? 遠見先生と喧嘩でもしたんですか!? それともファンの人が強行突破してきて先生と乱闘もしくは暴れたんですか!?」

 

「何言ってるのよ。何でそんな飛躍した……」

 

そこまで言ったところで翼ははっとして辺りを見回す

周りに錯乱しているゴミ、本、服、etc

しまったと思った時にはもう後の祭り

様々な想像をマシンガンの如く連ねていく響の言葉を顔を真っ赤にして受けるしかなかった

 

「ひ、響……ちょっと」

 

「もしかしてライバルアイドルからのこう―――ほえ、どうしたの未来?」

 

「多分だけど……」

 

「へ? ……え、あ、あ~……えっと……」

 

答えず顔を赤らめて俯くのが答えみたいなもの

とっても納得してしまい新たな言葉が見つからない響だった

ついでに未来はこの光景のおかげで翼に対する驚きはなくなっていた

 

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~

 

 

 

「もう、そんなのいいのに……」

 

ベッドの横、鏡華の横に座りながら翼は言う

その頬は赤いままで、指は―――寝ている鏡華の頬をつんつん突いていた

 

「ん……にゅ~」

 

「ふふっ、相変わらず、にゅ~、か♪」

 

鏡華の寝言(?)に忍び笑う

その間に響が言葉を返していたのもしっかり聞いていた

 

「それにしても以外でした。翼さんって何でも完璧にこなすイメージがあったから」

 

「私はその、元来こういったことに気が回らないんだ……小日向もすまない」

 

「いえ……、それより、どうして翼さんは私のことを知っているんですか?」

 

本を整理していた未来の問い掛けに翼は一瞬だけ言葉に詰まる

そう云えば鏡華から言い訳を聞いていなかったのだ

だから、「き、鏡華がよく話してたんだ。立花と小日向っていう面白い奴がいる、と」とちらりと鏡華を見ながら言う

幸い疑うことなく信じてくれた未来

 

「そうなんですか。……あの。……鏡華先生とは―――どういった関係なんですか?」

 

「鏡華から聞いてないの?」

 

「幼馴染兼家族ってなら」

 

少し伏し目がちにそう答える未来に

―――ああ、そうか

小日向(このこ)、鏡華が好きなんだ

そう、乙女のカンとやらで確信してしまう翼

他を片付け終えた響はきょろきょろと交互に視線を彷徨わせている

 

「もしかして……恋人とか?」

 

「恋人、か……。確かに私は鏡華が好きで、鏡華も好きだと言ってくれた」

 

だけど、実際はどうなんだろう

鏡華は翼を好きと言った

しかし、同時に奏も好きだとも言った

どっちも同じくらい大好き

どちらか片方なんて選ぶことはできない

だから、

 

「―――だが、私と鏡華は恋人ではない」

 

こう云う他ない

見ると、未来はほっとしたような表情をしている

やっぱりこの子は恋している

故に翼は、

 

「でも、あなたには渡さないから」

 

「ッ―――!?」

 

「鏡華は私と奏のモノ。欲しかったら―――力ずくで私達から奪ってみなさい」

 

にやりと挑発じみたセリフを言う

言われた未来は息を呑むが、一度深く息を吸い込むと

同じような笑みを浮かべ、

 

「分かりました。翼さんからでも、きっと……奪ってみせますっ」

 

そう、宣言した

翼と未来は「ふふふふ」と笑う

二人だけにはきっと間に火花みたいなモノが散っているのだろう。……多分だが

蚊帳の外状態となっていた響は、乙女の戦いにあわあわしていたが、二人が気付くはずもない

しばらくそうしていると、未来は視線を逸らした

視線の先には鏡華の顔と、その頬をつんつんしている翼の指

そう云えば、こんな無防備な顔見るのは初めてかな~、なんて思いながら未来は鏡華の顔を覗き込む

 

「鏡華先生って肌綺麗ですよね」

 

「ええ。手入れしなくても毎日綺麗だったから凄く羨ましい。……触ってみる?」

 

「え、いいんですか?」

 

いいわよ、と翼はそう言って少し横にずれる

未来はお礼を言ってから指を突き出し

恐る恐る肌に触れてみる

キメ細やかな肌

その感触をつんつんと、ぷにぷにと楽しむ

 

「うにゅ。にゅ~……」

 

「ぷっ。にゅ~、ですかっ?」

 

鏡華の寝言(?)に響は笑う

翼と未来も笑い、未来はさらに悪戯しながら「可愛いな」と思う

元々鏡華は女の子のような顔立ちだ

普段の言動が言動だから隠れているが、こうして大人しくしていると、妙に可愛いらしい

さらにその寝言だ

これが三人の心をくすぐりまくっていた

 

しばらくそうやって遊んでいると、不意に鏡華の眼が開いた

 

「ひゃっ……!」

 

「うにゅぅ……はれ?」

 

その距離にびっくりして、未来は声を上げ、少し背を立てる

鏡華は身体を起こすと、半分しか開いていない瞼で左を見て、

 

「……………」

 

右を見て、翼に気付き呟く

それからぬぼーっと、一分が経過

ぽりぽりと後頭部を掻き、未だ半開きの眼で

 

「うに……久し振りに深く寝たぁ……」

 

「鏡華。ここにいる面子に対して一言」

 

翼が訊く

鏡華は翼、響、未来を見ながら、

 

「えっと……翼、立花、小日向―――お腹減ったなぁ」

 

「鏡華、おはよう」

 

「うん。おはよう、翼」

 

いつもの笑顔で言った


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