世界を歪めているのはお前等だ。
なら…
「コロス…」
私はメガネとの距離を詰めると赫子で右手と左足を狙う。
「そんな攻撃!」
私の攻撃を避けたメガネは、お返しとばかりにクインケを横になぎ払う。
姿勢を落として避けた後、メガネの腹部に蹴りを入れてそのまま距離を取る。
メガネのクインケは大きさ、形からしてかなりの重量があるようですね。
攻撃を一度でも受ければ、致命傷は免れませんね。
なら…
私は半円を書くように
遠心力がついた一撃は、かなりの速さと破壊力を持ちます。
まぁ、隙が大きいので避けられた後反撃されるかもしれませんが…
「そんな攻撃。見え見えなんですよ!」
メガネは後ろにステップして避けると、私の頭めがけてクインケを振り下ろす。
ゴォオオと空気を裂く音。当たれば一発でアウトですが…
その程度の速さでは避けられてしまいますよ?
私は足に力を込めて横に飛び、そのままの勢いでメガネの背後を取る。
「…終わり」
私はメガネの心臓めがけて赫子を突き出す。
「ギミック発動!」
メガネがそう叫ぶと同時に、金砕棒の形をしていたクインケが盾の様な形になり、私の赫子を弾いた。
……まさかクインケが赫子の様に形を変えるとは思いませんでした。
「ふははは、いくら貴女の赫子が強力であろうとも、私のクインケ【出月】の鉄壁の守りの前では無力ですよ」
確かに、メガネのクインケの盾モードは厄介ですね。
私の赫子の性質上硬い物はあまり切りたくないですから…まぁ、切れますが…
でも、メガネのクインケはとても興味深いですね。
「ふふ、どうです!この圧倒的防御力。攻撃力はあまり期待できませんがそのマイナス面をも補う程の硬さと耐久力を持っています。そしてこのクインケの素晴らしさは防御力だけではありません!見なさい、この月明かりに照らされて白銀に輝く私のクインケを…何と美しいことか!神々しいことか!傷一つ付いていないその姿は、まるで矛盾に出てくる最強の盾そのもの。どうだゴミめ、私の力にきょ‥お・・ぅ」
「話が長い…ウルサイ。気を抜くな」
私はメガネの背後に[普通]に回って[普通]に右脇腹辺りを手で貫いて壁にぶん投げる。
自分のクインケを自慢するのは構いませんが、話すことに夢中になって周りが見えなくなる。
メガネは馬鹿ですか?いえ、愚問ですね。馬鹿です。今までで殺してきたどの捜査官よりも馬鹿です。
私はクインケを盾から金砕棒のモードに切り替え、壁際で呻いているメガネの所に持って行く。
それに…
「……お前の力じゃない」
「っひ!?」
殺意を込めてメガネを見下ろす。
確かに、このクインケの材料になった喰種を殺したのは貴方です。貴方の力でしょう。
でも、何を勘違いしているのでしょうね。
このクインケの性能は私達喰種が死に物狂いで生きようと…殺されない為に身に付けた力です。
それを自分の力。などと勘違いしている貴方は…
「…殺します」
「ひっぐぇええ」
私はクインケでメガネの右脇腹を殴る。
ベキベキと肋骨が折れる音がしたかと思うと、メガネは吐血した。
攻撃力はあまり期待できない。みたいな事を言っていましたがこれなら普通に喰種もヒトも殺せますね。
「あがぁああああああ」
今度は左脇腹を殴り、そのままの勢いで久土正人のいる方の壁に投げる。
ベシャっという水分を多く含む物が潰れた様な音がした。
「あっ‥・ぐ‥はぁ…はぁ…」
あれだけ殴打したのに……まだ生きているのですね。
さすがは喰種捜査官です。ゴキブリ並みの生命力。
ですが……
私はゆっくりとメガネに近づく。
最後は貴方のクインケで頭を割ってあげますよ。
止めを刺そうとメガネの頭に向かってクインケを振り下ろす。
このクインケの重量と喰種である私の力を合わせた一撃。
当たれば喰種であろうと必ず殺すことのできる一撃。
ガキィイン!
しかし、私の一撃は横からの乱入者によって阻まれてしまった。
「ふぅ…そこまでにして貰おうか」
「久土…正人」
私の目の前には、先程まで空気だった久土正人がいた。
「ドウシテ…?」
「どうしてって、こんな奴でも一応仲間だし…それに」
久土正人はランスの形をしたクインケの先端を私に向ける。
「喰種捜査官として、黙ってこのまま見ているわけにもいかないでしょ」
迷いのない返答だった。
………
「アハ…アハハハハははは」
今日だけでこんなに笑うなんて思わなかった。
「っ…何がおかしい!」
「いえ、貴方はとても良い人なんですね」
「喰種に褒められても嬉しくないな」
正人さんはそう言うと体制を低くしてランスを構えた。
「あはは、残念です。ホント…残念」
私も先程メガネから奪ったクインケを構える。
……なんてね。
私はクインケを肩に担ぐと、正人さんの横を通り過ぎ裏路地へと向かう。
「はぁー」
後ろから、私が帰ることに安心したのか、正人さんが大きく息を吐いた。
「アハハ…コロスって言ったよねぇ」
振り返り、一瞬で間合いを詰める。
私はメガネの心臓を右手、喉仏の辺りを左手で貫いた。
ゴパァっと血が溢れる。硬い骨と柔らかな肉の感触が私の手に伝わる。
二度三度。メガネは痙攣するとそのまま動かなくなった。
「気を抜くな。ってさっき言ったよね?」
「ッツ!?」
私は呆気に取られていた正人さんの耳元でそう呟き、その場を後にした。
……そういえば、いつもより自分の思ったことを素直に言えた気がした。
私はそんな事を思いながら何となく空を見上げる。
今日の月は、一段と綺麗に見えた。
広野「…僕の出番なし(´・ω・`)」
ごめんなさい広野さん、忘れてた訳じゃないですよ!
広野さんが主人公にちょっかい出すと、死亡フラグが立つので広野さんには悪いですが空気になってもらいました。
戦闘描写が安定しない&難しい…