本当にありがとうございます! とても嬉しいです。
色々とツッコミ所満載な小説ですがどうかこれからもよろしくお願いします。
『―――二十八日。高田ビル通りで男性の遺体の一部が発見されました。
現場には喰種のものと思われる体液が残されており、捜査局はこれを喰種の捕食と見て周辺調査を開始しています』
私が十一区から二十区に帰ってきた翌日。
二十区で喰種による捕食が行われたようです。
私は二十区の喰種のことはよくわからないので誰が襲ったのかは知りませんし、興味もありません。
正直、他の区の喰種が何をしようが私の知ったことではありません。干渉する気もありません。
でも、喰種捜査官を殺すことはお手伝いしますよ。それはもう喜んで……と言いたいところですが、最近クインケ【出月】の調子が悪いんですよね。
展開は一応できるのですが、ギミックの切り替えがどうもがたがたするんですよね。
時々、切り替わらない時もありますし……使いすぎなのかな?
でも、ここ最近使ってないけどなぁ。どこか故障したのかもしれませんね。
兎に角、これからは赫子を積極的に使うしかないですね。
幸いなことに二十区にはまだ本部の喰種捜査官はいないので、局員捜査官程度なら素手で殺せます。
まぁ、私の二十区でのお仕事は『あんていくの見張り』ですから滅多なことがなければ殺しませんけどね。
私は珈琲を一口啜り、辺りを見渡す。
あんていくの従業員は店長の芳村さんとトーカさんという片目を黒髪で隠した女の子。
トーカさん……何だかアヤト君に似ていますね。
まぁ、今はどうでもいいです。
今日のお客さんは六人。その内喰種だと分かる人は……二人。血の匂いが僅かに残っています。
そして確実にヒトだとわかるのは、私の後ろでこちらを見ている若い二人ですね。
無知で平和な顔をしています。羨ましいですね。
ん……
私を見ている二人の内の黒髪のヒト……どこかで会ったような……
思い出しました。
この前、私とぶつかって本を落としてそのまま去ってしまったヒトです。
会えて良かった。彼に渡そうと思ってずっと本を持っていて正解でした。
「これ、前に拾った」
「あ、ありがとうございます! ずっと探していたんです。ほんとありがとうございます」
私は彼の前まで行き本を差し出すと、彼は大事そうに本を抱えた。
本が好きなのですね。
私もあの子達に絵本などを……いえ、やめましょう。
「気にしない。じゃあ……」
私は自分の席に戻ろうとすると不意に視線を感じる。
この視線……黒髪の彼の横のツンツン頭で活発そうな彼からですね。
私はツンツン頭の彼を見る。
目が合うと逸らされてしまいましたが気にしません。私と目が合うと殆どのヒトが逸らすのでもう馴れました。
「……何か?」
「あ、いや~。君ってビックガールの岸花ちゃんだよね?」
「はい……」
「やっぱり! 岸花ちゃんは彼氏いるんですか?」
「ッ!?」
ツンツン頭の彼がいきなり立ち上がり私の手を取る。
私の手を包む暖かい手……離して欲しいですね。
あと、何を聞いているのでしょう。
「ひ、ヒデ! いきなり何してんだよ」
「うっせーカネキ。こういうのは積極的な方がいいんだよ」
ふーん。
黒髪の彼がカネキという名前で今も私の手を握っているツンツン頭の彼の名前がヒデですか。
ヒデさん、積極的なのは良いことだと思います。私も貴方の様にズバッと言えたらいいのですが、生憎無口なのは元からなので……あ、気分が高揚するとちゃんと喋れました。
まぁ、そろそろ手を離してもらいましょう。
正直。触られるのは嫌いです。
「彼氏。いないです」
「マジですか! じゃあ今度お茶でもどうっすか?」
「ひ、ヒデ!」
「調子に乗らないで、それじゃあ」
私はヒデさんの手を振りほどき元の席に戻る。
ヒデさんもそこら辺にいるヒトと変わらないですね。彼等は事あるごとに「お茶どうですか?」「メルアド教えて~」「付き合って下さい」それしか言いません。本当に単純。
ヒデさんの様な友達を持ったカネキさんの苦労が見えます。
でも…
私はヒデさんとカネキさんの方をチラリと見る。
「ひ、ヒデ! 変なことするなよ!」
「いや~、悪い悪い。今度何か奢ってやるから」
「ったく…」
そう言って笑い合う二人。
ヒデさんとカネキさんはとても良い関係を築けていると思います。
例えるならヤモリとニコさんのような感じですかね。
さてと、今日も何事もない感じですね。
私は珈琲の代金を芳村さんに払い、ドアノブに手をかけようとすると……カラン。とドアが開いた。
「あら…」
「……」
入ってきたのは綺麗な女性だった。
私は彼女にペコリとお辞儀をしてそのまま横を通り過ぎる。
……臭い。
彼女から、ヒトの血の匂いがした。
☆ ☆ ☆
今日は一日ビックガールでバイトです……
頑張れ私……主にこの不快な匂いとお客さんの対応に……早速お客さんですね。
「いらっしゃ……」
「や、やぁ」
……最悪です。何故ここに貴方がいるのでしょう。
久土正人。
「えーと…この前テレビで雪ちゃんが映っててさ、そのことを創多に話したら会いに行きたいって言ってな……」
創多君!
