UM☆アルティメットマミさん   作:いぶりがっこ

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一話「もうお嫁に行けないじゃない!」

―― 一見、平和な地球。

 

有史以来、惑星間戦争や怪獣の襲来と言った危機を持たず、

個別の感情を有した人類たちが、狭い星の上で肩を寄せ合って暮らす世界。

 

だが、そんな理想郷とも言える人類の歴史の陰には、

とある侵略者を巡る、少女たちの涙で紡がれた記憶があった。

 

過ぎ去りし遠い時代から、遥けき悠久の未来の果てまで、延々と彼女たちの闘争は続く。

そしてそれは現在、日本のありふれた新興都市・見滝原市の片隅においても……。

 

 

 

 

「来るよ杏子、気を付けて!」

 

「~~~ッ 言われなくったって、分かってんだよ!」

 

いびつに歪んだ花園の奥底で、揺らめく胡蝶の群れが侵入者へ向けて一斉に牙を剥く。

真紅のポニーテールをたなびかせ、少女がその身に似合わぬ大槍を振り回す。

長柄は直ちに多節の棍を形成し、痛烈な旋風を以て土塊を巻き上げる。

土埃に揺らめく視線の先で、巨大な臓腑でもコラージュしたかのような異形がその影を成す。

チィッ、と少女が一つ舌打ちをする。

 

【魔法少女】と【魔女】、

魔女は恐怖と絶望を振り撒きながら人類に災厄をもたらし、

魔法少女は得物を振るい、魔女を屠ってその糧とする。

 

魔法と言う概念を加えてなお揺らぐ事の無い、食物連鎖と言う生態系の縮図。

だが、その頂点に立つ魔法少女もまた、絶対と言える立場ではない。

魔法少女は生き延びるため、魔女を狩り続けなければならないが、

その魔女もまた、魔法少女に抗するだけの牙を有しているのだ。

戦うためには力を振るわねばならず、力を得るためには戦い続けねばならない。

薬草を求めて毒沼を彷徨うが如き不毛な行為が、

未熟な少女たちの精神と肉体をじわじわと蝕んでいく……。

 

「――ッ!?」

 

束の間の思考の壁を突き破り、異形の連ねた触手が一直線に穂先を捉える。

たちまち少女の視界が一回転し、小柄な身体が容赦なく壁面へと叩きつけられる。

 

「カハッ!」

 

「今のはまずいよ、杏子、何か手を考えないと……」

 

「……いちいち五月蠅いんだよ、お前は」

 

足元の珍獣相手に毒付きながら、手にした得物を杖代わりにかろうじて立ち上がる。

白兵から中遠距離戦にまで幅広く対応できる大槍は、

一匹狼を気取る少女、佐倉杏子にとって、本来ならば最適の選択と言えるのであろうが、

それも連戦によるダメージが重なっているとなれば、十全に生かす事は叶わない。

 

「――危ない! 避けてッ!」

 

「何、うっ……!」

 

突如、横合いからの悲鳴と衝撃を浴びて、杏子の体が真横に転がる。

間を空けず胡蝶の群れが一直線に脇を掠め、震える空気がビリビリと頬を打つ。

 

「ふうっ、か、間一髪だったわね」

 

「間一髪って、お、お前……」

 

頭を一つ振るい、強烈なタックルを噛ましてくれた乱入者の姿を改めて見つめ直す。

歳の頃は杏子より一つ二つ上と言った所であろうか。

柔らかな金髪のロールが印象的な、均勢の整った顔立ちの少女、

ややあどけない表情とは不釣り合いなふくよかな肉体が、

クリーム色のブラウスとチェックのスカートの奥で控えめに自己主張する。

 

「その制服は、この辺の……、って、バ、バカッ!?

 一般人がこんな所に首突っ込んでどうしようってんだ!?」

 

「ええ? だ、だって私、その……」

 

『あの怪獣を倒すに決まっているだろうッ!』

 

「う、うぉ!?」

 

突如として会話に割り込んできた、古谷徹風の張りのあるボイスを耳にして、

反射的に杏子が身構える。

振り向いた少女の眼前にいたのは、サッカーボール大の丸っこい銀色のマスクを被り、

コンパクトなUFO?らしきものに乗って浮遊する、極めて胡散臭い生物であった。

 

「お前ら……、一体、何なんだ?

