【完結】剣士さんとドラクエⅧ   作:四ヶ谷波浪(ryure)

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海路編
56話 航海2


 ……なんで僕が舵をとっているんだろう。誰か……航海技術持ってないの……? 多彩な人なら出来ないの? ……ねぇ、トウカ……え、専門外だって? 海上の魔物の退治は任せろ?それは任せてるよ。言いながら魚型の魔物を切り刻んでるのも見えてるから。……それ、朝ごはんのおかずにするの?……えーー……。

 

 笑顔のみんなに舵を握せられ早数時間。地図を広げたトウカに方向を示され、何となくで舵をとればその通り動いたので何とかなっている。本来、こんなに簡単に操縦できないはずだから……この古代船がハイスペックなだけだよね、そうに違いない。

 

 甲板の方ではひっきりなしに襲ってくる魔物を四人で撃退している姿が見える。陛下と姫は危険なので船内にいてもらっているから、そこまで背後に気をつける必要はない。……問題は、舵をとっている僕の方にも普通に魔物が襲ってくるってところかな。

 

 背後から邪魔してくる奴等を切り捨てながらではなかなか進まない。でも、不思議なことに舵から手を話した瞬間、船は進まなくなるんだ。ピタッて止まるんだよ。お陰で挫傷しないんだけど……僕の知ってる船と違う……。

 

「朝ごはんにしようよ!」

「……俺にはポグフィッシュとしびれくらげにしか見えないんだが」

「あ、大丈夫。これは毒があるから食べないって」

「おう。心底安心したぜ……」

「安心する前におおうつぼ片手に短刀構えてるトウカを止めなさいよ!」

 

 ……僕は何も知らないっと。あはは、空が青いなあ……大王イカにを伸して調理しようとしてるトウカとか見えないよ……。あ、おおうつぼが青い光になって消えた。これなら、大王イカもトウカが食べる前に消えてくれるよね、ゲテモノを食べる前に解決するよね……?

 

「実はこの大王イカはトドメを刺さずに意識を刈り取ったんだよね」

「……、今すぐククールは大王イカに火炎斬りを!」

「任せろ!」

 

 嬉々としてククールがトドメをさしてくれたお陰で大王イカは消えた。危ない危ない、怪しい物を食べるところだった……。生きたまま魔物を食べようとする感性が信じられないや……その前に魔物を食べようとしないでよ。

 

「冗談に決まってるのに、みんななんでそんなに本気になるかな……」

「……冗談?」

「へへっ、チャレンジ精神は大事だよ?」

「止めなきゃ食べるつもりだったんでしょ! 毒かもしれないのに何を言っているの!」

「えーー……毒じゃないよ?」

「……まさか」

「ボクじゃなくて父上なら食べたことがあるって言ってた」

 

 ……名家の家長が何をしているの! 貴族って、貴族って……貴族ってそうじゃない!トウカの父君だって考えてみれば激しく納得できるのはなんでだよ……!思いだせ、あの威厳を……あ、駄目だ、子煩悩なイメージしかない……。

 

 うっかり見てしまった、笑顔で、熊みたいな体格の鍛冶師に打たせた大剣をプレゼントして、トウカが軽々と振り回しているのを見てニコニコしている姿しか浮かばない……! いろいろ、違うよ!

 

「……アスカンタで補充した食べ物で何とかするんでしょ、知ってる」

「未練たらたら新しいおおうつぼに狙いを定めないで!」

「倒すだけさ」

 

 うん、ゼシカ頑張って。ククールは諦めちゃったみたいだし、ヤンガスは……止めてくれないだろうなあ……。さすがのトウカでも陛下や姫様の分までふざけないと思うから、そこはいいとしても……いくら毒じゃなくても嫌なものは嫌だっていう感覚、分かってくれたらいいのに。

 

「そういえばどこに向かっているんだ?」

「近くから攻めるべきかと思うからメダル王の城に行くつもりだよ」

「それは島だろ、その次は?」

「……それなんだけどね……」

 

 聖水を甲板に叩きつけたトウカが僕に向かって手招きした。

 

 ひょいっと甲板に飛び降りれば、ゼシカとククールに溜息を吐かれた。……僕が何をしたっていうのさ。いちいち歩いていたら時間が勿体無いじゃないか。え、そうじゃないって? なんで?

 

「サッヴェラとかゴルドとかは……あんな聖職者がいっぱいいる所に邪悪の塊のドルマゲスがホイホイ行くとは思いたくないんだよね……」

「……マイエラとは規模が違うからな」

「まあ、そんな感じ。で……それよりも人がいっぱいいるところって言ったら……ベルガラックとか、サザンビークとかがある大陸のほうじゃないかなって……」

「……、たしかにあの大陸は人口も多いよね」

 

 トロデーンとサザンビークとアスカンタは三大王国だ。メダル王のところにも行くんなら、王国は制覇するってことだよね。

 

「なにより、情報がない! だからメダル王のところで情報が得られなかったら適当に彷徨うことになるね……世界は広いっていうのに……」

「祈るしか、ないか」

 

 分かっているのはドルマゲスが海を歩いて行ったことぐらいだよね……情報屋さんが西側に変な奴が行った、とか言っていた気もするな……?

 

「情報屋さんが西側に不審者が……とか言ってなかった?」

「ああ、それがあった。どっちにせよ、それベルガラック・サザンビークの大陸だよ……」

「そう……」

 

 雲をつかむような曖昧な感じだなあ……ドルマゲスがはっきりいたって分かるのは……うーーん。今まで名前が分かっている分では三人の人物を殺し、関所でトロデーンの兵士を殺したドルマゲスだ。これからも殺人を犯しかねないよね。だからといって、人が殺されるのを待つって訳にはいかないんだけど。

 

「今度こそ、先回りしてやる……」

「ええ、仇討ちをしなくちゃ……」

 

 僕達は決意新たに、進みだす。脳裏に浮かんだ茨に閉ざされた城を、早く開放して取り戻したい。




トロデ「飯はまだかいのう?」

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