懐かしいですね。創多君がいるなら久土正人、貴方は用済みです。帰ってくれて結構です。
ですが、創多君の姿が見当たりませんね。どこでしょう。
私はキョロキョロと周りを見渡すが、創多君らしき子がいません。
「でも、風邪を引いちまってな……隣のおばさんに創多の看病を任せて俺だけ来たってわけだ」
「帰って」
貴方は何をしているのでしょう。息子である創多君が風邪を引いて苦しんでいるにも関わらず、看病を他のヒトに任せて自分だけここに来たと……
貴方も捜査官ですね。あの時、喰種の子供の為に怒ってくれたので見逃してあげましたが、殺しておけば良かったかもしれません。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「なに?」
そう言って久土正人はポケットから星型のネックレスを取り出す。
形からして手作りでしょうか?
「これ、創多が君の為に作ったんだ。どうしても今日渡したかったらしくてな、それで持ってきたんだ」
「……そう」
私は久土正人からネックレスを受け取り付ける。
…………嬉しいです。
「この前はありがとう。だってさ、じゃあ俺はこれで」
「……席に付いたなら何か食べてって」
「え? でも、帰れって……」
「……食べていけ」
「あ、はい」
私は久土正人にお水とおしぼりを持って行くと久土正人は私をジーッと見つめている。
「何?」
「いや…制服、似合ってる。可愛いよ。」
「……そう。注文決まった?」
久土正人。貴方もそこら辺のヒトと変わりません。
「んー、じゃあビッグハンバーグで」
「わかった」
そういえば、久土正人は私が喰種だと気付いているはず。
何故、他の捜査官に私が喰種だと知らせない……殺そうとしない。
もしかして、私の思い過ごし?
私は久土正人を見る。
「ん? どうした」
「……何でもない」
どうやら思い過ごしみたいですね。
でも、警戒しておくに越したことはないので気をつけましょう。
はぁ、今日は大変な一日になりそうです。
☆ ☆ ☆
……大変な一日でした。
久土正人。貴方と親しげに話したせいで職場の皆さんに付き合っていると勘違いされました。
誰が好き好んで喰種捜査官と付き合いますか……殺しますよ。
まぁ、大変な一日でしたが良かったこともあります。
私は首に掛けてある星型のネックレスを見る。
創多君からのプレゼント、本当に嬉しいです。今度お返ししないといけませんね。
そうなると……創多君の好きな動物とか乗り物とかを久土正人に聞かないといけませんね。
久土正人と話すなんて嫌ですが、仕方ないです。創多君の為です。
私が住宅街を歩いていると、前からカネキさんが女性の方を連れて歩いてきた。
確かあの女性の方は、あんていくの入口ですれ違った人ですね。
「――リゼさんAB型なんですか? 僕もなんですよ」
「本当ですか? 奇遇ですねっ」
カネキさんとリゼと呼ばれた女性は私に気づくことなく横を通り過ぎる。
カネキさん、お話に夢中で周りが見えなくなっていましたね。色々と無警戒です。
カネキさん……人生に一度しか体験できないことを貴方は今からするのです。隣で楽しそうに笑っている彼女の手によって。
リゼと呼ばれた人は喰種です。貴方は多分ですが、今日彼女に喰われます。
彼女に喰われる瞬間。貴方はきっと絶望のどん底に叩きつけられることでしょう。
ふふ、別にカネキさんとは親しいわけでもないのに私は何を考えているのでしょうね。
カネキさんを助ける。なんて選択肢は私にはありません。
私は振り返りカネキさんとリゼさんの後ろ姿が暗闇によって見えなくなるまで見送る。
さようなら。
遂に原作突入です!
主人公と久土正人さんが何だか良い感じに……なってる様な、なってない様な。
うーん、暫く主人公はカネキさんと絡ませようかな…それともアオギリの人達と…迷います。