 見た所、魔女や使い魔の類ってワケでも無さそうだが?」

 

『私は正義のヒーロー、UFOマン!

 と言うか、今はそんな込み入った話をしている場合ではない。

 巴マミ、早速だがこれを握るんだ!』

 

会話もそこそこに突如、UFOマンがUFOの下腹部より見事なイチモ……、

もとい男性的な形状のグリップをニュインと伸ばす。

たちまち年頃の少女たちの顔面が爆発し、ひいっとばかりに後ずさる。

 

『こいつを握り、私と 合 体 するのだ、巴マミ!

 UFOマン子に変身して、一気にアイツを叩き潰すぞ』

 

「合体……、UFOマ……、バ、バカかお前ッ!?

 消されちまったらどうするつもりだ!!」

 

『ええい、部外者は黙っていろ! これは私とマミの問題なのだ!』

 

だが、巴マミと呼ばれた金髪の少女もまた、

ピコピコと周囲を威圧する大業物を前に、まるでぐずるようにイヤイヤと首を振るった。

 

「ムリ、無理よUFOマン。

 だって、人がいるなんて私、聞いてないもの……、

 こんな同世代の女の子の前で変身なんて、出来るワケないじゃない!」

 

『何を言っているんだマミ、

 女の子がいるなら、正義の味方としては尚更助けなきゃならないだろうが!

 確かにこんなケースは我々にとっても初めての事だが、

 後はもう、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応していくしかあるまい』

 

「行き当たりばったりにも程があるわよォ~!!」

 

巴マミはしばし、謎の少女と謎の珍獣、

それに彼方の怪物とUFOマンのイチモ……もといをぐるりと見回していたが、

やがてがくりとうなだれて、ぷっくりした頬にひと雫の涙をこぼした。

 

「……分かった、分かったわよ、変身、すればいいんでしょう?」

 

『おお! やってくれるか、それでこそ僕らのマミさんだ!』

 

か細い両肩を震わして、巴マミが右手をゆっくりと伸ばす。

白磁のように可憐な指先がナニへと触れた瞬間、それは起こった。

 

『UFOマン! イキまーっす!』

 

「へ、変し……、きゃあっ!?」

 

勢い漲るUFOマンの雄叫びと共に、

迸る熱いパトスが白色のエナジーと化して、マミさんの全身にぶっかけられる。

艶やかな金髪が、恥辱に歪む眉が、形の良い鼻先が、ふくよかな頬が、

たわわな二つの果実が、むちむちと肉付きの良い両腿が、

欲望のままに白色のドロドロに染め上げられていく。

 

「なっ、こ、これは……!」

 

「変身だって? まさか僕ら以外の知的生命体が、

 人類に対してコンタクトを試みていたとでも言うのかい?」

 

壮麗なマミさんのテーマが流れる中、

呆然と見上げる二人の前で、少女の全身が輝きながら膨張を始める。

ブラウスのボタンを勢い良く弾き飛ばして、重量級のボインがぼよよ~んと爆ぜ、

安産型のヒップがズオオッとばかりに凄みを増し、

濃色のタイツをマニアックに引き裂いてムッチムチの御神脚が現出する。

やがて、マミさんの巨大チャーミングおデコが謎ヘッドギアに包まれると、

そこに若干賢者モード入ったUFOマンが吸い込まれて行く。

全ての光が消え去った時、そこには黄白のツートンスーツにその身を包んだ、

超ド級マミさんの姿があった。

 

内股気味に構えた十数メートル級の巨大乙女を前に、

歪んだ楽園の主も警戒を露にし、直ちに胡蝶の群れを走らせる。

 

『来るぞ、マミ、迎撃だ!』

 

「……ようし、ティロ・フィナーレ!(物理)」

 

―― ドワォ!!

 

謎の技名と同時に天空から打ち下ろされた鉄拳が大地を貫き、

轟音と衝撃波が使い魔の群れを諸共に蹴散らす。

花園をたちまち無残なクレーターに替える一撃に、居合わせた一同が絶句する。

 

表情なき異形にも、危機感というものはあるのだろうか?

