それからは色々と酷かった。片っ端から僕達はトラップにかかったり行き詰まったり。魔物を倒せているって意味なら順調だけど……主にククールの魔力を犠牲に成り立ってるけどね。
その原因のトウカは魔物の攻撃をやろうと思えば全部、ひらりひらりと躱すことは出来る。けど……ここ、狭いのに魔物が多すぎるんじゃないかな。
ククールが疲れきったのをとうとう見かねて避けに集中してくれたけど、攻撃もしなくちゃいけないからか、何時もほどじゃない。
狭いから避ける場所もないし、得意の跳躍で逃れることも出来ない。だから、妙なことに体力はあっても耐久力はないトウカはベホイミでキラキラ光っている。余計目立ってそのせいで狙われてるんじゃないかって思うほど。
にしても、順番までは覚えていたくもなかったから忘れたけど……重い剣士像を動かしてスイッチを押したり、はたまた行き止まりだったり、そこで人食い箱に腕を食われかけたり、部屋に詰まっているんじゃないのと思わせるほどの魔物に襲われたり、ミイラに奇襲されたり……洒落にならないね。
しかも行く先々に頭蓋骨とか人骨の破片が落ちてるし。無念に終わった先人の悲しい末路だよね……。ああはなりたくないよね。見る度顔が引き攣るし、実際そうなりそうなほどの大量の魔物に襲われてるからあながち他人事でもないし……。
「これはなんだろう? 剣士像が二体?」
「行き止まり? でも分かれ道は全部見たよね?」
「あからさまな石碑の文字ぐらい見てやれよ……」
「あ、本当だ。あんなのあったんだ、気付かなかったよ」
……口に出さなかっただけで存在ぐらい分かってたんだけどな……。最近注意散漫じゃない?
「……へえ、上を見ろって」
「意訳しすぎだけどまぁそういう事よね……」
「あ、あんなところに穴があるでがすよ!」
ヤンガスの指差す先を見れば、確かに天井の一部分だけが不自然に四角く切り取られるように穴があって、その先へ行けそうな感じだった。
いくらトウカがジャンプが得意だからといっても届きそうにはなくて……って、何ぴょんぴょん跳ねてるのさ。全然届いてないよ……?
「くっ! かくなる上は防具を外して飛ぶか……!」
「少しばかり魔物が出なくなったぐらいで早まるなっ! 辞めてくれ!」
「お、おう、ごめんククール」
「分かればいいんだ、分かれば……」
うん、ククールの苦労とストレスがそろそろ大変なんだね。顕著だね。
にしても……どうやって行くのかな? 今までの流れならどこかに仕掛けがあって、それを何とかすれば行けたよね? 剣士像の洞窟っていうぐらいだから二つの像が鍵なのかな?
「これを動かすのかな? 分かり易い溝まであるしっ?!」
「……ホイミ」
「あーー、なるほどなるほど。穴にクロスさせるのか……」
「……ちっとは心配してくれてもいいんじゃないかな?」
そりゃ、頭を強打する勢いで天井にすっ飛んでいったのにはびっくりしたけど、軽々と「天井」で受身をとって見事に着地されたら心配も吹き飛ぶでしょ……。それを見てもホイミしてあげるククールは優しい。え、最早条件反射だって?お疲れ様……。
・・・・
「はてさて、ようやく宝箱までたどり着いた訳だけど」
「そうだね。さっさと開けようよ」
「エルト、君は素直過ぎる! トラップトラップトラップなこの洞窟……てか迷宮の最終ステージ! きっと胸が躍るバトルをプレゼントって流れでしょう! ……姫様の為に最短で終わらせるけど」
どんなバトルだとしても、今は時間をかけていられない。でも胸が躍るのは止めようがないよ。
さあ、レッツ! オープン!
「なんでこんなにトウカの勘が当たるかなぁぁぁぁぁっ!」
「まさかの宝箱ごと魔物! 叩き斬るぜっ!」
待ってましたと言わんばかりに飛び出してきた宝箱型の魔物。宝の主か守り人みたいなポジションの、まさしくボス!
鋭い牙の様なギザギザの刃で噛み付くかのように叩き潰そうとしてくる姿はまさに凶悪! 肌で感じる気配は邪悪でもなんでもなく、だからといって光でもなく! プログラミングされた行動、予定通りの感情! そんな感じ!
まるで機械のようだね! メタルハンターみたいだ! 見た目は似てないけど! 物質系とマシン系ではえらい違いだけど!
「バイキルトッ!」
「サンキューゼシカ! この力であいつを叩き斬って、ビーナスの涙を奪い取るから待ってて!」
勇んで足に力をこめ、大剣を両手に構えて跳躍し、動きが読まれないように、それから攻撃を食らわないように気をつけながら周りをうろちょろする。時折、肉たたきでもするかのように攻撃を仕掛けるのも忘れない。
……にしても、こいつの急所って、何処だろう。やっぱり硬い箱に守られた中身かな? 剣を突っ込んでぐちゃぐちゃにしてやれば早いかな?それとも箱を潰して中身を斬るべき?
ゼシカの放つメラミが魔物の宝箱を焦がしていく。ダメージはある。エルトのベギラマも効いている。ククールのバギマも。……もしかして、悩まなくてもこいつ、何でも効くんじゃないかな?
「はい、グサッと」
一気に間合いを詰めて箱の中身へ向かって剣を振りおろした。残念なことに、これぐらいでやられてくれる雑魚では、なかった。
頭打ち要員はトウカでした。