【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪

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71話 蜥蜴

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 ふむ。部屋で籠城している、バカ王子……もといチャゴス王子が王家の儀式をするとかなんとか、他国の事情なんか知ったこっちゃないんだけど、まぁ交換条件なら仕方ないよね……やるしかない護衛任務。

 

 護衛任務は今もやってるって言っても間違いでもないし、私やエルトは手慣れた仕事だ。

 

 だから下手に剣舞でもしてくれとか専門外なこと言われるよりは助かったんだけど……当の護衛対象が自室に引きこもりしてたらどうしようもないね? ある意味安全っちゃあ安全だけど、恨みを……まあ、色んな意味でかってるチャゴス王子がここで毒殺とかされたら話にもならないね。

 

 え、物騒? 王家なんてそんなもんだよ? しかも小国じゃない、世界的な大国サザンビークの一人息子、しかも国民に慕われてすらいない、戦闘能力も知性もカリスマもないしかも醜いバカ王子なんてさ……。

 

 辛辣かな? 貴族だったらこう考えるんじゃない? ちなみに私個人としては……王子じゃなく同年代の男性として見た場合……うん、ごめん嫌い。本心だから仕方ないよ。

 

 王子っていうのはとっても身分が高い。なのに威張り散らしたら人が寄ってくるとでも? サザンビークはいい国だ。そういうのにごまをする人間は……少なくとも国内にはいないだろうね。国外から来た馬鹿ならへつらうだろうけど。で、私達は護衛期間だけは敬う……フリしなきゃいけないわけで。

 

 こき下ろしたけど、チャゴス王子が前回私とあった時より成長なさってたら全部撤回するよ。

 

「クラビウス王」

「なんだ?」

「非常に申し上げにくいことですが、部屋から出てこない方を護衛したことはありません」

「……ほう」

「絶対に傷一つ負わせませんが、私が扉をぶち抜く、という手段があります。最終手段としてどうか」

 

 ……エルト。なんでそんなに私から離れるように下がったの? そんなにありえないこと言った? そりゃね、常識的じゃないのはわかってる。でも閉じ篭もられたらこうするしかないじゃないか……。後でこれ、ちゃんと言っておこう。ククールもゼシカもすごく誤解をしてる顔だ。

 

 ヤンガス。君だけだよ……私に何言ってんだこいつみたいな顔をしないのは……。優しいね。

 

「……なるほど、最終手段か」

「えぇ」

「一応、考えておこう。少し城内を見て回るでもして時間を潰しておけ、チャゴスをなんとかして部屋から出すまでは」

「承知いたしました」

 

 ま、頷かれないのは知ってたし頷かれたらサザンビークの前途を心配するところだったさ。クラビウス王の言うとおり、城内を散策してドルマゲスの情報をそれとなく聞きつつ、穏便な手段で馬鹿王子……失礼、チャゴス王子に部屋から出てもらう手段がないか考えよう。

 

 ……でもな、部屋にこうして閉じこもってること考えると成長は期待できないんだよなあ。

 

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 堂々たる体捌きでサザンビーク城内を歩いていたトウカが人影がないところでやっと歩くのをやめた。そしてぱっと振り返って、僕らをちょいちょいと手招きする。

 

「さーて、さーて。作戦会議だね?」

「あぁ、そうだな」

 

 こちらを見上げながら笑顔でうんうんと頷くトウカ。……本当の性別を知ったからか、同じ動作を見て今までなんにも思わなかったのに女の子らしいなぁとかよくわからないことを考える。都合がいいな、と自分に思うよ。

 

 まぁ当の本人は変わらずその背には僕より重いであろう剣がずっしりと存在してるわけだど。やっぱりトウカはトウカなんだよね。……仮に守って! と言われようと、護ろうとしようにも僕の方が弱い、という事実は胸に突き刺さるけど。トウカだから仕方ない。でも、トウカは女の子だ。……女の子な前にトウカか。なら仕方が……いやいや。

 

「あ、そうだ。チャゴス王子とトウカは面識あるの?」

「あるよ。まぁ向こうは覚えてるか分からないけどね……何分昔だ」

「そう……」

「あ、でも彼の弱点なら知ってるよ。まぁまぁ有名なことなんだけどね」

 

 それが使えるかは微妙なんだけどね、と前置きしたトウカはそこらにおいてある調理用の水なんかが入ってる樽を横に寄せてその周りをなにやら探した。……他国に対して失礼な言葉かもしれないけど、普通そういう水場の樽の下なんて汚いと思うけどなにしてるの?

 

「いたいた。こいつが王子の弱点だよ」

 

 そしてすぐに目的の何かを見つけたのか片手にトカゲを……ってなんで手袋してるからって普通に掴んでるの。というか城にトカゲがいていいの? 僕が小間使いだったら大目玉だよ? ほら見て、ゼシカのドン引きした顔を。訳が分からないよとばかりにきょとんとしないの!

 

「トカゲちゃんはわりと可愛いとね、私は思うんだけど……王子はトカゲが何よりも嫌いみたいなんだ」

「そ、そう……」

「なんとかしてこいつを部屋に投げ込めば王子も出てくるかもね? 扉ぶち抜いて投げ込むのは流石に許されないだろうけど……窓からとか、上からとか。天井に穴空いてたら、そこから落とせるけど……うーん、天井裏はちょっと入れないよなぁ」

 

 うらうらとトカゲを親指で構い倒しながらトウカは肩をすくめた。

 

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