肉弾戦の愚を悟り、その背に外見と不釣合いな蝶の羽を広げ始める。

 

『――アイツ、あの巨体で飛ぶ気か?

 イカンぞマミ、上から攻められてはUFOマン子はお手上げだ』

 

「わ、分かってるわよ」

 

ズン、ズン、ズン、と滞空時間の長い乙女走りで大地を揺らし、

息せき切ってジャイアントマミが走る。

力強く大地を蹴り上げ、渾身のスピアーでもって異形を結界の隅へと叩き付ける。

 

「に、逃がさないんだから」

 

『 マ ミ さ ん ブ リ ー ガ ー!! 死ねぇ!』

 

「やめて! 恥ずかしい技名を叫ばないでッ!?」

 

ノリノリの異星人にツッコミを入れつつ、両腕を回してガチリとロックする。

恐らく有史以来最強のだいしゅきホールドに捕われて、

さしもの異形も全身を激しく痙攣させる。

 

「ベ、ベアハッグだと!?

 アイツ、魔女のあの巨体を吊上げるつもりなのか!

 しかもあの巨大な胸で圧迫して……、あれでは魔女も呼吸ができない!!」

 

「ノリノリだね佐倉杏子。

 でも多分、魔女は呼吸なんてしないと思うよ」

 

「細かい事はいいんだよ、とにかくこれはもう決着だよ」

 

「……いや、あれを見て、大ピンチだよ!」

 

「? 一体何を言って……、うっ!?

 バ、バッキャロー! 何考えてやがるんだ!?」

 

「……え? って、え! ええええええええええ!?」

 

杏子の必死のヤジを受け、マミさんもようやく自身の状態に気が付いた。

ピコーン、ピコーンという危ないタイマーの響きと共に、

少女の巨大な全身を包んでいたスーツが蕩け始め、

そこかしこに大穴を広げつつあったのだ。

抜けるように白い肌が徐々に露わとなり、超ド級安産型のピーチがプリンと踊り、

拘束を解かれたワガママボインが自己主張を始める。

 

「隠せバカ!? R-15で効かなくなっちまうぞ!」

 

「ちょ、ちょちょちょっとUFOマン! どうなってるの!?」

 

『どうもこうもない、いつもの時間切れだ。

 このままではヘンタ、もといタイヘンな事になる』

 

「嘘! だっていつもより早いわよ」

 

『乳マミさんは伊達じゃない』

 

「くぅっ!」

 

かつてない恥辱に顔を歪ませながら、足元でヤジを飛ばす少女をちらりと見つめる。

 

(ああ……、あの子、杏子とか言ったっけ?

 よく見たら彼女、すっごいイケてるファッションじゃない。

 私の好みとはちょっと違うけど、でも世界観を崩さない程度にスタイリッシュで、

 何て言うか、いかにも今時の戦うヒロインって感じだわ。

 そ、それに引きかえ……)

 

改めて自分の姿を見直す。

本来女の子が着るべき物ではない、全身タイツの延長上にある前時代的なスーツ。

いや、それすらも今となっては、ただの黄色と白のヌルヌルしたヒモでしかない。

 

「うぐっ、私、私だってぇ……」

 

少女の大きな瞳から、一筋の理想が淡い雫となって大地に零れ落ちる。

本物の魔法少女・佐倉杏子との邂逅が、乙女の中の神秘を未知の領域へと導いて行く。

 

「私だって! カッコカワいい魔法少女になりたかったのにいいィ~~~!!!!」 

 

『おおっ、M.O.E マックスかッ!』

 

少女の魂の叫びと共に、その全身から再び謎のエナジーが溢れ出し、

痛烈な白色の閃光が花園を包み込む。

 

「――ッ! 何の光!?」

 

「凄い、このエネルギー、彼女もまたエントロピーを凌駕した存在なのか」

 

『説明しよう!

 UFOマン子は、巴マミのM(見ちゃイヤン)O(乙女)E(エナジー)を

 エネルギーに変えて戦う超人である。

 彼女の中の、イヤ~ン、見ちゃダメ~と言う恥じらい、

 すなわち羞恥心が最高潮に達した時、

 UFOマン子は秘めたポテンシャルの全てを発揮できるのだ』

 

「じ、自分で説明するのかよ……」

 

 

 

「ティロ……! フ ィ ナ ア ァ レ エ エ ェ エ ェ ェ ――――ッ!!(物理)」

 

 

 

決死の雄叫びに呼応して、巨大少女のしなやかな肢体が芸術的なアーチを描き、

半回転した異形の巨体が頭から花園に陥没する。

もしもこの場にアレキサンドリア・ミートがいたならば、

惜しみない賞賛を送ったに違いない、乙女渾身のバックドロップ。

ピンと伸びた二つの爪先の間から、超ド級マミさんの壮大な観音様が如来する!!

 

「わ~~~~っ!? けっこう!!」

 

「セリフのチョイスはそれで良いのかい、佐倉杏子?

 ああ、でも確かこの場合は『永井先生ゴメンなさい』だったかな?」

 

「い や あ あ あ あ あ ~~~!」

 

鳴り止まぬ少女の慟哭と共に、エナジーはその輝きを一層に増し、

世界を完全なる白色へと染め上げ、そして……!

 

――そして光が費えた時、忌まわしき魔女の結界もまた消滅していた。

 

「うっ、うう……」

 

全ての力を使い果たし平凡な女子中学生に戻った巴マミが、

その生まれたままの姿で、ぺたりと路地裏に腰を下ろす。

 

『やったな、巴マミ! これまでの中でも最高にイカした大活躍だったぞ!』

 

「――ッ!」

 

喜色満面で駆けつけたUFOマンが、そのKYぶりを遺憾なくした瞬間、

不意にマミが壊れた。

 

「う、ひぐっ、ふ ぇ え え え え ぇ え ぇ ぇ え ぇ ぇ ぇ ~~~~ん!!」

 

泣く、

マミが泣く、

満点の星空を仰ぎ、巴マミが号泣する。

 

数多の平行世界で垣間見た、かつての優雅さの欠片もない無様な姿。

大粒の涙をボロボロとこぼし、鼻水で顔面をグシャグシャにして、

プライドの全てを打ち捨てて、年端もいかない童女のように悲しみの声を上げる。

 

もしも今、彼女が魔法少女であったならば、そのソウルジェムは即座にドス黒く染まり、

全宇宙を消滅させる災厄の魔女が光臨していたに違いない。

だが、今の彼女は単なるすっぽんぽんの女の子。

呪いも絶望も、ただ悲しみとなって空しく中空に掻き消えるしかないのだ。

 

『おおっ、嬉し泣きか!

 分かるぞマミ、なにせあれだけの死闘を制した後だからな!』

 

「ちが、違うわよバカァ! あんな姿、他人に見られちゃうなんて……、

 こんなんじゃ私、もう、お嫁に行けないじゃないっ!?」

 

『何を言うか! 君以上にチャーミングなヒロインなんて、

 この地球上にはそんざイギャアァ――ッ!』

 

UFOマンの言葉は最後まで続かなかった。

突如として横合いから飛んできた鉄拳が横っ面を捉え、

その身を彼方までぶっ飛ばしたのだ。

 

「こんのッ 外道がァ――ッ!」

 

「え……?」

 

思わず泣き声が止め、巴マミがおずおずと横合いを見上げる。

憤怒の形相で拳を握り締めていたのは、件の魔法少女・佐倉杏子。

事情も分からない、状況も、もちろん分からない。

だが、杏子の中の隠し切れない熱血系狂犬ヒーローとしての資質は、

本能的にUFOマンをぶん殴る事を選んだのだ。

 

『な、殴ったね! 親父にもぶたれた事ないのにッ!』

 

「五月蝿い! お前はそれが言いたいだけだろうがッ!

 年頃の女の子相手に何て事しやがるッ!?」

 

『に、二度もぶった……』

 

「黙ってろ!」

 

呆然とする全裸の少女を置き去りにして、

たちまち魔法少女と異星人のどつき漫才が繰り広げられる。

その間隙を縫うようにして、笑ゥせえるす系マスコットの魔の手がしなやかに迫る。

 

「……それにしても、君たちには驚かされるばかりだね。

 まさか魔法少女以外に、あの魔女を倒せる人間がいるなんてね」

 

「え……? 魔女、って?」

 

「知らずに戦っていたって言うのかい?

 さっき君が倒した怪物の通称が【魔女】、

 結界の奥に潜み、呪いと言う形で人々の不安を煽る人類の敵だ。

 そして、その魔女に立ち向かうのが彼女たち【魔法少女】と言う訳さ」

 

「魔女に、魔法少女……」

 

「巴マミって言ったよね。

 どうやら君にも、向こうの杏子に匹敵する資質があるみたいだ。

 僕の名前はキュゥべえ!

 どうだい、僕と契約して、魔法少女に鞍替えしてみる気はないかい?

 そうすれば一つだけ、どんな願い事でも叶えてあげる!」

 

「わ、私の願い事を?」

 

「そう、例えば『あのヘンテコな宇宙人と、縁が切れますように』とか……」

 

『ってオイッ!? 待て待て待て待て~いッ!』

 

第一話にして早くも訪れた破局の危機を前に、

全速力でヘンテコ宇宙人が割り込んでくる。

 

『この淫獣め!

 ウチのマミさんに良からぬ事を吹き込みやがって、

 一体ナニを企んでいやがる』

 

「これは心外だな。

 僕はただ、今の状況に苦しんでいる彼女に対して、

 少しでも一助になるような可能性を提案しているだけだよ」

 

「魔法少女、わ、私が……」

 

『騙されるな巴マミ!

 こんないかがわしい奴と契約したが最後、即座に魂まで抜き取られて、

 まるで家畜のような惨めな扱いを受けるに違いないのだ!』

 

「やれやれ、こんな特大のブーメランは初めて見たな。

 僕の事をとやかく言う前に、

 まずは今日一日の自分を振り返ってみる事をお勧めするよ」

 

「ホレ見ろ! やっぱりお前が悪党じゃねえかッ!」

 

『違うの! アイツは本当に人類の敵なの!

 お願い、信じてマミさん!』

 

「ええっと、あ、あの……」

 

おずおずとためらいがちに、マミがいかがわしい宇宙人の弁護を始める。

 

「もう、それくらいで勘弁してやって頂戴。

 確かにコイツは、スケベでクズでいいかげんなお調子者なんだけど、

 それでも悲しい事に、一応は本当に正義の味方で、

 しかもよりによって、正真正銘、私たち家族の命の恩人なのよ……」

 

「~~ッ! 納得できるか、そんなモン」

 

「きゃっ!」

 

吐き捨てるような言葉と共に、杏子が上着を脱ぎ捨てマミへと投げつける。

 

「あ……、これ」

 

「アンタ、巴マミ、とか言ったっけ?

 取り敢えずは私のヤサに寄ってきなよ。

 どんな形でも借りは借りだ、服くらいどっかから調達してきてやるよ」

 

「あ、ありがとう、ええっと……」

 

「佐倉杏子。

 まあ、アンタが魔法少女じゃないって言うなら、

 かえって色々と共闘できる所もあるだろうしね……。

 また何かあったら、遠慮なく声を掛けてくれりゃあいいさ」

 

「本当!? ありがとう、ありがとう佐倉さん……!」

 

「お、おい!? 何も泣くほどの事じゃないだろうが!

 ったく、いいから洟ふけよ洟」

 

「ぶひゅう! あ、あいがと……」

 

 

 

 

――これが、寂しがり屋のマミと、一匹狼気取りの杏子との出会いの夜であった。

 

そして、【超人】と【魔法少女】の邂逅が果たされたこの日より、

地球の運命は大きく流転する事となるのである。

 

『――巴マミの戦いは続く、

 だが、今や彼女の手の上には、友情と言う名の新たな力が芽生え始めていた。

 もう恐れるものは何も無い。

 さあ行け! 運命の少女・巴マミ、戦え! 正義の戦士UFOマン子……』

 

「……ってオイ!

 どさくさに話を丸めようとしてるんじゃねえ!」

 

「ワケが分からないよ」

 


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